【完結】ToLOVEる ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第59話 狙われた美柑。御揃いの服

 朝。結城家にて美柑より先にキッチンへ朝食を作る為に入った真白は冷蔵庫を開け、中に入っている量を見て少しだけ黙る。お弁当と朝食の分は足りるが、夕食は少し厳しく見えるその中身。するとエプロンを付けて真白の後に入った美柑がその姿を前に笑みを浮かべて声を掛けた。

 

「今日、帰りに買い物してくるよ」

 

「……分かった」

 

 休日などであれば真白も一緒に行くことを提案しただろう。だが小学校と高校では明らかに下校時刻にずれがあり、美柑を待たせるよりも任せてしまった方が美柑にとっての都合が良いのである。真白は美柑の言葉に頷いた後、食材を取り出して用意を始める。美柑も材料を見て何を作るのか予想し、頼まれるより先に次の準備に取り掛かり始める。そんな手際良く、話さなくても伝わる2人の姿をリビングから少し感心した様子で見つめるナナの姿があった。実は最近、ナナとモモは結城家の屋根裏へ住み始めたのである。基本的に炊事や洗濯等といった家事全般は自分達でやる事とし、結城家の中にもう1つの家が出来た様な形となっていた。

 

「何か、本当に家族って感じだな」

 

 思わずナナはそう呟くと、キッチンから目の前へ視線を移す。現在ナナが座る椅子の向かいには湯呑でお茶を飲むヤミの姿があり、自分よりも明らかに馴染んでいるその姿にナナは少しだけ複雑に感じる。地球に来て長く無く、結城家の屋根裏に空間を作って住み始めてからは更に短いナナはまだ今の環境に慣れたとは言えなかった。不満がある訳では無いが、自分は場違いなのではと少し感じてしまう事もあるナナ。すると静かに湯呑を置いたヤミがナナを見た後に立ち上がる。今現在リビングにはヤミと自分以外誰も居なかった為、ヤミの行動を気にしたナナはヤミがキッチンへ入って行く姿を、そして真白に何かを話す姿を見始める。

 

「? 何だ?」

 

 ヤミの言葉を聞いて静かに頷いた真白が今度は美柑へ視線を向ければ、「平気だよ」と言って手を動かすその姿にナナは頭の上に『?』を作らずにはいられなかった。それから少しして、一枚のお皿を持って戻って来るヤミ。皿の上には2つの黄色く四角い何かが置かれており、ヤミは向かい合わせでナナと挟む様にテーブルの上へその皿を置く。遠くからでは良く分からなかったそれも、近くに来れば『卵焼き』だとナナはすぐに気付いた。

 

「お弁当に入れる卵焼きです。1つ、食べますか?」

 

「! 良いのか!?」

 

 ナナはヤミの言葉に思わず反射的に身を乗り出していた。ナナとモモは既にリトやララがほぼ毎日食べているお弁当が美柑と真白の合作であり、評判も良い事を知っていた。自分達で食事などはどうにかすると約束した手前、美柑と真白が作る結城家の食事を食べる機会は余り無く、故にヤミの言葉に大きく反応したナナ。静かに頷いた後、箸を取り出して1つの卵焼きを食べ始めるヤミを前に尻尾を揺らしてワクワクした様子でナナももう1つの卵焼きに手を伸ばす。ゆっくりと指に挟まれた卵焼きがナナの口へと近づき、やがてその中へと1回で全てが落ちる。途端、リビングから聞こえて来るナナの幸せそうな声に美柑は嬉しそうに笑いながら真白へ視線を向けた。何時も通りの無表情だが、美柑はそんな真白の【笑み】を前に今日の始まりを感じるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真白がヤミと共に結城家へたどり着いた時、中には誰の姿も無かった。ナナとモモが地球観光と称して外出しているのは良くある事であり、リトやララよりも早くに帰っている為にその4人が居ない事は何も可笑しな事では無い。だが小学校はとっくに放課後を迎えており、買い出しに行った場合も大抵は美柑が先に帰っている場合が多い。真白は首を傾げながら中に入り、ヤミも美柑がいない事に気付いて探し始める。結果、結城家に現在美柑の姿は何処にも無かった。

 

「まだ買い物の途中でしょうか?」

 

「……」

 

 ヤミの言葉に少し考え始めた真白。すると突然真白の携帯がメールを受信し、真白はそれを開いた。差出人はリトであり、どうやら学校から才培の元へと行ったらしい彼は画材の買い出しを頼まれた為に帰りが遅くなるとの事であった。真白は了承すると共に美柑が家に居ない事も伝える。少しの間を置いて来たリトの返信には何処かに遊びに行っているのかもしれないと安心させる様な内容と共に、買い出しの時に見かけたら連絡するというものであった。

 

 普段から美柑はしっかり者である。もし誰かと遊ぶために家を開けるとしても、絶対にリトか真白に連絡は入れるだろう。冷蔵庫の中を確認すれば、朝に食材を使ったことでほぼ空になったまま追加されていない事から一度帰って来ている訳でも無い。少し考えた後、真白は鞄を結城家に置いたままヤミに告げる。

 

「……探す」

 

「分かりました。では手分けして探しましょう」

 

 真白の言葉に驚く事もせずに頷いて了承したヤミ。結城家を出た後、2人は別々の方角へ歩き始める。真白が向かったのは買い出しに来る際には必ず通るであろう商店街であり、辺りを見回しながら美柑を探し続ける。すると真白が肉屋を通りかかった時、中に居た店の人物から声を掛けられた事でその足は止まる。真白も美柑も何度も来ている為、顔馴染と言っても過言では無い2人。普段から真白は喋らずに美柑が喋る事も知っている為、店の人物は真白からの返事を待つのではなく美柑が居ない事に。そしてそれ以外の何かに首を傾げた。

 

「さっき美柑ちゃんは肉買って行ったけど、一緒じゃないのかい?」

 

「! ……何時?」

 

「うぇ!? ……え、えっと……30分くらい前かな?」

 

 告げられた内容を聞いて真白は反応を示すと、聞き返す。普段から美柑と言う事もあり、珍しい真白の言葉と声に店の人物は動揺しながらも答えた。真白はそれを聞くとその場所から離れ、美柑が買い出しをしていたのは確かだと確信する。何かの理由で学校が遅くなり、今現在も買い出し中だという可能性も無くは無い。真白はもしそうならば一緒に買い物をして手伝えるのではと考え、美柑の捜索を続行する事とした。

 

 だがその後、美柑が何処に行ったかという手掛かりを見つける事が出来なかった真白は足を動かしながら辺りを探すことしか出来ずにいた。そんな時、突然電話が着信で鳴りだした事で真白はそれを手に取る。相手はリトであり、その内容が急ぎのものであると真白はすぐに理解する。何故なら通話が苦手な真白にメールでは無く着信をする時点で焦っているのが分かるからである。

 

『真白か! さっき美柑を見つけたんだけど、何かララみたいな恰好で空を飛んでたんだ!』

 

「……」

 

『何があったか分からないけど、何かあったのは間違い無い!』

 

 電話に出た真白の耳に機械越しに聞こえるリトの声は予想通りに焦っていた。そして聞かされた内容に真白はララの様な恰好をした美柑を想像する。美柑が好んで着る可能性は低く、故に何かあったのは間違い無いだろう。真白が黙る事は分かっていたのか、リトはそのまま続けると見掛けた場所を真白に伝える。電話を切り、リトが美柑を見掛けたという場所に向かった真白はその周辺で探すことにした。結果、普段とは違い目立つ格好をした美柑の姿は遠くからでも目立った為に容易く見つける事が出来る。道の曲がり角で立つ美柑はリトに伝えられたララの様な服装では無く、ヤミの様な服装をしていた。真白はまず見つかった事に安心して近づこうとするが、見えなかった角の向こう側に明らかに人では無い存在を認識する。今にも美柑に飛び掛りそうなそれは間違い無く宇宙人であり、それを認識してから真白の行動は早かった。その場から文字通り姿を消し、美柑の前へと出た真白。その時、宇宙人の後ろには同じ様に美柑を探していたリトの姿が。互いに美柑を守る為に繰り出した蹴りは綺麗に宇宙人の顔面を挟み、宇宙人はその衝撃に地面へ倒れ伏す。

 

「人の妹に何しようとしてんだ……!」

 

「……」

 

「リト! 真白さん!」

 

 地面に伏した宇宙人を見下ろしながら睨みつけるリトと、無言で見続ける真白。そんな2人の姿に美柑は嬉しそうに声を掛けた。よく見れば美柑の頭にはペケが付いており、「助かりました」と安心している様子。宇宙人が無力化された事で、真白とリトは美柑に近づいた。

 

「平気か? 美柑」

 

「……怪我……無い?」

 

「う、うん。でも2人ともどうしてここに?」

 

「俺は親父に画材の買い出し頼まれて、美柑が居ないって真白がいうから探してたんだ。そしたら美柑がララの恰好して飛んでるのが見えたし、終いには此奴に襲われそうになってたから思わず……ってか何で今度はヤミの恰好?」

 

 心配するリトと真白を前に美柑が質問すれば、頬を掻きながらリトが説明する。それだけで真白が探していた事も美柑には伝わり、リトが続けた尤もな疑問に思わず苦笑いで返した美柑。とりあえず安心した3人だが、その足元では倒れ伏した宇宙人が残った意識で何かを取り出そうとし始める。それは銃の様な機械であり、真白は美柑を心配して。リトと美柑は安心していてその行動に気付く事は無かった。そしてその照準が3人の誰にでも当たる様に構えられた時、その引き金が引かれる……よりも早くその宇宙人の身体に巨大な鉄球が降り注ぐ。地面が割れ、その破壊の中で完全に意識を失った宇宙人。手からは銃が転がり落ち、3人は驚きながらも宇宙人の上に足を鉄球にして立つヤミの姿を認識した。

 

「私の家族に銃を向けるとは、死ぬ覚悟は出来てますね?」

 

 当然意識を失った宇宙人に返答する事等出来ない。その後、殺そうとするヤミを止めてペケの提案で宇宙人をザスティンに引き渡した後、4人とペケは結城家へと帰宅する。そしてその際には当然、どうしてこうなったかの説明もあった。

 

 そもそもの発端は美柑が買い出しに来た際、ララの服に関するデータを増やそうとしたペケと遭遇したと同時に引っ手繰りにあった事が始まりであった。手癖の悪い宇宙人、ヒッタクン星人に財布や食材を引っ手繰られた美柑は空を飛んで探す為にペケの力を借りてララの衣装に。それでも捕まえられず、相手が宇宙人という事でペケが考え付いたのはヤミに成り切る事であった。金色の闇は宇宙で有名な殺し屋であり、宇宙人なら誰もが恐れると思ったんだろう。結果、一瞬怯えさせたもののすぐにその正体がばれて襲い掛かられそうになり、リトと真白に助けられたのである。

 

 結城家へと帰宅すると、既に帰っていたララがナナとモモの2人と共に出迎える。そしてその際、美柑がヤミと同じ服を着ている事に気付いて少しだけ盛り上がる事となった。ヤミも嫌な顔はしておらず、寧ろ何かを考えている様子で美柑から外れたペケと何かを話し始める。普段以上に騒がしく大変な1日であったが、美柑は最後に助けてくれたリトと真白の姿に嬉しさを感じ乍らキッチンへ。この日の夕食は肉屋で半額セールをしていた為に決定したリトの好物、唐揚げであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日。ヤミに呼ばれた美柑と真白は結城家の庭へと出る。ララからリトへ送られた巨大な植物、セリーヌが見守る中。ヤミの背後からペケが飛びながら姿を現した。何をする気なのかと首を傾げる中、ヤミは普段着ている戦闘服(バトルドレス)を着ているのとは別にもう1着取り出す。そしてそれを美柑に差し出しながら告げた。

 

「着てください」

 

「……へ?」

 

 突然の言葉に思わず変な声が出てしまう美柑。だがヤミの目は本気であり、美柑は少し戸惑いながらも以前ペケが行ったのとは違う自らの手でヤミと御揃いの服となる。髪の色は違えど身長の近い2人が同じ服を着ていれば仲の良い姉妹等に見えても可笑しく無い。が、ヤミは美柑の姿に頷いた後に今度は真白へ振り返った。そして次にペケへ視線を向ける。

 

「お願いします」

 

「分かりました。真白さん、失礼いたします!」

 

「!」

 

 ヤミの言葉に頷いたペケが何の迷いも無く言うと同時に真白へ突進を始める。急な事に驚きながらもペケを抑えようとした真白。だがペケは突然大きく円を描く様に移動すると、真白の手を避けてそのまま髪の上にその身体を触れさせる。その瞬間、真白の着ていた服はペケの力によって一瞬で変化した。真白が普段、毎日の様に見ているヤミの戦闘服へと。

 

「これで御揃いです」

 

「あ、あはは……これがしたかったんだ」

 

「……」

 

 真白の姿にヤミは頷きながら呟き、ヤミのしたかった事が分かった美柑は苦笑いを浮かべながらも悪い気はしなかった。突然服を変えられた真白は髪に付いているペケを見れずとも見上げ、ペケは「ララ様が喜びそうだったので」と主の為にヤミに協力したことを告げる。するとヤミがゆっくりと真白の横へ近づき、美柑も言われずともヤミとは反対の真白の横へ。身長は真白の方が微かに高い程度故に、年の近い3姉妹の様な姿が結城家の庭に存在した。

 

「は、恥ずかしい」

 

「私の服は恥ずかしいのですか?」

 

「そういう事じゃ無いんだけど……その、一緒だと気恥しいって言うか」

 

「……似合う」

 

「真白さんもだよ。綺麗な銀髪だからヤミさんと並ぶと特に」

 

「美柑も綺麗だと思いますが?」

 

「あ、うぅ……あ、ありがとう」

 

 ヤミの褒め言葉に頬を赤くしてしまう美柑。その後、ペケの機能によって写真が取られた後にしばらくその姿で時間を過ごした3人。後に現像された写真を美柑は大切な宝物として、部屋に飾るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真白! 私の服も着て4人で一緒に映ろ!」

 

 数日後。3人の写真を見たララがナナとモモを引きつれて真白にお願いしに来るのは、ある意味当然の事であった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

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