【完結】ToLOVEる ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第48話 とらぶるくえすと【後編】

 崖の上に立つ巨大な大魔王の城。その最奥に存在するベッドの上で、真白は静かに眠っていた。キョーコに囚われてしまった真白。今現在キョーコの姿は何処にも無いが、その代り2人のマントを被った人影が眠る真白の姿をベッドの左右から見つめていた。

 

「本物、だよな?」

 

「えぇ、私達の目の前に居るのはシンシア・アンジュ・エンジェイド……本物のシア姉様です」

 

 上から下までをマントで覆い、その姿を現さない2人。しかし会話するその声は女性のものであり、やがて1人がゆっくりと真白に向けて手を伸ばす。眠ったままの真白が反応することは無く、徐々に近づく手は真白の頬へ。マント越しにでも分かる程に震え始めたその人物は、途端に抑えが効かなくなった様にベッドへ身を乗り出し始めた。1人が眠るのは余りにも大きなベッド故に乗ったところで狭くはならず、その人物は真白の横に寝るとその片腕を抱きしめ始める。

 

「マジだ、マジでシア(ねぇ)だ!」

 

「勝手に何してるんですか?」

 

 何処か半泣きになりながらも喜ぶその姿に表情は見えないものの、不機嫌そうに話しかけるもう1人。しかし気付けば彼女も真白の反対側の腕をベッドに座り込んで持ち上げ、その手を取って自分の両手で覆っていた。そしてその手を自分の顔にまで持って行き、目を瞑ってその暖かさを感じ始める。

 

「それで? 姉上とシア姉の家族ってのはどうなんだよ?」

 

「お姉様は私達が信じた通り。そしてシア姉様のご家族とご友人方も残ったみたいですね」

 

「ふぅ~ん。ま、当然だよな。見捨てる様な奴らだったら今頃……」

 

 真白の両腕を互いに掴みながら会話をする2人。するとその部屋の扉が突然開かれ、箒を手にキョーコが入って来る。一仕事終えたかの様に大きく伸びをしたキョーコは2人と眠る真白の姿を見ると、笑みを浮かべながらその場所へ急接近した。

 

「楽しそうだね、私も混ぜてくれないかな~?」

 

「……どうする?」

 

「まぁ、少しなら良いでしょう」

 

 キョーコのお願いに2人は考えた後、許可を出す。途端にキョーコは喜びながらベッドの上、真白の足元に近づき始める。これから何をするのかは定かでは無いが、許可を出したマントで顔を隠した者はその中で笑みを浮かべる。

 

「早く来ないと我慢できなくなってしまいますよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やみ:遊び人』

 

「転職屋に行ったらこうなりました」

 

 ヘボンの村、宿屋にてリト達と合流したヤミ。何故かバニーガールとなっている服装について、説明をしたヤミの言葉に普段からゲームをするリトと美柑だけが納得する。反対に余りゲームをしない春菜は苦笑いを浮かべ、唯はヤミの服装に「破廉恥よ」と小さな声で呟く。そしてどちらでも無いララは唯純粋に、ヤミのその姿に「可愛いね!」と感想を言っていた。

 

「あれを倒せば真白の元に行けると言っていましたが、あれがそうですか?」

 

「あ、あぁ。多分あの中に何かが入ってるんだと思う」

 

 部屋のテーブルに置かれていたゴーリキを倒した際に入手した宝箱。キョーコの去り際の言葉が真実であれば、その中には真白の元へと行ける何かが入っているのだろう。ヤミは何処かの街に留まる事無く真白を探して彼方此方を回っていた様で、ようやく見つけたその手掛かりにリトが頷いたと同時にその宝箱を遠慮なく開く。一瞬罠かも知れないと美柑は焦るも、中に入っていたのは太陽に顔が描かれた謎の道具のみ。そしてそれを全員が見ると同時にウィンドウが出現する。

 

『キョーコの導き』

 

「これを使えば真白のところに行けるのかな?」

 

「あの言葉が本当なら、ね」

 

 中に入っていたその道具にララが首を傾げ、唯が半信半疑といった様子で呟く。すると春菜は不安そうな表情でリトに視線を向け始め、その視線に気付いたリトは緊張しながらもどうするべきか考える。キョーコは自分の事を絶対に倒せないと言っていた為、何の策も無く挑んでも無駄になる可能性がある。しかしそれは強くなったところできっと変わらないだろう。ヤミの様子は今すぐにでも助けに行こうとしており、ゆっくりしている選択肢も無さそうであった。故にリトは一度息を吐きだすと、全員に向き直る。

 

「ここに居たって仕方ないしさ、真白を助けに行こう!」

 

「うん。皆、頑張ろ!」

 

 リトの言葉に春菜が続けた時、その場に居る全員が頷いて答える。それを最後にリトはもう一度宝箱へ向き直り、キョーコの導きを手に取った。使用すると言う事がどの様な行為なのかは定かでないが、少なくともそれを掲げれば良いと直感で感じたリト。その予想通り、リトがそれを掲げた瞬間に全員の視界を強い光が襲う。そして急な浮遊感を感じた後、気付けば全員は落下していた。

 

「うわぁぁぁ! はぶっ!」

 

 地面に向かって一目散に落下したリト。そんな彼の傍ではヤミが美柑を抱えて羽を出し、ゆっくりと地上へ降り立っていた。ララも驚きながらゆっくりと降下していき、飛べない春菜と唯はリトと同じ様に急落下。唯が痛みを伴いながら落下する中、春菜は何故かリト顔の上に落下してしまう。結果、春菜の股の間に顔を埋める事となったリト。春菜が気付きドンドン顔を真っ赤にして行く中、唯はその光景に気付くと春菜が立ち上がった瞬間にリトへ攻撃した。明らかな事故だが、この様な場合は全て男が悪くなるものなのだ。決してリトが自分からした事で無い為、春菜は顔を真っ赤にしながらも怒らないが……ララ以外の者達からリトは冷たい視線を受ける事となった。

 

「いてて……! 大魔王の……城?」

 

 痛む場所を擦りながらも顔を上げたリトの目の前に見えたのは崖の上に聳え立つ巨大な城であった。リトの呟きに他の全員も視線を向け、その大きさと周りの光景に春菜と唯は戸惑う。しかし一切怖がる事無く、何時も通りの人物も居た。

 

「皆~! 早く行こうよ!」

 

「……」

 

 気付けば先行して自分達を呼ぶララと、更にその先を歩き続けるヤミの姿に何処か頼もしさすら感じるリト達。ヤミがドンドン進んでしまう事で美柑もその後を追い始め、変わらぬその姿に唯が溜息を吐きながらも歩き始める。そして残った春菜とリトだが、何とも話し難い雰囲気になってしまっていた。が、リトは意を決して春菜に話しかける。

 

「さ、さっきはその……ごめん」

 

「う、ううん。業とじゃないのは分かってる、から。ほ、ほら! ララさん達を追い掛けないと、置いてかれちゃうよ?」

 

 リトの謝罪に春菜は首を横に振って言った後、リトより数歩先に出て進む様に促す。嫌われてはいないと分かり、安心したリトは春菜の言葉に頷くと先行するララ達を追って魔王城の中へ入って行くのだった。

 

 最後のボスであるキョーコが居る大魔王の城に出て来る敵は当然終盤の強力な存在ばかり。強くなっていないリト達では到底太刀打ちできないが、バランスなど関係ないとばかりにヤミがその全てを切り捨てる為に誰もダメージを受ける事は無かった。やがてその道中で遭遇するのは、同じ様にこの世界へ巻き込まれた天条院 沙姫と彼女の傍に何時も居る藤崎 綾と九条 凛の3人。どうやら彼女達はキョーコに協力することで元の世界に帰して貰うと約束している様で、リト達の前に立ち塞がる。だが魔法使いの様な恰好をした綾が使った呪文が何故か3人の胸を晒すという結果を齎し、恥ずかしがる彼女達を無視して全員はその場所を通過した。

 

「いやぁぁ! 近づかないでぇぇぇ!」

 

「? 今の、ルンちゃん?」

 

 奥に進む道中、今度は遥か遠くから聞こえて来るルンの悲鳴にララが首を傾げる。どうやら何かに追われている様であり、遥か遠くで走り回るその姿を確認したララはやがてルンを追う存在が狼の恰好をした彩南高校の校長であると気付く。リトが何故ここに居るのかと思うが、この中で校長を誰よりも嫌うヤミは容赦なく校長を叩きのめした。ボロボロになりながらも何処か喜んでいるその表情に思わず唯たちが引く中、ルンは泣きじゃくりながらその場に座り込んでしまう。どうやら彼女も沙姫たちと同じ様に敵側になっていた様で、校長もしばらく動けないと判断してその場を通り過ぎる事にした一同。やがて大きな扉の前に辿り着いた時、その扉をリトが開く。

 

「へぇ~、あれを倒せたんですかぁ」

 

「偽キョーコちゃん! 真白を返して!」

 

 扉の中は広い空間であり、その最奥に巨大な椅子が存在していた。そしてキョーコはその椅子の肘掛に座っており、入って来たリト達の姿に少しだけ感心した様に言う。そんな姿を前にララが1歩前に出て言った時、キョーコは笑みを浮かべながら椅子から立ち上がって全員の前に立った。

 

「返して欲しかったら私を倒してくださーい。まぁ、倒せればの話ですけどぉ。!?」

 

 余裕そうにキョーコが告げた時、誰よりも早く目に見えぬ速度でキョーコに攻撃を仕掛けたヤミ。キョーコは突然の事に一瞬だけ目を見開くも、ヤミの攻撃はキョーコの身体をすり抜けてしまう。厳密には当たっているが、HPが無限故に傷が瞬時に治っているのだろう。今度はヤミが驚く中、キョーコはヤミの背後を取るとその両手を捕まえてしまう。

 

「ふふ、捕まえた。貴女、真白ちゃんの家族なんでしょ?」

 

「くっ!」

 

「ねぇ、貴女は真白ちゃんの肌に触れた事ある? あの柔らかい肌、癖になるよねぇ?」

 

「!」

 

 捕らえられたまま語り掛けられる事にヤミは何とか解放されようともがき続けるも、簡単に抜け出すことが出来ずにいた。だがキョーコが耳元で言ったまるで知っている様なその言葉にヤミは目を見開くと、その髪が一斉に背後に向けて伸びる。正しく串刺しに近い状態になったキョーコの身体。しかしキョーコは貫かれながらも苦しむどころか笑みを浮かべて余裕な表情を崩さずにいた。

 

「頬、二の腕、太腿に脇腹。何処も気持ちよかったけど、やっぱり……ここと、ここかな?」

 

 睨むヤミを前に言い続けるキョーコ。だが最後に喋りながら説明する様に自分の胸元へ手を伸ばし、やがて臍からゆっくりと下へその手を動かしながら告げた時、ヤミは誰も見た事が無い程の攻撃をキョーコに向けて放つ。しかし結果は同じ、キョーコは痛みすら感じる事無く笑みを浮かべたままであった。

 

「ヤミさん! 落ち着いて!」

 

 キョーコの言葉に怒りを露わにして攻撃を続けるヤミの姿に美柑が叫ぶ様に声を掛ける。キョーコが行っているのは間違い無く挑発。美柑もキョーコの言葉にドンドン不安を感じるが、それでも乗ってしまえば彼女の思う壺なのだ。だがヤミにその声は届いておらず、やがてキョーコは意味深げに笑みを浮かべて唇に指を当てる。そして告げた言葉は、ヤミの怒りを限界にまで引き上げた。

 

「美味しかったよ、あの子のは・じ・め・て♪」

 

「! 変身能力(トランス)!」

 

 無数の刃になっていたヤミの長い髪が一つに纏まり、部屋の中を狭いと感じさせるほどの巨大な拳に変化する。そしてそれを容赦なくキョーコに目がけて振り抜いたヤミ。キョーコの身体と共にそれは椅子を破壊してその後ろの壁をも貫いた。普段は余り見られない息切れを見せながらも、髪を元に戻すヤミ。破壊された壁の向こうは煙で見えなくなっていたが、その向こうに部屋がある事に全員は気付いた。

 

「! ねぇ、あれ!」

 

 煙が晴れて中が見える様になった時、唯がその光景に声を上げる。何とそこに居たのはキョーコでは無く、ベッドの上に座る真白であった。そしてそんな彼女の傍には桃色の髪に何処か見た事のある黒い尻尾を生やした2人の少女。

 

「あぁ! ナナ! モモ!」

 

「久しぶりだね、姉上」

 

「お待ちしておりました、お姉様」

 

「……は?」

 

 その姿を見つけた時、ララが言った名前らしきものに反応する2人。1人は桃色の髪をツインテールにし、八重歯を見せながらも少々勝気な笑みを浮かべる少女……ナナ。1人は同じく桃色の髪を縛る事も無くショートボブにした御淑やかに見える少女……モモ。ララと似ており、ララを姉と呼ぶその姿にリトを初めとした面々は思わず呆気に取られてしまう。が、やがて我に返った事でリトはララに説明を求めた。

 

「ら、ララ? あの2人は?」

 

「妹だよ? 双子なの!」

 

「え! ララさんって妹居たの!?」

 

「あれ? 言ってなかったっけ?」

 

 リトの質問にさも当然とばかりに返すララ。だがララに姉妹が居る等誰も聞いていなかった為、ララの言葉にその場に居た全員が頷いて答える。っと、モモが真白の横から降りると前に出てお辞儀をする。

 

「まずはゲームクリア、おめでとうございます」

 

「は? クリアって……! この世界はじゃあ!」

 

「そ、私達が用意した世界。姉上がどんな環境でどんな身近な人と居るのかを確認したいってのもあったけど」

 

「シア姉様が地球に居るとお父様から聞きまして、会いたくなったのです。そして」

 

 モモの言葉にリトが察する中、ナナが肯定すると同時に喋り始める。そしてモモがそれに続けた後、リトと美柑。そして微かに俯いているせいで表情が伺えないヤミの姿を順に見る。

 

「新しい家族と言う方々がどの様な存在なのか、見て見たかったのです」

 

 ララと真白は遥か昔に出会い、友達になっていた。そしてララと2人が姉妹であるのなら、当然真白と面識があっても不思議では無いだろう。現在真白は目の前の光景を座ったまま何も言わずに見つめており、2人がデビルーク星人である事は尻尾や今の会話でも明らかでありながら何もしない事から、2人は真白にとって恨みを晴らす対象にはなっていない様であった。……そもそも愛称でララと同じ様に姉と慕う辺り、仲は良かったのだろう。

 

「シア姉様を見捨てる事無くここまで来てくださった事、本当に良いご家族に出会えたんだと分かりました」

 

「姉上も楽しそうだし、まぁ合格だよな! いやぁ~、結構苦労したよ!」

 

「まさか貴方達、私達を試す為だけにこの世界を作ったの?」

 

 モモとナナが勝手に納得して喜ぶ中、唯が質問するとモモは首を横に振った。モモ曰く、この世界はララが作っていた途中で放棄したゲームソフトを改造して作り上げた世界との事。地球に来たばかりの頃、宇宙には無いゲームに興味を示したララが勢いで作りながらも途中で面倒になって放置した物をララの研究所(ラボ)で見つけ、完成させたとの事であった。今までの苦労を振り返る様にナナが告げるも、どうやら作業をしたのはモモの様で徐々にナナの自慢に表情を笑みから無表情に変えて行く。やがて限界が来たのか、自慢するナナの首を掴むとそのままヘッドロックを掛け始める。

 

「さっきから全部私がやった事ですよ? 貴女がしたのはお姉様とシア姉様の知人に招待状を送っただけでは無くて?」

 

「わ、悪かった! 悪かったから! し、死ぬっ!」

 

 御淑やかに見えたモモの豹変に思わず全員が引く中、そのままではナナが不味いと言うところまで来た時、モモの肩を何時の間にかベッドから降りていた真白が優しく叩いて首を横に振る。何も言わずに、それでも意味の分かったモモは笑顔で「分かりました!」とナナを解放。ナナは何とか解放された事で息切れを起こし、真白はその光景を見た後に全員に視線を向ける。

 

「……ありがとう」

 

 それが何に対してのお礼なのか、言わずとも分かったリト達はその言葉に笑みを浮かべて返す。だが唯1人何も言わないヤミだけは突然歩き始めると真白の傍に近づき始める。そして顔を伏せたまま真白の前に立った時、突然両手を伸ばして真白の身体を抱きしめ始める。突然の事に全員が驚くが、真白はヤミの姿に何も言わずにその髪に触れ乍ら抱きしめ返した。……そしてそんな姿をモモは少しだけ目を細めて見つめる。

 

「金色の闇。彼女がシア姉様の家族と聞いた時は危険だと思いましたが……」

 

 先程の戦闘でも、真白に関する挑発を受けて恐ろしい程に怒り狂っていた彼女を見ていたモモは目の前の光景に何かを考える。そしてその間にも2人は抱き合っており、ヤミは離さないとばかりにその力を強くしていた。故に真白が動く事は不可能であり、真白は顔を上げてヤミを抱きしめたままナナに視線を向ける。

 

「……帰る」

 

「え? あ、そうだった。それじゃあこの制御リモコンで……あれ?」

 

「? どうしたの?」

 

「いや、転送システムが動かないんだけど……!?」

 

 真白の言葉を受けて目の前の光景に驚きながらも我に返ったナナが小さなリモコンを取り出して操作し始める。しかし困った様に声を出した姿にモモが質問した時、ナナが説明をして事態は一変した。突然地面が揺れ始め、壁や天井が崩れ始めたのだ。突然の事に全員が慌てふためき、落ちて来る落下物にリトが春菜に庇われる中、真白とヤミの元にも巨大な柱が落下してきていた。

 

「真白さん! ヤミさん!」

 

「駄目! ここからじゃ間に合わないわ!」

 

 美柑が気付いて声を上げるが、揺れる足場に上手く歩けず誰も助けに行くことが出来なかった。だが真白は落ちて来るその柱を見た時、目を瞑ってヤミの身体を少しだけ強く抱きしめる。と同時に真白の背中から真っ白で巨大な羽が出現する。その羽は周辺に小さな羽根を撒き散らしながら大きな衝撃をその場から発生させ、迫って来ていた柱をその衝撃で吹き飛ばした。

 

「あれがエンジェイドの、力……ではやはり」

 

「! な、何!? 服が!」

 

「うそ、消えてく!」

 

「多分この世界のデータが壊れ始めてるんだよ! 服もデータの一部だから!」

 

 モモがその光景に驚き何かを考える中、今度は唯が声を上げる。何と全員の着ていた服が消え始めたのだ。ララはすぐに理由が分かった様でそれを伝える中、ヤミの服も真白の服も消滅してしまう。だが真白は出現させた羽でヤミを包むことでヤミの肌を守った。が、真白は背中から羽を生やしている為、その後姿は完全な裸になってしまっていた。っと、事態をどうにかする為にララが動き始める。どうやらこの世界の核であるメインコントロールルームが何処かにある様で、ナナとモモにその場所を聞いて向かい始める3人。その間、残った全員は崩れ消えて行く足場から潰されず、落ちない様に何とか必死でその場に残り続けた。……そして強い光を受け乍らその世界は消え去り、

 

「あ、あれ? 帰って来た、の?」

 

「……」

 

 気付けば真白と美柑は結城家のリビングに立っていた。どうやら世界に入った場所に戻された様で、リトや春菜も学校に戻っている事だろう。ナナやモモが何処に行ったのかは分からないが、こうして戻ってきている以上無事なのはまず間違い無い。故に美柑は帰って来た事に安心し、ソファに腰を下ろした。外は既に真っ暗である。

 

「はぁ、すっごい疲れたね。……真白さん、今日は泊まってかない?」

 

 美柑の提案にしばらく黙った後、真白は頷いて泊まる事を決断する。っと、何かに気付いた様に真白は窓に視線を向けると近づき始めた。美柑が首を傾げる中、窓を開けた真白。すると結城家の庭にヤミが降り立ち、真白と目が合うとヤミは何も言わずに窓から結城家へ入る。そして真白が窓を閉めて振り返った時、目の前にはヤミの顔が存在していた。そして驚く真白の顔の真横にヤミの手が伸び、背後は窓だが壁ドンに近い状況に真白は立たされる。

 

「真白、答えてください。捕まっていた間、何をされたんですか?」

 

 ヤミの質問に見ていた美柑はキョーコが挑発する為に言っていた言葉を思い出す。それが唯の挑発なら問題無いが、キョーコが城に戻ってから自分達が辿り着くまでの間にはそこそこの時間があった。ずっと椅子に座って待っていたとは到底思えない為、もしかすれば本当に何かされていた可能性もあるのだ。故に美柑もヤミ同様に真白が一体何をされたのか、気になってしまう。っと、真白は目を瞑った後にヤミと視線を合わせた。

 

「……二度寝」

 

「え? 二度寝?」

 

「ん……ナナと……モモと」

 

「……それだけですか?」

 

 真白の答えに思わず聞き返したしまった美柑。だが真白はそれに頷いた後、2人と一緒に眠った事を伝える。真白の言う通り、真白は捕まっていた間特に何かされた訳では無かった。目が覚めた時は顔の見えない2人に当然警戒したものの、その正体が分かったと同時に真白はその警戒を解いた。そして久しぶりに会話を行い、唯その腕や身体を抱きしめられながら2人と共にリト達を待ちながら眠っていたのだ。キョーコとも会話等はしたものの特別に何かをされた訳では無く、つまり挑発で言っていた内容は全てヤミを本気にさせるための真っ赤な嘘であった。が、それを聞いてもまだ不安に感じたのだろう。窓から手を離しながらもヤミは真白から視線を逸らさずに口を開く。

 

「明日、ドクター御門の家に行きましょう」

 

「?」

 

「精密検査をして貰えば、はっきりします。ドクター御門なら、誰がどう触れたかも把握出来る筈ですから」

 

 美柑はそこまでするのかと少し思いながらも、ヤミが本気であると理解して何も言う事は無かった。御門には面倒を掛ける事になるが、しなければ決して納得しないと真白も察してヤミの提案に頷く。そこでようやく真白は解放され、その後は美柑と共に何れ帰って来るであろうリトとララの分も含めた5人分の夕食を作り始めるのであった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

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