【完結】ToLOVEる ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第62話 セリーヌを救え! 惑星ミストア【後編】

「? ルナティークが何かを伝えようとしています」

 

 惑星ミストアを前に全員が息を呑んでいた時、ヤミの言葉で最初に反応したのはナナであった。

 

「またあいつを出すのか? すげぇ嫌なんだけど」

 

「ですが大事な事かも知れません。繋いで見ましょう」

 

 馬鹿にして来た事もあって、明らかに嫌っているナナ。だが宇宙船の外について分かるのはルナティークだけであり、モモはそれを分かっていた為に繋げるべきだと考える。嫌がるナナを置いてモモの言葉に他の全員は頷き、真白が抜いた線を再び繋ぎ始めた。その瞬間、内部にあるモニターにルナティークが映り始める。

 

『やっと繋がったぜ。(マスター)! ミストアの大気から異常なレベルの磁気を観測したぜ! 多分惑星を覆ってる霧のせいだ!』

 

「磁気、ですか」

 

『あぁ、それも近づき過ぎれば船体に影響が出そうなくらいのな。予定の軌道を変更して侵入するぜ!』

 

「……お願い」

 

『任せときな、(あね)さん!」

 

 ルナティークの説明にヤミが反応し、その後の行動予定に真白が頷きながら告げると、突然船内が大きく揺れ始める。降りる場所を探すのは大変な作業の様で、全員は近くにあったものを掴みながら体勢を維持した。

 

「おい! 余り揺らすなよ!」

 

『うるせぇ! ペタン……嬢ちゃん!」

 

「お前、言い直しても言おうとした事は分かるからなぁぁ!」

 

 更に強くなる揺れにナナの声が木霊する中、やがてルナティークは無事にミストアへの侵入ルートを見つけ出す。そしてルナティークから無事に降りた面々が最初に見た光景は、巨大な大木の並ぶミストアの地上であった。

 

「ぺ、ペケ!? どうしたの!?」

 

 突然聞こえてくるドレスフォームになっていたララの焦った声に全員が視線を向ければ、微かに着ている服がぶれ始めている事に気づく。ララの服を保っているのはペケであり、そのペケに何か異常が起きているのは誰が見ても明らかであった。喋ること等に問題は無い様だが、ペケ曰く機械に影響のある電磁波が発生しているとの事。

 

「何も無きゃいいけど……。で? ラックベリーの実ってのは何処にあるんだ?」

 

「私も分からないわ。図鑑で見た程度で中々見つけられない希少種の筈だから。とりあえずこの辺の植物達に……!?」

 

 モモが植物と意思疎通をしようとした時、驚愕した様子で辺りを見回し始める。モモだけがこの惑星の植物達が持つ『悪意』に気付いたのだ。そしてその悪意は今、この場にいる全員に襲撃と言う形で牙を向く。モモの姿に心配するララの背後に、巨大な花が近づいていたのだ。唯一それに気付いたのは真白だけであった。

 

「!」

 

「ふぇ?」

 

「! 真白!」

 

 ララに近づいた花の花弁が動き始め、何かをララに向けて発射しようとする。真白は誰よりも早くララを守ろうと動き出し、身体を押してその場所から遠ざけた。が、ララを遠ざける為に入った事で真白が変わりに発射された何かを浴びてしまう。それは花粉であり、頭からそれを浴びてしまった真白の姿に焦るリトの足元に植物の蔦が絡みつく。気付いた時には軽々とその身体は放り投げられ、少し離れた場所にある大きな穴へと落ち始めてしまう。リトは普通の人間の為、高所からの転落は命の危険すらあった。

 

「!?」

 

 真白はその光景を前に動き出そうとするが、急に身体の力が入らない事に気づいて目を見開いた。身体が動かないならばと翼を出そうとするも、微かに輝いた後に作り出した白い光は一瞬にして拡散。翼が真白の背に現れる事は無かった。

 

「何、で……!」

 

「待って! 真白!」

 

 戸惑ってる間にもリトは落下を続けている。真白は自分に起きている現象を知りながらも無理矢理身体を動かしてリトを追い始め、ララはそんな真白の姿に叫ぶ様に声を掛ける。当然真白の姿にヤミ達も黙っている訳では無かったが、動こうとした彼女達の前に蔦が現れた事でそれは叶わなくなってしまう。唯一動けたのは、真白に庇われたララだけであった。

 

 リトを追う為に動いた真白。だが力の入らない今の彼女はすぐに限界を迎える。穴を前に崩れる様に倒れれば、真白の身体はリトと同じ様に落下してしまったのだ。ララは落ちた真白の姿を見て考える間も無く、追いかける為に穴の中へ自ら飛び込む。頭を下にして落ち続け、途中で落下している真白を抱きしめる様に抱えた後に同じく落下している焦った様子のリトを視界に捉えた。

 

「リト! 捕まって!」

 

「ララ!?」

 

「早く!」

 

 必死に身体を動かして落下速度を軽減しようとするリトは目の前に現れたララの姿に驚きながらも、言われた言葉に藁にも縋る思いで手を伸ばす。だが今現在落下している事もあり、掴もうとしても上手く掴む事が出来ずに更に焦ってしまうリト。只管ララへと手を伸ばしていた時、近づく地面が見えてリトは思わず目を瞑ってしまう。と同時に何かが触れ、リトはそれを掴んだ。

 

「ひぁ! し、尻尾は駄目ぇ!」

 

 ララの声が響く中、3人は穴の底へ辿り着く事となる。全員が意識を失ってしまい、少しの間を置いて最初に目を覚ましたリトは自分の顔の上に何かが乗っているのに気付いた。手には黒い何かが握られており、それがララの尻尾なのだと理解したリトは素早く手を離す。尻尾を辿ればララの倒れている背中が微かに見える事から、自分の上に居るのが誰かリトにはすぐに分かる。が、前を見れば映るのは薄暗い光景だけで自分がどんな体勢になっているのかまでは分かっていなかった。

 

「真白! おい、真白! 頼むから起きてくれ!」

 

「うぅ~ん……あれ、真白? リト? ……! 真白!」

 

 リトの声を聞いて目を覚ましたのは真白では無く、ララであった。少し寝ぼけた様子のララは、真白の股下で下敷きにされているリトの姿を見ると同時に全てを思い出す。そして傍に駆け寄ると、リトが起きているのに気づいて真白を優しく退かし始める。何とか無事に立ち上がれる様になったリトは視界が晴れた事で、真白を心配するララにお礼を言おうとして……顔を真っ赤にする。現在、ララは何も纏わぬ姿になっていたのだ。リトが赤くなった事に首を傾げたララは理由を告げられて初めて自分が裸になっている事に気が付いた。

 

「ペケ!」

 

 服を形成していた筈のペケが頭に付いていない事にも気付いたララは、ペケを探して周囲を見回す。探していたペケは少し離れた場所で倒れており、その機能は停止していた。リトとララは機械に影響のある電磁波が流れている。と話していたペケの言葉を思い出し、深くまで落ちてしまった為にそれが強くなってしまったのだと考える。このまま裸で動かれては下手にララへ視線を向けられない為、リトは着ていた上着をララに被せる。

 

「と、とりあえずこれ着てろよ」

 

「あ……うん、ありがとう!」

 

 ペケを回収して上着に身を包んだララはお礼を言って再び真白の元へ。ペケは電磁波の影響で仕方ないが、真白が未だに目覚めないのは流石に不自然であった。何かが可笑しいと感じたリト。そこで、ララが真白に膝枕をした状態で不安そうに口を開く。

 

「私を庇ってくれた後に真白はリトを助けようとしたんだけど……様子が可笑しかったの」

 

「もしかして、この霧のせいか?」

 

「ううん、違うと思う。もしそうなら私にも何かあると思うし。……多分、あの花粉だと思う」

 

 ララの言葉にリトは自分達の周りを覆う霧を見る。だがララはその言葉に首を横に振って否定すると、悲痛な表情で思い出しながら告げた。自分を庇った事で真白が浴びてしまった花粉。自分が不注意だった為に真白がこんな事になってしまったとララは自分を責め始め、小さな声で真白の髪を撫でながら「ごめんね」と話し掛けた。リトはそんなララに掛ける言葉が見つけられず、場には少しの静寂が訪れる。が、ララの膝に眠る真白が微かに目元を動かした事でララは驚いて真白の名前を呼び始める。

 

「真白!」

 

 呼び掛けられた声に反応する様に、真白はゆっくりと目を開き始める。ララの行動で真白が目覚めた事をリトも瞬時に理解して駆け寄り、真白はララの膝から頭を上げると周りを見回す。そして何も言わずに立ち上がろうとした時、その身体がよろめいた事でララは素早く立ち上がると真白の身体を支えた。

 

「真白、無理しちゃ駄目だよ。……ごめんね。私のせいで」

 

「……違う」

 

「違くないよ。私がもっとちゃんとしてれば、真白がこうなる事は無かったから」

 

「……」

 

 真白の身体を支えながら告げるララの言葉に首を横に振って否定するも、ララはそれに納得する様子を見せなかった。自らを強く責めている事もあり、落ち込んでしまっているララを今すぐに元気付けるのは難しいだろう。リトは2人の光景に話を切り替える事にして、上を見上げる。そして、落ちてきてしまった大穴をどうにかして上る手段は無いかと質問した。ララの力があれば、2人を抱えて上に上がる事等造作も無いだろう。しかしララはリトの提案に首を横に振った。

 

「確かに簡単だと思うけど、2人にも負担が掛かるの。今の真白だと耐えられないと思う」

 

「……平気」

 

 2人を運ぶには両脇に抱えるか、背中と前でおんぶと抱っこを同時に行うしかない。だが真白は今現在、リトよりも力が無い為に長時間しがみ付くのは難しいのだ。他にもララに吊るされる様な運ばれ方もあるが、弱った真白が耐えられるかは分からない危険な賭けとなってしまう。真白はララの言葉に大丈夫であると意思を示すも、ララの言葉にリトも納得した様子で運んでもらう案は却下される。幸いにも少し離れた場所に上り坂があるのをリトは発見していた為、そこから上る事となった。

 

「はい、真白」

 

「?……歩ける」

 

「駄目。フラフラしてるもん。それに、今度は私が真白を助けたいの」

 

「……」

 

 移動を始める事になった際、真白の前に姿勢を低くして背を向けて構えるララ。真白は首を傾げながらも、自分を抱えようとするララの意思を理解すると告げる。が、ララは背を向けたまま答えてその体勢から戻る様子を見せなかった。何処か助けを求める様に真白がリトへ視線を向けるも、リトはララの味方をする様に「良いんじゃないか?」と答えた。真白を助けたいと思うララの気持ちがリトにも強く伝わったのだ。少し迷いながらもやがて真白はララの背にその身体を預ける事に。ララは真白を背に歩き始め、リトはそんな2人を先導する様にその前を歩き始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巨大な大木の根や幹が作り出すミストアの大地を歩くリトとララ。ララの背には真白が乗っており、時々そんな彼女の様子を確認する様にララが声を掛けていた。ララが代りに歩いている事で2人程の疲労は無いだろう。だが元々の体力が今現在かなり下がってしまっている真白は、ララが移動する際や道と道の間を飛び越える際に訪れる衝撃だけで微かに疲労を溜め始めていた。普段から無口な事もあって話し掛けなければその様子に中々気付く事の出来ない2人。やがて何度目か分からないララの声に、真白が反応しない事でララはその足を止めた。歩く事に夢中だった意識を背後に向ければ、普段は聞かない真白の少々荒い息遣いが聞こえ始める。

 

「リト! 待って!」

 

「? お、おい真白! 大丈夫か!?」

 

 巨大な木の幹は人が横になっても余る程の幅があり、ララは真白の状態が分かった為に前を歩くリトに声を掛けると真白を一度降ろす。再びララの膝を枕に横たわる真白の姿は、まるで熱に苦しんでいるかの様に辛そうであった。頬が微かに赤く染まり、静かな筈の息遣いも少し乱れている。明らかに様子が可笑しい光景に焦ってしまいそうな心を何とか落ち着かせ、リトは一度休むことを提案。ララもそれに頷いて、その場で一時休憩する事となった。

 

「確か、途中に水場があったよな? 少し戻って飲めるか確かめて来る。飲めそうなら真白を連れて行こう」

 

「う、うん。! リト! 後ろ!」

 

 ここまで来る途中で見かけた水場を思いだしたリトが提案した時、ララがリトの背後に迫る影に驚いて声を掛ける。リトが急いで振り返れば、そこにいたのはリトより少し大きい程の生き物であった。玉葱の様な頭に足から蛸の様に蛸以上の足を生やした恐らくミストアの生物であろうそれは、リトへ襲い掛かる為に突進して来ていた。攻撃を受ける前にララの声で気付く事の出来たリトは咄嗟に避けて回避する事に成功し、次の攻撃を警戒する。……が、その生き物は次の攻撃をする事無く倒れてしまう。

 

「ど、どうしたんだろう?」

 

「弱ってる? ……水分が足りてないみたいだ」

 

 生き物の倒れた光景に戸惑うララと、その姿に弱っている理由を理解するリト。やがてリトは生き物の傍に近づき、その身体を背に抱え始める。ララはそんなリトの姿に吃驚し乍らも声を掛けた。

 

「どうするの?」

 

「さっき言った水場に連れて行く」

 

「危険な生き物かも知れないよ?」

 

「だとしても、苦しんでるこいつを放っては置けないって」

 

 自分に襲い掛かった生き物を助けようとするリトの姿にララはやがて嬉しそうに笑みを浮かべる。結城家で1年以上の時を共に過ごしているララはリトが持つ底知れぬ優しさを理解していた。気付けば真白の様子も先程に比べて安定しており、リトの姿にララは一緒に付いて行く事を決断する。真白を抱え乍ら、何かあった時には動けないリトも守る為に。

 

 来た道を引き返した2人は真白と生き物を連れて無事に大きな湖にも見える水場に到着する。リトが抱えて来た生き物を水場の中に入れて上げれば、見て分かる程に水を吸収し始める生き物。やがて玉葱の様な頭の天辺に綺麗な木が生えた光景にリトは思わず感心した。そして元気になった様子を前にリトは水の色を確かめる。透明にも見えるが、飲めるかと言われれば微妙な所。休息をこまめに取れば真白の体力も少しは戻る事が分かった為に、リトは首を横に振って飲めないと判断する。

 

「それじゃあ、俺達は行くからな」

 

「バイバイ!」

 

 元気になった植物に別れを告げ、2人は真白を連れてその場から離れようとする。だがその時、突然水場の中央に泡が浮かび始めると共に恐ろしく巨大な生き物が姿を現した。海藻の塊の様な姿をしたその生き物は、離れようとする2人に向けてその一部を放つ。水が恐ろしい程に音を出した事でその存在に嫌でも気付かされた2人は、振り返ると同時にその攻撃を間一髪で回避した。

 

「な、なんじゃこりゃぁ!」

 

「! リト! 避けて!」

 

「!」

 

 何十倍、何百倍もありそうな巨体を前に思わず叫んでしまうリト。そんな彼に再び攻撃が迫り始める。ララの声でそれに気付くも、3度目の回避は無かった。捕まってしまい、地上から足を離して振り回されるリト。そんな彼を前にララは助ける為に動きだそうとするが、相手はララでは無くその背後で弱っている真白に目掛けて攻撃を仕掛け始めた。

 

「!?」

 

 間一髪でそれを避けたララだが、相手は未だに標的を真白にしている様子。自分を狙う攻撃では無い事で、ララは下手に動く事が出来なかった。だがこのままではリトが危ないと動き出したララ。真白を標的として迫る攻撃を避けようと動いたララ。だが至近距離でその狙いが突然ララに変更された事で、対処出来ずにララは地面に叩き落とされてしまう。そしてその衝撃で真白はララの背から離れ、地面を転がってしまう。……今までの光景をジッと見つめていた生き物の傍へ。

 

「真、白……」

 

 地面に倒れたララが離れてしまった真白に手を伸ばすが、そんな彼女の身体に海藻の様な物の一部が尻尾ごと巻き付いてリトと同じく吊るされてしまう。そして2人は怪物の頭の上……口元へと運ばれ始めた。

 

「ら、ララ!」

 

「ひぁ! し、尻尾が擦れて……力が……」

 

「ま、不味いぞ! このままじゃ!」

 

 抜け出そうと身じろぎをすれば、一緒に巻かれた尻尾が身体と海藻の間で擦れる為にララは力を出せなくなってしまう。運動能力が人より少し高いだけの地球人であるリトにこの状況をどうにかする手段は無く、2人はゆっくりと開かれる巨大な口元へ徐々に近づいて行く。……そんな光景を少し離れた場所で、倒れたままの真白は消えそうな意識の中で見る事しか出来ずにいた。

 

「い、や……止……めて……」

 

 必死に身体を動かそうとする真白だが、その腕に力は入らない。目の前で家族と友達が食べられそうな光景に、真白は失う事への恐怖を感じる。誰にも聞かれない声は響く轟音に掻き消され、徐々に真白はその意識を落とし始める。だが突然、そんな真白の口元に何かが触れた。目を開けば、リトが助けた生き物が自らの足で自分の頭に存在する木に生っている丸い実を真白に差し出している光景があった。それが何を意味するのか、真白は当然分からない。しかしこの状況で他に出来る事は無く、真白は最後の力を振り絞る様にその実を齧った。

 

 巨大な口の中に見える尖った鋭い歯がリトに恐怖を与える。真白が弱り、ララが捕まり、他の皆は何処に居るのか分からないこの状況で救助は絶望的であった。リトはこのまま食べられると思い、今現在も地球で苦しんでいるセリーヌの姿を思い浮かべる。

 

「(ごめんな……お前を助けられなかった)」

 

 そんな謝罪を心の中で告げて近づく口に目を瞑ったリト。そして感じ始めた浮遊感に、口の中へ投げられた事を悟る。が、突然何かに片手を掴まれた事に驚いてリトは目を開いた。そこに居たのは、先程まで力を失って弱っていた真白の姿。

 

「真白!?」

 

「……ん」

 

 リトの片手を自らの片手で掴んで空を飛ぶ真白は、リトの言葉に静かに頷いて捕まっているララの元へ。ララは弱りながらも近づく真白の姿に嬉しさを感じ、やがて海藻が途中から切断されると同時に解放される。そしてリトと同じ様に真白がララの片手を掴むと、2人を連れて陸へと戻り始める。逃がさないとばかりに真白たちへ迫る数本の海藻による攻撃。だが真白はその攻撃を掻い潜って行き、やがて無事に陸へと辿り着く。

 

「……リト……お願い」

 

「あ、あぁ。ララの事は任せてくれ!」

 

 敏感な尻尾に刺激を与え続けてしまった為、今現在ララは腰砕けの状態になってしまっていた。そんな彼女の姿に真白がリトへ告げれば、意味を素早く理解出来たリトが頷いて答える。それに真白が頷き返した後、気付けば3人の傍に居た生き物の木の生え際を優しく撫でて飛んで行き始める。向かう先は、リトとララを食べようとした巨大な怪物と呼んでも間違い無い生き物。近づいて来る真白をまるで恐れる様に先程の倍以上の海藻が真白に迫り始める。が、真白はそれを避け乍ら辛うじて見える怪物の目元へ到着。背中に白く輝く巨大な羽を出現させ、その輝きを更に強め始める。そんな光景にリトは嘗てララの父親であるギドと戦った際に使っていた攻撃を思い出すが、焦る前に回復したララが声を掛けた。

 

「大丈夫だよ。あれは真白の全存在を掛けた技じゃ無いから」

 

「そうなのか?」

 

「うん。あれはエンジェイドの基本技。私達で言えば、尻尾からビームを出す感じかな?」

 

 ララの説明を受けて再び真白に視線を向けたリト。光を溜める真白の元へ攻撃が集中するも、まるで見えない壁に弾かれる様にその攻撃は全て無意味に終わる。やがて真白へ向けて全ての海藻が襲い掛かれば、真白を中心に球体を作る様に絡み合って光は海藻に覆われて遮られてしまう。が、リトとララはそれでも安心していた。根拠は何処にも無いが、今の真白が負ける事は無いと確信していたのだ。

 

 海藻に覆われて出来た球体から突然光が漏れ始め、海藻が徐々に剥がれ始める。眩しい程の光が周りを照らし、真白の背には見ていられない程に輝く光の羽が出来上がっていた。そして真白は徐に片手を前に出すと、指でピストルを作る様な仕草をする。途端に羽へ集まった光が全て指の先に集まり、やがて真白の身体以上の大きさを持つ巨大な光の玉が出来る。リトはその光景に、次に真白が何をするのかすぐに分かった。

 

「……ばぁん」

 

 小さく告げられた真白の声と共に、その光の玉が怪物に向けて発射される。何とか止めようと海藻が光の玉に向かうも止まる事は無く、そのまま怪物は光に飲まれる。今まで以上の眩しさに目を庇ったリトが次に目を開いた時、真白の目前に広がっていたのは巨大な丸い何かが通ったと誰もが分かる程に大地が削れた後であった。怪物の姿は無く、リトは余りの光景に呆然としてしまう。

 

「やったね! 真白~!」

 

 大きな声を出して喜びを露わにするララが真白の名前を呼べば、振り返ってゆっくりと近づいて来るその姿にリトは安心すると共にどうして急に力を取り戻したのか気になり始める。そして質問すれば、真白は静かにリトが助けた生き物へ視線を向けた。言葉にしなくても生き物が何かしたのだと理解したリトは、生き物に近づいて真白と同じ様に木の生え際を撫でながらお礼を言った。

 

「ありがとな」

 

「ふふ、命を助けて貰ったから今度は助けたかった。そう言ってますよ」

 

「モモ! ナナにヤミちゃんも!」

 

「途轍もない光を感じて来て見ましたが、やはり真白でしたか」

 

「全員無事で何よりだな!」

 

「あはは、ペケが停止しちゃってるけどね?」

 

 リトのお礼に鳴きながら返した生き物の意思を通訳する様に、モモが語りながら姿を現す。後ろにはナナとヤミの姿もあり、全員集合できた事にララは喜びを見せた。ヤミの言う様に、真白の放った強い光を手掛かりにここまで来たのだろう。ヤミは当然の様に真白の傍へ移動し、ナナは頭の後ろに手を回しながらも八重歯を見せて笑みを浮かべる。唯一まだ話せないペケは今現在も停止しているが、地球に戻れば直せるので問題は無かった。

 

「それにしても流石お姉様達です。ラックベリーの実を見つけてしまうなんて」

 

「はぁ? じゃ、じゃあ此奴がラックベリーの木なのか!?」

 

 モモの言葉にリトは驚きながら生き物を見つめる。生き物はリトの言葉に反応する様に鳴き声を上げ、それはモモが通訳しなくても肯定していると誰もが分かった。ラックベリーの木は命の恩人であるリト達になら幾らでも実を上げて良いと思っている様で、モモの通訳によってそれを聞いたリトはお礼を言いながら実を1つ貰う。必要な物を手に入れた事に全員は喜び、急いで地球へ向けて帰還する事にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラックベリーの木にお礼を言って地球へ帰還したリト達を待っていたのは、既に力を失って巨大な丸い殻を先に付けたまま萎れるセリーヌの姿であった。ララが招待したと言っていた春菜が、共に来たのであろうお静や唯と共に美柑と並んでセリーヌの傍に立って居り、帰って来たリト達の姿に悲しそうに顔を伏せる。春菜曰く、突然光出した後に今の様な姿になってしまったとの事であった。そしてその事実にリトはラックベリーの実を落として膝から崩れ落ち、両手を突いて絶望する。

 

「……可笑しいです」

 

「? 何がだよ?」

 

「例えカレカレ病と言えど、ここまで早く枯れる何て普通はありえません」

 

「え……で、でもセリーヌは。! リト! 見て!」

 

 モモの言葉にナナが聞き返せば、その言葉に思わず困惑してしまう美柑。再びセリーヌへ視線を向けた時、先端に存在する殻に罅が入った事で驚きながらも絶望して顔を下に向けてしまっているリトへ声を掛けた。美柑の言葉に驚きながらも全員がセリーヌを見始めた時、殻はまるで卵から孵る様に割れ続ける。そして最後に大きな罅が入った時、殻が完全に壊れて中から姿を見せたのは……。

 

「まうまうー! まうー!」

 

「…………は?」

 

 頭に花を咲かせた、緑髪の凄く小さな女の子であった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

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