【完結】ToLOVEる ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第80話 平和な時間を壊す襲撃

 ヤミの初登校日から数日。芽亜からの接触も無く、平和に過ごしていた真白達は静かに授業を受けていた。黒板にチョークが当たる度になる音を聞きながら、そこに書かれた内容をノートに写す時間。中には授業に集中出来ずに話している者達が居る中、唯や春菜と言った真面目な者達は黙って写し続けていた。真白とヤミは普段から一緒に居る為、この時間に話さなくてはいけない事等無い。故に真面目に授業を受ける。……やがて鳴り響いたチャイムの音と同時に、座っていた男子生徒が立ち上がった。

 

「昼だ!」

 

「まだ終わって無いぞ。日直」

 

「はい。起立! 礼!」

 

 昼食の時間故に立ち上がった男子生徒を注意した教員が唯に視線を向ければ、彼女は返事をして授業の締めとなる言葉を告げる。立ち上がり、頭を下げれば一気に解放されて騒がしくなる教室内。ノート等を片づける真白の元に、春菜が近づいた。

 

「真白さん。ヤミちゃん。今日は私達と一緒に食べない?」

 

「私は問題ありません」

 

「ん……」

 

 春菜の誘いに一度ヤミへ視線を向けた真白。彼女が頷きながら答えれば、春菜に視線を戻して頷く事で肯定の意を示した。荷物は机に置いたまま、お弁当のみを持って立ち上がった真白とヤミは春菜の後ろを着いて歩く。場所は教室内であり、3人を待っていたのは里紗と未央であった。

 

「お、来た来た!」

 

「何か一緒に食べるの、久しぶりだよね!」

 

 笑顔で迎える2人は既に自分の机とその周りにあった机の向きを変えており、5人分の席を確保してあった。どうやら2人が断る事は考えていなかった様である。向かい合う様に机が4つあり、1つだけ横からくっ付けただけの席。里紗と未央はお互いに向き合う形で端の席に座っており、真白とヤミが向かい合う様に。そして春菜が4人を見渡せる様な位置の席へ座る。

 

「にしてもヤミヤミが来た時は驚いたよね~!」

 

「まぁ、1年生にもララちぃの妹ちゃん達が入ったらしいから可能性はあったけどね」

 

「手続きは真白さんがやったの?」

 

「ん……校長」

 

「あの危険人物の元に自ら出向く事になりましたが、仕方ありません」

 

 彩南高校の校長がどんな人物なのかは説明しなくても在籍しているだけで嫌でも理解する事になる。以前からヤミを知り、彼女に襲い掛かる事もあった彼がヤミの入学を拒否する訳が無かった。校長室に出向いた際、襲い掛かって来た校長を地に伏せて許可を貰ったのは2人にとってまだ新しい思い出である。ヤミの言葉に乾いた笑みを浮かべる春菜達だが、里紗がここぞとばかりにヤミへ話掛けた。

 

「それでどう? 学校は。楽しんでる? 分からないところとか無い?」

 

「以前から地球の歴史等については調べていましたので、その辺りは問題ありません。他の分からない事についても真白に教わっているので」

 

「良いなぁ~、真白って頭良さそうだし。今度私も教えて欲しいかも!」

 

「真白が教えてる姿、あんまり想像つかないんだけど」

 

 里紗の言葉に春菜は何となく真白が勉強を教える姿を想像してみる。無口な彼女がどの様にして勉強を教えるのか……何時まで経っても無言な彼女しか思い浮かばなかった。何処と無く彼女の教え方が気になりながら、お弁当に箸を入れた時。まるで交代制の様に未央がヤミへ質問する。

 

「やっぱり真白の傍に居たくて入学したの?」

 

「はい。これで今まで以上に守る事が出来ます」

 

「……過保護」

 

「いや過保護って言うか……本当にヤミヤミは真白の事大好きだよね」

 

 迷う様子も無く答えるヤミと、彼女の言葉を過保護と捉える真白の姿に一瞬顔を引き攣らせながらも優しい表情でヤミを見る里紗。その言葉にヤミが可愛らしく首を傾げるが、聞いていた3人からすれば彼女の言葉は間違い無く真白が好きで無ければ言えない言葉であった。自覚が無いのは本人とその家族だけである。

 

「そう言えば真白は好きな人とか居ないの?」

 

「…………」

 

「居ないんだね」

 

 話の流れから未央が質問すれば、考える様に手を止めて黙り続ける真白。心当たりがあると一瞬思ったものの何処と無く違うと感じた春菜が口を開けば、真白は頷いて肯定した。そしてまた流れから里紗と未央もお互いに好きな人について話をするが、特に思い付く相手はいない様子である。里紗曰く、『学校の男子は皆お子ちゃま』との事である。

 

「春菜は?」

 

「へ!? わ、私は……」

 

「お、その反応は居る感じ? 誰々?」

 

 質問のターゲットにされてしまった春菜は2人からの質問に顔を赤くしながらも、最後までその相手を明かす事は無かった。だが真白は春菜が微かに自分達の話に聞き耳を立てているリトの様子を気にしていた事に気付き、興味無さそうに昼食を再開。ヤミは横目で焦る春菜を見ながら、真白と美柑が作った料理を美味しく食べるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後。真っ直ぐに帰ろうとした真白が足を動かそうとした瞬間、唯に話し掛けられた事でその足を止める。

 

「少し良いかしら?」

 

「?」

 

 突然の事に首を傾げた真白。唯は大事な話があると真白に告げ、教室では無い別の場所へ行きたいと告げる。真白は短い間の後に頷いて了承すると、ヤミへ先に帰る様に促して唯と共に教室を後にした。教室に残されたヤミは結城家で待っているであろう美柑の姿を思い浮かべ、真白と唯が去って行った方とは違う道を通って下駄箱へ向かう。その途中、中庭付近を通った時。ヤミの視界に3階の渡り廊下を歩く唯と真白の姿が映った。

 

「あの先は……!」

 

 何か違和感を感じたヤミだが、それが何かを知る前に背後に立つ誰かの気配に振り返る。少し離れた場所、そこに芽亜は笑って立っていた。

 

「こんにちは、ヤミお姉ちゃん!」

 

「また貴女ですか」

 

 芽亜の挨拶に警戒心を見せ乍ら返したヤミ。だが芽亜は彼女が警戒している事等気にも留めず、笑顔でその場に立ち続けていた。何をしたいのか分からなかったヤミだが、突然真横から自分へ向かって伸びる手に気付いて間一髪躱す。その手は彩南高校の制服を着た男子生徒のものであり、気付けばヤミの周りには沢山の生徒達が立っていた。

 

「ヤミお姉ちゃんの強さ、私に見せて♪」

 

「!」

 

 芽亜の言葉と同時に飛び掛った生徒達。その顔は正気を失っており、その原因が芽亜である事は明らかであった。雇われて襲い掛かる相手なら、命を刈り取れば良い。だが操られているのなら、殺す訳には行かない。過去の自分なら容赦無く殺していたが、真白とした約束を守る為にヤミは誰かを傷つける訳には行かなかった。

 

「ふっ!」

 

 髪を拳にし、手加減した打撃で相手を気絶させる。四方八方から襲い来る生徒達だが、ヤミはその全ての攻撃を躱して襲い来る生徒達を無力化して行った。徐々に減っていく生徒達の姿を見て嬉しそうに芽亜は笑う。

 

「素敵♪ 地球に居ても、ヤミお姉ちゃんの腕は全然衰えて無い!」

 

 彼女の声を聞いた時、ヤミは目の前に立つ男子生徒の頭を踏み台に大きく飛びあがる。そして片手を刃にして芽亜へ一気に迫った。芽亜の笑みが表情だけとなり、長いおさげが刃となってヤミの攻撃とぶつかり合う。金属が擦れる耳障りな音と共に鍔迫り合い、やがてヤミが後ろに飛んで地面に着地。背後から襲う生徒を髪を変身させて一気に薙ぎ払った。

 

「私は貴女と共に行きません。例え地球(ここ)が私の居場所じゃないとしても、彼女の居る場所が私の居場所です」

 

「うん、分かってるよ。だからね? 真白先輩にも来てもらうの!」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 唯の後を追って歩き続ける真白が辿り着いたのは使われていない空き教室であった。唯が一体何の話をする為にここまで連れて来たのか分からなかった真白だが、教室に入ると共に全てが突きつけられる。

 

「ぅ、あ……ゆ……ぃ……」

 

「……」

 

 突如振り返り、唯はその腕を真白の首に伸ばした。地球人であると共にか弱い女性である筈の唯は軽々と真白を片手で持ち上げ、真白は突然の事に目を見開くと共に苦しみに悶える。唯の腕を両手で掴んで話そうとするが、『彼女が壊れない程度の力』ではどうにもならない。そして微かに合った彼女の目は、光を失っていた。

 

 徐々に薄れて行く思考。解放されようと伸ばした腕が力無く落ち、真白の目が閉じる。……そして唯が手を離した時、真白の身体は地面へ落下した。光も感情も無い冷たい目で真白を見下ろす唯が再び真白へ手を伸ばそうとした時、大きな破壊音と共に教室の壁が崩れる。

 

「あ……ぁ……真……しろ……」

 

 崩れた壁の向こうに立っていたのはヤミであった。その服装は少々ボロボロになっており、彼女の視界に映るのは唯と地面に倒れる真白の姿。絶望とも言える表情で目の前の出来事を認識しようとする中、ヤミの背後に楽しそうな表情で芽亜が現れる。

 

「真白先輩が一緒なら、ヤミお姉ちゃんは来てくれるよね? だって、ヤミお姉ちゃんの居場所は真白先輩なんだから」

 

 彼女の言葉にヤミが反応する事は無い。数少ない分かっている事は、唯が芽亜に操られている事。そして真白はまだ生きている事だけであった。連れて行こうとする真白を殺す筈が無いと分かっている為である。が、ヤミはそれでも動けない。守ろうと一緒に居た相手が意図も簡単に傷つけられてしまった故に。嫌でも突きつけられる自分の無力さ故に。そしてそんなヤミに芽亜は徐々に足を進めて近づくと、その耳元で囁く様に告げた。

 

「1つ教えてあげる。結城 リトは真白先輩の事が好きなんだよ」

 

「!」

 

「確かに今2人は家族かも知れないけど、血が繋がってる訳じゃない。何より2人は異性! もし結ばれれば、ヤミお姉ちゃんの居場所は結城 リトに取られる事になるんだよ」

 

 それは真っ赤な嘘であった。真白や美柑はリトが好きな人を知っている。だが彼の恋愛に興味の無かったヤミがその嘘を嘘と知る手段は無かった。芽亜がクスクスと笑いながらヤミの耳元から離れ、指を鳴らす。途端に糸の切れた人形の様に唯は倒れ、芽亜はヤミに背を向けて歩き始めた。

 

「結城 リトを殺せばヤミお姉ちゃんは自分の居場所を守れる。地球には居られないかも知れないけど、その時は私達が迎えてあげる。素敵でしょ?」

 

 その言葉を最後に彼女はこの場から姿を消した。ヤミが落ちる髪で目元を隠し、行動も出来ずに立ち続ける中で目を覚ました唯。彼女は寝起きの様にボーっとした思考のまま、頭を上げた。

 

「ぁれ……ここは? ! 真白!」

 

 見慣れない空き教室に何故倒れていたのかも分からぬ内に、隣に倒れていた真白の姿を見て驚きながらその身体を揺らす。焦る中で再び周りを見渡し、崩れた壁と立ったまま動かないヤミの姿に気付いた唯は声を上げた。

 

「ヤミちゃん! 一体何が……と、とにかく真白を保健室に運ばないと!」

 

 混乱しながらもするべき事を考えて言う唯の言葉にようやく動き出したヤミ。だがその表情は見えず、静かに彼女の髪が真白の身体を包むと自らの手元に寄せて横抱きに抱える。そして長い薄銀色の髪が床に向けて落ちる中、彼女は何も言わずに真白と共に唯の前から姿を消した。それは瞬きをする一瞬の出来事であった。

 

「何……何なのよ……」

 

 操られていた記憶の無い唯は破壊された空き教室で1人、訳も分からず呟くのであった。




ストック終了。また【5話】or【10話】完成をお待ちください。

と普段なら書くのですが、今回は投稿中に【10話】完成。10日間、延長します。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記
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