そして、時間がかかってすまん!
待ってた人がいたら心から謝る。
んじゃ、これ以上は長くなるから、行ってらっしゃい。
視点:梓
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
新たな友と出会い、友たちとの友情を感じている時でした。
そんな、地面が揺れるような轟音と共に、何やら得体の知れない邪悪なものを感じた。
そちらの方向を見ると、
「なぁ!!」
あまりの壮絶な光景に、驚愕の声が漏れてしまった。
遥か遠くの場所で、地面が青色に、ぼんやりと、しかし強く光っている。
あれには、見覚えがある、どころか、直前まで目の前に広がっていた光景。双葉さんとの決闘中、私達を囲んでいた青色の炎。それに間違いない。
しかし、それ以上に目を引いたのが、まっ黒な雲が広がる空に、浮かび上がった巨大な絵。以前何かの本で見たことがある。確か、ナスカの地上絵。そのうちの一つ、『巨人』。
そして、その巨人が実体化したような、巨大な一つ目の、
「が……ガチャ……ピ……」
それらの光景と、先程までの事実から、分かることは一つ。
誰かが先程の私と同じように、『闇の決闘』とやらを行っている。
しかも、私の行ったものとは比べ物にならないほど、過酷な決闘に間違いない。
瞬時にそれを確信し、立ち上がりました。
「待て梓!」
シエンがそんな私の手を取り、制止してきました。
「あれはかなりヤバい。近づくな!」
シエンだけでなく、五人もそんな目を向けている。当然でしょう。私ですらかなりの危険を感じるものに、決闘モンスターズの精霊である彼らが何も感じないはずは無い。それが、危険ならなお更でしょう。
しかし、だとしてもです。
「今、目の前で誰かが苦しんでいる。それを傍観することなど、できるはずがない!
「梓!!」
シエンの声が聞こえた瞬間には、私は走り出していた。
視点:クロウ
「『
鬼柳の召喚した、地縛神とかいう超巨大なモンスターの腕が、遊星に向かって伸びていく。しかも、遊星を守るために飛び上がった『スターダスト・ドラゴン』をすり抜けて。
ヤバい! ただでさえダメージが実体化するこの決闘で、あんなバカでかい腕がぶつかったりしたら!!
「遊星!!」
「遊星!!」
俺と、ヘリの上にいるジャックが同時に叫んだ時だった。
ガタッ
遊星の乗っていたDホイールが変な音を立てたと思った直後、そのまま前輪が壊れて、遊星が投げ出された。
Dホイールの故障。それによって、自動的に決闘も中止になった。
「Dホイールの性能の悪さに救われたな」
鬼柳が遊星に近づき、二言三言話した後、そのまま走り去っていった。地縛神は地面に消えて、燃えていた地上のライディングコースも消えた。
『遊星!!』
全てが消えたところで、ラリー達三人が遊星に近づいて、仰向けの体勢にすると、
『!!』
金属片が、遊星の腹に深く刺さってやがる!!
「遊星……」
「触るんじゃねえ!!」
Dホイールで近づきながら叫んだ。ラリーが金属片に触ろうとしたが、無暗に触ったら余計にヤバい。ちゃんとした医者に診てもわらねーと。
「俺のDホイール乗せろ! 俺がマーサハウスに連れていく!」
そう言って、三人は遊星を支えて俺のブラックバードに乗せようとした。
「待って!!」
急に、そんな悲鳴みたいな甲高い声が聞こえた。
そっちを見ると、
「な、お前は!」
そいつは、昼に俺とライディング決闘を繰り広げた男、水瀬梓。
俺達が驚いているうちに、そいつは遊星に近づいた。
「そのまま寝かせて下さい」
そう三人に指示を出した。けど突然現れたからまだ驚いてやがる。
「早く!!」
そのでかい叫び声で、三人はようやく遊星を地面に仰向けに寝かせた。
そして、
「……」
梓は、遊星に手を触れようとしたけど、その手を止めて、顔をしかめた。そして、その拳を握った。
(彼に罪は無い……彼に罪は無い……彼に罪は無い……彼に罪は無い……彼に罪は無い……彼に罪は無い……彼に罪は無い……彼に罪は無い……彼に罪は無い……)
(彼に罪は無い! 助ける!!)
何か苦悩してたみたいだったけど、しかめた顔を元に戻しながら、作業を始めた。ラリー達三人に指示を出しながら、自分も色々と手を動かす。そして、
「三人とも、彼の両手足を押さえて」
言われた通りにしたところで、梓は遂に、金属片に手を伸ばした。
「ぐぅ……!」
遊星が呻き声を上げた。
「痛みで暴れるかもしれません。強く押さえておいて下さい」
そういうことか。理解した所で、また金属片をしっかり持つ。
「いきます」
ズブッ
「うぁ!!」
一気に引っこ抜いた。けど抜く前に色々と処理したから出血は無え。
それでもさすがに痛みまでは止められなかったんだな。抜かれた瞬間、遊星は体をでかく反り上げた。それをラリー達が必死に押さえてる。
「そのまま押さえて! 患部を押さえます!」
また大声で指示を出して、今度は腰に巻いてる帯を外した。そしてそれを、暴れてる遊星の腹に巻き付けた。
「……これで良い。少なくとも出血は押さえられる」
すげえ……
俺達は何もできなかったのに、指示を出したりしながら、多分完璧な応急処置を、かなりの手際で施しやがった。
「彼は私が運びましょう。サテライトのような、地面の凹凸が激しい場所では乗り物より、人の足の方が良い」
梓はそう言いながら、遊星を抱え上げた。
「クロウさん」
「おっ、おう!」
「マーサハウスへ、案内して下さい」
「おお!」
俺も返事をして、Dホイールの方向を変える。
そのまま走らせて、後ろから梓が走ってついてきた。
……
…………
………………
視点:梓
何の因果と言うべきか。サテライトへの憎悪から、絶対に行かないと心に決めていたマーサハウスに、共にフォーチュンカップを戦った不動遊星さんを助け、その流れのままマーサハウスに来てしまった。そして、一泊し、今は朝を迎え、私は朝日を眺めていた。
「……助かって良かった」
心の底からそう思えます。あの後すぐに遊星さんは医者の先生に診て貰い、手術をし、無事に回復した。応急処置が功を奏したと言って下さった。
たとえ、サテライトの人間でも、命の重さは変わらない。目の前の消えそうな命を傍観することはできなかった。それで良かったと思える。憎悪があるとはいえ、そこに生きる人間に罪は無いのです。
「梓」
声が聞こえ、振り返ると、クロウさんが立っていました。
「これ、まだ少し血は着いてるけど」
遊星さんのケガに巻いた帯。それを差し出してきた。
「……」
手を伸ばし、取ろうとして一瞬止まってしまいましたが、すぐにまた手を伸ばし、受け取りました。
「ありがとうな。遊星を助けてくれてさ」
「……当然のことをしたまでですよ」
それだけ言って、私は朝日に目を戻しました。
彼が悪い人でないことは分かる。しかし、私の憎悪するサテライトの人間。彼のことを憎いとは思わない。なのに、それ以前の、釈然としない感情が私の中にある。どうしてこの人と共にいられるのか。私は彼とどうしていたいのか、と。
彼は私をどう思っているのでしょう。
態度の悪い男、無愛想な男、失礼な男、無礼な男……
想像すればそんな悪い印象しか浮かんでこないものの、それでも、そう思われる接し方をしているのだから仕方が無い。どれだけの事実や過程があろうとも、結局のところ、私のサテライトに対する感情の本質は、憎悪なのだから。
そう思いながら視線を落とした時、
「?」
何かが目に飛び込んできました。まさかと思い、それに近づいてみると、
「これは……」
「ああ、カードだな」
何度見ても間違いない。裏側になったカードが四枚、目の前に落ちている。
「よくあるんだよ。使えないってんで捨てられてさ、遊星も、そうやって拾い集めたカードで今のデッキを作ったんだ」
「よくあること、なのですか……」
「お、おお」
「……私は、一枚も拾うことができませんでした」
「え……」
なぜかは分かりません。しかし、幼い時、そして今日も、サテライト中を歩いても、一枚も見つけることはできなかった。時々目にするテレビを見ながら、何度もやってみたいと思っていましたが、それでも出会うことは無かった。
しかし、彼の様子からして、どうやらカードが落ちていることは、本当に珍しくないことのようだ。運が悪かったのか。それとも、サテライトの方こそ、私を嫌っていたのか。
「良かったじゃねえか」
クロウさんが、笑いながら話し掛けてきました。
「じゃあお前にとって初めて拾ったカードってことだ。こいつらもきっと、お前に拾われたくてここに落ちてたんだ」
「私に?」
「ああ。拾ってみろよ」
「……」
言われた通り、拾ってみます。そして、表にしてみると、
「……!」
「おお、運が良いな。シンクロモンスターまであるじゃねーか」
確かに、四枚のうち、モンスターカードが三枚。そのうち一枚がシンクロモンスター。そして、残り二枚のモンスターと、もう一枚のカードも、まるで今の私がここに来ることを分かっていたかのように、今私の欲しているカード達。
「……ありがとう」
偶然落ちていただけなのか、それとも本当に待っていてくれたのか、それは定かではありません。それでも、サテライトという、私の忌み嫌ってしまった場所で、それでも待っていてくれたというのなら、私もそれに応えたい。
共に戦っていきましょう。これから……
「朝ごはんだよー」
マーサさんの声が聞こえた。
「梓も中に入りな。一緒に食べよう」
「行こーぜ、梓」
クロウさんが言いながら、私の手を引こうとしましたが、
「……」
また、その手から逃げてしまった。
「おい、梓……」
「すみません……」
一言だけ謝り、私はその場から走ってしまった。
マーサさんの顔を見て、そして、クロウさんを見て、また恐怖が蘇ってしまった。
それでこの場にいたくないと感じ、逃げてしまった。
情けない話しだ。「彼に罪は無い」。そう言い聞かせ、不動遊星さんに手を触れ、助けた直後だというのに、その友人達と接することもできないとは。
憎しみとは恐ろしい物だ。サテライトへ戻り、つくづくそう感じました。どれだけ正しいことを自分に言い聞かせ、自覚させても、心以前に体がそれを拒絶する。受け入れるべき事実から逃げ、憎しみだけに縋りつくように、否定と言う愚行こそが肯定なのだと命令するように。
人を憎みたくない。その思いはサテライトでも変わらない。なのに、心でそう思っていても、体はずっと憎悪したままだ。
フォーチュンカップでも思ったことが、また私の心に蘇った。
どうして人を憎める……どうして怒りなど覚える……どうして私は、こんなに……
マーサハウスが見えなくなる距離まで走ってきたところで足を止め、振り返った。
もう二度と、あそこへ行くことは無い。そう願いたい。
もう二度と、優しいあの人達に、こんな感情を抱かないために。
そして何より、憎悪からただ逃げることしかできない、愚かで情けない姿を、あそこにいる優しい人達に見せたくなかった。
……
…………
………………
視点:クロウ
「……ありがとう」
四枚のカードを見ながら、梓は目を閉じて、礼を言った。
その姿が、めちゃくちゃ綺麗だった。こいつ、本当に決闘が大好きなんだな。
今まで何度かこいつを見た中で、綺麗な奴だって思ってた。普通に話してる時も、外見は普通に綺麗だし、ライディング決闘で走ってる姿も、何て言うか勇ましい綺麗さがあった。決闘の後で、俺のことを恨みの目で見てる時も、全体の姿が綺麗だって思った。
けどその中で、カードを手に笑ってる今が一番綺麗だって感じた。ただ外見が綺麗ってだけじゃねえ。そのカードを取った途端、ただでさえ光ってた梓がもっと光ってる感じがして、とにかく今まで以上に綺麗だって感じたんだ。
まるで、梓が決闘を好きなのは当然として、決闘も梓のことが好きだって思ってるみたいに。
「朝ごはんだよー」
子供の頃と同じで、また梓に見とれてる時、そんなマーサの声が聞こえた。
「梓も中に入りな。一緒に食べよう」
いきなりだったが、そう考えたら腹減ったぜ。
「行こーぜ、梓」
梓に呼び掛けながら、手を取ろうとした。そしたら、
「……」
昨日と同じ、手を取ろうとしたら、顔をしかめながら離れた。
「おい、梓……」
「すみません……」
深刻な顔で謝ると、そのまま消えちまった。
「梓……」
「そうかい。やっぱ、今でもサテライトを恨んでるんだろうねぇ……」
サテライトを恨んでる。マーサのその言葉と、この間の決闘の後で見せた梓の目を見て、納得した。
何があったのかは分かんねえ。けど、梓は子供の頃から、マーサハウスや仲間達がいた俺達と違って、たった一人でサテライトで生きてきたんだ。成長した今になって、サテライトを恨むくらいの何かがあったって不思議じゃねえ。むしろ、何も無いことの方がおかしいくらいだ。
けど、それでもよ、俺達は、お前が恨みを持つような人間じゃねえ。
今までは、ただサテライトの人間ってことで見下されただけだったけど、あそこまではっきりした憎悪と拒否を見せてくる人間は初めてだった。だから、梓にはそのことを分かって欲しかった。お前がサテライトを恨んでるんだとしても、俺達は、お前が恨みを抱くことになったようなことは絶対しねえって。
いや、むしろ優しい梓のことだから、とっくに分かってるのかもしれねえ。本当に恨んでるだけなら、遊星のことを助けてくれるわけねえし、決闘に対してあんな顔を見せるわけがねえ。分かった上で、それでもサテライトへの恨みから、俺達のことを受け入れられねえってことかもしれねえ。
そう考えるとまた分からなくなる。どうすれば、梓は俺達を受け入れてくれるんだ。
俺達が、梓のためにしてやれることって、何も無いのかよ……
……
…………
………………
視点:梓
「シエン」
サテライトを歩きながら呼び掛けると、シエンは姿を現した。
「昨夜の邪悪な巨人。空に現れたナスカの地上絵と言い、一体何なのでしょう?」
シエンは暗い顔で、口を開きました。
『……聞いたことがある。ナスカの地上絵として封印された巨大なモンスター。確か……『地縛神」』
「地縛神……」
『俺も詳しいことは知らねえが、確か今から5000年前に、シグナーとかいう五人の決闘者が、五体の竜と一緒に封印したらしい』
「ということは、五千年経った現在、その地縛神が蘇り、災いをもたらしているということですか?」
『そういうことになるな』
地縛神……恐ろしい存在だ。
けど、同時にある疑問も浮かんだ。
「しかし、なぜあなたはそんなことを知っているのです?」
『なぜってそりゃあ……俺だって、決闘モンスターズの歴史はそれなりに学んでるし。一応は一国を束ねる身だからな』
「え……ということは、シエンはいわゆる、殿様ということですか?」
『ああ』
「……」
『何だ? そんなに意外か?』
「……いいえ。納得しました。大勢の人に愛されているのですね」
『あー、まあな』
何やら照れくさそうですね。
初対面の時は、それこそ大きな子供のような方だと思った物ですが、共に過ごしていく中で、最初の印象とは全く違っていった。そして、私が彼のもとに辿り着いた時以来、その姿は大変頼もしく感じられた。しかも、私が悩む度に現れてくれて、私に最も必要な言葉を掛けてくれる。きっと、私以外のたくさんの人にもそうしてきたのですね。
「……ちょっと待って下さい」
そこまで思った時、思い出しました。
「地上絵は巨人だけではない。封印された地縛神は、一体ではないということですか?」
『ああ。そういうことになるだろうな』
「ということは……サテライトだけでなく、シティに現れる可能性も……」
『……あるかもしれねえ』
「大谷さんが! お父さんが危ない!」
それが分かり、私は大急ぎで走った。
『おい、梓、どうする気だ!?』
「シティへ戻ります」
『戻ってどうする? 仮にお前の考えたことが起こったとして、シグナーでもないお前にどうにかできると思ってるのか?』
「分からない。分かりませんが、それでも、彼らの無事は私が守りたい」
『しかしどうやって戻る? また泳ぐ気か?』
「それはできない……これだけはしたくありませんでしたが……」
『何を?』
「シティからサテライトへは、ゴミ運搬用のパイプラインが繋がっている」
『……まさか……』
「ふふ……」
パイプラインの通っている工場に着き、私は刀を取り出した。
なぜでしょう……これからほぼ犯罪である行為を行おうとしているというのに、この胸の高鳴りは……
『梓……お前今、かなり悪い顔してるぞ……』
「気のせいですよ……」
ふふふふ……
『ちょっと、梓……』
『なぜ笑っているのですか……?』
シナイとミズホも声が聞こえた気がしましたが、この際気にしません。
参ります。
……
…………
………………
ある程度頑丈な作りでできているはずのドアも、簡単に斬ることができ、中に入れました。本来ならずっと作動しているはずのパイプラインも、極めて原始的な方法で止めることができました。
「サテライトにあるからでしょうか? 建物や機械の作りというのも思っていたよりは脆いものなのですね」
『……』
「どうかしました?」
『いや、何でも……』
六人とも妙に顔が歪んでおりますが、まあ気にはしません。パイプラインの入口へと進みます。
「距離としては、およそ二十キロと言ったところでしょうか」
『本気の梓なら一分てところか』
「……いえ。昨夜からずっと走り通しで、疲れました。歩きます」
シエンに言いながら、私は歩きました。
何やら不思議な気持ちになります。サテライトとシティ。こうまで扱いに差がある二つの都市が、こん小さな筒一つで確かに繋がっている。シティにとって不要なものを、サテライトへ捨てるという目的一つのためだけに。歩きながら目にするいくつものゴミが、まさにそれを象徴していると言って良い。
そう。不要になったから、シティからサテライトへ送られてしまう。こんな、無機物でできた道。そんな、あって無いような繋がりに通して。
「……やはり許されない。こんな小さな繋がり一つで、シティとサテライトを格付けするなど……」
『そう思うか?』
「ええ。こんな繋がりでしか無いから、私のような人間が生まれてしまう。持ちたくも無い憎しみも、持つべきではない差別の心も、こんな繋がりでは生まれて当然です。間違っている。明らかに間違っているのに、誰もが現状にばかり甘え、何も変えようとはしない。そんな愚かな人間は、私一人で十分だ!!」
ガンッ
叫びながら、怒りに任せ刀でダクトを叩き、その音が響く。
『私一人って、梓がか?』
「だってそうでしょう! 頭首と言う座を言い訳に、仕事を逃げ道に、サテライトのことを考えないよう生きてきた。サテライトに生きる人達、遊星さんにマーサさん、クロウさんも、悪い人ではない。なのに、なのに私は、誰とも接しようとしない。話しをしたくない、関わりたくない、そんな気持ちばかりだ。今まで多くの人達と、教室の先生として接してきた私が、結局は差別してしまっている。サテライトへの憎悪を言い訳に」
『言い訳って言ってるけど、それも明確な理由じゃねえか』
「理由があろうが無かろうが、そんな感情を抱いてしまった時点で、私は、人として終わっている……」
『梓……』
「あり得ない未来だとは思いますが、もし私が頭首に復帰したなら、必ずサテライトへの差別を無くしてみせます。どれだけの時間が掛かろうが、どれだけの非難を浴びようが、サテライトへの憎悪を克服して、必ずです。サテライトで生まれ、シティで育ち、どちらの姿も知っている人間として、必ず」
思いを口にしながら、歩を進めていきました。
……
…………
………………
数時間歩き、ようやく出口へ辿り着きました。が、
『こいつはひでえな』
そこには既に、大量のゴミが道を塞いでいる。すり抜けるための隙間さえ無い。
「仕方が無い」
溜め息を吐きながら、刀を目の前に。
『完全に物にしたな。今まで二回しか使ってねえってのに、大したもんだ』
シエンのそんな声が聞こえましたが、今はどうでも良い。
「刃に咎を! 鞘に贖いを!!」
ドォオン!!
抜刀し、走り抜け、ゴミの山を斬りつけ、また元の位置へ。
その間に、ゴミには巨大な斬れ目が生まれ、そこから崩れていきました。
「これがあなたの罪だ」
そしてまた、刀を鞘に納める。
(違いは、俺は抜き身で構えて斬りつけるのを、こいつは鞘に納めた状態から構えて居合で斬りつけるってとこか。そういや最初に使って失敗した時は、俺と同じく抜き身からだったな)
『気になってたんだけどよお……』
またシエンが話し掛けてきました。
『技を出す前と後に言ってる、その台詞何だ?』
「これは……いえ、何となく。自然に口から出たものですから」
『へぇ。俺も今度言ってみるかな』
「シエンがですか?」
『ああ。嫌か?』
「……いいえ。お好きにどうぞ」
笑い合いながら話しました。
そのすぐ後に、パイプラインの入口を切り裂き、外へ出ました。
……
…………
………………
どうやらのんびりし過ぎたようだ。サテライトを出た時はお昼前だったというのに、シティへ出ると、既に日は沈み、暗くなっている。
「まずは病院へ向かいます」
もちろん入ることはできませんので、近くの高いビルから覗くだけになりましょうが。
「お父さん……」
ビルの上から病院を眺めていると、上手く隠れていますが、数人のマスコミが張り込んでいます。
「面倒ですね」
『それだけお前が注目されてるってことだな』
「あまり嬉しくはありませんが……」
どの道、これでは近づけませんね。
しかし、窓から見た辺り、元気そうにやっているようだ。シティにも異常らしい異常は見られない。
「取り越し苦労でしたでしょうか。それなら何よりなのですが……」
さあ、次は大谷さんです。
ガシャアアアアアアアアンンンンンン……
かなり遠くからですが、ガラスの割れる音が聞こえた。そちらを見ると、
「っ!! あぁ!!」
考えるよりも先に、私は走りました。
あまりに遠くて顔は見えない。しかし、間違い無く、人が一人、ビルから落ちている!
「間に合って下さい」
間に合って……
間に合え!
「うわあぁあああああああああああああああああああああああ!!」
ズドォン!!
轟音と共に、その人は、小屋の上に落ちた。
中に入ると、
「そんな……」
深く沈んだ地面の上で、横たわっている女性は動く気配を見せない。
あと数秒、反応が早かったなら……
彼女の周囲に散らばったカード。その一枚を手に、感じた。彼女も、決闘が好きだったのですね……
「くぅ……」
後悔に、悲しみに、目を閉じた……
その直後でした。
カアアアアアアアアアアアアアァァァァ……
目の前で冷たくなった女性が、急に光り出した。
「こ、これは……うわっ!!」
その光の衝撃に、小屋から投げ出されてしまった。
立ち上がってもう一度小屋に入ってみると、既に女性は消えていた。
「どうして……」
夢……
いや、違う。私が右手に持つ一枚のカード。これが、現実であったという何よりの証。
あの高さからでは、私ですら助からない。間違い無く即死でした。なのに、消えている。誰かが中に入り、運んだという形跡も無い。まさか、生き返ったと言うのか?
何が起こったかは分からない。しかし、やはり今シティに、得体の知れない事態が起こっている。異常な、それも、危険な事態が。
「お父さん……」
瞬時に判断し、道を引き返した。
病院まで数十メートル。その場所まで来た時、私は足を止めた。
「……」
私を見ても、声は出さない。それでも、すぐに分かった。
「……大谷さん?」
名前を呼び、初めて彼は私を見ようでした。
「……家元……」
彼が私を呼んだ瞬間、
ボァァァ
「っ!! これは!?」
また周囲に青色の炎が!?
「……嘘でしょう、大谷さん!!」
「……家元……決闘を……」
言いながら、彼もまた、経験の無いはずの決闘の、決闘ディスクを構えた。
「……あなた、誰です?」
姿は大谷さんに違いない。しかし、彼の様子から、大谷さんであって別の存在。そう確信しました。
「……」
「……答える気はありませんか?」
私は一枚のカードを取り出し、
ヒュッ
投げてみましたが、大谷さんはそれを軽く避け、そのままカードは炎の外側の地面に突き刺さる。どの道大谷さんにとって、こんなものは攻撃のうちにも入らない。やはり大谷さん本人には違いないようだ。
「……良いでしょう。決闘がしたいのなら受けて立ちます。しかし、あなたが誰かは知りませんが、私の大切な人を利用する罪は、償って頂く」
私も大谷さんにならい、ディスクを展開させました。
「家元……」
「参ります」
「決闘!!」
お疲れ~。
決闘は次回からね~。
そういうわけで、ちょっと待ってて。