やべえ、久しぶりに遊戯王が書けた気がする。
まあ内容は面白くないかも分からないけれど。
とりあえず、読んでやって下さい。
行ってらっしゃい。
視点:ハジメ
「紫の様子はどうだ?」
「……」
「……そうか」
こんなふうに、里を歩いていると、必ず梓のことを聞かれる。
あの後俺達は家に戻ったんだが、あれ以来紫はずっと寝室に閉じ籠って、食事も睡眠も碌に取っていない。毎日部屋の隅に座り込み、何かをぶつぶつ呟いているだけだ。そんな状態が続いて、今日で三日目だ。
「まさか、青の奴が捕まっちまうとはな……」
里の住民達には、事実は伏せて伝えてある。
青が裏切った。そんなこと、言えるはずが無い。
「俺達のせいだ」
話を聞いていた男の一人が、深刻な顔を見せながらそう言った。
「俺達が無理やりあの二人に戦わせたのが悪かったんだ。あいつらはまだ子供だってのに、強いからってだけで戦わせてよ」
「今に始まったことじゃねえ。昔から戦争のせいで、戦わなきゃこっちがやばいからって、戦いたくない奴らを無理やり戦わせてきたんだ。それがどんな結果を生むかはよく分かってるはずなのに、俺達が弱くて、青と紫が強いからってよ」
『……』
ここに集まってる人間全員が責任を感じてる。当然だ。二人は俺達のために戦って、その過程で片方がいなくなった。そして残った片方が、戦えない状態に陥った。ずっとあの二人のことを好いていた奴らにとって、感じる責任はかなりのものだろう。
だが、
「少なくとも、紫はそうは思ってない」
「ああ。あいつは優しい奴だからな」
「違う」
そもそも、紫が落ち込んでるのは青がいなくなったからだけじゃない。
「紫は、青がいなくなったのを自分のせいだって思ってるんだ」
「紫のせい? 何でだ? 今回二人は別行動だったんだろう?」
「忘れたのか? 青が俺達の頼みを聞き入れたのは、紫が説得したからだぞ」
「あ……」
そうだ。確かに青がいなくなったから、紫は落ち込んだ。だがその原因の根本は、紫が青を説得して戦いに巻き込んだことにある。
少なくとも、紫はそう思ってる。自分のせいで青がいなくなった。自分のせいで、青がこんなことになった。
だから紫は、今もずっと塞ぎこんだままなんだ。
「俺達にできることって、無いのか?」
「何も無いだろうな」
冷たいが、そうはっきりと答えてやった。今の紫が元に戻る方法があるとすれば、それは青が戻ってくることだ。だが連れ戻そうにも、紫はあの状態だ。ヴァルキュルスを倒したというのは聞いた。だが、青でさえ倒せなかったレイヴン、そして最後の三神将『レヴュアタン』に、俺達が勝てるのか?
可能性は限りなく低い。だからこれ以上、迂闊には動けない。
「……とにかく、紫のことで何かできることがあったら、何でも言ってくれ。力になるから」
「ああ。ありがとう」
最後に礼を言って別れた。
あいつのことを思っている人間は大勢いる。だが、そんな心が何人集まろうと、一人の人間の存在には敵わない。悲しいことだがな。
視点:梓
なぜ……どうして……
誰もが私の前からいなくなる……
いつもそうだ。
後悔したくないがために、選択しただけだったのに、いつもそのせいで、私以外の誰かがいなくなってしまう。
どうしてそんなことを思い出したのかは分からない。ただ、失うことの辛さを思い出した。同時に、その辛さを知ったきっかけが、私の選択の結果だと言う事実が蘇った。
そして、今回も同じだ。私の選んだ答えが、私の最も大切な人を奪った。
なぜこんなに、私以外の、大切な人ばかりが……
私のせいで……
「……さ……」
この声は……
視点:アズサ
「あのさ、梓……」
梓の目の前に座って、何度目になるか分からないけどそう呼び掛けてみる。毎日繰り返してるのに、梓は返事をしてくれない。
もっとも、返事をしたってどんな言葉を掛けていいか分からないんだけどさ。
「私のせいだ……私のせいで、青さんが……」
また……どうしてそうなるのさ。
「紫のせいじゃないって!」
何度もそう言ってるのに、どうして分かってくれないの?
「紫だってさ、自分が戦うっていうから戦ってくれたんでしょう! 青だって、理由は知らないけど自分がそうしたいって思ったから裏切ったんじゃん! それで紫が責任を感じる理由なんてないじゃん!!」
「私の……私のせいで……」
全然聞こえてない。
帰ってきてから洗いもしないでずっと着てる浴衣はしわくちゃ。お風呂にも入ってないから髪はぼさぼさで、あれから寝てないせいで目の下には隈ができてる。元々痩せてるから変化は無いけど、ご飯も全然食べないし。このままじゃ死んじゃうよ。
「梓さ、何でもいいから返事してよ……」
そうやって、青のことばっか思い出さないでさ……
「僕のこと見てさ、また前みたいに悪気の無い嫌みとか皮肉とか、聞かせてよ……」
「……」
梓……
「私のせいだ……」
「……」
やっぱり、ダメみたいだ。
部屋を出て、どうしたらいいのか考えるのが癖になっちゃってる。
紫を元に戻すには、結局、青を連れて帰るしかないよね。
けど、ワームはともかく、まだ魔轟神は二人生きてる。魔轟神最強のレヴュアタンもいるし、レイヴンはそこまでじゃないけど、どういうわけか僕は戦えないみたいだし。
けど……
「……うん」
視点:外
塞ぎこんでいる梓と、その梓の姿に、気分を落とす家族。
そんな屋敷の前で、そんな暗い物とは無縁な者達の姿があった。
「じゃあ行こう」
「うん」
「ねえ、やめようよ。見つかったら怒られちゃう……」
「見つからないと良いんだって。どうせ最後は紫にみつかるんだから」
「う~ん……」
未だ悩んでいる一人をたしなめながら、四人は中に入っていった。
視点:梓
私のせいで、梓さんがいなくなった……
私のせいで、梓さんがいなくなった……
「……き……」
人の声……またアズサですか……
もう、お願いだから放っておいて下さい……
「……むらさき……」
……紫?
この家にいる間、アズサが私達を呼ぶ際は、本名の梓の名で呼んでいたました。色で呼ぶのは里にいる時だけです。それが、仇名であり偽名でもある、紫……?
カナエさんかハジメさん……?
「……むらさき……」
……違う。
あの二人にしては、声が随分幼い。
一体……
「……誰?」
「あ、返事した」
視線を上にしてみると、そこにいたのは、ここにはいないはずの人達の姿。アズサや私、そして梓さんが、毎日決闘の相手をしていた、氷結界の里の子供達。その中でも、よく一緒にいる四人の男の子と、一人の女の子。
「ユキさん、ユウさん、トモさん、エリさん……なぜ、あなた達が……」
「紫が元気無いって聞いたから、元気づけてあげようと思って」
元気づけて……
「心配して下さるのですか……?」
こんな、誰かを失うことだけが取り柄のような男のことを?
「うん。元気づけようと思って、デッキ持ってきたんだ」
「デッキ……」
「ねえ、決闘しようよ。そしたら多分元気出るから」
「決闘……」
随分久しぶりに聞いた気がする。決闘か。私が、決闘か……
「……申し訳ありませんが……」
彼らには悪いですが、青さんがいなくなって、どうすることもできない私が、青さんのことを差し置いて、決闘をするなど……
「私は……」
「ほら早く」
と、彼らは私の言葉を聞こうとせず、手を引こうとする。
「え、ちょっと……」
「決闘ディスク着けて。えっと、デッキは?」
「デッキは……」
強引に決闘ディスクを左手に着けたユキさんに対し、懐から取り出したデッキを見せます。
「おお! さすがに手放さないんだ! もしかして、三日前もそれ持って山に登ってたの?」
「……」
見抜かれてる。正直な話、これだけは一生手放せないような気がする……
「じゃあやろう! そのデッキだって、決闘したいって言ってるよ!」
「えっと……」
きっぱり断りたい所ですが、何と言えば良いのか分からない。いつもは少し考えれば頭に浮かぶ謝罪と拒絶の言葉が、今日に限って、全く思い浮かばない。
「早く早く!」
「聞き慣れん声がすると思ったら……」
『っ!!』
その声に、四人とも身を固めた。
「人様の家に、どっから入ってきたんだ悪ガキ共?」
ハジメさんが、かなり怒った様子で四人を見下ろしながら、腕を組んでいる。
四人とも恐怖ゆえか、ハジメさんを見ようとはしていない。
「悪いが、紫は今体調が良くない。説教はまた今度にしてやるからさっさと出ていけ」
『……』
四人は顔を見合わせると、いそいそと部屋の入口へ歩き始めました。どうやら子供達にとって、ハジメさんは恐怖の対象らしい。
『……』
「……」
四人とも、落ち込んでいる。
「……待って下さい」
私が呼び掛け、四人は足を止めました。
「……分かりました。決闘をしましょう」
「本当!?」
直前までの恐怖に浮かんだ顔が、一気にパッと明るくなりました。
「ええ。それで気が済むなら……」
『やったー!!』
えらく喜んでいますね。たかが決闘だというのに。
「やれやれ。紫も甘やかさなくても良いんだぞ」
「……構いません」
彼らも、悪気があってこんなことをしたわけではないのだから。気分は優れませんが、彼らの気持ちは組んでさしあげなければなりません。
庭先に立ち、四人のうちの一人と向かい合います。
「いくよ! 紫!」
「……ええ」
『決闘!!』
梓
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
ユキ
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
「先行は私ですか。ドロー」
梓
手札:5→6
「……カードを二枚セットし、『ゾンビキャリア』を守備表示」
『ゾンビキャリア』チューナー
レベル2
守備力200
「ターンを終了……」
梓
LP:4000
手札:3枚
場 :モンスター
『ゾンビキャリア』守備力200
魔法・罠
セット
セット
「よし! 僕のターン、いっくよー!! ドロー!!」
ユキ
手札:5→6
「きたよきたよ!! 魔法カード『
「相変わらず元気だね」
「ユキだからね」
「仕方ないよ。ユキだもん」
……クス
確かに……
「あ、紫が笑った」
『え?』
「紫……?」
「僕は『激昂のミノタウロス』を召喚!!」
『激昂のミノタウロス』
レベル4
攻撃力1700
「効果は知ってるよね! このカードが場にある限り、自分フィールドの獣族、鳥獣族、獣戦士族は、守備モンスターを攻撃して……」
「その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値分のダメージを与える、ですね」
「その通り!!」
有名なカードですし、知っています。
「続いてこいつだ! 『サイバネティック・サイクロプス』召喚!!」
『サイバネティック・サイクロプス』
レベル4
攻撃力1400
相変わらず、『獣戦士族』が好きですね……
「さあ、バトルだよ!! まずは『激昂のミノタウロス』、『ゾンビキャリア』を攻撃だよ!!」
防ぐ手立てはありませんね。『ゾンビキャリア』は真っ二つになってしまいました。
梓
LP:4000→2500
「続いて、『サイバネティック・サイクロプス』で、ダイレクトアタック!!」
「……」
梓
LP:2500→1100
「やったやったー!! カードを一枚伏せて、ターンエンド!!」
ユキ
LP:4000
手札:2枚
場 :モンスター
『激昂のミノタウロス』攻撃力1700
『サイバネティック・サイクロプス』攻撃力1400
魔法・罠
セット
梓
LP:1100
手札:3枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
セット
セット
「さあ、来なさい!!」
「……ドロー」
梓
手札:3→4
「罠発動! 『
む……
「手札を全部捨てて、捨てた枚数×200ポイントのダメージを与えるよ! 僕の手札は二枚。ダメージは400ポイントだよ!」
ユキ
手札:2→0
「え、400だけのために二枚も?」
「勿体なく無い?」
「ふむ……狙いはダメージだけではありませんね」
「そう! 『サイバネティック・サイクロプス』は、手札が0枚の間攻撃力を1000アップさせるからね! これで『サイバネティック・サイクロプス』の攻撃力は2400だよ!」
『サイバネティック・サイクロプス』
攻撃力1400+1000
「おお! すごい!!」
「そっか! このために!」
「ねえ! すごいでしょ! ねえ紫!」
……あまり調子に乗らないこと。
「カウンター罠『ダメージ・ポラリライザー』」
「へ?」
「効果ダメージを無効化し、お互いにカードを一枚ドローします」
「へ? じゃあ……」
「私へのダメージはゼロ、更に手札は一枚になるので、『サイバネティック・サイクロプス』の効果も無効となります」
「えぇー!?」
「あちゃあ、せっかくコンボが決まったと思ったのに」
「やっぱり紫が相手だと上手くいかないよね」
「お気の毒……」
「うぅ……ドロー」
ユキ
手札:0→1
『サイバネティック・サイクロプス』
攻撃力1400
「……」
梓
手札:4→5
「まずは永続魔法、『六武衆の結束』を発動します。これで『六武衆』の名を持つモンスターが召喚、特殊召喚される度、最大二個まで武士道カウンターがこのカードに乗ります。そして、相手の場にのみモンスターが存在することで、手札の『六武衆の御隠居』は特殊召喚できる」
『六武衆の御隠居』
レベル3
守備力0
『六武衆の結束』
武士道カウンター:0→1
「更に魔法カード『六武衆の荒行』。場の六武衆一体を選択し、それと同じ攻撃力を持つモンスターをデッキより特殊召喚します。御隠居の攻撃力は400、同じ攻撃力のチューナーモンスター、『六武衆の影武者』を特殊召喚」
『六武衆の影武者』チューナー
レベル2
守備力1600
「うわ、シンクロ素材が揃っちゃった……!」
「レベル3の『六武衆の御隠居』に、レベル2の『六武衆の影武者』をチューニング」
「激流轟く
「シンクロ召喚。母なる海の力、『神海竜ギシルノドン』」
『神海竜ギシルノドン』
レベル5
攻撃力2300
「うわ、出た……」
「……『六武衆の結束』の効果。このカードを墓地へ送ることで、このカードに乗っている武士道カウンターの数だけカードをドローします。結束を墓地に送り、カードを二枚ドロー」
梓
手札:2→4
「永続罠、『リビングデッドの呼び声』発動。私の墓地のモンスター一体を、攻撃表示で特殊召喚します。『ゾンビキャリア』を特殊召喚」
『ゾンビキャリア』チューナー
レベル2
攻撃力400
「更に魔法カード『
梓
LP:1100→100
「レベル3融合モンスター、『フュージョニスト』を特殊召喚」
『フュージョニスト』
レベル3
攻撃力900
「レベル3の獣族『フュージョニスト』に、レベル2の闇属性『ゾンビキャリア』をチューニング」
「
「シンクロ召喚。冷たき魔人、『氷結のフィッツジェラルド』」
『氷結のフィッツジェラルド』
レベル5
攻撃力2500
「二回連続でシンクロ召喚!?」
「レベル3以下のモンスターが墓地へ送られたことで、ギシルノドンは攻撃力を上げます」
『神海竜ギシルノドン』
攻撃力2300→3000
「うはー……」
「まだです」
「へ?」
「『真六武衆-シナイ』を通常召喚。更に、効果により『真六武衆-ミズホ』を特殊召喚」
『真六武衆-シナイ』
レベル3
攻撃力1500
『真六武衆-ミズホ』
レベル3
攻撃力1600
「手札を一枚、デッキの一番上に戻すことで、墓地に眠る『ゾンビキャリア』は特殊召喚されます」
梓
手札:1→0
『ゾンビキャリア』チューナー
レベル2
守備力200
「レベル3の『真六武衆-シナイ』、『真六武衆-ミズホ』に、レベル2の『ゾンビキャリア』をチューニング……」
「うっそ!!」
「三回目!?」
「容赦無さ過ぎ!!」
「不死なる魂
「シンクロ召喚。不滅の勇者『ギガンテック・ファイター』」
『ギガンテック・ファイター』
レベル8
攻撃力2800
「あ、あわわわ……」
「『ギガンテック・ファイター』は、互いの墓地に眠る戦士族モンスターの数だけ攻撃力を100ポイントアップさせます。ユキさんの墓地にモンスターはありませんが、私の墓地には、戦士族である真六武衆が四体。よって攻撃力は400ポイントアップ」
『ギガンテック・ファイター』
攻撃力2800+400
「こ、攻撃力3200……」
「バトルです」
「うわ!」
「『神海竜ギシルノドン』で、『激昂のミノタウロス』を攻撃。
「うぅ……」
ユキ
LP:4000→2700
「続いて、『氷結のフィッツジェラルド』、『サイバネティック・サイクロプス』を攻撃。
「うわ!」
ユキ
LP:2700→1600
「最後に、『ギガンテック・ファイター』の直接攻撃……
「うわぁああああああああ!!」
ユキ
LP:1600→0
「はっ」
しまった、やりすぎた……
「ユキ!」
「大丈夫?」
ユウさん、トモさん、エリさんの三人とも、ユキさんに駆け寄る。まずい、ユキさんはぐったりと倒れている。
「ゆ、ユキさん……?」
大丈夫でしょうか……
「……ぷっ」
……え?
「ぷ、あははははははは!!」
「なぜ、いきなり大爆笑なのですか?」
「だって、初めて本気の紫と決闘できたから、つい楽しくて」
「はあ……」
本気の私と……?
「紫も青も、アズサも、僕らと決闘する時いつも手加減してたじゃない?」
「はあ、まあ……」
と、反射的に返事を返してしまった。
「今までも楽しかったけど、やっぱり本気を出してくれないと梓もつまらないでしょう」
「……しかし、そのためにユキさんは惨敗ですよ」
だがそんな事実にも、ユキさんは笑っている。
「負けても次頑張れば良いんだもん」
「次……」
「うん。勝ったら当然嬉しいけど、負けてもまた次頑張れば良いんだよ。一回負けてもそれで終わりっていうわけじゃないし」
「一回負けても……」
終わりじゃない……
「紫は違うの?」
「私、ですか?」
突然の質問の意味が分かりませんでした。
「紫は、一回負けたらそれで終わっちゃうの?」
「終わり……」
終わり……
……確かに、私はずっと、終わったと思っている。
全てが終わってしまった。何もかも、私も彼も、全て。
「一回負けたら、もう何にもできない?」
……
……違う。
「まだ、終わりではありません」
まだ、全てに手立てが無くなったわけではない。
なのに、どうしてずっと止まっていたのだろう。まだ終わってもいないのに、ずっと自分を責めるだけ責めて、それ以上の行動を、放棄した。
「……」
そうですよね。
どうしてこんな子供に分かることが、私は分からなかったのだろう。
「まだ、できることはある」
立ち止まっている場合ではない。
「ありがとう」
「なにが?」
「あなたとの決闘、とても楽しかった」
そして何より、私に必要なことを教えてくれた。
「?」
分かっていないというユキさん達。ですが、ようやく、私がしなければならないことが分かりました。
「私はまだ、終わっていない」
「紫」
『!!』
ハジメさんの声がして、同時に四人は縮みあがりました。
「……」
『……』
相変わらず怖い顔で子供達を睨んでおります。が、
「……」
笑った?
「紫を元気づけてくれた礼だ。説教は無しにしてやるよ」
『……!』
今度は一斉に笑いました。やはり、いつの歳でも怒られるのは怖い物ですよね。
けど、ハジメさんの言った通り、ようやく、前に進めそうだ。
「ハジメ!! 紫!!」
また別の声が響く。カナエさんの声です。
そちらを見ると、カナエさんが血相を変えて走り寄ってきました。
「カナエさん?」
「どうした、そんなに慌てて?」
今にも泣き出しそうな顔で、私達の前に立ちました。
「アズサがいなくなったんです!! しかも、残り一着の水影装束と、忍武器も無くなってるんです!!」
『!!』
まさか!!
「アズサはどこに!?」
「分かりません。どこに行ったのか……」
手掛かり無しですか……!!
「……あの」
と、後ろから声が。
四人の子供のうち唯一の女子である、エリさんが話し掛けてきました。
「はい」
今は話している場合では無いのですが、返事をしました。
「良かったら占ってみる? 舞姫の居場所」
「……は?」
そう言いながら取り出したのは、鏡?
「お気持ちは嬉しいのですが……」
「よし、頼む」
え!?
「そう言えば紫は知らなかったな。エリは元々、氷結界随一の風水師の家系だ」
「風水師……」
「ああ。俺達も時々、天気とか土の具合とかを占ってもらう時がある。よく当たるんだ」
「……」
占い。そんな物に頼るのもいささか疑問ではありますが、他に手立てはない。
「お願いします。エリさん」
「うん」
エリさんは返事をすると、鏡を顔に掛けました……そうやって使うのですか!?
そして、何やら祈りを捧げるように、手を合わせる。
「……」
『……』
沈黙と、緊張がその場に流れています。
「……お山……」
お山?
祈りを捧げた状態のまま、突然呟きました。
「……白いお山、登って……」
雪山を登っているということですか……
「……大きな口と、牙と、爪と……」
口……牙……爪……虎?
「……死んじゃった、昔の人……」
昔の……死んだ人……虎将。
「……挑戦……」
試練!?
そこまでで、エリさんは目を開きました。
「何だかね、何かに挑戦するために、お山を登って、大きな口した物と死んじゃった人を探しにいってる」
『虎将の試練!?』
ハジメさんと声が唱和しました。
間違いない。虎将はあと一人残っている。
「ハジメさん、残りの山はどこに?」
「すぐに案内する!」
そして、行く前にもう一度子供達と顔を合わせ、
「ありがとうございました。このお礼は、いつか必ず」
そう言って全員の頭を撫でると、全員が笑って下さいました。そして、手を振りお別れしました。
「急ぎましょう。アズサが危険です」
あの試練の恐ろしさは、私がよく知っています。
「ああ。たくアズサの奴、なんて無茶を」
「……私のせいだ」
「ん?」
「私がずっと、自分を責める以外のことをしなかったのが悪かったのです。彼女はずっと、私に呼び掛けてくれていたのに」
「……」
「とにかく急ぎましょう。償いは必ず致します」
「別に償いはいらない」
「今はとにかく、アズサのことです」
そして、私達は走り、屋敷を後にしました。
どうか、無事でいて下さい、アズサ……
お疲れ~。
今回は特に言うこと無いので、次話でお会いしましょう。
ちょっと待ってて。