遊戯王5D's ~剣纏う花~   作:大海

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ど~も~。
第十三話はこっちとあっちでだいぶ系統が異なります。
こっちは、まあアクションを期待してる人にはつまらんかもしれない。
あとは、多分みんなが予想していたであろう展開が入りますが、よければ楽しんで下さいな。
んじゃ、行ってらっしゃい。



第十三話 それぞれの戦い

視点:アズサ

 

 ドガァッ

 

「うぅっ!!」

 

 もう、何度目になるかな。

 腕一本で殴られただけで、かなりの距離を飛ばされるのは。

 地面に雪が積もってる分飛ばされた痛みはそれほどじゃないけど、殴られた部分はかなり痛い。ここまでされて、どうして骨とか平気なんだろう……

 

「何度やっても同じだ。お前の力では俺には勝てん」

 

 そんな声が聞こえてきた。そんなの、僕だって分かってるけどさ……

「もう立たない方が良いぞ。どうせお前を死なせるわけにはいかないんだ。これ以上は苦しみが続くだけだ」

 ……そっか。

「殺されないんだったら、限界まで戦っても大丈夫ってわけだ」

「豪気な女だ」

 もう一回立って、輪刀を持つ手に力を入れる。

「梓にずっと笑ってもらう。そのために、あんたを倒す」

「だが、その少年も今いない。第一、戻ってくるかも分からないのだろう」

「絶対に戻ってくる。戻ってきて、いつも通りに笑ってさ、僕も、一緒に笑うんだ」

 梓の笑ってる顔が好きだからさ。あの笑顔を見てるだけで、こっちも明るい気持ちになれて、辛いって感じなくなるみたいで、頑張ろうって気持ちになれるからさ。

 バカみたいに優しくて、どんなにやられたって平気な顔してるけど、それが、梓だから。

「絶対に負けない。絶対に、お前を倒す」

「ふむ……まあ良い。連れていくのは簡単だがそれではつまらんからな。もう少し楽しませてもらうとしよう」

「楽しめるかな……!!」

 分かってるさ。あいつにとって、僕なんて遊び相手にもなりゃしない。

 けどさ、梓も今頃、今の僕よりも辛い試練を受けてるはず。そして、それを乗り越えようと必死になってるはずだから。

 そんな梓のことを思い浮かべたら、僕も頑張れる。

 君は僕達を守ってくれる。だから誰かが君のことを守ってあげないとさ。君より全然弱い僕だけどさ、せめて君の笑顔を、僕が絶対に守ってみせるから。

 

 

 

視点:梓

 

 ドッ

 ドッ

 ドォッ

 

 腹部、頭部、胸部をそれぞれ殴られ、最後は後ろに吹き飛ばされる。それももう何度目になることか。

 ガンターラさんの攻撃を、私はただ受け続けている。彼と戦うことが試練だというのに、私は戦う意志さえ見せていないのだから、ガンターラさんにしても呆れたものでしょう。

 ですが例え試練だとしても、結局はこうなってしまうのです。攻撃を仕掛けることが戦いならば、それを受け止めることもまた戦い。今までと同じです。私は受け止めたい。彼の全てを。

 

 ドォ

 

 立ち上がった瞬間また殴られる。

 何度も受けているせいか、徐々に痛みの感覚が失せてきました。痛みに馴染んできたのか、もしくは既に、痛覚が麻痺している可能性もある。

「どうしました? それでお終いですか?」

 私の胸に拳を突き刺し、制止したガンターラさんに笑顔を向け、尋ねてみました。先程から全く表情がうかがえない。彼は何を思っているのでしょう?

 何の抵抗も無い私への、呆れ、哀れみ、滑稽、不信、それらでしょうか?

 何にしても、もしこれ以上続けても無駄だと感じたのなら、それはそれで仕方が無い。正直に言えば、虎将の力にもさしたる興味は無い。龍をどうにか止めるために求めた力でしたが、そんな物を手に入れた所で、今以上に何かが変わる、そんなふうにはとても思えない。そして、そんな力を、私自身、使うかどうかは分からないのだから。

 

『……』

 

 しかし、ガンターラさんはしばらく私と目を合わせた後で、下がってしまいました。

「ガンターラさん?」

 呼びかけましたが、返事は無い(まあ本人が喋るのかは微妙な所ではありますが)。

『……』

 ただ、私のことを見ている。

 とうとう私に見切りをつけた。そう思いましたが、彼の表情を見ると、違うと分かりました。

 明確には言えない。けれど彼は、私に対し、私の中の何かを見ている。

 根拠はありませんが、なぜかそう感じました。

 

 

 

視点:外

 似ている。

 梓の姿に、ガンターラが感じたものだった。

 彼は似ている。戦争の中戦っていた、いや、戦うしかなかった、自分自身の姿に。

 

 かつては氷結界に生きる医者として、多くの命を救ってきた自分が、戦争が始まった途端、今度はそれを奪うことを強いられた。

 戦争の中、多くの仲間や敵達は、様々な武器を使い戦っていた。剣、銃、獣、龍、魔法、機械、果ては死者に至るまで、ただ敵を倒すためだけに、自分の持ちうる最大の武器を手に戦いを挑んでいく。大勢の者達がそうしていた。自分のように、己の五体のみで戦おうとする人間など他には一人もいなかった。

 武器を持たない理由。それはただ、戦いたくなかった、それだけ。

 武器を持つことが戦いの証なら、武器を持たぬことが戦わぬ証になるのではないか。平和を愛し、ただ全ての命を大切にしたい。そんな思いから、戦うことは望まなかった。今まで肉体を鍛え上げてきたのは命を奪うためではない、命を救うためなのだから。

 だが、戦争はそんなことで平穏を与えてくれはしない。戦うしかないという状況に嫌でも追い詰められ、結果戦うことを強いられる。そんなことを繰り返しているうち、戦わないために武器を持たぬという事実が、いつしか武器を持たない真の強者の証へと変わっていってしまった。

 本当は戦いなど望まないと言うのに、周囲が望み、世界が望み、結果、自分を偽り戦うこととなる。守るためではなく、倒すために。

 そう思っていたが、それは別の側面も与えてくれた。

 鍛え上げた五体は凶器だが、少なくとも武器ほどの一方的な殺戮を与えることは無い。望まぬまま殺してしまうことさえある武器とは違って、例えそれを使って攻めても、時に敵の命を救うことさえできる。そうやって本気を出さず武器を圧倒し、敢えて殺さぬことで、相手の戦意を一方的に奪うことも今まで何度もしてきた。武器を持たないことは、戦わないことにはならなかったが、少なくとも、殺さないことにはなってくれた。

 

 だが、それだけで許して貰えるほど戦争は甘くは無かった。

 例え武器に打ち勝とうと、敵はそれ以上の武器を手にしてやってくる。それを破ればまた次の武器。その繰り返し。武器を持たぬことに限界を感じていた。何より、戦うことにも疲れてきていた。

 そんな思いで戦っていて、気付けば自分は試練に打ち勝ち、虎将になっていた。虎将になり手にしたもの、それは、己の肉体のみで戦うと誓った自分には不適当な力だった。だが、拳のみの戦いで限界を感じていた自分には、ある意味丁度良かった力なのかもしれない。そう割り切ることで、諦めた。

 己の誓いも曲げねばならず、別の力に頼る他ない。そんな自分に絶望もした。だが、そんな自分の意志以上に、守るべきもの達が自分を支えてくれた。それが、仲間だった。仲間のためなら、こだわりや誓いなど喜んで捨てることができた。戦いの中で変わっていく自分を、受け入れることもできた。

 そして、そんな仲間達を救うため、他の二人の虎将と共に結界を作ることになった。そのせいで命を落とすと言われた時も、仲間のためなら構わない、そう本気で思った。

 

 今では結界を作り、本物のガンターラが死んでしまったことで、虎王によって力と記憶をそのままに肉体を再構成され、ここに試練を与える者としてのみ生きている、言わば偽りのガンターラ。虎将としての試練を乗り越える者が現れない限り、自分は永久に人形として虎王の力に縛り付けられる。

 だがそれでも良かった。今自分がこうしていることで、結界の中で大勢の人達が幸せに暮らしている。そう思えばいくらでも耐えられた。死ねないことでの苦しみなど、孤独など、いくらでも耐えることができた。なぜなら今、彼らは自分が守っているのだから。

 

 そして、そんな中この少年は現れた。

「約束を、守るために」

 そのためにも戦うと。

 彼もどうやら、自分以上に大切な人のために戦っているらしい。実際にはそんなことは望んでいない。戦うことなどしたくないはずなのに、そんな、自分の感情以上に守りたいものがあるらしい。そのための覚悟を持って、ここに立っているらしい。

 そして、それでも傷つけることなどしたくないから、全ての攻撃を受け、耐えている。耐えることで、自分の力を示し、理解させるために、ただひたすらに耐えている。

 

『……』

 

 

 ガンターラは梓に背を向け、歩いていった。

「?」

 何歩か梓から離れ、再び向かい合い、右手を引きながら、体勢を低く構えた。

『……』

 それと同時に、彼の右手に青い光が集まりだした。普段は見られない光景でも、それが巨大な力であることは梓にも分かる。そして、次に放たれるのが、正に必殺の一撃であることも。

「……ふむ」

 梓もまた微笑みながら、その一撃を受けるために、身構える。

「どうか、一切の遠慮無く、私に打ち込んできて下さい。私は決して、逃げはしません」

 その一言を最後に、微笑みだけをそのままに、仁王立ちで立つ。ただ、ガンターラを見つめて、その必殺のことだけを見つめて。

 

『……』

「……」

 

 バッ

 

 

 

視点:アズサ

 

 ドォン

 

「うぅ……ゲッホ、ゲッホ……」

 まずいなぁ……もう、体中ボロボロだよ……

「まだやるか?」

 ヴァルキュルスのそんな笑い声が聞こえてきた。今の状態なら連れていけるくせにそうしない辺り、変な所は優しいんだなぁ。

 もっとも、答えは決まってるんだけど。

「もちろん、やるよ……まだ僕は……負けて、ない……」

 もっとも、あと一撃受けたらもう立てないだろうけど。そして、それを避けるための力さえ、残ってないんだよね。

「良いだろう。なら、これで最後にしてやろう」

 どうやらあいつもそのこと分かってるみたいだ。そして、背中の翼を広げた。

 

 ごめん、梓。

 頑張ってみたけど、ダメだったよ。

 

 そうこう思った瞬間、ヴァルキュルスは飛び上がって、一気に近づいてきた。

 

 終わった。そう思って、目を閉じる。

 

 ガッ

 

 体のどこかに来るはずの痛みと衝撃が無い代わりに、そんな音が聞こえてきた。

 おかしいって思って目を開けてみると……

 

「平気ですか? アズサ」

 

 いつも聞いてる、聞き慣れた声。けどそれは、ずっと聞きたいって願ってた声だった。

「梓……戻ってきたの……?」

「必ず戻ります。そう、約束しました」

「……」

 嬉しさと、安心に、体中から力が抜けて、腰が抜けちゃったよ。

「後はお任せ下さい」

「……うん」

 そう返事したら、ずっと張ってた気まで抜けちゃった。そのせいで、ずっと立ってた体だけど、横に倒れちゃった……

 

 

 

視点:外

 ヴァルキュルスの腕を押さえながらも、梓は別のことを考えていた。

(あれだけ傷だらけだったと言うのに、その傷は消えてしまっている。夢だったのか……)

 だがすぐに違うと分かった。試練だけでなく、ここへ辿り着くために着いた傷、それさえも回復していたのだから。

 

「その力……」

 

 その声でようやく我に帰る。

 右手を押さえられ、一切動けない状態ながら、ヴァルキュルスは梓に話し掛ける。

「知っているぞ。貴様、ガンターラか?」

 その口調には、興奮と、歓喜が含まれていた。

「確かに、私はガンターラさんから力を頂きました」

「そうか……」

 ヴァルキュルスはなおその笑みを強くしながら腕を引き剥がし、また後ろへ下がる。

「もう一度、この手で奴と戦えるのか!」

「奴?」

 尋ねてみたが、ヴァルキュルスは何も答えない。ただ興奮しながら、梓だけを見ている。

「舞姫を連れていく以上の楽しみができた! ここで貴様を倒すことだ! ガンターラの力を!!」

「……」

 そんな笑みを浮かべるヴァルキュルスの姿に、梓が浮かべた物は、哀れみだった。

「私はできれば、あなたとも戦いたくは無い」

「何を言っている! その女は貴様の仲間だろう! 貴様はそれを、黙って見ている気か!?」

「……」

 そんなことを言われれば、返す言葉が無かった。仲間を傷つけられたこと、それは許せない。自分はただ、誰も傷つけたくないだけなのに、必ず誰かが傷つき、傷つけられ、それが必要の無い感情を人に芽生えさせてしまう。

「戦うしか、無いのか……」

 

 

「……っ!!」

 梓の思いなど無視しながら、ヴァルキュルスはアズサの時と同じように、翼を広げ、飛び上がった。

「見せてもらうぞ!! その力!!」

 

 ドッ!!

 

 アズサに放ったもの以上の衝撃。それが、梓の胸に響く。

 だが、梓はそれを受けながら、平然と立っていた。

「なに!?」

「……」

 そして、胸に突き刺さった腕の、手首を掴み、

 

 ガクン

 

「なっ!!」

 軽く下に捻った瞬間、ヴァルキュルスの巨体は本人の意思を無視し、ひざを着いた。

「何だ、これは……」

「……どうやら、ガンターラさんから貰った力は、今まで以上に私を強くしてくれたらしい」

 もう一度、今度は手前に捻る。今度はその巨体が引き寄せられ、梓の体に密着する。そんなヴァルキュルスの体を、梓は抱き締める。

 一見それは、ただ優しく抱き締めているだけのようにも見える。だが、

 

 ギシギシギシ……

 

「……!」

 その音が何を意味するか、ヴァルキュルスが気付くことにそう時間は掛からなかった。

「バカな、強度だけならレイジオンの甲冑以上だぞ!」

 だがそんな事実も、起きてしまっている現実の前では意味を成さない。

 

 ギシギシギシ……

 

 次第に音は大きく、高く、近く、冷たく、山の頂上という空間に響いていく。

 そして、

 

 バリィ!

 

「っ!!」

 そんな、最も大きな金属音と同時に、人間の温かい手の感触が、ヴァルキュルスの背中に触れた。

「ここで引いては下さいませんか? あなたでは、私には勝てません」

 耳元の近くに口を寄せ、そう優しく語り掛ける。

 ヴァルキュルスからすれば、脅しの言葉として言っているであろうそれも、梓にとっては本気だった。お前では、私に勝つことはできない。だから逃げてほしい。殺したくない、死んでほしくない、それだけの思いを込めながら掛けた言葉。

 だが、

「バカが。殺すならさっさとするが良い。俺はここで引く気など無い」

 半ば予想通りの返事。それでも、梓は気持ちを変えることは無い。

「お願いです。もう、レイジオンの時のように、誰も殺したくありません」

 今でも手に残っている、レイジオンを切り裂いた時の感触。殺すしかない、あの時は本気でそう感じ、殺した。

 そう、怖いのは、戦って死ぬことだけではない。戦って、殺すこと。それはある意味、自分が死ぬこと以上の恐怖を体に植え付ける。人より優し過ぎ、なのに人より強過ぎる梓にとって、それは恐怖以上の何物でもなかった。

 だがそんな気持ちも、恐怖も、ヴァルキュルスにとって意味は無い。

「俺はお前を殺す気で攻撃した。ならお前も、始めから俺を殺す気で来い。戦って死ぬことなど、当たり前のことなのだから」

「……なぜそんなことを言うのですか?」

 苦しかった。ヴァルキュルスの言葉が。受け入れたくなかった。その現実を。

「あなたは今、生きています。今までもずっと生きてきたはずなのに、どうしてそんなに、命を粗末にできるのです……?」

 それは、ただ嫌だという感情に身を任せた語り掛け。殺させないでくれという我がまま。そんな物にヴァルキュルスは微笑し、返事を返す。

「俺達は魔轟神だ。死などとうに超越した存在。死んだ所で、死人という新たな騎士として生まれ変わる存在だ。俺達にとっては死など、通過点にしか過ぎんのだよ」

「……」

 

 思えば、ガンターラと戦った時も、あの男はこの少年と似たようなことを言っていた。

 自分はこれ以上、殺したくない。

 頼むから生きてくれ。

 そんな甘い言葉を残し、止めを刺すことができたはずの自分を置き、去っていった。

 あの男だけは自分が殺さねばならぬ、それはヴァルキュルスにとって、魔轟神である以上に、一人の騎士としての誇りの問題だった。

 だがそのガンターラも、結界を作ると同時に命を落とし、あの日の決着は永久に着くことが無くなった。今、自分にできること。それは、死など超越した存在だと言いながら、戦争で生き残ってしまった者として、共に生き残った者達と共に歩み、そして、生きていくこと。奇しくもそれは、ガンターラの願いの通りとなってしまっていた。

 

 そして今、ガンターラから力を授かった少年も、自分に同じ言葉を掛けている。

 生きて欲しい。そう語り掛けている。

 そして、これ以上そんな甘い言葉だけで命を拾うことは、ヴァルキュルスにとって耐えがたい苦痛であり、屈辱以上の何物でもない。

「さあ殺せ!! でなければ、この手が離れた瞬間舞姫を殺す!!」

「……くっ」

 

 バキボキバキバキバキッ

 

 山中に、そんな嫌な音が響いた。そして手を離した瞬間、ヴァルキュルスの体は、雪の上へと転がる。

(さあ……あの世で決着を……つけるぞ……ガン……ター……ラ……)

 

 梓には分かっていた。ヴァルキュルスはもう二度と、動かないことを。

「……」

 やりきれない思いを感じながら、梓は自分の腕を見つめる。

「身体能力の総合的な強化、ですか。この力は、私よりもむしろ……」

 だが、そんなことを考えながらも、すぐに別の思いに心が支配される。

 自分はたった今、また一人、殺めてしまったのだから。

「ただ、誰も死んでほしくないだけなのに……それは、傲慢ですか……」

 

「……うぅ」

 

「……!」

 そのうめき声に、梓はそれ以上に大切なことを思い出した。

「アズサ」

 

 近づくと、アズサは体を起こしながら、自分を見つめてくる。

「梓……勝ったの?」

「はい」

 いつもの笑顔を作り、答える。

「……」

「よく、耐えて下さいましたね」

「……」

 互いに、互いが生きているという事実。そして、その事実への嬉しさに身を任せ、抱き合った。

 相手が生きていてくれたことに、別れることなく再会できたことに、心から安堵して、いつまでも、互いの温もりを感じ合った。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 梓はアズサを支えながら、里の入口へと戻った。

「ハジメさん達はまだのようですね」

 誰もいない入口を見ながらそう呟いた時、

「あ」

 アズサの声が聞こえた。そちらを見ると、傷だらけながらも歩いてくる、ハジメとカナエの姿があった。

「お二人とも、御無事でしたか」

 最初はそう思った。だが、すぐに別の疑問も感じた。

「あれ? 青は?」

 自分達の前まで歩いてきた二人に、アズサが問いかける。

『……』

 二人とも、答えない。

「え、どうしたの?」

「……青は」

 苦しみを隠せないまま、ハジメが、真実を答えた。

「青は、連れていかれた」

「は? 連れていかれたって、誰に?」

「……レイヴンに」

「レイヴン!? ちょっと待って、青が、青がレイヴンに負けたっての!?」

「違う……」

 それは、あってはならない真実。

 

「青は、自分の意志で、魔轟神の側についた」

 

「……は?」

 一瞬、アズサは言葉の意味を理解することが遅れた。

 そんな遅れた感覚のまま、次の言葉を掛けられ、思考が追いつかない。

「紫に伝えろって……三匹の龍は、私が全部もらうって……」

「何、それ……青が……レイヴン、に……」

 

 バタッ

 

 後ろで音が聞こえた。梓が、呆然とし、目を見開きながら、ひざを着いていた。

「……嘘だ……嘘だ……」

「梓」

「……嘘だ……嘘だ……」

 呼び掛けるアズサの言葉が聞こえているのかいないのか、梓は同じ言葉を来る返しながら、自分の顔に、頭に、両手を添える。

 

「嘘だ……嘘だ、あ、ああ……」

「梓……」

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

 

 




お疲れ~。
つ~わけで、青を失った紫は大変なことになりました。
これから戦っていくことできるのかな~?
それじゃ次も書いていきますゆえ、ちょっと待ってて。
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