主催の沙姫やその付き人である綾を始め、招待された面々も揃って大きな部屋に集まっていた。椅子に座って頭を抱える沙姫の表情は余りに暗く、この場に居る誰も言葉を発そうとはしない。
「どうして、嵐山が……」
「沙姫様。一応他の従業員には待機して置く様に伝えて置きました」
「そう、ありがとう」
綾の言葉に沙姫が力無く返す中、部屋の扉が開かれた事でその場に集まっていた全員が視線を向ける。そこには同じ様に暗い表情をした凛がおり、彼女の登場に沙姫が椅子から立ち上がると話し掛けた。
「凛! 警察への連絡は出来ましたの?」
「それが……何故かあらゆる通信手段がまるでこの島を外界から遮断するかの様に使えなくなっています。ネット、電話、全て」
「何ですかその下手な推理ドラマみたいな展開は!?」
警察へ連絡する為にこの場を離れていた凛。だが彼女の言葉に声を上げて反応したのはルンだった。彼女の言う通り、まるで今の状況はテレビで見るドラマの様な状況。気付けば外は嵐になっており、沙姫の話では明日迎えの船が来る手筈になっている。が、天候によっては来る事が出来ない可能性もあった。
「! ララ達のデダイアルならどうだ!? ザスティンに連絡出来れば!」
「う~ん。何か、デダイアル。使えないみたい」
「私達のもです。嵐の影響を受ける筈無いのですが……」
リトの考えは尤もであった。だがララとモモがデダイアルを手に首を傾げながら告げれば、他に方法は無くなってしまう。風に煽られ雨が窓ガラスに打ち付ける中、突然光った空に美柑が顔を青くする。瞬間、響く雷鳴に傍に座っていた真白へ反射的に飛びついた。美柑、雷が苦手なのだ。
「……平気」
「あ……ご、ごめん。!」
「……無理……しない」
真白の声で飛びついてしまった事に気付いた美柑が離れようとするが、再び間を置かずに鳴り響いた雷鳴に離れる事が出来なかった。すると真白は美柑を隣に座らせてその身体を優しく抱きながら頭を撫で始める。周りに人がいる故に恥ずかしくも感じるが、それ以上に齎される安心感が美柑を包み始めた。響く雷鳴に恐怖を感じざる負えないが、それでも大分気分が楽になったのは間違い無いだろう。
怯えた美柑の姿にリトは部屋の中を見回す。凛の言う様に外界から遮断されているのなら、間違い無く嵐山を殺した犯人は自分達と同じ様に別荘内もしくは外に居る事になるだろう。不安を感じるなと言う方が難しい事であり、部屋を覆う重い空気にリトは何とか少しでも明るくする為に口を開いた。
「だ、大丈夫だって! ここに皆で居れば安全だろうし、どんな地球人が来たってララ達が居れば怖くないって!」
「……地球人が犯人。とは限りませんよ」
「なっ、どう言う事だよ?」
リトの言葉を聞いて静かに告げたヤミ。彼女の言葉に驚いた様にリトが視線を向ければ、ヤミは続けた。
「地球の技術と共に地球外の技術までが妨害されています」
「確かにヤミさんの言う通り、地球人にデダイアルを止める術は無い筈。人為的なものなら、異星人を疑うべきですね」
地球人が相手なら宇宙人が何人かいる現状、危険度は大きく下がると考えていたリト。だが相手が地球の外から来た存在なら、危険度は大きく膨れ上がる。話を聞いて励ますどころか自らも不安を感じ始めてしまう中、我慢出来なかったかの様に猿山が立ち上がる。そして彼はこの状況では確実に不味い行動に出てしまう。
「もう耐えられねぇ! 俺は泳いででも帰るぞ!」
「さ、猿山! それ完全な死亡フラグ……!」
「ちょ、リト!?」
ドラマの中で死亡する可能性の高い人物が口にする様な台詞と共に部屋を出ようとする猿山。何とか止めようとリトが動くも、強い力で歩く猿山の勢いに押し返されてしまう。体勢を崩して向かった先は美柑を抱きながら撫でる真白の元。倒れる様に近づくリトの姿に美柑が驚いた時、彼はそのまま勢いを抑え切れずに2人とぶつかってしまう。余りに豪快な激突に見ていた者達は一様に一度目を瞑り、そして確認する為に開く。……そこには美柑の着ている服の中に片手を入れ、真白の胸の谷間に顔を埋もれさせるリトの姿があった。
「ふごふごっ!?」
「んっ!」
「り、リト! 手を動かさないで! って言うか早く抜いてよ!」
片手で微かに感じるまだ未発達の膨らみと、顔全体で布越しに感じる確かな膨らみを前に顔を真っ赤にしながら驚き戸惑ってしまうリト。急な事で正常な判断が出来ていないのか、離れるのに少しだけ時間を要しながらもリトはようやく立ち上がる。が、次の瞬間背中から踏まれて地に伏せる事となった。
「こ、この
「こんな時にまで破廉恥なっ!」
「殺します」
「ま、待ってくれ! 今のは事故で」
『うわあぁぁぁ!』
≪!?≫
ナナ、唯、ヤミの怒りを露わにした姿に先程の状況とは別で命の危険を感じたリト。現行犯ではあるが、何とか弁解しようとする彼の言葉を遮る様に突然聞こえた猿山の悲鳴が部屋の中に居た全員の耳に聞こえた。リトが友人の危機故に立ち上がって部屋を飛び出せば、そこには無傷の猿山が怯えた様子で暗い廊下の向こう側を指差していた。
「い、今、向こうに黒い影が!」
「何!?」
猿山の言葉に何も見えない暗がりを見つめるリト。すると部屋の中から様子を伺っていた者達の間を通ってヤミが前へ出る。
「私が見てきます」
「……私も……行く」
「いえ。真白はここに居てください。それと、後で覚えておいてください。結城 リト」
ヤミの言葉に着崩れた服を戻した真白が告げるものの、ヤミは首を横に振ってそれを断ってしまう。そしてリトに一言続けて暗闇の向こうへ消えてしまうその姿にこの場に居た全員は一様に心配する。例え宇宙一の殺し屋と言う実力を持っていても、女の子である事に。友人である事に変わりはないのだ。……そしてそれ以上に真白にとっては家族でもある。
「行って、真白さん」
「……」
「こっちは任せて! 皆の事は、私が守るから!」
「……お願い」
ヤミを誰よりも心配する真白の思いを察した美柑。彼女の言葉にその場に居た全員が思いを1つにする。そしてララが笑顔で告げれば、真白は静かに答えてヤミの後を追う様に暗闇の向こうへ姿を消した。ヤミだけでは心配であり、それは他の誰かでも同じ事。だがリトや美柑、ララ達は何となくだが感じていた。ヤミと真白が一緒なら、必ず無事に帰って来ると。
暗い廊下を歩く真白。他に人の気配は無く、ヤミの姿を見つけられない真白は周囲を警戒しながら歩みを止めない。
「……?」
『……』
ふと、何か小さな気配に気付いた真白は背後へ視線を向ける。そして暗闇に紛れる様にして存在する黒い猫の存在に気付いた。ジッと真白の事を見つめるその黒猫は大浴場に向かう際、ヤミと共に見掛けた黒猫と同じ。真白がしゃがんで黒猫と視線を合わせ続けていた時、再び背後に気配を感じて振り返った。
「真白……追い掛けて来たのですか?」
「ん……心配……だった」
「そうですか。……ところで、何時までその姿で居るつもりですか?」
「?」
そこに立っていたのは真白が追い掛けたヤミであった。ヤミを認識して何処か安心した様子で身体を振り返らせた真白。だがヤミは真白の言葉を聞いた後、真白の方へ視線を向け乍ら告げる。それは真白に告げられた言葉では無く、故に真白はヤミの言葉に首を傾げた。が、彼女の言葉に答える様に男性の声が響き始める。
「こんな
「!?」
それは真白の背後から聞こえた声であり、驚き振り返った先に居たのは黒い髪に黒い服を着た青年であった。先程まで居た猫の姿は何処にも無く、だが何処か同じ様に黒い姿で闇に紛れる青年。ヤミはその姿を認識した後、再び口を開いた。
「やはり貴方でしたか。殺し屋、通称『クロ』。私も貴方の顔を見る事になるとは思いませんでした」
「お前の事は……金色の闇。とでも呼べば良いか?」
「お好きな様に。ヤミちゃんでも良いですよ」
「全力で遠慮する」
間に真白を挟みながら会話をする2人は明らかに互いの事を知っている様であり、ヤミの言葉から男性……クロが殺し屋である事を真白は理解出来た。と同時にクロがヤミから目の前に立つ真白に視線を向ける。クロの金色に光る眼と真白の赤く光る眼が合い続け、やがてクロは視線を外しながら口を開いた。
「探し者は見つかったみたいだな」
「……えぇ」
「忠告しておく。俺の仕事の邪魔をするな。でないと、また戦う事になる」
「私も言っておきます。私の友人に、家族に手を出したら……許しません」
「ふっ……家族、か」
クロの告げた言葉の意味を真白は理解出来ない。だがヤミは理解出来た様であり、その後に続く会話の果てでクロは微かに笑う。そして闇の中へ消える様に去って行ってしまう。狙いが誰なのかを聞ければ良かったが、雰囲気から間違い無く答える事は無いと察した2人。消えた彼の姿に真白がヤミへ振り返った時、何かを考えるヤミが口を開いた。
「仕事の邪魔をするな。彼はそう言いました」
「……まだ、終わって……無い?」
真白が続けた言葉に頷いて肯定するヤミ。クロについてはヤミが間違い無く知っている様子故に真白はここで詳しく聞かず、皆の元へ戻って話す事にした。既に外の雨は止んでおり、強い風だけが吹き続けていた。
「通称『クロ』。私と同じ殺し屋です」
「クロ、ですと!?」
「知ってるの? ペケ」
「要注意人物リストで名前を見た記憶があります。銀河で唯一精神エネルギーを弾丸に換えて撃つ黒い装飾銃を使いこなす殺し屋」
「その人が犯人だとして、どうして嵐山さんを?」
「……分からない」
「えぇ。ですが、クロはまだ目的を果たしていない様です。今は下手に動かず、相手の出方を待つのが得策でしょうね」
部屋に戻った真白とヤミは無事に帰って来た事に安心されると共に何か分かったか質問された。そこでヤミが始めた説明に春菜や唯は顔を青くする。目の前にも殺し屋は居るが、それでも今現在殺し屋がこの場所で誰かを殺そうとしていると聞けば恐怖するだろう。ヤミの言う様に部屋で待機し続ける事になり、真白はヤミと共に空いていたソファへ座る。と同時にヤミが静かに口を開いた。
「私から貴女や彼女を引き剥がしたあの組織を潰したのは彼です」
「!」
「彼の手で解放された私は殺し屋として生き乍ら、貴女を探し続けました」
「……そう」
ヤミの告げた言葉に普段は見れない程目に見えて驚いた真白。その姿を見た者はおらず、続けられた言葉にやがて静かに返した真白は目を瞑る。暗い瞼の中、思い浮かんだ光景は幼い頃のものだった。
『……!』
『お姉ちゃん! あの人達が来たよ!』
『!? 動いて……!』
小さな機械の船で必死にボタンを押すが、思い通りに動かない。背後で同じくヤミと言う名では無かった幼い彼女の姿があり、やがて自分達のいる場所の扉が開くと同時に数人の大人が入り込む。大人たちは彼女を無理矢理連れて行こうと腕を引っ張り始め、必死に抵抗する姿に真白がボタンから手を離して大人たちと彼女を引き剥がそうとした。だが子供の力では大人に敵わず、振り払うと同時にボタンの位置にまで投げられた真白。その際、再び触れたボタンがスイッチとなったのか足場が揺れ始める。
『駄……目……』
『お姉ちゃん! お姉ちゃん!』
『兵器は回収した。戻るぞ』
『あの餓鬼はどうする?』
『放って置け。もうすぐこの船は宇宙のゴミだ』
打ち所が悪く意識が朦朧とする中で自分を呼ぶ彼女の声を聞き、大人たちの会話を聞きながらも動けない身体。やがてその場所には自分以外誰も居なくなり、船は真白だけを乗せて宇宙へ。それが再会する前の彼女との最後の時間だった。
「……ろさん。真白さん!」
「!」
「大丈夫?」
「……ん」
我に返った真白は目の前で心配そうに自分の顔を覗き込む美柑の姿を前に頷いて返す。どうやら既に戻って来てから数時間が経過している様で、それぞれの疲労も限界になり始めていた。恐怖を感じる環境でも、疲れ切ってしまえば眠くなってしまっても不思議では無い。各々の集中力が途切れ始める中、突然部屋の扉が開くと共に血相を変えた沙姫が綾と凛を連れて部屋の中に入って来る。
「た、大変ですわ!」
「どうしたの?」
「今、従業員から連絡があったんだ」
「エントランスにそのままにしていた嵐山の遺体が消えてしまったそうですの! 血の跡も残さずに!」
「なっ!? それってどう言う……!?」
明らかに動揺する沙姫の姿にララが質問した時、凛が補足した後に沙姫が説明を始める。警察が到着するまで一切触る事無くそのままにして置くべきと言う事で残してあったエントランスの遺体。死人が動く筈も無く、血の跡も無いとなれば不自然に感じずにはいられないだろう。リトが驚いて言葉を発していた時、突然部屋の電気が一斉に消えてしまう。
「停電!?」
「どうして今……!」
「な、何だよ古手川」
「貴方が何時もの感じで何かするんじゃないかと思って……」
「うわあぁぁぁ!」
「へ?」
突然の停電に再び困惑する中、唯がリトから距離を取り始める。今まで何度も事故とはいえやらかして来たリトを警戒しての事だった。だが突然リトと唯の間に怯える猿山が通り過ぎた事で唯は彼とぶつかり、リトから強制的に離される。今回転ぶのはリトでは無く、唯の方であった。そしてその先はリトと全く同じ真白であった。
「ちょ、また!?」
何処かで見た景色を前に真白の傍に居た美柑が驚きながら言う。唯の身体は吸い込まれる様に真白の元へ近づき、そして倒れ込んだ。あの時と違うのは美柑が巻き込まれなかった事だろう。だが真白への被害はあの時以上であった。唯の手が真白の両腕にあった服を掴み、下へ降ろしていたのだ。下着を晒す事になった真白と、真白の膝に顔を埋める様な体制になっていた唯。状況が理解出来ずに立ち上がろうとした唯は顔を上げ、自分がしでかした状況を理解する。
「ま、真白!? ごめんなさい!」
「ん……平気。怪我、無い?」
「え、えぇ」
「シア姉! コテ川! 下がれ!」
「!」
急いで降ろしていた布地から手を離して謝る唯。真白は降りた服を元に戻しながら微かに頷いた後に言葉を続ける。特に感情の機微を見せない真白に動揺しながらも答えた時、叫ぶ様に聞こえるナナの声で2人は驚きながら全員を見る。一斉に窓へと視線が向けられており、その視線を追った先に居たのは……クロであった。何故か頭にセリーヌを乗せ乍ら。
「お、おいセリーヌ! 何やってんだ!」
「まうまう~♪」
「通訳しますと、『わーい! お客さんまうー!』と言ってますね」
モモの通訳を聞いてリトが客じゃないと内心で突っ込む中、セリーヌを頭に乗せたクロはペケが説明した様に黒い装飾銃を取り出す。銃口の先に居るのはララと彼女の背後に隠れる猿山。この場に居る全員がクロの
「くっ! 止めろっ!」
「邪魔だ、どけ」
「い、嫌だ!」
ララへ向けられた銃口の間にリトが意を決して入り込めば、冷たい声と共に告げられる。が、リトは恐怖に震えながらも決してその場から動こうとはしなかった。座っていた真白も動こうとするが、それを制する様にヤミが真白の前に手を伸ばす。リトの覚悟を見て春菜もララを守る為に銃口の間に入り、クロはその光景を前に引き金に指を掛けた。だがそんな彼の背後に真白を止めたヤミが現れ、髪を複数の拳にして伸ばす。クロを背後から狙ったと誰もが思うが、その拳はクロの横を通過した。春菜とリトの横も通過し、ララをも通過し、やがてその拳に蛸殴りされたのは猿山であった。
「猿山!? な、何で!」
「あれが真の標的。そうですね、クロ」
「標的って……なっ!?」
猿山が殴られた事に驚いたリトはヤミの言葉で再び猿山に視線を向ける。だがそこに居たのは猿山では無く、人の身体の様な体型の頭部分に小さな生き物が乗っている姿であった。それは猿山が猿山では無かったと言う証拠。驚き戸惑う面々を気にも留めず、クロが口を開く。
「万の姿を持つ変装の達人、カーメルン。ある銀河マフィアの機密情報を盗んで逃亡中の男だ。常に変装している故に誰も本当の姿を見た事が無い。今この場に居る全員以外はな」
彼の言葉は更に続き、カーメルンが嵐山に変装していた事も発覚する。エントランスで見た嵐山の死体は撃たれた際、クロをやり過ごす為に仮死装置を使って誤魔化した後であった。死体や血の跡が消えていたのはそもそも死んではおらず、血も偽物だった故。だが、クロ曰く血の匂いがしなかった事で誤魔化されなかった様である。
「その後、部屋を出た猿山 ケンイチと入れ替わった貴方は私やプリンセスを使ってクロを倒そうとした。そうですね」
「くっ!」
「……ヤミさん、最近推理ものの小説呼んだんだね」
「ん……」
まるで探偵や刑事が断言する様に指を差してカーメルンに告げるヤミの姿を前に、何となく察した美柑が呟くと真白が肯定する様に頷いた。すると突然カーメルンはその場で暴れ出し始める。部屋の中に煙が舞い始め、気付けばカーメルンの姿は何処にも無い。が、代わりにナナが2人になっていた。
『ふふふ、クロ。お前は無関係の人間は巻き込まないポリシーだと聞く。これでは何方が本物か分かるまい』
≪……≫
『ん? 何だお前ら、その顔は』
「お前……あたしを馬鹿にしてんな……」
「……はっ! ちゃんとスキャンして化けた筈なのに!」
勝ち誇った様に響くカーマインの声。だが2人のナナの内、1人は胸が大きかった。胸にコンプレックスを抱くナナは怒りを抑えずに自分の姿をしたカーマインを攻撃し始め、ナナの思いを知る者は同情を覚えずにはいられない。クロ曰く、最初の攻撃で機械が一部破損しているとの事。完全な変装が出来なくなったカーマインは既に万策尽きた上、ナナの攻撃でボロボロになっていた。が、殺し屋の仕事は殺す事。懲らしめただけで終わるものでは無い。
「待ってください」
「仕事の邪魔をするな、と言った筈だ」
「邪魔するつもりはありません。ですが……」
銃口を向けたクロの姿にヤミが止めると、彼の言葉にヤミは部屋の中に居る者達を見回した。そして再びクロに視線を向けて口を開く。
「友達や家族に、血に塗れた私や貴方の世界を見せたくない」
ヤミの言葉を聞いて少しだけ目を見開いたクロ。彼女の言葉にその場に居た全員も言葉が出ず、やがてクロは銃口を再びカーメルンに向ける。
「悪いが「まう♪」……」
「通訳しますと、『皆仲良く!』と言ってます」
「セリーヌ! 今大事な話してんだ! 離れなさい!」
「ま~う~!」
突然再びクロの頭にしがみ付いたセリーヌ。モモの通訳を聞いてリトが剥がしに掛かる中、セリーヌは必死に嫌がってクロの頭にしがみ付く。当然リトが引っ張ればクロの頭も引っ張られる事になり、クロもされるがままと言う訳では無い。リトとは反対側へ頭に力を入れ、やがてセリーヌの手が離れる……と同時にクロは勢いよく反対側へよろめいた。二度ある事は三度ある、と言う諺がある様にクロのよろめいた先に居たのは真白であった。リトもよろめいた拍子にララとぶつかり、ララの頭からペケが外れた事で衣服が消滅。晒された胸に喜んでセリーヌが飛び掛った。
「ちっ、いい加減に……」
「……」
倒れたクロが立ち上がろうと身体を上げた時、自分の下に倒れる真白と目が合う。真白を下に覆い被さる様な体勢になっていたクロ。驚き立ち上がると共に感じた殺気に振り返れば、ララの裸を背後に髪を逆立てるヤミの姿がそこにはあった。
「言った筈です。家族に手を出したら許しません、と」
「今のは、事故だ」
背後に見えるララの裸に何とか視界に入れない様にしつつ答えるクロ。どうやら彼はリトと同じでかなり初心な様だ。
「何なんだ、お前らは……調子が狂う」
「何処へ行くつもりですか」
「仕事をする気分じゃ無くなった。そいつはお前らで好きにしろ」
入って来た窓際に足を進めるクロ。やがて彼はそこから姿を消し、カーメルンはナナに気絶させられていた為に拘束される事となった。デダイヤルの電波妨害もクロが去った事で解消され、犯人が宇宙人だった故に対応はザスティンに任せる事で決着。本物の嵐山や猿山は別荘の物置に閉じ込められており、無事に救出された。
事件が解決した事で無事に安心して夜を越せる様になった面々。改めて大浴場等で疲れを癒しながら、迎えの船が来る翌日まで各々好きな時間を過ごすのであった。
「ヤミさん……大丈夫?」
「はい。……次あった時は必ず一発殴ります」
各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?
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サブタイトルの追加
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主な登場人物の表記