やっと決闘や~。
何はともあれ読め。
行ってらっしゃい。
視点:大谷
先代からデッキを受け取った日を境に、家元は毎晩行っていた、武道の稽古の一切を辞めた。既にどれも免許皆伝に足るだけの実力を身に付けていたために、
もっとも、さすがにずっとせずにいれば技術も体力も衰える。そう言いながら、週に一度は自主的に訓練を行っている。
そして、それ以外の武道に当てていた時間を使い、ほぼ毎晩決闘の訓練に打ち込むようになった
そして今日は、一ヶ月で磨いた腕を試すために、初めての大会に出ることになった。もっとも、仕事と体面から、深夜に行われる非公式の地下決闘、なのだが。
「来る前にも言いましたが、何もあなたまで来なくてもよろしかったのですよ」
「いいえ。私はどこまでも、家元に付いて行きます」
そう言うと、家元は笑って下さった。
ちなみに私も家元も、当然だが変装している。お互いに着物では無く、周囲の人間が普通に着るような服を身に付け、顔はサングラス、家元は帽子も被っている。
そして、地下決闘が行われるこの場所。何やら既に異様な雰囲気が漂っている。大会参加者も、見に集まっている客も、全てが異様な空間だ。
だがそれも当然だろう。
ここではほぼ毎晩のように、半数は道楽で、半数は金儲けを目的に集まる。決闘での賭博が行われるためだ。参加する決闘者はその大半が公式決闘の大会を永久追放された者や、他に行き場所が無いという荒くれ者達。中には家元のように純粋に決闘を行うために来る者もいるらしいが、それもごく少数だ。
フッ
と、そんなことを思っている時、会場の灯りが消える。
パッ
スポットライトが点いた。そこは決闘場、そして、その上にいる司会者を照らしている。
「レディース、エ~ンド、ジェントルメン。今夜も集まってくれてありがとう……」
そういった感じで司会が進行される。とは言え、司会と呼べるほど長い話しはしない。適当にありふれた言葉をある程度並べたてたところで、一組目の対戦者が決闘場に立った。
「こいつを召喚する!」
「ダイレクトアタックだ!」
「お前に500ポイントのダメージ!」
「く、俺の負けだ……」
「ほらもっと気合い入れろー!!」
「俺はお前に賭けてるんだぞー!!」
「おら逆転しやがれ!! お前が負けたら大損だろうが!!」
「引っ込め負け犬ー!!」
「恐ろしい場所ですね」
「ですが、それも御承知の上でここにいるのでしょう?」
そう呟くと、家元は微笑を、不敵に浮かべた。
「なあ、坊や……」
すると、直前の決闘で負けた男が近寄ってきた。
「悪いんだが、カードを恵んじゃくれないかな」
うむ。こんな場所ならば当然と言うべきか、ありきたりな展開と言うべきか。
「あいにく、デッキ一組しか持ち合わせがありません」
「構わないから、カードくれよ。何ならデッキ丸ごと出せや……」
そして、服越しにナイフを宛がってきた、のだが……
「一体、何で脅しているのでしょう?」
家元がそう尋ねると、男はナイフを見た。
「……え?」
まあ驚くのも無理は無い。直前まで、それも服の内側に持っていたナイフが折れているのではな。
「私の出番も近い。すみませんが、ここはお引き取りを……」
呟きながら男の手を取り、それを手渡した。そしてそれを見て、男は震えながら退散した。
言わずとも分かるとは思うが、家元が渡した物は、男の持っていた折れたナイフの刃先だ。
「刀を出すまでもありませんね」
「まあ、あなたが強過ぎることもありますが」
「それを、決闘でも言えれば良いのですが」
家元がそう言い、不安げな顔を浮かばせた直後だ。
「次の挑戦者は、おなじみ元プロ決闘者、氷室仁!!」
「そしてその相手は、今回がデビュー戦! リングネーム『サイレントフラワー』!!」
「……先程も言いましたが、他に良い名前は無かったのでしょうか?」
「すみません。私にはそういったセンスが無いもので……」
そう会話した後で、家元は決闘場へ歩いていった。
視点:梓
私の前に立つのは、青色にトゲトゲな頭をした、体格の良い男。
名前は聞いたことがあります。元プロライディング決闘者。
確か、最後はキングに敗れ、その後は行方知れずだと聞きましたが、ここにいたのですね。
「初陣か。言っておくが手加減はできないからな」
「もちろん。それでこそ、ここに立つ意味があります」
「良い覚悟だな。なら早速始めるか」
お互いに挨拶を簡単に済ませ、決闘ディスクを展開させます。
『決闘!』
氷室
LP:4000
手札:5枚
場:無し
梓
LP:4000
手札:5枚
場:無し
「俺の先行だ。カードドロー!」
氷室
手札:5→6
「『地雷蜘蛛』を召喚!」
『地雷蜘蛛』
レベル4
攻撃力2200
「カードを一枚セット。これでターンエンドだ」
氷室
LP:4000
手札:4枚
場 :モンスター
『地雷蜘蛛』攻撃力2200
魔法・罠
セット
彼の決闘もビデオで見たことがありますが、デッキは同じ、『蜘蛛』デッキですね。
「さあ、お前のターンだ」
「ええ。私のターン」
梓
手札:5→6
……どうやら、この一ヶ月の訓練は無駄ではなかったようだ。
「速攻魔法『サイクロン』! そのセットカードを破壊します!」
「ぐぅ……」
破壊されたのは、『聖なるバリア-ミラー・フォース-』。
デッキは、応えてくれました。
「私は三枚の永続魔法を発動! 『六武の門』、『六武衆の結束』、『紫炎の道場』!」
「『六武衆』デッキか……」
「六武衆を召喚、特殊召喚した時、それぞれ門に二つ、結束と道場に一つずつ武士道カウンターが置かれます。私は手札より、『真六武衆-カゲキ』を召喚」
『真六武衆-カゲキ』
レベル3
攻撃力200
『六武の門』
武士道カウンター:0→2
『六武衆の結束』
武士道カウンター:0→1
『紫炎の道場』
武士道カウンター:0→1
「カゲキの効果。このカードの召喚に成功した時、手札のレベル4以下の六武衆一体を特殊召喚できます。『真六武衆-シナイ』を特殊召喚」
『真六武衆-シナイ』
レベル3
攻撃力1500
『六武の門』
武士道カウンター:2→4
『六武衆の結束』
武士道カウンター:1→2
『紫炎の道場』
武士道カウンター:1→2
「カゲキは場にカゲキ以外の六武衆がいる時、攻撃力を1500ポイントアップさせます」
『真六武衆-カゲキ』
攻撃力200+1500
「これで結束に乗った武士道カウンターは二つ。結束を墓地に送り、カードを二枚ドロー」
梓
手札:1→3
「『六武の門』の効果発動。武士道カウンターを四つ取り除き、六武衆を一枚手札に加えます。私は『真六武衆-ミズホ』を手札に」
『六武の門』
武士道カウンター:4→0
梓
手札:3→4
「このカードは場にシナイがいる時、手札から特殊召喚可能。『真六武衆-ミズホ』を特殊召喚」
『真六武衆-ミズホ』
レベル3
攻撃力1600
『六武の門』
武士道カウンター:0→2
『紫炎の道場』
武士道カウンター:2→3
「くっ、何て展開力だ……」
「まだまだいきます。このカードは場に六武衆がいる時、手札から特殊召喚可能。『真六武衆-キザン』を特殊召喚」
『真六武衆-キザン』
レベル4
攻撃力1800
『六武の門』
武士道カウンター:2→4
『紫炎の道場』
武士道カウンター:3→4
「ミズホの効果! 一ターンに一度、フィールド上の六武衆を生贄に捧げることで、相手フィールド上のカードを一枚破壊できる。私はキザンを生贄に捧げ、あなたの場の『地雷蜘蛛』を破壊」
キザンが光となった瞬間、ミズホが瞬きもせぬ間に『地雷蜘蛛』に向かい、そのまま斬り裂きました。
「あ、あぁ……」
「そして、『紫炎の道場』の効果。このカードを墓地に送ることで、このカードの上に乗った武士道カウンターの数以下のレベルを持つ六武衆、または紫炎と名の付いたモンスターを特殊召喚できます。武士道カウンターは四つ。レベル4の『真六武衆-エニシ』を特殊召喚」
『真六武衆-エニシ』
レベル4
攻撃力1700
『六武の門』
武士道カウンター:4→6
「エニシは場にエニシ以外の六武衆が二体以上いる時、攻撃力を500ポイントアップさせる」
『真六武衆-エニシ』
攻撃力1700+500
「『六武の門』の効果、武士道カウンターを四つ取り除き、墓地の『真六武衆-キザン』を手札に加えます。そして効果により特殊召喚。キザンは場にキザン以外の六武衆が二体以上いる時、攻撃力を300ポイントアップさせます!」
『真六武衆-キザン』
攻撃力1800+300
『六武の門』
武士道カウンター:6→2→4
「門の効果! 残り四つの武士道カウンターを取り除き、武士道カウンター二つにつきキザンの攻撃力を500ポイントアップさせます! 最後に永続魔法『連合軍』を発動!!」
『真六武衆-キザン』
攻撃力1800+300+1000+1000
『真六武衆-エニシ』
攻撃力1700+500+1000
『真六武衆-カゲキ』
攻撃力200+1500+1000
『真六武衆-ミズホ』
攻撃力1600+1000
『真六武衆-シナイ』
攻撃力1500+1000
「こ……こんな、ことが……」
「バトルフェイズ」
「な!!」
私が言った直後、五人は構えました。
「五体の真六武衆で、氷室さんに直接攻撃!!」
そう叫んだ瞬間、五人が一斉に氷室仁に向かってく。
「ぐぅあああああああああああああ!!」
氷室
LP:4000→0
「私の、勝ち……」
最後にそう呟き、残り一枚の手札をデッキに納めます。
それはまるで、刀を鞘に納める感覚に似ておりました。
視点:大谷
「氷室が負けた……」
「あの氷室が……」
「氷室はここじゃ無敗だぞ……」
「それを、しかも一ターンで……」
『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
家元の勝利と同時に、大歓声が起った。
が……
バッ
「セキュリティだ!!」
「全員動くな!!」
同時にそんな声も。これは少しまずい。
家元はすぐに決闘場から降り、近づいてきた。
「急いで逃げましょう」
「はい」
それだけ会話し、セキュリティの間を割りながら逃げる。
「待て!!」
「逃がすかー!!」
……
…………
………………
「はぁ、はぁ……」
「……」
私は息が上がっているというのに、さすが家元は息切れ一つしていない。お互い既にサングラスは外している。
「……」
先程からぼぉーっとしている。どうかしたのか?
「……大谷さん」
「はい」
決闘前までは普段通りだったというのに、今は声が震えている。
何かに興奮しているような。
「私は……」
同時に体も震えだしている。
「私は……」
こちらを向く。その顔はやはり、興奮に震え、笑顔を浮かばせている。
「家元……」
「私は、決闘が楽しい!! 勝てて、嬉しい!!」
ほとんど絶叫するように言っているその顔は、まるで子供のように……いや実際に子供であるのだが、輝いている。
家元のこんな顔を見たのは初めてかも知れない。
「それは、良かったですね」
「はい!!」
うむ。どうやら、決意を新たにしたようだ。
「私はきっと、なってみせます! お父さんも喜んで下さるほどの決闘者に! きっと!!」
それは、まるでずっとつぼみであった花が開くように、一人の決闘者が目覚めた瞬間だった。
「……」
「……?」
お疲れ~。
初決闘ながらアッサリしすぎたか? まあ最初はこんなもんだぁな。
ほな次話まで待っててね。