【完結】ToLOVEる ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第58話 唯のお見舞い

「少し、良いかな? 三夢音くん」

 

「?」

 

 ある日、学校で突然ある男子生徒に声を掛けられた真白。珍しくヤミが傍に居ない真白は声に反応して視線を向ける。そこに居たのは丸眼鏡を掛けた男子クラス委員長を務める生徒、的目 あげるであった。普段から話す人物では一切無く、真白の反応にあげるは眼鏡を少し触りながら片手にプリントの束を持って口を開いた。

 

「君、古手川くんと仲が良かったよね? 風邪で欠席している彼女に放課後、プリントを届けて貰えないかな? 必要ないかも知れないけど、骨川先生に自宅の地図も用意して貰っているから」

 

「……」

 

 あげるの言葉に真白は言葉を発すること無く、だが静かに頷いて差し出されたプリントの束を受け取る。了承して貰えた事もあり、「頼んだよ」と付け加えて離れるあげるを気にする様子も無く真白は空いている唯の席に視線を向けた。彼の言う通り、唯は今日欠席していた。サボる事等絶対にありえないであろう彼女の欠席は非常に珍しい事であり、風邪と聞いて心配するのは当然の事。あげるに渡されたプリントと一緒に用意された地図を確認した真白は携帯を取り出すと美柑とヤミにメールを送る。美柑は今現在も小学校に行っている為にすぐに気付く事は無いが、それでも残しておけば伝わるだろう。珍しく傍に居ないヤミは用事がある様で、結城家で合流すると真白は伝えられていた。故に真っ直ぐ帰らない事を伝えれば、少しの間を置いて理由を聞くメールが返って来る。その後、詳細を説明してヤミを納得させてから真白は残りの授業を終えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真白! 唯のお見舞いに……って、あれ?」

 

 鞄を手にララが真白の席に視線を向けるが、号令が終わってすぐに教室を後にした真白は既にそこには居なかった。廊下へ出て真っ直ぐに下駄箱を通過した後に数回唯と帰宅した際、お互いが分かれた場所まで辿り着いた真白。渡された地図は既に暗記しており、普段は通らない道を通り乍ら唯の家へと足を進め続ける。やがて到着した1軒家の表札には【古手川】と書かれており、真白は唯の家へ無事に辿り着いた。

 

 玄関の傍にあるボタンを前に手を伸ばして一度押せば、中から微かに聞こえるインターホンの音。やがて鍵が開かれると1人の青年が真白の前に姿を現した。

 

「へーい。ん?」

 

 静かに目を瞑り、頭だけを動かして挨拶する真白の姿を前に青年は見覚えがあったのか考え始める。そして少し考え続けた後に思いだした様に目を大きく開くと真白と目を合わせ始めた。

 

「唯の友達だよな? お見舞いに来たんだろ? あ、俺は唯の兄で古手川 遊。よろしくな。ま、入ってくれ」

 

 青年……遊は以前妹である唯が不良を前に危険な状況に陥った際、助けると同時に唯を連れて逃げた真白の姿を目撃した事があった。その後2人の知らぬところで不良たちにお灸を据えたのは彼だけが知る秘密である。真白は遊の言葉に頷いて肯定すると、遊は玄関を大きく開けて中に入る様に促した。元々唯の様子は気になっていた為、真白は言われた通りに家の中へ。唯の部屋は2階にあり、遊によって部屋の場所を伝えられた真白は真っ直ぐにその部屋へと向かい始める。やがて辿り着いた扉を前に真白が2回扉を叩いてノックすれば、中から唯の声が返事をした。

 

「何? 入って良いわよ」

 

 普段通り少し素っ気なさの交じった唯の言葉を聞き、真白は扉を開けた。中にはパジャマ姿の唯がベッドに座っており、入って来た真白の姿を前に声を上げて動揺し始める。どうやら遊だと思っていた様であり、まさか別の人物が来るとは一切想像していなかったのだろう。慌てる唯を前に真白は扉を閉めると静かに近づき始めた。

 

「……平気?」

 

「え、えぇ。大分熱も下がったわ。……お見舞いに来てくれたのね」

 

「ん……後……これも」

 

「これは、プリント? ……そう言う事ね。ありがとう」

 

 変わらぬ静かな真白の質問に徐々に冷静になった唯は頷いて答えると共に真白へ改めて視線を向ける。唯の言葉に頷いた後にあげるから渡されたプリントを唯に差し出せば、唯はそれを受け取って真白が来た意味を理解した。一瞬残念に感じ乍らも真白にお礼を言えば、そのまま真白はベッドの横。唯の部屋に座ってしまう。何処かでプリントを渡しに来ただけだと思ってしまった唯はその行動に少しだけ驚いてプリントから真白へ視線を戻す。

 

「な、治り掛けは移り易いから帰った方が良いわ」

 

「……平気……風邪、引かない」

 

「あ……そうだったわね。な、なら良いわ」

 

「……」

 

「……うぅ」

 

 帰る様子の見せない真白を前に思わず言えば、返された言葉に納得せざる負えなくなってしまった唯。移さないという事実に安心しながらも、普段通りの沈黙を前に唯は気まずさを感じずにはいられなかった。普段は学校や外などで話をしたり共に居る真白が現在は自分の家の自分の部屋に居るという事実が唯を少し混乱させているのだ。部屋に何か可笑しな物は置いていないか等と気にし始める中、真白は何かをする様子も無く唯を見続ける。すると突然扉から音がすると共に遊がお盆を手に部屋の中へと入って来たことで2人の視線は彼に向いた。

 

「とりあえず珈琲と紅茶を用意したから、まぁゆっくりしてってくれ」

 

「ちょっとお兄ちゃん!」

 

「見舞いに来てくれるくらいにはお前を心配してくれる友達なんだ。大切にしろよ?」

 

 お盆の上には彼の言う様に2種類の飲み物が用意されていた。何方かを飲めなかった際の配慮なのだろう。続けた彼の言葉に唯は思わず反発して声を出すが、遊は気にした様子も無く部屋で座る真白を見た後に笑みを浮かべながら唯に言って部屋を後にする。再び訪れた沈黙の中、真白は自然に紅茶へ手を伸ばしてカップを口元へ近づけた。そんな彼女の姿を前に、唯は自分が最初から緊張している事を理解すると共に少しだけ馬鹿らしくなってしまう。家に来る事等滅多にないが、真白は何処に居ようと変わらないのである。

 

「はぁ……」

 

「……猫」

 

「え?」

 

 思わず唯の口から漏れた溜息。すると突然、カップから口を離した真白が唯に向けて呟く。驚いて顔を上げ乍ら真白を見た唯は、すぐに部屋の中にある物を見回した。本や観葉植物なども存在しているが、それ以上に目に入るのは猫である。実際の生き物では無く、写真やぬいぐるみといったものばかり。真白はそんな部屋に並ぶ猫を見て呟いたのだろう。そして真白は唯と1年以上付き合いがある故に教えられていた事があった。

 

「アレルギーだから、こうして見て楽しんでるのよ。この子とか、可愛いでしょ?」

 

「ん……」

 

 それは唯が猫好きでありながら猫アレルギーであるという事。既に話をして来た中でそれについての話題が過去にあり、故に真白は知っていた。唯は説明する必要が無いと分かっている為に、猫の写真の中でもお気に入りであろう物を手に取ると真白に見せ乍ら話を続け始めた。猫の話をする唯は少し楽しそうであり、真白は肯定しながらも彼女が思う猫への愛について聞き始める。気付けば気まずさなど消え、話に没頭していた唯。一度話を終えたところで語っていた事に気付いた唯は我に返る様に真白へ視線を向けた。そこには普段通りに無表情で唯の話を聞いていた真白を姿があり、だが唯はその顔を前に不思議と思う。その無表情が何処か、微かに微笑んでいる気がすると。

 

 真白は唯の話が終わった事で立ち上がり、それが帰ろうとしているのだと唯は察する。だからこそ、鞄を手に飲み終えたカップの乗ったお盆も手に取った真白へ最後にまた声を掛けた。

 

「今日は、ありがとう。明日には学校にも行けると思うわ」

 

「ん……待ってる」

 

 唯の言葉に真白は静かに頷いた後、部屋を出ようと扉を開けた。途端に1階から聞こえる遊の声が2人の耳に入る。それは唯にまたお客が来たと言うものであり、2人が顔を見合わせる中、足音が聞こえ始める。1人では無く複数人の様であり、真白は出ずに立ったまま部屋の中でその来客を唯と共に待ち続けた。やがて半開きになった扉が開いた時、顔を出したのはララを初めとした最近唯が交流を持つ面子であった。

 

「唯! お見舞いに来たよ! あ、真白もやっぱりここだったんだ!」

 

「良かった、古手川さん。元気そうで」

 

「家よりも直接来た方が速く合流できると思いまして。後、鯛焼きの差し入れです」

 

 一度に沢山の人数が来たことで戸惑う唯を前に元気よく声を掛けるララと安心した様子で胸を撫で下ろす春菜。気付けば真白の傍にヤミも立っており、座る唯へ鯛焼きの入った袋を手渡した。他にもお静やルンの姿もあり、本来病人が居る以上余り騒ぐものでは無いのだが、基本的に元気なララが居ればそれだけで部屋は明るくなる。唯の身体に障らない様に気を配りながらも、結局真白は皆と共にもう少しだけ同じ場所で時間を過ごすのであった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

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