【完結】ToLOVEる ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第75話 プールの激闘。ララの想い

「真白さん! そろそろ行きましょう!」

 

 日曜日。結城家では無く、御門の家を訪れていた真白は袋を手に片手を大きく振りながら話し掛けるお静の声で近くにいた御門へ視線を向けた。お静が向かおうとしているのは、つい最近オープンしたばかりのプール。前日にララから誘いを受けていたお静を始め、結城家に居た真白達やその他の面々も約束をしたのだ。思い付く限りの友達を呼び、『明日一緒にプールへ行こう』と。そしてその関係で現在御門の家に普段なら真白の傍を離れないヤミの姿も無かった。

 

「行ってきなさい」

 

「ん……行ってくる」

 

 御門もお静経由で誘われはしたものの、宇宙人達の予約があった為に参加を辞退。元々余り乗り気では無かった様で、普段よりも早く家を離れる事に少し悩んでいる様子の真白の背中を押す様に薄く笑みを浮かべながら告げる。真白はその言葉を聞いて頷いた後、予め分かっていた故に用意してあった水着の入った袋を手にしてお静の元へ向かう。笑顔で迎えるお静と共に去って行く真白の背中を見続けた後、御門は豊満な胸を突き出すかの如く大きな背伸びをして頭を仕事に切り替えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新しく出来たプール『彩南ウォーターランド』は出来たばかりと言う事もあり、人々で賑わっていた。日曜日である事も大きな理由になるだろう。……故に人混みが苦手な水着姿の真白は少し隅の方で適当にその風景を眺める。まだ少し早かった様で、現在この場所に来ているのは真白とお静のみ。向かう際に数人から家を出た等の連絡が来ていた為、集まるのは時間の問題であろう。が、それまでする事の無い真白は人混みを避ける様に隅で時間を潰していた。

 

「ねぇ、君1人?」

 

「良かったら俺達と過ごさない?」

 

「……」

 

 若い者達が多い施設内ではナンパを目的として訪れている者も多少は居たのだろう。1人で何もしていなかった真白に目を付けた2人の男性。が、真白はそんな2人の言葉に特に反応を見せる事は無かった。男性達はその後も話し掛けるが、真白が反応を見せる事は無い。既に約束した相手が居る為、眼中に無かったのだ。例え居なかったとしてもそれは同じだが、当然何も言わなければ伝わる事は無い。故に男性達は徐々に苛立ちを見せ始める。

 

「おい、無視してんじゃねぇぞ!」

 

「……」

 

「貴方達、何やってるの!」

 

「あぁ? うぉ、スゲェ……」

 

 怒気を込めた低い声で話し掛けた男性。しかし真白は変わらず無反応であり、代わりにその光景を見つけた者が声を掛ける。それは萎んだ浮輪を片手に持つ水着姿の唯であった。突然掛けられた声に振り返った男性達だが、その顔は一瞬にしてだらしないものとなる。それは唯の大きな胸に釘付けになった為であり、唯は強い目線で男性達を警戒しながら真白の手を掴んだ。

 

「やっぱり人混みから逃げてたわね。探したわよ」

 

「……そう」

 

「結城君達も来てるわ。行きましょ」

 

「なぁ、良かったら俺達と一緒に」

 

「お断りよ。私達には連れが居るの。それにもし居なかったとしても、そんな破廉恥な目で見る様な人達と遊ぶつもりは無いわ。」

 

「んなっ!?」

 

 今までの無視とは違う明らかな拒絶。だがその内容は攻撃的なものであり、思わず話し掛けていた男性はその強い目と言葉に怯んだ。しかし少しして先程まで感じていた怒りがぶり返したのか、再び怒気を含ませながら口を開いた。

 

「美人だからってつけあがりやがって」

 

「連れてこうぜ!」

 

 人混みから離れた場所でも人の目は多少なりともある。だが男性達の姿に止める者は誰も居らず、2人の手が同時に真白と唯の腕を掴もうと動き始めた。そしてその手が2人の肌に触れそうになった時、突然響いた轟音と共に真白たちと男性の間に何かが通過した。間一髪男性達は後ろに下がり、自分達の腕があった場所を見る。……その場所はまるで抉られた様に床の一部が破壊されていた。

 

「外しましたか。次は外しません」

 

「ひ、ひぃ!」

 

「……駄目」

 

 現れたのは水着姿のヤミであった。言葉を発しながら徐々に近づく彼女の姿に戸惑いながらも恐怖を感じずにはいられない男性達。決して人では起こせないそれを起こした彼女に怯え慄いた2人はやがてその場所から一目散に逃げだした。一瞬追おうとするヤミだが、それを止める様に真白が口を開けば彼女はそれで追跡を止める。すると息を切らせながら現れた美柑が3人の目の前で少しだけ息を整えた後、顔を上げた。

 

「真白さん、唯さん、平気?」

 

「え、えぇ。彼女のお蔭で大丈夫よ。でも流石にこれは……」

 

「……やり過ぎ」

 

「緊急事態でしたので」

 

「ヤミさん、突然飛び出したから吃驚したよ。あの状況じゃ仕方無いのかも知れないけど」

 

 ヤミと共に来ていた美柑の言葉でヤミが遠くから先程の光景を確認し、助けに来たのだと真白達は理解する。助けられた事には感謝する2人だが、問題はヤミが作りだした床だった。出来たばかりの施設に人が到底作れそうに無い巨大な亀裂を作ってしまったヤミの一撃。見ていた者達は男性達同様に命欲しさから関わらない事を決め、現在その亀裂を不味いと認識して居るのはこの場に居る4人だけだった。

 

「どうにかしないと……」

 

「シア姉様ー! 皆さーん!」

 

 悩む唯の言葉と同時に聞こえて来た声で4人は顔を上げて視線を向ける。そこには水着姿のモモとナナの姿があり、他の面々もその背後に並んでいた。そしてその光景を見て美柑が思い付いた様に片手の平に拳を乗せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ありがとう」

 

「いえ、これくらいなら簡単ですので。それよりナンパした男性達の顔は覚えていますか?」

 

「お、覚えて無いわ」

 

「そうですか。残念です♪」

 

 腰近くまで浸かるモモに両足をプールに浸けてお礼を言った真白。ヤミが作った巨大な亀裂はモモの持っていた発明品によって事無きを得た。最初はララが自分の発明品で何とかしようと声を上げたが、彼女の場合は何かしら別の問題が起こる可能性を見越してモモに任せたのである。真白のお礼に笑顔を浮かべながら答えたモモだが、その後に続けられた言葉に浮輪の中に入って浮かんでいた唯は一瞬寒気を感じた。彼女の笑顔が笑顔に見えなかったからである。だがすぐに普段の笑顔に戻ったモモに唯は内心胸を撫で下ろした。

 

「真白~! 遊ぼうよ~!」

 

 少し離れた場所でその水面を胸で叩きながら大きく両手を振るララ。ナナはその姿にクスッと笑い、唯は周りの迷惑を考えないララの姿に溜息をついた。

 

「行ってきなさい。これ以上騒がれても迷惑になるわ」

 

「ん……」

 

 唯の言葉を聞いて頷いた真白はララの元へ向かう為、身体の半分以上を水に浸けて動き始める。そして近づき続けていた時、微かに自分の足元に感じた水の流れにその足を止めた。そして背後の水面に黒い影が浮かんだ時、真白は素早くしゃがんで水の中へ潜った。

 

「初ワシワシ頂き! って、ありゃ?」

 

「あ、里紗! 真白あっちに泳いでってる!」

 

 黒い影の正体は里紗と未央であり、彼女達は真白の胸を揉む為にその機会を伺っていたのだ。以前の出来事で仲良くなって以降、稀に狙われる様になった真白。ララや春菜、時々唯などが2人の手に掛かる事があるも、真白は未だに彼女達の手を逃れ続けていた。水の中からの奇襲なら上手く行くと思っていた2人だが、今回も失敗の様である。

 

「真白は2人のあれを避けるの上手いよね!」

 

「私、何時も逃げられ無くて身体から抜けちゃうんですけど……何かコツとかあるんですか!?」

 

「……殺気?」

 

「さ、殺気って……」

 

 水面から顔を出した真白にララが近づいて声を掛ければ、お静が切実な様子で真白に質問する。だが濡れた髪を揺らしながら首を傾げて答えた真白の言葉に聞いていた春菜が複雑そうな表情を浮かべた。

 

 以前海で遊んだ時とは違い、公共の施設故に大掛かりな遊びは出来ない。だがそれでも水を掛け合ったり泳いだりとプールでの遊びを満喫し続けていた各々は楽しい時間を過ごし続けていた。……が、それは突然現れた。

 

『キャアァァぁ!』

 

「な、何?」

 

「おいリト! あれ見ろ!」

 

「み、水の化物!?」

 

 遊んでいた場所とは別のスペースに居たであろう人々が悲鳴を上げ乍ら走って逃げて来る姿が全員の目に映った。そして突然実はこの場に来ていた猿山が何かを指差しながらリトに声を掛ければ、他の者達も一緒にその存在を認識する。水の塊が浮き上がり、眼の付いた明らかに地球上には居ない筈の生物。一般人達は一斉にその姿を前に逃げだす中、宇宙人に慣れているリト達やそもそも自分が宇宙人である真白達のみがその場に留まっていた。やがて宇宙生物に詳しいナナが口を開く。

 

「あ、あれはアクアン星系の原子生物ミネラルン! 超レアな奴だぞ!」

 

「な、何でそんな奴がこんな所に居るのよ!」

 

「! そう言えば昨日、御門先生の患者さんが言ってました! 『ヌップル』って言うペットが逃げ出したって」

 

 お静の言葉に名前はどうあれそれが目の前の生き物であると全員が一斉に確信した時、ミネラルンが水を触手の様に動かして襲い掛かり始める。真白は傍にいた春菜を。ララはお静を。他にも身体能力の高い者達が地球人である者達を上手く引っ張る事で、一先ず水の中から脱する事に成功する。

 

「とにかくどうにかしなくてはいけませんね」

 

「ナナ! 何か弱点は無いのか!?」

 

「えっと……!?」

 

 リトの声に考え始めようとしたナナ。だが彼女にミネラルンの攻撃が迫った事でそれは中断される。辛うじて避けた先にはもう1本の水触手が待っており、ナナは軽々と絡め取られる様にして身体を持ちあげられてしまう。水故に締める苦しさは無いが、沈んでしまえば呼吸も出来なくなってしまうだろう。

 

「ナナ!」

 

「!」

 

 ララの声と共に飛び出した真白がミネラルンとナナを拘束する水触手の間に蹴りを放つ。強い蹴りは水とミネラルンの間を切断し、離れた部分は意志の無い水となってプールサイドに降り注ぐ。何とか着地出来たナナが顔を上げた時、真白へ目掛けて迫る数本の水触手がそこにはあった。

 

「シア姉!」

 

「させません!」

 

「させないよ!」

 

 真白目掛けて迫った水触手達は半分が途中から切り裂かれ、半分が炎によって蒸発する事で消え去る。そして真白が着地したすぐ傍に着地したのはヤミと……恭子であった。

 

「霧崎 恭子!?」

 

「マジカルキョーコちゃんだ!」

 

「な、何でここに?」

 

「開店記念でさっきまでRUNとKYOKOでライブ中だったんだよ。もうお客さんは居ないけどね」

 

 突然有名人が現れた事で驚く唯や喜ぶララに説明する恭子。彼女の言う様にルンも一緒に居た様で、ミネラルンを警戒する面々の中に気付けば混ざっていた。恭子がフレイム星人とのハーフだと知っているのは真白とルンのみ。故に彼女が炎を出した事にリトは戸惑うも、詳しく説明を聞いていられる猶予は無かった。

 

「……教えて」

 

「へ? あ、弱点か! えっと……そう! あいつの身体の何処かにある核に衝撃を与えれば気絶させる事が出来るかも知れない!」

 

「核、ですか」

 

「見え易いと簡単なんだけど……そうも行かなそうだね」

 

 ミネラルンを相手にするべき事は分かったものの、巨大な水を自由自在に操る相手の核を見つけるのは簡単な事では無い。ナナ曰くミネラルンは捕まえた相手を飽きるまで弄るのが特徴であり、捕まったら最後溺死する危険もあると言う。捕まらずに中にある核を見つける。厳しいが、やるしか無かった。

 

「真白! 私は水の中じゃ何も出来ないから、援護するよ!」

 

「真白、無理しないでください。……変身(トランス)人魚(マーメイド)!」

 

 恭子の言葉に頷き、ヤミが下半身を魚にして水の中に入ったのを見て真白はプールサイドを走り始める。現在ミネラルンの興味は行動を開始した3人に向いており、外に居る真白と恭子が水触手に襲われる事となった。が、真白の傍に近づいた水触手は恭子が放った炎によって一瞬で蒸発。少ない本数の水触手を避け乍ら、真白はミネラルンの身体の中を凝視する。

 

「リト! 俺達も何か出来ないのか!?」

 

「ナナ、核はどんな物か分かる?」

 

「さっきも言ったけどミネラルンはかなりレアな宇宙生物だからな……詳しくは知らないんだ。ただ水晶みたいに綺麗な核らしい」

 

「水晶……なら光に当てれば光るかも!」

 

「ルン! ライブでライトって使ったか!?」

 

「防水で明るい時でも輝ける凄いのがあった筈! 今持って来るよ!」

 

 戦う姿に見ている事しか出来なかった面々もナナの言葉を聞いて動き始める。ルンが取りに行く姿を見て春菜や唯達も手伝う為に後を追い始め、聞いていた猿山も走り始める。リトも手伝う為に動こうとした時、巨大な身体の中を泳ぐヤミが途中で息継ぎをしようと外に出たところを狙う水触手に気付いた。

 

「ヤミ!」

 

「!」

 

「……駄目」

 

 本日2度目の制止する真白の言葉。だが今この時その相手はミネラルンであった。プールサイドから気付けばヤミの傍に移動していた真白はヤミの助ける為に水触手を攻撃する。間一髪ヤミが捉えられる事無く水の中に戻ろうとした時、真白の真下にあった水溜りが大きく浮かびあがり始めた。そしてそれは真白の足首を掴む様にして引きずり込む。

 

「真白! くっ!」

 

 水に飲まれるその姿を見た恭子が助けようとするも、妨害する様に迫る水触手に自らの守るので手一杯になってしまう。ヤミが水の中を泳いで真白に近づこうするが、突然水流が2人の間を引き裂く様にして流れた事で強制的に距離を取らされて救出は失敗。気付けば真白を中心に外側へ水流を作って近づけなくしてしまう。ミネラルンは水自体が自らの身体故にそれが出来るのだ。

 

「シア姉様!」

 

「不味い! このままじゃ!」

 

「! 万能ツール!」

 

「ララ!?」

 

 モモとナナが焦る中、ララが目の前に出現させたのは発明を作る際にも使用するステッキの様な道具。様々な用途で使用できるそれを握った時、ララは迷いなく走り出していた。急接近するララに攻撃を向けるミネラルンだが、高い身体能力で全てを掻い潜ったララ。やがて万能ツールを横に伸ばした時、黒いビームがまるで剣の様に出現した。

 

「真白を……返して!」

 

 そう言ってララが水を切る様に振るえば、真白の傍にあった水が大きく裂かれる。すぐに戻ってしまいそうになる水を前にララが手を伸ばして真白の手を掴むと、その身体を引っ張りだすと同時に大きく上へと上がった。2人を追い掛ける様に水触手が空へと上がり、ララが一気に急降下すれば追い掛ける様に水触手も急降下。危険な追いかけっこが始まってしまう。

 

「あのままじゃ何れ捕まっちまう……!」

 

「! この野郎ぉぉぉ!」

 

「リトさん!?」

 

 大声を上げて飛び出したリトに驚いたモモだが、彼は止まらずにミネラルンの傍に近づき始める。地球人である彼は宇宙人である彼女達に比べれば余りにも非力である。が、それでも何もせずに見ている事が彼には出来なかった。ミネラルンの周りを少し走って向かう先は、誰かが遊びで持って来ていたのであろうビーチボール。そして彼がそこに到着するより先に、ルンや春菜達が総出で大きな丸いライトを持って戻って来る。

 

「怪我防止で線は着いて無いから、遠慮なく投げ込んで大丈夫だよ!」

 

「皆で行くよ! せーの、()!」

 

 大きな水飛沫を立てて水の中に沈んで行くライト。その光はミネラルンの身体を輝かせ、その中で一際輝く小さな点の様な物が全員の視界に映る。それを見た時、リトは我武者羅では無く狙いを定めてビーチボールを蹴り放った。凄まじい威力を持ったシュートは普通のボールに比べて弱いにも関わらず、ミネラルンの身体の中を高速で移動。やがて威力が大分弱まった頃、水晶の様に光る核に接触する。決して衝撃とは言えない威力だが、それでもミネラルンは大きく身震いする様に怯んだ。迫っていた水触手が一斉に唯の水となって落ちて行き、空かさず水の中に居たヤミが核の傍へ。金色の髪を巨大な黄金のハンマーへと変え、遠慮なく叩きつけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙生物が暴れた事など無かったかの様に活気を取り戻した『彩南ウォーターランド』。その隅でベンチに座る真白の目の前にペットボトルが差し出される。顔を上げて見れば、そこに居たのは心配そうな表情を浮かべるララ。少し離れた場所では普通の水に戻ったプールの中で遊ぶ里紗達や、真白と同じ様に別のベンチで座って休むリト達の姿があった。

 

「大丈夫?」

 

「ん……ありがとう」

 

 ララから差し出された飲み物を受け取り、真白は封を開けて中身を飲むために口を付ける。何度か喉を通して飲んだ後、息を吐いた真白の姿にララは笑顔でその隣に座り込んだ。何か話し掛ける事は無く、だがその傍で楽しそうに笑うララ。真白は開けた封を閉めて隣に置いた後、ララへ視線を向けた。

 

「……ありがとう」

 

「?」

 

「……助けてくれた……から」

 

 ベットボトルのお礼とは違うお礼にララは首を傾げる。だが真白の続けた言葉に納得した様に頷くと、ララは笑顔で口を開いた。

 

「真白が捕まった時、勝手に身体が動いたんだ。助けなきゃ! って、思った」

 

「……」

 

「きっとあれがリトでも春菜でも同じ事思ったと思う。友達だもん!」

 

「……」

 

「だけどね。本当は少し違ったんだ。私が思ったのは『私が真白を助けなきゃ!』って事だった」

 

「?」

 

 真白はララの言葉に首を傾げるが、ララは気にせずベンチから立ち上がると真白の前に立った。そして先程より何倍も輝く様な笑顔で言い切る。

 

「好きな人は自分の手で助けたい。他の誰かじゃ無くて、私の手で。そう思ったから」

 

 そう言ってララは片手を真白へ差し出す。その手を真白が取った時、ララは力を貸すのではなく真白の身体を自分の元へ引っ張った。そして距離が近づいた時、迷いなく彼女は行動に出る。

 

「んっ」

 

「!」

 

 顔が目の前になり、唇に感じる温かみのある感触を受けて目を見開いた真白。その時間は一瞬であり、2人の間では数分であった。やがてララが真白から離れた時、その頬に赤みを見せ乍らも笑顔をそのままに告げる。

 

「私のファーストキス、あげちゃった。大好きだよ、真白」

 

「……ララ」

 

 両手を繋ぎ、お互いの体温を感じられる程の距離で見つめ合う2人。気付けば雰囲気からもう1度しようとしたララだが、そんな行動を遮る様に声が掛けられた。

 

「ここだけ随分暑いのね?」

 

「……涼子」

 

「あ、御門先生」

 

 声のした方に視線を向ければ、そこには大胆な水着を着た御門の姿があった。プールに来るつもりの無かった御門だが、患者のペットが見つかったとなれば話しは別である。患者を連れて来るために赴き、どうせ来たのならと皆に交じる事になった御門。水着を着て更衣室からプール浴場に入れば、彼女の目に映ったのは2人が見つめ合う姿であった。……ララに取って幸いなのは決定的瞬間を彼女を始め、奇跡的に誰にも見られなかった事である。

 

「あ、御門先生ー!」

 

「シア姉! 遊ぼうぜ!」

 

「ララちぃ! 競走しようよ!」

 

 御門が来た事で彼女に気付いたお静が声を掛け、傍にいた真白やララにも声が掛かる。

 

「行きましょうか」

 

「うん! 真白、行こ!」

 

「ん……」

 

 歩きだした御門の言葉にララが笑顔で真白の手を引き、真白も頷きながら引かれた手を握って着いて行く様に歩みを進める。その後、真白は一緒に来た面々と共に夕方まで遊び続けるのであった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

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