【完結】ToLOVEる ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第96話 妹CAFEで休日を

 土曜日。真白は昼過ぎにある約束をしていた為、結城家を出る。数日前にナナとメアが本当の友達になって以降、彼女は主と慕うマスター・ネメシスに『自由に過ごして良い』と言われた事を真白達に伝えた。心からナナと共に笑う彼女の姿は正しく人であり、可愛らしい少女。ヤミと真白は完全には解けないものの、殆ど警戒を解いていた。……故に真白はこの日、ヤミと共にでは無く1人で外出する。最初はヤミも着いて行こうとしたが、美柑の誘いがあったために真白が其方を優先させたのだ。

 

 商店街へ入り始めれば徐々に人混みが増えて行き、やがて何処を見ても誰かが映る様になる。真白は人混みが苦手である為、彼方此方を見た後に我慢するかの様に俯き始める。するとそんな彼女に近づく人影があった。真白の背後にゆっくりと近づき、胸辺りまで上げた両手の指が縦横無尽に動き出す。そして人影が真白へ一気に襲い掛かった時、真白は素早く振り返って身体を回転させながらその相手の背後に回った。

 

「へ?」

 

「……里紗」

 

 華麗に躱されたと言うべき現実に空を揉みながら驚き戸惑う里紗を前にして、真白は微かに目を細めながらその名前を呼ぶ。ゆっくりと振り返った里紗の目に映ったのはジト目で自分を見つめる真白の姿。里紗は乾いた笑みを浮かべながら後頭部を掻き、「ごめんごめん」と謝り始める。

 

「今回は行けると思ったんだけどなぁ~」

 

「……帰る」

 

「ちょ! 待って待って! 今日はもうしないから、ね?」

 

 残念そうに呟く里紗に真白は背を向けて歩き始める。その光景に焦った様子で里紗は真白の前へ移動すると、両手を合わせて拝む様に引き止めた。両目を閉じていた里紗が徐々に片目を開けて真白の顔を確認しようとすると、真白は普段通りの無表情で静かに里紗を見つめていた。

 

「ま、真白?」

 

「……未央……待ってる」

 

「! よ、よし! それじゃあ改めて未央のお店に案内しよっか!」

 

 一瞬呆気に取られた里紗は真白が大して気にしていない事が分かり、安心しながらも笑顔で告げる。真白の頷く姿を確認して歩き出した里紗が向かう場所は親友である未央がアルバイトをするカフェ。少し特殊なお店なのだが、真白には内緒にしていた里紗は楽しそうに彼女を先導する。……やがて2人が辿り着いたお店の看板には大きな文字で『妹CAFE』と書かれていた。気にした様子も無くお店へ入る里紗とは対照的に、真白はその看板を見て首を傾げた。

 

「真白~?」

 

「……」

 

 お店の前で足を止めていた真白は、彼女が背後に居なかった事で気付いた里紗の声に歩みを再開する。里紗が笑顔で扉を開き、真白がお店の中に入れば……数人のメイド服を着た少女達が頭を下げて出迎える。

 

≪お帰りなさい! お姉ちゃん!≫

 

「……」

 

「ここが未央の働くお店。所謂メイド喫茶って奴だね。妹限定だけど」

 

 出迎えた少女達の数人は頭を上げると共に表情の変わらない真白の姿に驚き、そんな彼女達に気付く事無く里紗はお店の紹介をする。崩れるかも知れないと期待した真白の表情が全く変わらない事に内心ガッカリしながら。

 

「あ、いらっしゃい! 真白お姉ちゃん!」

 

 来客とそれに伴う少女達の声で接客をしていた未央が2人の存在に気付くと、近づきながら声を掛ける。既に何度かお店に着ている里紗は他の少女達に顔を覚えられている様で、未央の登場に道を開けていった。そして未央が2人の前に立つと、真白に笑顔で話し掛ける。同じ年代で学校でも友達関係である相手に姉と呼ばれた真白はジッとその姿を見つめ、未央は真白の反応を待つ為に同じ様に待ち続ける。結果、お店の中には何とも言えない沈黙が訪れた。

 

「えっと……真白?」

 

「……妹?」

 

「え? あ、そうそう。今の私は真白お姉ちゃんの妹な訳! って、はぇ?」

 

 不安そうに里紗が声を掛けた時、真白は未央の姿を見つめたまま首を傾げて質問する。未央は一瞬驚いた後に頷いて肯定し始めるが、突然頭に乗った真白の手に呆然とした。それは真白なりに未央を妹として接している証明であり、だが頭を撫でられると思っていなかった未央は恥ずかしさから顔を真っ赤にしてしまう。何時もの様なノリで返す事が出来ず、唯恥ずかしそうに受け入れる未央の姿にお客や従業員の内数人は心を打たれた。

 

「はっ! 真白ストップ! 未央が蕩けてるから!」

 

「はにゃ~」

 

「?」

 

 目の前の光景に吃驚していた里紗は我に返ると同時に真白を止める。撫で続けられて言葉通りに蕩けてしまった未央の姿を前に、真白は手を止めて再び首を傾げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『妹CAFE』の客席で里紗と真白は互いに向かい合って座り、注文した飲み物を置いてお店の中を眺めていた。基本的に来店している客層は男性が多いが、今現在居る里紗や真白の様に女性の姿も無い訳では無い。恰好は同じでありながら様々な属性の妹を演じる従業員達に鼻の下を伸ばす者や可愛らしく見守る者達が居る中、真白と里紗は特に特別な思いを抱く事無くそこに居続けていた。

 

「一度連れて来たかったんだよね~。以前結城は連れて来たからさ」

 

「……リト?」

 

「そ。しつこい男にナンパされてさ。近くを通りかかった結城に助けを求めて、そのお礼に」

 

 グラスの中にある氷をストローで転がしながら里紗は話す。彼女の言葉通り、リトは一度この『妹CAFE』へ里紗に連れられて来店していた。その後色々あったのだが、里紗はそれについては話さない。しかし代わりにその時の出来事を思い出した里紗は真白へ質問する。

 

「ララちぃが言ってたけど、今結城の家に住んでるんでしょ?」

 

「ん……」

 

「結城って学校でもあんなだけどさ、家でもよく転ぶ訳?」

 

「……ん」

 

 最初の質問に頷いて肯定した真白は、落ちる髪を少し掻き上げ乍らグラスに入ったストリーへ口を付ける。そして次にされた質問に真白は口を付けたまま目だけを上げた後、ストローから口を話して頷いた。一瞬その動作や上目遣いに里紗はドキッとしながらも、彼女の答えを聞いてリトが転んでいる姿を想像する。大概彼が転ぶ際には何かえっちぃ事が起きる。それを理解していた里紗が想像したのは……真白の股間に顔を埋めるリトの姿だった。

 

「はぁ、気を付けなよ? 結城も男な訳だしさ」

 

「……平気」

 

「そうそう。もし結城が狼になっちゃう様なら今頃ララちぃ達はガブリ! だと思うな」

 

 2人の会話にお盆と料理を持って現れた未央が入りながらテーブルへ置き始める。既に昼食を済ませていた2人が頼んだのはデザート系統であり、里紗はケーキを。真白はパフェを注文していた。目の前に置かれたケーキに期待した様子でフォークを手にした里紗は「それもそっか」と言って一口。その表情に笑顔が浮かぶ。同じ様に目の前に置かれたパフェへスプーンを伸ばして口元へ運んだ真白の表情は……微かに微笑んだ。

 

「!」

 

「おぉ!」

 

「?」

 

 以前から真白の好物が甘い物である事を知っていた2人は今度こそ笑顔が見れると期待していた。故に満面とはいかずとも微かに微笑んだ真白の姿に里紗は驚き、未央は目を輝かせる。本人は特に意識している訳では無い様で、2人の反応に首を傾げた。

 

「美味しい? お姉ちゃん」

 

「ん……」

 

「えへへ!」

 

「なんか未央、楽しそうね~」

 

 パフェを食べる姿に質問した未央は真白が肯定する姿を見て何も言わずに頭を差し出した。彼女が求めている事は言葉にしなくても伝わり、真白は何も言わずに未央の頭へ手を伸ばして撫で始める。嬉しそうな未央の姿を見て里紗も楽しそうに声を掛け、その後未央はアルバイトの途中故にその場を離れる事となる。

 

「それ、美柑ちゃんに何時もやってるの?」

 

「……昔……今は、しない」

 

 数回しか里紗と美柑は会っていない。だが回数が少なくてもその性格は覚えており、頭を撫でられれば恥ずかしそうに受け入れるか逃げるイメージが里紗には浮かんだ。そしてケーキを再び食べようとした時、真白の目が自分の食べているケーキに向かっている事に気付く。

 

「少し食べる?」

 

「…………ん」

 

 無表情のまま長い間を置いて頷いた真白の姿に里紗は彼女の中で少しの葛藤があった事を悟る。そして真白へ分ける為フォークを動かそうとして、里紗はその手を止めた。少しだけ悪戯をして見たくなったのだ。里紗は再び手を動かして小さく分けたケーキをフォークで刺し、そのまま真白へ差し出し始める。

 

「はい、あーん」

 

「……ぁむっ」

 

 だが真白にとってその行為は一切恥ずかしい事では無かった。元から食べさせ合う事に羞恥心を感じておらず、更に結城家ではララ等に何度もされているのだ。何事も無く自分の差し出したケーキを食べる姿に里紗が呆気に取られる中、真白は何度か咀嚼をして飲み込んだ後に小さく頷いた。

 

「……あーん」

 

「私!? えっと……あーん」

 

 今度は自分の目の前に差し出されるパフェの一口分に里紗は驚きながら、やがて真白と同じ様にそれを食べる。ケーキとは違う別の甘さを感じ乍ら、弄れなかった事に里紗は肩を落とした。女子高生同士で食べさせ合う行為を主に未央で慣れていた里紗は、以外にも別の人物だと緊張してしまうと言う事実を始めて知りながらケーキを食べ終える。そして気付けば2時間程お店の中に居た2人はお互いに確認し合い、出る為に席を立った。

 

「あ、もう帰るの?」

 

「そのつもり。会計お願い」

 

「……美味しかった」

 

 2人が出入り口に近づいた事で気付いた未央が声を掛ければ、里紗はそう言ってレジの前に立つ。レジは友人関係にある未央とは違う人物が対応し、元々今回の誘いは里紗が支払いをする前提で『未央の働く店を紹介したいから来て欲しい』と頼まれていた為に真白の分も里紗は会計を済ませる。その後真白は食べた2つの味の感想を告げて、里紗は未央に一声掛けてお店を後にした。

 

「よし。それじゃあ帰ろっか?」

 

「ん……ありがとう」

 

「気にしない気にしない! 何だったらまた来よう。今度は春菜とかララちぃも連れてさ」

 

 里紗の言葉に真白は頷き、そして2人は別れる。その後里紗は彩南町を適当に歩き、真白は真っ直ぐ結城家へ帰宅して美柑と夕飯の支度を始めるのだった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

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