「しょれでふぁ、今日からあたらしふクラスの仲間になる子を紹介しまふ」
真白やリト達が居る2年A組の教室にて、担任である骨川が告げると同時に扉の向こうに居るであろう転入生に入って来る様促す。音を立てて開かれた扉の向こう側に居たのは、長い金色の髪を揺らす無表情の少女。以前から彩南高校の図書館で見かけられる事があり、真白の傍を基本的に離れないヤミの姿であった。
「なっ!?」
「はぁ!?」
「ヤミちゃんだ!」
真白と交流のある者は必然的に彼女とも交流している。故にその姿を見て驚く声や歓迎する声がある中、ヤミは静かに骨川の隣。教壇の前に立って一度お辞儀をした。
「ヤミです。宜しくお願いします」
「……」
特に驚いた様子も無くヤミの姿を見つめる真白にヤミも視線を向け、2人は見つめ合い続けた。2人の姿に生徒達は一様に気付くも、担任である骨川だけは気付かずにヤミの席について話そうとする。だがその話題が上がった時、ヤミが骨川に向けて口を開いた。
「あの席が良いです」
「ほぇ? しかしもうあのしぇきは彼の場所なんであって」
基本的に学校の席順とは縦一列に同性が、横には異性が座る者である。余った男女で2人程差が出れば別だが、2年A組は問題無く交互に並んでいた。が、ヤミが指定した場所は真白の隣。そこは男子生徒が座っており、自分が指差された事に驚く中で骨川が受け入れられないと言葉を発した。だがその言葉を言い終える前にヤミは真白の傍を通って彼の元へ。転入生の幼げな美少女に見つめられて緊張した彼だが、真白には見えない様に机の端から伸ばされた手を見て硬直する。それは鋭い刃であり、緊張から掻いていた汗は一瞬にして冷や汗となる。
「変わってもらえますか?」
「は、はい喜んで!」
「……」
「許可は貰いました」
ヤミの言葉に思わず席から立ち上がって直立する彼の言葉に真白がジト目になる中、ヤミは気にした様子も無く骨川へ振り返りながら告げる。本来余り認められる事では無いが、そこに居た生徒が移動する意を示したのなら許可しない理由も無い。骨川は仕方なさそうに彼へ移動する様に指示を出し、机を移動させる。そしてヤミにはヤミの机を用意してその場所に移動させた。……これで真白とヤミは隣同士となった。
「い、良いのかな……?」
「無茶苦茶よ」
明らかに真白の隣を奪い取ったヤミに思わず引き攣った笑みを浮かべる春菜と頭を抱える唯。真白の隣に座ったヤミは「よろしくお願いします」と改めて真白に告げ、真白は静かに頷いて担任である骨川に視線を向けた。その後、HRが終わるまで震えの止まらない男子生徒。隣となった者が不思議に思うも、彼が見た事実を伝える事は無かった。
ヤミが彩南高校の生徒になった事で、今まで以上に堂々と共に昼食などを過ごす事が出来た真白達。途中ヤミの転入を許可した校長に襲われかけたものの、ヤミと真白の2人でその身体に攻撃を加えて空の彼方に吹っ飛ばす等の時間を経て、ヤミの初登校日は終わりを迎えようとしていた。真白が結城家へ向かう為に荷物を持てば、ヤミも今までは無かった鞄を手に真白の様子を伺う。そして一度目を合わせた後、2人は同時に教室から姿を消した。廊下を通り、下駄箱で靴を履き替え、校門から外に出た2人。だがそんな2人を待っていた様に1人の女子生徒が道を塞いで立っていた。
「こんにちは、真白先輩♪」
「……」
「誰ですか?」
笑顔で挨拶をする女子生徒……芽亜の姿に真白は無表情乍ら足を止める。ヤミは少し訝し気に何方でも無く質問するが、芽亜は何も言わずに笑顔のままであった。彼女は今、真白の頭の中が少々混乱している事を知っているのだ。夢の中で起きた出来事は結局夢であり、あの時名乗った事を覚えていても本当かどうか分からない。何故か知っている気がして、でもそれは知らない筈の事。真白が混乱する中、やがて芽亜は口を開いた。
「そう言えば自己紹介がまだでした! 私は黒咲 芽亜って言います!」
「!?」
それは夢の中で名乗った名前であった故、微かに目を見開いた真白。表情は変わらないまでも、彼女が驚いている事が分かった芽亜は頬に手を当てて「素敵」と呟いた。
「真白に何の様ですか?」
「もう、そんなに冷たくしないでよ。ヤミお姉ちゃん♪」
「! お姉ちゃん……?」
「そう。
「!? それは……
真白の前に出て告げたヤミの言葉に残念そうに、だが嬉しそうに告げた芽亜。彼女の言葉にヤミが驚く中、真白とヤミに芽亜が告げ乍ら見せたのは髪を刃にするヤミと同じ能力。
「ヤミお姉ちゃんは真白先輩と家族でしょ? なら、私も真白先輩の家族みたいなものだよね?」
「……」
「ねぇ、ヤミお姉ちゃん。一緒に結城 リトを殺そ? 私が応援してあげる。だから……!」
芽亜の言葉が最後まで続く事は無かった。彼女の告げた結城 リトを殺すと言う言葉に反応して動いた真白が容赦なく芽亜へ攻撃を仕掛けたからである。素早く後ろに下がってその攻撃を避けた芽亜は冷たくも睨む様に自分を見つめる真白の目を見る。
「本当に素敵♪ ねぇ、ヤミお姉ちゃん。結城 リトを殺して私達と一緒に宇宙に帰ろうよ。こんな地球の陽だまりじゃ無い、深淵の闇の方が絶対に合ってる。真白先輩の事なら安心して? 一緒に闇に連れて行って染めてあげれば良いんだよ。最初から主もそれを望んでた。『白は輝く限り美しく、だが他の色に染まり易い』ってね」
「貴女は……」
「ふふ、また会おうね。ヤミお姉ちゃん。真白先輩」
芽亜はヤミに長々と告げた後に軽く手を振って大きく空へ飛びあがる。真白は一瞬追おうとするも、ヤミが動かない事でその足を止めた。真白と再会するまでの間、ヤミはその名の通り闇の人間として生きていた。真白と再会して地球で過ごす内に当たり前となった明るい生活。だが彼女の言葉でその明るさに影が差し始めたのを嫌でも感じてしまったヤミ。自分は今の様な生活を送るべきでは無いと考え始めた時、暖かい何かにヤミの手は掴まれる。
「……一緒に……居る」
「真白……ですが、私は」
「……守る、から」
ヤミは真白の言葉で嘗て美柑に言われた言葉を思いだす。それは泊まった事で一緒に同じ部屋で眠っていた時、真白が再会する前まで何をしていたのかと言う話で盛り上がった時の言葉。
『真白さんは何よりも傍に居る人が離れる事が怖いんだよ』
『傍に居る人が、ですか?』
『うん。ヤミさんは前に真白さんと一緒に居たんでしょ? でも離れ離れになっちゃった。よくは知らないけど、真白さんの本当の家族も同じみたい。そんな事があったから、真白さんは傍に居る誰かが居なくなるのを恐れてる。だからこそ、私達は絶対に離れないで傍に居てあげたいんだ』
真白の傍に居続けたからこそ分かる美柑の考え。それは今目の前で自分を離しはしないとばかりに手を握る真白の姿を見れば、嫌でも納得出来てしまう。戦闘に置いての守るならば真白よりも強いヤミだが、真白の言った守るには他の様々な物が含まれている事はヤミにも分かった。故にヤミは真白の手を握り返す。
「大丈夫です、真白。前にも言いました。『もう貴女を離しません、奪わせもしません』と。貴女の傍から私は二度と離れません」
その言葉に強く握る真白の手から微かに力が抜ける。だが今度はヤミがその手を握り直して真白と視線を合わせた。その目には強い思いが籠っており、真白は微かに頷いて彼女の言葉を受け止める。……そして2人は残りの帰路を手を繋いで歩くのであった。
『何のつもりだ、メア。何故あの娘の目の前で目的を明かした』
彩南町が見渡せる建物の屋上にて、以前と同じ様に影と話をする芽亜は影の言葉に夜景を眺めながら口を開いた。
「別に深い意味は無いよ? 唯、丁度良かっただけ」
『あの娘に目的を知られてしまえば、金色の闇が結城 リトを抹殺しても見放さなくなる可能性が出て来る』
「……ねぇ、主。私1つ、分かった事があるんだ」
『分かった事? 何だそれは』
芽亜の言葉に表情は見えずとも何処か苛立ちの籠った声音で聞き返した影。芽亜はその質問に微かに笑みを浮かべながら答える。
「ヤミお姉ちゃんが結城 リトを殺しても、あの人は家族を見放さない。ううん、見放せない」
『……』
「だったらヤミお姉ちゃんと一緒にこっちの世界へ引き込んじゃえば良いんだよ。地球には『友達の友達は友達』って考えがあるんだから、『家族の家族は家族』でも良いと思うの! 方法は違うけど、主はそうするつもりだったんでしょ?」
『…………勝手にしろ。目的を達する事が出来るなら、構わない』
そう言って消える影を見る事も無く、芽亜は変わらず彩南町の夜景を眺め続けていた。
各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?
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サブタイトルの追加
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主な登場人物の表記