遊戯王5D's ~剣纏う花~   作:大海

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ど~も~。
では第七話へ~。
ちょっとばかり原作に無い描写をあれさせてもらうが、まあ細かいことはお気になさらず。
ほんじゃ、行ってらっしゃい。



第七話 その頃の街、そして……

視点:不動遊星

 ダークシグナーとの戦いから、二週間の時間が過ぎた。

 戦いが終わった後も、すぐさま平和が訪れたという訳ではない。まず、ダークシグナー達や地縛神によって破壊された街の復興。あの戦いで完全にいなくなったディバインの残したアルカディアムーブメントはともかく、その周辺にあった建物、更にはあの戦いに巻き込まれた家屋など、破壊されてしまった建物は数多くある。その復興が第一に叫ばれ、今でも大勢の人間が住む家を失った状態でいる。

 更にはネオダイダロスブリッジの建設が決定すると同時に、サテライトとシティの境界が無くなると言うニュース。サテライト住民は歓喜の声を上げたが、大勢のシティの人間が上げた声は違う。今までずっとサテライトの人間を下の者として差別し続けた人達、その心は簡単に変わりはしない。

 そんなこともあって、多数のシティ住民達は、『ネオダイダロスブリッジ建設反対』という声を上げながら、時にはシティでデモ行進を行ったり、わざわざサテライトへ行っては暴動を起こす、という事件が日常的に起きている。もっとも、そんなことをした人間は、そのすぐ後で牛尾達セキュリティに捕まり、最悪マーカーを刻まれるという事態に陥ってしまう訳だが。

 

 そして、最もネオドミノシティの人々の心に傷を作ったのが、今も見つかっていない行方不明者達だ。

 既に地縛神の生贄にされた人達は、ほぼ全員が元に戻り、家族のもとへ戻っていった。だが、それでも未だ大勢の人間が行方不明のままでいる。地縛神の生贄にされたまま戻らなかった人間がいたのかもしれない。もしくは地縛神だけでなく、その戦いによって発生した災害や事故によって命を落としたのかもしれない。

 いずれにせよ、そうして大切な家族を失った人達には大きな傷が生まれてしまい、それでもなお死んだと決まっていないという僅かな希望に縋り、生きていくことになる。

 

 そして、俺達全員がもう一度会いたいと願った男も、未だに見つからずにいた。

 

 

 今俺達はセキュリティの、牛尾の前に立っている。メンバーは俺、ジャック、クロウ、アキ、龍亜と龍可の六人。

「牛尾、どうだった?」

「やっぱりダメだ。シティにサテライト、ダイモンエリアにトップス、バッドエリアまであちこち捜し回ってみたが、完全にサテライトを出てからの足取りがぷっつり切れちまってる」

「そうか……」

 わざわざ言わずとも分かるだろう。

 そう。俺達がもう一度会いたいと願った男……

「梓先生、もう帰ってこないのかな……」

「そんなことない!!」

 龍亜の言葉に対して龍可が叫んだ。

「きっと帰ってくる!! あんなに強くて立派な人が、こんなことでいなくなるなんて、あるはず無い!!」

「……」

 いつも静かな龍可がこれほど取り乱すとは。よほどあの男、水瀬梓を尊敬していたんだな。

「けど、あいつの親父さんは死体で見つかったんだろう。なら、もしかしたらあいつだって……」

「クロウまで何言ってるの!!」

 そう。戦いが終わってしばらくした後、シティの様々な場所から死体が見つかった。そしてその中には、水瀬梓の父親の姿もあったらしい。詳しいことは聞くことができなかったが、かなり凄惨な状態だったと聞く。そんなことを聞かされれば、息子の水瀬の身にも何かあったのではと、必然的に不安になってしまう。

 あの男は強い。精神的にも肉体的にも、俺達より遥かに。だが、あの男も人間だ。決して無敵ではない。解決できない困難もある。

「仮に無事であったとしても、既に奴に帰る場所は無くなっていることも事実だ」

「っ! そ、それは……」

 ジャックの言葉に、龍可もさすがに動揺を見せた。

「既に水瀬家では、別の人間が頭首を襲名し、奴の開いていた教室は全て閉鎖された。奴の住んでいた屋敷は、私物の全てに至るまで無断で売り払われた。水瀬家の連中はよほど二十一代目頭首の存在を無かったことにしたいらしい。おまけに父親まで死亡してしまった以上、もはや今の奴に、味方をする人間は一人もいない」

 その話しに、誰もが表情を曇らせる。

 

 奴が父親以外の家族から良く思われていなかったことも聞いた。複雑な事情は分からないが、あれだけ大層な家に拾われた身だ。拾われた身ながら、それが頭首となったんだ。確かに、色々な不満やひんしゅくも買ったことだろう。

 そしてそれがサテライト出身だと分かった以上、今までの恨みも含めて、家からも、自分達の記憶からも完全に消し去りたい、そう考えるだろうな。

 

「わ、私がいる!!」

 

「……!」

 また龍可が、今度はジャックに向かって叫んだ。

「確かに、色々な人達からの信頼は無くしちゃったかもしれないけど、けど、それでも私はあの人のことは分かってるつもり。そりゃ、先生からすれば、私なんて、大勢いる生徒の中の一人だろうけど、それでも、長い間お世話になったし、フォーチュンカップの時だって、だから……」

 

『……』

 

「そうね。私も信じるわ」

 龍可の言葉に賛同したのは、アキ。

「私は龍可ほど長い時間、あの人と過ごした訳じゃないけど、フォーチュンカップでの決闘で、あの人がどういう人なのかはよく分かった。あの時は、あの人や色々なことに怒りを感じるだけだったけど、今思えばあの人は最初から最後まで、私に語り掛けてくれていた。今まで誰からも憎まれるだけだった私のことを、あの人は違う見方をしてくれた。私と同じ目線に立ってくれて、私のことを人だと言ってくれて、私自身にもそうだと気付かせてくれた」

「私はもう一度彼に会いたい。会って、お礼を言いたい。だから、私も彼が帰ってくるって信じてる」

 アキ……

(もっとも、気付かせてくれたのは彼だけど、変えてくれたのは別の人なんだけどね……)

「アキの言う通りだ」

 今度はクロウが、笑顔を見せながら肯定した。

「あいつはこんなことで負けるような奴じゃねーよ。居場所が無くなったとしてもあいつのことだ。またすぐ色んな奴と仲良くなって、自分の居場所を作っちまうさ。それに、これからはシティも変わる。シティもサテライトの境界も無くなって、今の俺達みたいに自由に行き来できるようになる。そうすりゃ、もうあいつのことを悪く言う人間はいねーさ」

「うん!」

「そ、そうだよね!」

「ふん、お前がそこまで言うとは、水瀬と言う男は相当な人間らしいな」

「おお。少なくともジャックに比べりゃ大勢の人間に好かれた人格者だぜ」

「何だと貴様! もう一度言ってみろ!」

「本当のこったろうが!」

「やめなさい!」

 

 いがみ合っているように見えても、全員その思いは同じだ。全員が水瀬という男のことを思い、その帰りを今も待っている。

 俺もそうだ。結局、未だにあいつに礼を言えていない。

 もし応急処置をされていなければ、マーサハウスに着くまでに命を落としていた可能性もあったらしい。あいつは間違いなく命の恩人だ。あいつは礼など望む人間ではないことくらい分かっているが、それでもこのまま礼も言えないのでは、俺の気が済まない。もし今あいつに居場所が無いと言うのなら、その時は、俺があいつの居場所になってやる。

 そして、それは俺だけでなく、ここにいる全員が思っていることだろう。

「まあ、また何か分かったらすぐお前らに報告してやるから、俺達のことを信じておけよ」

「ああ。頼む、牛尾」

 こいつはセキュリティだが、それでも信用できる男だ。そして、これからはゆっくりだが、間違いなく街も変わっていくだろう。次第に人々の記憶からも、水瀬の存在は葬られていくのかもしれない。

 だが、それでも俺達だけはあいつのことを覚えている。決して忘れはしない。もう一度会って、それぞれの思いを伝えるまで、あいつのことは絶対に忘れない。

 だからもし今もどこかで生きているのなら、きっとここに戻ってこい。居場所なら俺達が作ってやる。

 もっともクロウの言った通り、もしかしたら今頃、こことは違う別のどこかで、どっくに居場所を見つけて、誰かを導いているのかもしれないな。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:梓

「バカな……そんなことはあり得ない……」

「信じられない気持ちも分かります。私とて、自分の行動による矛盾は理解しています」

 一見正しいと思えるその行動が、実は大いなる過ち。そんなことはよくある話しだ。

 ただそれでも、それが正しいと信じているからこそ私は、

「ぜひ試してみて下さい」

 私のその言葉に、梓さんはそれを見つめながら、持ち上げた左手を震わせる。

「……ダメだ! 私にはできない!!」

「梓さん……」

「こんな、こんな……」

 

「納豆に生卵を混ぜるなど!!」

 

 そう叫びながら、左手に持っていた生卵を置いてしまった。

「……」

 気持ちはよく分かります。私とて、初めてそれを聞いた時は、今の梓さんのように震えていました。今まで試したことも無い、そして、試そうと思ったことも無い物を混ぜて食べる。それによって生まれるであろう未知の味、それは私にとって、良き物か悪しき物か、分からない。そして、分かろうとするのが怖い。

 ですが、それを分かったからこそ、見えるものがあります。

「見ていて下さい」

 私は梓さんに話し掛けながら、納豆に手を取りました。

 よく、空気を含みながらかき混ぜて糸を出し、醤油とネギを加えて混ぜる。そして、

「な、生卵……」

 

 コツ

 パカ

 

「!!」

 彼が驚く中、それでも一心不乱に、箸を混ぜ続ける。

 こうして混ぜるごとに、それぞれ違う二つの味が混ざりあい、溶けあい、一つとなっていく。そして、その先にある物は……

「美しい……」

 呆然としながら、梓さんは呟きました。

 納豆の粘り気に、生卵を混ぜたことで生まれる新たな領域。それは一つ一つ、無数の小さな気泡を生み、ふわりと柔らかい液体のようなものへと変わる。

 そして、それらが一つとなったそれは正に、納豆と醤油の茶色とネギの緑、そして、卵の黄色が織りなす宝石。

「どうぞ」

 一口分の納豆を取り、それを、梓さんの口元へ。

 梓さんはそれに魅入られていながら、それでもやはり、恐怖を浮かべている。

「怖がらないで下さい」

 そんな彼に、諭すために話し掛ける。もう一言、

「私を信じて……」

 それがどんな結果になろうとも、それに報いる覚悟はできている。だから……

「……」

 迷いながらも、納豆を見つめる。そして、その迷いの目は、徐々に決意のそれへと変化していくのが分かる。

 そして、

 

 パクッ

 

 食べました。

 ゆっくりと、味を確かめながら噛んでいく。そして、飲み込む。

 

「……」

「梓さん……!」

「こんな、こんな食べ方を、私は今まで知らなかったのか……」

 大粒の涙を流しながら語るその顔は、新たな出会いへの歓喜と、今までの自分の愚かさを呪っている、そんな表情でした。

「この出会いは無駄ではありません。ただ、気付くのに少々時間が掛かってしまったというだけのことです。あなたはそれを後悔しているのでしょうが、同時に気付いて良かったと思っている。違いますか」

「……」

 無言ですが、私には彼の気持ちがよく分かる。私の言葉、そのままのことを彼は今感じている。

「なら、まだ間に合います。これから、まだ時間は多くあるのです。その時間を後悔に費やし、喜びに費やすことができないのは勿体ないことです。私があなたに出会えて良かったと思っているように、あなたにも、この納豆の食べ方を知って良かったと思う権利はあります」

「……」

「それでも後悔が先に立ってしまうと言うのなら、私があなたのそばにいます。私がその後悔を共に感じましょう。そして、あなたの感じる喜びの壁を、私が半分だけ背負ってさしあげます」

「梓さん……」

 未だ涙に濡れるその顔に、ようやく光が灯ったようです。

 

 これからの長い人生、新たな道との出会いはいくらでもあるでしょう。そして、それと向き合うことには、どんなことであれ勇気が必要です。そして、それを受け入れることにはそれ以上の勇気を要する。

 そして、梓さんなら、その勇気を持ち、乗り越えることができます。今日新たに出会った、納豆と生卵という組み合わせを受け入れることができたあなたになら。

 そして、もし耐えられなくなったなら、私がいつでも、あなたのそばにいて、支えてみせます。

 だから……

「だから、もう泣かないで下さい。私はいつでも、あなたの味方でい続けますから」

「……! ……はい……」

 やっと笑顔を浮かべてくれた。よかった。やはり梓さんには、笑顔がよく似合います。

 

 

「美しい兄弟愛だね(ウルウル)……」

「ああ。内容が納豆ではなく、ここが朝食の席でなければなお感動できた……」

「納豆、買い足した方が良いですね。ネギと卵も……」

 

 

 

 




お疲れ~。
納豆、日本が世界に誇れる食材だと思う。
ちなみに大海は納豆には、ネギと卵と、勿体ないので付いてるタレとカラシも入れて食べます。
皆さんは何を入れますか? まあ何でも良いか。
そげなわけで、次話まで待ってて。
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