【完結】ToLOVEる ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第49話 真白の検診。離れないヤミ

 上半身の服を脱ぎ、下着姿になったまま目の前で自分を診察する御門の姿を見つめ続ける真白。結城家へと泊まり、翌日御門の家へとヤミに連れて来られた真白はそのまま流される様に検査される事となった。学校があったため時間は放課後であり、昨日の話を聞いていた故に今日は結城家へいけないと言う真白の連絡に美柑はすぐに了承の返事を返した。

 

「どうですか?」

 

「そうね。腕や髪に触れた形跡はあるけれど、箇所から考えて可笑しな事はされてないと思うわ」

 

 御門の医療技術は宇宙でも有名なもの。そんな彼女の医療の中には何とその人が別の誰かに一体どの様に触られたか等が分かるものも存在していた。真白が学校で授業を受けている間に御門へ連絡を取っていたヤミは放課後になると同時に真白を連れて御門の家へ。御門も説明を受けていた故にやれやれと言った様子で準備を終えており、真白が到着すると同時に検査が始まった。機械の中に入り、腕や足などを目視や眼鏡の様なもので観察され、今現在は聴診器に似た様な物を当てられ続けていた。もう既にそこそこの時間が経過しており、ヤミの質問に御門は真白の胸の谷間近くに道具を当て乍ら答える。

 

「……寝た……だけ」

 

「誤解しそうな言い方は止めなさい。一緒に眠っただけ、でしょ?」

 

「ん……二度寝」

 

「そうですか……」

 

 真白が言った答えに御門が注意し、それに頷いて最初と同じ様にヤミへ告げる真白。ヤミは御門の言葉もあり、ようやく納得した様に呟くと余り表情を見せないながらもその強張っていた雰囲気が緩和される。そんなヤミの姿に御門が微かに目を細めた後、真白に向き直る。そして肩を出して下着越しに上半身を露出するその姿を改めて見た時、御門は何処か安心する様に笑みを浮かべた。

 

「色々な事があったけれど、貴女は穢れ無いわね」

 

「?」

 

「でも無垢な物ほど、染まる時は一瞬よ。気を付けなさい」

 

 突然の言葉に真白が首を傾げる中、御門は言葉を続けた後に「検査はお終いよ」と言って椅子から立ち上がると部屋から出て行く。そうして残されたのはヤミと真白だけ。すると御門が出て行った部屋の扉から今度はナースの服装をしたお静が入り始める。最初は首だけ出して覗き込む様に。しかし真白の姿に気付くと笑顔でその身体に後ろから飛びついた。ヤミは何かを考え、真白は扉に背を向けた状態で脱いでいたシャツのボタンを付けていた為、突然の事で反応出来ずにそのまま抱きしめられてしまう。

 

「真白さん! 今日はお夕飯、食べて行かれますか?」

 

「何、してるんですか……?」

 

「? 真白さんを抱きしめてるだけですよ? それで、どうしますか?」

 

 お静は身体を貰って以降、その身体を定期的に診て貰う為に御門の家に居候していた。ナース服なのは御門の助手として彼女の手伝いをしているからである。御門は地球で宇宙人を見る闇医者。様々な病気で沢山の宇宙人が彼女の元を訪ねるため、人手は1人多くなっても邪魔にはならないのだろう。が、稀にドジを踏む為に完全に迷惑を掛けていない訳では無かった。真白は毎週日曜にここへ来ている為、その度にお静から失敗してしまったと反省を聞き、御門からお静の何が大変なんだと愚痴を聞かされる事も少なく無かった。そして今、平日には普段来ない真白が来たことで少々テンションの上がっているお静。しかし彼女が抱き着いた事で、部屋の中に居たヤミを中心に温度が微かに下がった。そして微かに重くなった静かな声で質問するヤミだが、お静は首を傾げて当たり前の様に答える。結果、更に部屋の温度が下がった。

 

「……作る」

 

「分かりました! それじゃあ準備しておきますね!」

 

 そんな寒さすら感じる部屋の中で、真白は抱き着かれたまま答える。間違い無く真白は夕食に誘われたが、その夕食を作るのはこの場合真白であった。御門は多少出来るが、お静は400年も旧校舎に居たため料理など既に記憶から消えてしまっているだろう。何も出来ない訳では無いが、まだ完全に歩くことに慣れていない彼女では危険が伴ってしまう。故に真白が居る時、御門の家で料理を作るのは真白であった。

 

 お静が居なくなったと同時に部屋の温度が戻って行き、真白は椅子から立ち上がると部屋を出る為に振り返る。と同時に真白の腕にヤミが自然に抱き着いた。真白はそんなヤミの姿に首を傾げるが、何事も無い様に「行きましょう」と言ったヤミの言葉で足を進め始める。部屋を出て向かうのはキッチン。唯それだけの距離だが、ヤミは真白の肌から身体を絶対に離そうとはしなかった。

 

「……料理、する」

 

「はい」

 

「……離れて」

 

「嫌です」

 

「……」

 

 キッチンに立った時、真白はもう1度自分の腕に抱き着くヤミに視線を向けた。最初はこれからする事を言って察して貰おうと思ったのだろう。しかしヤミはそれに返事をするだけであり、今度は直球にお願いをした真白。だが帰って来たのは即答の拒否であった。静か乍ら強い意志の籠ったヤミの言葉に思わず黙ってしまう真白。っと、ナース服からエプロンに服装を変えたお静がキッチンへと入って来る。そして2人の姿を見て首を傾げた。

 

「どうしましたか?」

 

「……料理……出来ない」

 

「えっと、ヤミさん? そのままだと真白さんが片手を使えませんよ?」

 

「なら私が使えない片手になります」

 

「……」

 

 その日、真白からヤミが離れる事は無かった。料理は何とかお静と共にヤミにも片手で手伝って貰い、少々失敗しながらも何とか完成。その後帰宅する時も腕に抱き着き、お風呂から寝る時まで決してヤミが真白を離すことは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、昨日からこのままなの?」

 

 翌日。幸いにも土曜日で休みだった故に学校は無かったが、ヤミの状態は未だ変わらずであった。それでも普段通り結城家に訪れた真白。リビングのソファで過ごす真白の隣には腕を掴むヤミの姿があり、美柑はそんな光景に驚きながらも事情を聞き、苦笑いを浮かべた。リトは真白が苦労している事に少々同情し、ララは何故かヤミの反対側に座って真白の腕を掴もうとする。が、ララが真白の腕を取ろうとすると同時にヤミの髪が2人の間に壁となって立ち塞がった。

 

「勝手に触れないでください」

 

「えぇ~! 私も真白に抱き着きたい!」

 

「……何か、少し不味く無い? このままじゃ真白さんが大変だよ」

 

「あぁ。どうにかしないと」

 

 ヤミの拒絶にララが文句を言う中、笑い事では済まなくなって来たと理解した美柑とリト。このままではヤミは一生真白から離れようとしないだろう。それはヤミにとっても真白にとっても大変な事の筈。だからこそ、壁を超えようとするララを引きつれて3人は一度リビングから廊下へ。作戦会議を始める。

 

「好きなもので釣って見る、とか?」

 

「いや、どう見ても真白さん(好きな者)を独占しようとしてるでしょ」

 

「他にヤミちゃんが好きなもの、無いかな?」

 

 リトの言葉に美柑がジト目になって答えると、ララの言葉に一斉に黙って考え始める3人。そしてすぐに思いついたものは、ヤミが普段からよく食べて居るお菓子であった。初めて真白に地球で貰ったお菓子らしく、その美味しさも相まって彼女の好物となったもの。3人が同時に思いつくと、リトが代表して家を飛び出す。そして数分した後、袋を持って帰宅した。微かに感じる香ばしい香りにそれぞれ頷いた後、3人はリビングの中へ。

 

「ヤミさんヤミさん! これ、食べない?」

 

「さっき買って来たんだ」

 

「……」

 

 変わらず真白に抱き着くヤミの前に袋の中身を見せ乍ら誘う美柑とリト。するとララが「私も食べたい!」と言って袋から魚の形をしたお菓子、鯛焼きを1つ取り出して食べ始める。何故かララが食べ始めてしまった事でリトが「何でお前が食うんだよ!?」とツッコミを入れるが、美味しそうに食べるララの姿にヤミは無表情のまま鯛焼きを見つめ続ける。っと、明らかに誘われていると思った美柑がもう1度食べないか質問した。

 

「……頂きます」

 

「よし! これ……で?」

 

 美柑の誘いに乗り、鯛焼きを手にしたヤミ。普段から鯛焼きは両手で持って食べている為に真白から手を離すと思ったリトが上手く行った事に喜ぼうとして、ヤミが腕を絡めたまま両手で食べ始めた事に思わず固まってしまう。真白の腕を捕まえたまま食べる事が可能であると、必死だった故に気付かなかったのだ。思わず美柑も乾いた笑みを浮かべる中、真白はヤミの持つ鯛焼きを見る。するとその視線に気付いたヤミが鯛焼きを真白に近づけた。

 

「食べますか?」

 

「……ん」

 

 差し出された鯛焼きを少しだけ見つめた後、頷いてヤミが食べた場所の続きを齧った真白。するとそれを見ていたララが今度は自分の食べていた鯛焼きを真白へ差し出した。

 

「真白! 私の方も食べて!」

 

「? ……ん」

 

 鯛焼きを食べさせる事には特に関心を抱かなかったのか、ヤミは何も言わなかった。そして真白も鯛焼きを食べるのは嬉しい事だった為、差し出されたララの食べ掛けを一口。するとララは笑顔で真白が齧った鯛焼きを見る。

 

「これで私が食べれば間接キスって言うのになるんでしょ? 頂きま~す!」

 

「! 関節……キス」

 

 恐らく里紗か未央辺りに教えられたのだろう。ララは特に恥じらう事も無く、嬉しそうに言って真白が齧った後を鯛焼きを齧る。だがそんなララの言葉に衝撃を受けた様に固まったヤミ。今彼女の中に巡る思考は間接キスから始まり、キョーコが言った言葉にまで行きついた。結果的には何もされていなかったと分かっても、言われた言葉がヤミの頭から離れる事は無かった。

 

 突然固まってしまったヤミの姿を美柑が心配そうに見つめる。真白も何があったのかと首を傾げ、リトはララの言葉を聞いたヤミが何かするのではと内心冷や冷やしていた。が、ヤミはやがてゆっくりと顔を上げて真白へ視線を向ける。

 

「真白、キス……してください」

 

「え……え!? や、ヤミさん!?」

 

「……」

 

 突然の言葉に一瞬訳が分からず、しかしすぐに理解した美柑が動揺するのを尻目に真白はヤミの言葉に無言のまま目を見開いていた。ララは鯛焼きを食べる事に夢中で聞いていなかったのか、目の前の静けさに首を傾げる。

 

 部屋の中が静寂に包まれる中、リトと美柑は真白がどうするのかを困惑しながらも待ち続けた。突然ヤミからされたお願いにどう答えるのか? しばらく待ち続けていた時、真白は徐にヤミに顔を近づける。思わず初心なリトは勿論、美柑までもが顔を真っ赤にして手で目を覆う中、やがて2人の間に小さな音が響く。チュッと言う一瞬の音に美柑が恐る恐る指の隙間から見た時、そこに映ったのは目を見開くヤミの頬に優しく唇を当てる真白の姿。キスと言えば口だと思っていた美柑はその光景に驚きと安心を感じ、ヤミが目を見開いたまま動かない事に気付く。っと、やがてララとの間を塞いでいた髪の壁が消えて行き……ヤミは後ろにゆっくりと倒れた。

 

「(あんなのされたら気を失うよね……分かるよ、ヤミさん)」

 

「?」

 

 突然倒れたヤミを何とか腕を回して抑えた真白。思わず首を傾げるその姿を見ながら、美柑は何度も頷いて納得する。……その後、目を覚ましたヤミは真白の腕に抱き着く事を止めた。まるで憑き物が取れた様に今まで通りに戻ったヤミの姿にとりあえずは安心したリト達。

 

「真白~! 私ともキスしよ!」

 

「駄目です」

 

 だが今日の出来事を見たララのお願いの中に、キスが含まれる様になったのは仕方の無い事である。そしてそれを言われる度に真白よりも早くヤミが拒否を示すのは結城家では当たり前となるのであった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

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