休み時間を迎えた真白は席を立ち、廊下に足を進め始める。すると教室を出ると同時に見える金色の髪が真白の視界にも映り込んだ。普通なら驚くべき事だが、真白は特に驚く様子も無く視線を横へ。お互いに目が会うと、ヤミは「昼食ですか?」と真白に質問をした。言葉通りだった為に真白が頷いて答えれば、教室内にある真白の出た扉とは反対側の扉からララが飛び出して真白を見つける。
「真白! お昼ご飯食べよ!」
「……ん。……リト、は……?」
「何か疲れが取れなくて怠いから、御門先生に相談して来るって!」
ララの言葉に真白は特に反応する事無く、だが頷いた後に教室の中に視線を向ける。真白の位置からは前半分よりも少し多めの席が見え、その中には唯の姿もあった。唯は現在昼食であろう包みを取り出しており、真白の視線に気付いた様に顔を上げる。何を言うでも無く、だが真白の言いたいことが分かった唯。真白に見える様に溜息を吐くと、包みを手に立ち上がって近づき始めた。
「何時も通り、付き合ってあげるわ」
「すごーい! 唯って真白が何も言わなくても分かっちゃうんだね!」
「阿吽の呼吸……ですか」
「べ、別に何時もの事だから直ぐ分かるだけよ!」
言葉を交わさずに分かり合う2人に目を輝かせるララと、目を細めて呟くヤミ。ララの言葉に唯は強めの口調で言うと、真白に何処で食べるのかを質問する。するとヤミが「中庭はどうでしょうか?」と提案。真白はそれに頷くと、3人と共に中庭へと向かい始める。
「にしても最近はヤミちゃん、何時も真白と一緒だよね?」
「何時また襲われるか分かりませんから」
真白の隣を歩くヤミの姿にララが言えば、軽く顔だけを振り返らせて答えるヤミ。数日前の誘拐以降、ヤミは真白の傍に今まで以上に居る様になっていた。事件の翌日には授業中にまで外から真白を見守っていたヤミ。明らかにやり過ぎだった為に真白が注意をした結果、授業の終了時に廊下で待つ様になっていたのである。だがそれでも間違い無く真白とヤミが傍に居る時間は長くなっており、真白を常日頃から気にしていたララにはそれが良く分かった。
中庭にたどり着いた4人は空いているベンチを見つけると、右側から唯・真白・ヤミ・ララの順で座り込む。そしてそれぞれが持っていたお弁当を開けた時、唯は3人のお弁当を見て少しだけ固まった。
「あ、貴女達……全部一緒なのね」
「真白と美柑が作ってくれるんだ!」
そう、唯以外3人のお弁当の中身は完全に一緒だったのである。朝早くから結城家へと行っている真白が美柑と共に作っている為、同じものが出来るのは仕方の無い事。同じお弁当を持つ仲が良すぎるとしか思えない3人の光景に唯が多少の居心地の悪さを感じ始めた時、真白が開けた蓋を更に自分のお弁当の中身を少しだけ取り出す。そしてそれをゆっくりと唯へ差し出し始めた。
「何よ?」
「……交換。……唯も……一緒」
余りに突然差し出されたため、最初は意味の分からなかった唯。だが真白の言葉に理解すると、難しい顔をし乍らもそれを受け取る。そしてそれを膝の上に置いた時、唯もまた同じ事をして真白に自分のお弁当の中身を差し出した。
「わ、私だけ貰うのは不公平よ。だから、私も上げるわ!」
「良いな~! 私も真白と交換したい!」
「同じ中身です、プリンセス」
お互いにお弁当の中身を交換し合う2人を見て羨ましそうに言うララ。そんな彼女にヤミが静かに言うと、箸箱から箸を取り出し始める。地球に来た際、ヤミは箸を一切使う事が出来なかった。だが真白に教えて貰い、今では当たり前の様にそれが使用できる様になっていた。ララはヤミの言葉に「そうだけど~」と少し唇を尖らせながら言い、唯は2人が出来ない事を出来ていると言う現状に何処か優越感に似た感情を感じていた。
「では、頂きます」
「頂きま~す!」
ヤミとララが食べる為に言えば、唯も同じ様に呟いて。真白も静かに手を合わせた後に食事を開始する。ララは毎日食べているものだが、それでも変わらずに笑顔で真白に美味しいと告げる。ヤミも「美味しいです」と感想を言い、ヤミとララの視線が同時に唯へと向かった。真白もそれに釣られて視線を向ければ、何かを食べたのだろう。箸を口に加えて見られている事に動揺する唯の姿が映った。
「どうどう? 真白と美柑の作ったおかず、美味しいでしょ!」
「え、えぇ……そうね。美味しいわ」
その感想に嘘偽りは無く、だが無理矢理引きだされた為に少々言い辛そうに答える唯。だがそんな事気にした様子は無く、ララは唯の言葉に嬉しそうな表情を浮かべる。作り手では無いララが何故か誰よりも嬉しそうな光景にヤミが目を細める中、真白が動かしていた箸を突然止める。何かを見つけた様であり、3人は真白の姿に気付くとその視線を追う。その先に居たのは……何故か女子の制服を来たレンが逃げて行く姿であった。恐らくルンの状態で、くしゃみをしてしまったのだろう。理由は察したものの、何から逃げているのかに首を傾げた時、レンが走って来た方角からゆっくりとリトが現れる。彼は4人の姿を見ると、ゆっくり近づき始めた。
「やぁ、今僕の目の前には素晴らしい花たちが並んでいる様だね。何時までも見つめていたい……そんな光景だよ」
≪……≫
そうして4人の目の前に立つと、恥ずかしげも無く言い放つリトの言葉にその場に居た全員が文字通り凍り付いてしまう。だがそんな4人に構う事無く、リトは更に近づくと真白の手を取って突然立ち上がらせる。腰に手を回し、手を取って顔を近づけるリト。余りの光景に未だに反応できない者達を置いて、リトはキザな笑顔で口を開く。
「真白、君は何時も僕の傍に居てその美しい姿を見せてくれる。時に薔薇の様に綺麗で、時に鈴蘭の様に儚く可憐な君は本当に美しい」
「……リト?」
まず間違い無くおかしいリトの姿と言動に手を取られて体を触れられても、特に動揺する事無く心配そうにその名を呼ぶ真白。だがリトはそのままゆっくりと口を近づけ始め、やがて真白の唇は……奪われるよりも先に強い衝撃がリトを襲う事で無事に終わる。リトの立って居た場所には巨大な拳が存在し、リトから解放された真白の体は少し後ろへよろめくも唯がそれをすぐに支える。
「何のつもりですか……結城 リト」
「今貴方、絶対真白に破廉恥な事しようとしたわね!」
「き、綺麗な薔薇には棘があるとはよく言ったものだね。だけど、障害がある方が恋の炎は燃え上がる物だよ」
「何か今のリト、変だね?」
「新しいボケか何かですかね?」
「……多分……違う」
リトから真白を救い出す為に行われたヤミの攻撃。それはリトの体を軽々と吹き飛ばし、唯は転がるリトを睨みながら真白の体を抱き留めた状態で腕に力を込めながら言う。だがヤミの攻撃を受けて尚、立ち上がったリト。様子のおかしいままヤミ達を見つめ、ララが首を傾げればペケが的外れな見解をする。どう考えても違うと分かった為、真白はそれを否定して唯の腕の中でリトを見続ける。っと、何かを思いだした様にリトが出て来た方向に視線を向けた。
「……涼子」
相手は先生だが、それでも構わずに真白はこの場に居ないその相手の名前を呟く。リトが疲れを訴えて御門を訪ねに保健室へ言ったことを聞いていた真白は、今のリトが出来上がった原因が彼女であるとすぐに察する事が出来たのである。大量の拳を作り上げて攻撃を続け、今にもリトを殴り殺しそうなヤミの姿に真白は声を掛けると首を横に振る。ヤミは真白の言いたい事が分かった為に拳を元の綺麗な髪に戻した後、ボロボロになっているリトに視線を向けた。
「……もう……平気」
「え? !?」
ヤミがリトを攻撃しなくなった事を確認した真白は自分を抱きしめている唯に告げる。唯は言われた言葉に一瞬困惑し、すぐに自分が真白の体を抱いているのに気付くと顔を真っ赤にして距離を取る。自由になった真白はこの事態の元凶である確率が高い御門の元へ行く為、リトに手を取られた際に何とか空いていた手で持っていた食べかけのお弁当を一度しまって足を進め始める。何処かへ向かい始める真白にヤミは当然としてララと唯も一緒に付いて行き、やがて全員は保健室前へ辿り着く。そして真白が保健室の扉を開ければ、開いた扉に反応して御門が真白を見る。
「あら? 何か用かしら?」
「……リト……変。……何か、した?」
「? 疲れが取れないって言うから滋養強壮効果のあるオキワナ星で取れた薬草で作った薬を渡したけど……まさか」
真白の言葉に御門は呟きながらも、やがて何か思い当たる事があるのか難しい顔になる。するとヤミの髪に包まれてリトが少々乱暴に保健室のベッドの上へ。その後、ララと唯がリトの可笑しくなった内容を詳しく説明。御門の薬はそもそも宇宙人が飲むことが多かった為、地球人が飲むと性格が少しだけ可笑しくなると言う結果が出る。目が覚めた頃には元に戻っていたリトは可笑しかった頃の記憶が残っており、謝りながらもヤミから受けた攻撃の怪我を治療して貰うのであった。
各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?
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サブタイトルの追加
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主な登場人物の表記