突然現れた謎の男達2人に困惑するリト。しかしそんな彼を蚊帳の外にララはペケに冷たい目線を向ける。どうやらララを追って来た彼らはララの元に戻るであろうペケを尾行していた様で、それはララから注意されていた事だった様子。謝るペケだが、それで状況が好転する訳では無い。徐々にララを捕まえるため、部屋の中を土足で歩いて近づき始める男達にリトはどうするか迷いながらも決断する。現在真白に守られている彼だが、そんな彼女の前に出ると部屋にあったボールを手に動きだした。
「真白!」
「!」
リトの行動は余りにも突然な物。手に取ったボールを運動神経が良かった彼は素早く蹴り、ララの腕を掴み始めていた男達の行動を妨害すると同時にララの手を今度は自分が取って、開けてあった窓から飛び出した。当然追おうとする男達だが、リトが真白の名を呼ぶと共に彼女もまた行動を起こしていた。リトがどう行動するかを知っていたかの様に先回りし、部屋から出て窓の外の屋根へと足を付けていた真白。目の前でリトとララが通過すれば、男達が出る前に窓を外から閉める。それは追う為に飛び出そうとしていた男達の前を妨害し、窓に勢いよくぶつかる音を背後に真白も2人を追って走り始める。ぶつかった反動と窓を開けると言う数秒だけの時間稼ぎだが、それでも安全に家から逃げ出すには十分であった。
「2人とも、どうして?」
「分からねぇけど、目の前で女の子が連れ去られそうになってるのを黙って見てられるかよ!」
「……」
困惑するララの質問にリトは答え、真白は無表情にその後ろを走る。リトは先程の運動神経を持つ様に、非常に身体能力が高かった。そしてそれは真白も同じであり、3人は並んで家々の屋根を飛んで走り続ける。……しかし、それは長く続く事は無かった。相手は一瞬で人の家の中に入って来る程の動きをする者達。例え身体能力が高くとも、【地球人】であるリトが【宇宙人】である彼らから逃げるまでには至らないのだ。人気の無い公園の様な場所で、3人は男達に挟まれてしまう。
「ま、不味い!」
「……」
相手は今まで過ごして来て居た常識が通用しない相手。当然その事実に恐怖を感じ、目の前に立つ男に恐れながらもララの手は離さずに守ろうとするリト。真白もまた、リトとは反対の方角で目の前に立つ男を見つめて居た。そうしてお互いに追い詰められた時、男は突然ララに言う。
「もうお止めください! 家出など!」
「嫌!」
「そうだやなこっ……って、は? 家出!?」
男の言葉に答えたララに続けたリトだが、その内容を言いながら理解する。追手……それはララと言う存在を追ってきている存在であり、何か彼女に取って嫌な事を目的としているが故にララは逃げていた。それを分かっているが為、リトはその嫌な事が【家に帰る事】と言う事実に驚かずにはいられなかった。どうやらララは良いところのお嬢様の様で、【後継者】・【お見合い】と言う単語がララの口から飛び出す。そしてそれに嫌気が刺し、逃げ出した様子。余りの事実に放心状態になってしまうリトは、近くに居た真白を見る。
「お、俺が助けた意味って……」
「……ドンマイ?」
助けた事に意味があったのかと不安になり、肯定してほしかったリト。しかし真白が告げたのは何処かで覚えたのであろう、労いの言葉であった。思わず頭を抱えたリトだが、その間にも男達とララの会話は進行している。ララは男達との会話に何時まで経っても埒が明かないと思ったのか、携帯の様な物を取り出す。そして、そこから出て来たのは……巨大なタコであった。
「いっけー! ごーごーバキュームくん!」
「なぁ! 巨大な掃除機なのかよこれ!」
「!」
ララの掛け声と共に巨大なタコは周りにある物を何もかも吸い込み始める。男達は勿論の事、草木や公園に散らばるゴミ。果ては自分を助けたリト自身も吸い込もうとし始めた。既に男達は吸い込まれており、後は止めても良い筈……なのだが、ララはその止め方はど忘れしてしまった様子。近くにあった物に捕まっていたリトだが、やがてその手が離れると共に、今度は誰かに腕を捕まれた。
「ま、真白!?」
「……!」
その手を掴んだのは真白であり、彼女は近くにあったまだ抜けていない大木に片手でしがみ付きながら辛うじて耐えていた。しかしその表情は普段崩さない真白にしては珍しく、少しばかり苦悶の表情。それだけ辛いのだろう。だが、今の状況。リトに取って真白の腕だけが助かる唯一の術であった。故にその手に捕まれていない手も伸ばし、真白の腕にしがみ付く。
「ララ! 早く止めてくれ!」
「えっと、これかな? う~ん、あ! これかも!」
身体を浮かせ、手だけで助かっている状態のままリトは元凶であるララに止める様に言う。特に焦った様子も無く、タコ本体や携帯を見ながら操作していたララはやがて何かを見つけた様に操作。ゆっくりと吸い込みは収まり始める。そうして無事に助かった時、リトは右手に存在する何かに頭の上に?を浮かべて顔を上げる。
かなりの勢いで吸い込まれていたリト。そんな彼が必死に真白の腕を掴めば、当然制服故に長袖であった彼女の服は引っ張られるだろう。ボタンは上から殆どが弾けており、見えているのは下着と彼女の白い柔肌であった。半脱ぎ以上の状態になっていた真白。我武者羅にしがみ付いていたリトは気付けば彼女の腕より上へと辿り着いており、その右手は下着越しに真白の胸を掴んでいた。
「……」
「な、あ、なぁ!」
純情故にララのバスタオル姿でオーバーヒート仕掛けていたリトが、長い付き合いと言えど同じ異性である真白の胸を掴んでいた等、当然彼の理解しても問題無い容量を超えてしまう。急いで掴んでいた手を離すと同時に顔を真っ赤にし、真面に言葉を交わせなくなってしまったリト。しかし真白は気にした様子も無く、制服を着直す。ボタンが弾けてしまっている為、それでも前は掴んでいなければ開いてしまうが。
「ご、ごめん!」
「……平気」
急いで謝ったリトの言葉に普段通り、抑揚の無い声音と無表情で答える真白。と、今まで蚊帳の外になっていたララが話しかけてくることでこの事態はやがて一時的ではあるが終息を迎える。……そして、この後。真白はリトと別れ、ララとも別れて帰路を格好故に走って帰るのであった。
翌日。まるで何事も無かった様に普段通り、結城家へとやって来た真白はこれまた普段通りに美柑と共にキッチンで料理をしていた。
「昨日はリトがごめんね? 『お風呂に女が居た』、なんて可笑しいよね」
「……そうでも無い」
「え?」
朝食を作りながら話す話題は昨日のリトの話。美柑はララの存在を知らない為、リトが昨日言っていた『お風呂に女が出た』と言う話を妄想の類だと考えていた。しかしそれが恐らくではあるが、本当だったと分かる出来事にその後遭遇していた真白からすれば違う。だが、特に詳しく言う事無く何気ない一言で済ませた真白に美柑は不思議に思いながらも流した。
「そう言えば真白さん、今日は制服で来なかったけど大丈夫なの?」
「ん……これから……直す」
「? 直すって、壊れちゃったの?」
美柑は会話の為の内容を考え、朝真白が来た際に着ていた服が普段と違い私服であった事を思いだした美柑。その事に真白へ何となく質問すれば、壊れてしまったと言う事実に美柑は再び不思議に思う。【制服が壊れる】等、そうそうある事では無いのだ。真白は美柑の質問に頷き、料理を進める。しかしその速度は普段より早く、美柑はその手際の速さに恐らく時間を少し多めに使う為、早めに料理を終わらせようとしているのだと理解した。
しばらくすれば、また普段通りにリトが起床して来る。既に全員分の食事は用意した状態であり、普段同様に3人で朝食を取り始める。急ぐことは無く、でも遅い速度でも無く、食事を続けた真白はやがてそれを完食するとしばしの食休み後にリトと美柑が使った後の空になった皿も回収する。そうして流し台へと立った時、美柑がそんな真白の傍に駆け寄った。
「制服、直すんでしょ? 今日は私がやるから、真白さんはそっちに専念して良いよ。家を出る前に終わらせなきゃ」
「……ありがとう」
普段は共に洗い物を行うが、制服の事を知った美柑の好意によって早めに直す時間を貰った真白。荷物の中から折りたたまれた制服を取り出し、裁縫のセットもまた取り出すとボタンを手に取り付けを始める。普段と違い、流し台に並ばずに椅子に座って裁縫をしている真白の姿は少し新鮮であり、椅子に座っていたリトはその光景に少しの違和感とそれをさせてしまった罪悪感を感じる。
「……気にしないで……良い」
「! お、おう」
リトが感じていた思いを読んだように、裁縫をし乍ら呟いた真白。その目はしっかり手元に向いている為、リトを見ている訳でも無い。故に突然思っていた事に関して言われた事に驚きを隠せなかったリトだが、最後には頷くと椅子から立ち上がる。そして美柑の隣に並び、真白が出来ない分自分がすると言う意思の元洗い物を始めた。当然急に手伝い始めたリトの姿に驚き、訝し気な表情で見る美柑だが、真白の代わりにと言う考えを理解したのかキッチンにリトよりも多く立つ者として指示をし乍ら洗い物を再開する。そうして普段と変わらず、でも普段と少し違う朝は過ぎて行くのであった。
各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?
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サブタイトルの追加
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主な登場人物の表記