十五話行きますじゃ。
今回もちょっとした新展開があるので、楽しんで頂けたらなと思います。
じゃ、行ってらっしゃい。
視点:アズサ
……
…………
………………
……迷った。
勢いで残ってた水影装束を着て、忍武器を持てるだけ持って、残った一つの山の頂上まで登ってきたまでは良いけど、肝心の虎将の遺体がどこにあるか分かんない。
梓はどうやって見つけたって言ってたっけ?
紫は一目見てどこにあるか分かってたけど、僕にはそんなの無理だし。青は確か、雪玉作って投げて、それがぶつかった所にあるって言ってたっけ?
試してみようかな。適当に雪玉を作って、
ヒョイッ
ボス……
……
「分かるかー!!」
第一青は真っ直ぐ綺麗に、かなり遠くまで飛ばしてたって言ってたし、そんなこと青以外には紫くらいじゃなきゃできないよ。
こうなった以上手当たり次第に歩いていくしかないかな。けどそうは言っても、手掛かり一つ無いんじゃ見つけらんないよ。
「はあ……」
この時点で、梓とのすっごい差っていうの? すごく痛感させられちゃうよ。
僕は結局、梓を助けることなんて……
ドバァア!!
「おわぁ!!」
なに!? いきなり雪がめくれた!!
今はそんなに風は強くないよね。けど、いきなり突風みたいなの感じたし、何が起こったんだろう。
て、最初は疑問に感じたけど、
「……ん?」
あれ? めくれた雪が、浮いてる? 普通雪って浮いても下に落ちるもんだよね。
なのに、浮いてるって……
「は!!」
あったー!!
見えないけど、ここに確かに何かあるのは間違いない。
「えっと、遺体を見つけたら……」
もう一回紫のことを思い出す。紫は確か、祈ってたよね。
まあ、氷結界を守ってくれた歴戦の戦士だし、敬意を表す意味でも……
僕はひざを着いて、手を合わせて、祈った。
(僕に、虎将の試練を受けさせて下さい……)
僕なんかが虎将になるなんてこと、できないってことは分かってる。分かってるけど、他に方法が無いんだ。だから、僕にチャンスを下さい……
カァアアアアア……
突然、目の前が白く光り出した。思わず目を開くと、そこにはさっきまで無かったはずの氷漬けの遺体と、見上げるくらいにでっかい青い虎。
「ドゥローレン……それに、グルナード……」
カァアアアアア……
……
…………
………………
……
「あ、あれ?」
光が消えて、目を開けると、何だか変な場所に立ってた。
見た目普通に雪山っぽいけど……ていうか、雪山としか言えないか。
そんな雪山の、僕の目の前に、グルナードは立ってる。
氷結界史上最強にして、歴代最年少で虎将になった戦士。その若さには似合わない力と、周りを惹きつけるカリスマ性、そして、他には無い戦士達の統率力を備えた、正に勇者。
間違い無く、他の二人の虎将と比べても、別格の力を持つ戦士。
グルナードは僕を見ながら、片手をかざして、構えた。
そっか。先代の虎将を倒す。それが試練なのか。
いいよ。絶対に倒す。倒して、青を連れ戻して、紫に笑ってもらうんだ!!
視点:ハジメ
『グオオオ!!』
「邪魔です!!」
紫が叫びながら振った拳が、向かってきた『ワーム・バルサス』をぶっ飛ばした。
今俺達はアズサを追って、梓とカナエとの三人で山を駆け登っている。取る物も取りあえず屋敷を出てきたから、梓はいつも寝る時にだけ着る紫の浴衣と、素足の上に草履を履いているだけの格好だ。
だがそれ以上に、いつも優しい顔を見せる紫だが、今の紫は、今まで見せたことの無い、かなり取り乱した姿だ。
青がキレた所なら一度見たことはある。だが、それが紫というだけで、同じ顔なのに、どうしてここまで違和感を覚えるんだ?
「急ぎましょう!」
「あ、ああ」
だが、確かに急がないといけないのは事実だ。もしまたアズサが魔轟神に狙われでもしたら……
「ハジメさん」
と、突然走りながら話し掛けられた。
「何だ?」
「今気付きましたが、まだ聞いていませんでした。なぜアズサは、魔轟神に狙われているのです?」
うん。そう言えば、梓達は知らなかったな。
「青い髪を持った女が舞姫って呼ばれるのは、前に話したな」
「ええ」
「舞姫っていうのは成長すると、交霊師としての教育を受けて、交霊師として生きることになる」
「交霊師?」
「ああ。交霊師は氷結界で唯一、封印された龍達と交信できる人間だ。その証が、本来の白ではなくて、持って生まれてくる青い髪だ。それは歴史を見ても女しかいない。封印された龍達と会話して、その心を鎮めるのが仕事だった」
「仕事だった?」
「ああ。封印されて、身動きが取れない龍達と会話をして、その粗ぶる心を鎮める。だが、戦争で龍達の封印を解いてからは、龍達と会話して、その行動を操るのが仕事になった。要するに、交霊師が龍達を制御していたんだ」
「だが、それもブリューナクとグングニールの二体までだった。三体目のトリシューラの封印を解いた途端、その交信は途切れてしまった。龍達は自分の思うままに暴れ出して、抑えが効かなくなったんだ。おそらくトリシューラの力が強過ぎたせいだろう。先代の交霊師は何度も交信を心掛けたが、結局は力及ばず、龍達に殺された」
「……それで、アズサを?」
「おそらくな。アズサも未熟だが交霊師としての教育や、その術を学んできたからな。もっとも、アズサに龍をどうこうできる力があるとは思えないが。交霊師としての全てを伝える前に死んじまったから。先代の交霊師……俺とアズサの母親は」
「……」
「……とにかく、今はアズサだ。急いだ方がいい」
「ええ」
話を聞いて納得したらしく、紫は前を向いて、直前以上に足を速めた。
視点:アズサ
ガキッ!!
「うぅっ!!」
ヴァルキュルスと戦った時と同じ。さっきから向かっては飛ばされて、また向かっても飛ばされて、それの繰り返し。
「はぁ……はぁ……」
もう装束もボロボロだ。少しだけで良いから梓達みたいな力が欲しいなって着てみたけど、まあ当然、格好を真似ただけで強くなれる訳が無い。クナイとか手裏剣とかも、投げてみても三本に一本は見当違いの方向に飛んでいく。クナイを手に持って使ってみても、いつもの輪刀とは全然勝手が違う。紫は一つも使わなかったし、青は一発で使いこなしてたってハジメ達から聞いたけど、僕はダメダメだな。
『……』
何だか、グルナードも呆れてるみたいだ。
そりゃそうだよね。普通虎将の試練に挑戦できるのなんて、氷結界でも選りすぐった戦士達だけのはずだもん。それが今じゃ、僕みたいなザコまで試練を受けなきゃいけないような状態。戦士なんて呼ばれる人達は、何年も前にいなくなってるからな。
本当、僕自身、ここにいることが恥ずかしいって思えてくる。
「……けどさ……」
僕が弱いってことは分かってるんだけどさ、それでも、弱かったりザコだったり、それだって、何にもしなくて良いって理由にはならないよね。何より、したいことをしない方が良いって理由には、絶対にならない。
「僕は、青を助けにいかなきゃダメなんだ。紫に笑ってもらうためにさ」
もっとも、それが今すぐできる状態じゃないからここにいるわけだけど。
「僕が君を倒して、虎将になれれば、少しはマシになれるだろうし……」
何より……
「そうすることができたら、僕もようやく、あの二人みたいになれるだろうしね」
今まで名前が同じってだけで、あの二人ほど僕ができることなんて無かった。同じになりたくたって、精々今みたいに、格好を真似るくらいしかできない。
それでも、諦めたくない。あの二人と同じでいたい。紫の、隣に立ってたい。
「だから僕は……絶対に……負けられない」
いつもの輪刀を両手に構えて、グルナードに向かう。
うん、やっぱ使い慣れた武器が一番だな。どうせまた吹っ飛ばされるんだろうけど、何度でも吹っ飛んであげるよ。君を倒して虎将になるまで、何度だってさ。
視点:外
向かってくる少女を見つめながら、グルナードは手を目の前にかざす。その瞬間、氷でできた剣が少女に向かっていく。直接手を下さずとも、この氷の剣を操ることで敵を倒せるのがグルナードの力。だが少女はそれらを輪刀で砕いていきながら、徐々自分に近づいてくる。
その懸命な少女の姿に、グルナードが感じたのは、哀れみだった。
本来、舞姫は虎将の試練を受けるような人間ではない。もちろんある程度の戦闘力も求められる存在ではあるが、虎将の試練という、最強の力を得られるほどの力を求められるほどではない。だと言うのに、この少女はそんな物は関係無いとばかりに、一気呵成に自分へと向かってくる。
先程から何度も氷の剣に阻まれ、後ろへと吹き飛んでいると言うのに、その目に浮かぶ闘志は、魂は、決してへこたれることは無い。
虎将の魂としてここに残され、本物でも無いのに試練を与える者としてだけ存在を求められ、そして今、自分に向かっているのが、大した力を有することもできていない、未熟とすら呼べない舞姫の少女。
何もかもが哀れだった。少女の弱さが。こんな少女でなければ戦えないほど弱くなってしまった里の弱さが。それほどまでに弱体化した氷結界が。
あらゆる弱さを体現したような存在である目の前の少女が、哀れでならなかった。
「だぁあああああああああ!!」
だが、その少女も、先程に比べれば自分に近づいてきている。直前まで、十本も砕けば後ろへと吹き飛ばされていたというのに、クナイを輪刀に持ち替えただけの今は、三十本、四十本と砕いていきながら、向かってくる剣も全て防ぎ、砕き、自分に近づいてくる。
「もう少し……もう少し……」
そう自分に言い聞かせ、向かってきている。その目には、グルナード自身の姿しか映っていないように見える。
「もう少し……もう少し……」
グルナードとの距離は、今や三メートルほどだろうか。
近づいていく度、氷の剣は数も、威力も増していくというのに。輪刀を正確に操り、攻撃を繰り出し、少しずつ少しずつ、近づいてくる。
「もう少し……もう少し……」
残り二メートル。
ずっと動かしている、輪刀を握る手には血が滲み、水影装束はボロボロに切り裂かれ、顔には幾つもの傷ができている。
「もう少し……もう少し……」
残り一メートル。
グルナードは驚嘆していた。先程まで弱々しい、哀れみしか感じられなかった姿が、なぜか、強大な力を有する、強者の姿へと変わっていく。
「もう少し……もう少し……」
そして遂に、全ての剣を砕き、グルナードの目の前に。
「うわああああああああああああ!!」
ガッキィ!!
『……』
「くぅ……」
背中に背負っていた氷の大剣を抜き、少女の輪刀を受け止める。見た目こそ先程から作っていた氷の剣がただ大きくなっただけのように見える剣だが、ずっと背中に背負っていたことで、自身の魔力を長い間、直に受け続け、強化され続けた、グルナードにとって最強の剣。
そして、それを抜かせた少女が今、目の前に立っている。
『……』
グルナードは直前までの自分の考えを恥じた。
この少女は弱者ではない。十分に強い、強者と呼ぶにふさわしい。
だが、
ガキッ
「うぅ!!」
ただ強いだけでは虎将にはなれない。虎将として、そんな簡単に力を譲るわけにはいかない。
『……』
先程と同じように、無数の氷の剣を作り出す。
だが、今度は彼女の道を阻むためではない。彼女に、とどめを刺すために。
『……』
氷の剣を、少女を囲むドーム型になるよう操り、全ての切っ先を少女へ向ける。
せめて最後はこれ以上苦しまないように。
そんな祈りを籠めながら、最後に、手を下へ振った。
「もう少し……もう少し……」
ダンッ!!
『……!!』
だが、剣が向かってきた途端、その剣のドームから抜け出し、自分へと向かってきた。だがそれは、今までに無かった速度。人間にはあり得ない速度。
『っ……!!』
慌てて氷の剣を作りだすが、精製が完了する前に、少女はそれらを通り越してしまう。
ガッキッ
先程と同じ、氷の大剣でその攻撃を受け止める。だが先程とは明らかに違うのが、もしあらかじめ抜いて手に持っていた状態で無く、先程のように背中に背負っていた状態なら絶対に間に合わなかったであろうその速度。
「もう少し……もう少し……」
『……!』
そこまで近づいてきて、初めてその変化に気付いた。
剣のドームの中にいた時まで、青く光っていたはずの瞳が、いや瞳以前に、眼全体が、赤く光っていることに。
「もう少し……もう少し……」
そして、それもまた信じられない光景だった。
だがその光景を目の当たりにした瞬間、大剣にヒビが入る。自分にとっての最強の剣が、徐々に悲鳴を上げている。その事実に、グルナードは驚愕を隠せずにいた。
「もう少し……もう少し……」
バキバキバキ……
ヒビは徐々に大きくなっていく。そして、その信じられない光景も、徐々に大きくなっていく。
「もう少し……もう少し……」
ガッキィイイイイイ
まるで剣の悲鳴だった。
先程までの氷の剣と同じように、最強の剣は砕かれ、タダの氷へと姿を変えた。
「もう少し……もう少し……」
そして、同じ言葉を繰り返す少女もまた、自分の目の前に。そこで、輪刀を振り上げた。
「私を待ってて……梓……」
……
…………
………………
視点:アズサ
……
……
……?
「あ……あれ?」
僕は、さっきまでよく分からない空間にいたと思ったけど。
目の前に突然グルナードが現れて、そのすぐ後にドゥローレンも出てきて、それで目の前が光って、グルナードと戦って、それから……
そこからが思い出せない。
けど、何だろう。何だか、今までに無かった力が、体の奥から沸き立ってくるみたいな……
そっか!! 僕、試練を乗り越えたんだ!!
「……う!!」
あ、あれ……なに……なに、これ……
「うわああああああああああああああああああああ!!」
視点:カナエ
「!! アズサ!?」
走っている最中、突然紫さんが声を出しました。
「どうした? 紫」
「今、アズサの悲鳴が」
「え? 何も聞こえませんでしたけど」
紫さんは疑問の顔を浮かべています。ハジメも、何も聞こえなかったという顔をしています。
「紫、もっと速く走れるか?」
「え、ええ……」
「なら先に行け。俺達は後から追い付く」
「……分かりました」
ハジメの言葉に従って、紫さんは足を速め、そして、消えました。
「それにしても、紫らしくない」
「確かに。アズサが言うには、紫さんは青さんと違って、向かってくるワームに対して、攻撃も反撃もしなかったと言っていたのに」
なのに、今は向かってくるワーム全てを、素手ですが、とにかく倒していっている。
何より、青さんはともかく、紫さんがここまで取り乱した姿は、今まで見たことがありません。
「紫にとって、アズサはそれ程の存在ってことか」
「……そうですね」
視点:アズサ
痛い……痛い痛い痛い……
何これ……こんなの、あの二人には無かったはずだよ……
二人とも普通にしてたし、前よりずっと強くなってた……
なのに、何で、僕の体は、こんなに痛いの……
「どうやら、虎将の力が君を拒絶しているようだな」
……!!
「レイヴン……」
最悪だ。こんな時に、よりによってこんな奴に……
けど……
「青を返して!!」
青のこと、まずは取り返さないと。
「おかしなことを言う。彼は自分の意志でこちらへとやってきたのに」
「あんたが何かしたんだろう!! そうじゃなきゃ、青がそんなことするわけ……!!」
「無いと言えるのか?」
「は……?」
「君は、彼のことをそこまで分かっているのか?」
「何、言ってるのさ……」
「君はそこまで彼のことを理解しているのか? いやそもそも、君は人間のことをそこまで理解しているというのか?」
「なに、言ってるの……?」
訳が分からない。この男は、何が言いたいのさ……
「まあ良い。私は君を迎えにきた。さあ、私と共に行こう」
「ふざけるな!!」
「アズサー!!」
「っ!!」
この声、紫?
「アズサー!!」
間違いない、紫だ。でも、何で……
「ほう、どうやら人間の仲間も迎えにきたようだな」
だから何それ……
「アズサ!!」
僕が聞き返そうと思ったら、紫の浴衣を着た、梓が僕の前に立ってる。
「アズサ!!」
僕のことを呼びながら、近づいてきて、倒れてた僕の体を抱き上げてくれた。
「梓……来て、くれたの……?」
「当たり前ですよ。こんな無茶なことをして、死なないで良かった……」
「……無茶って言葉、君にだけは言われたくないかな……」
何でだろう。紫の顔見た途端、痛みが吹き飛んじゃったよ。
そんな梓の笑顔を見た後、ハジメとカナエも来てくれた。
梓は僕を二人に任せると、レイヴンの前に。
「レイヴン、アズサに何をしたのです?」
今まで見たこと無いくらい、怒ってる。
「結論から言えば何もしていない。攻撃も、魔法も、指一本触れてさえいない。私達はただ、彼女が虎将の試練を乗り越える所を傍観していただけだ」
「試練を、乗り越えたのですか? アズサが……」
驚いてる驚いてる。ハジメにカナエも。頑張ったかいがあったよ。
「それで……しかし、それだけでこんな状態になるなど……」
「事実なのだから仕方が無い。私はただ、彼女を迎えに来ただけだからな」
「ふざけるな!!」
紫は声を上げながら、レイヴンに向かっていった。何か、紫らしくない。
フッ
けど、レイヴンの顔に向けられたはずの拳は、何でかレイヴンに当たらずに、梓の体は前に倒れ込んだ。
「バカな、確かに当てたはず……」
僕も見てた。確かに当たったよ。なのに何で……
「貴様では、レイヴンは殺せない」
『!!』
この声、紫と同じ、だけど、冷たくて、尖ってる感じの声……
「梓、さん……」
紫がその名前を呼んだ。
最後に水影装束を着た状態で別れた青梓は、今は新しい青い着物を着て、こっちを見てる。
視点:梓
「梓さん……あなたは、本当に……」
「貴様が望んでそちらにいるように、私も、望んでこの男と共にいる」
レイヴンの隣に立ちながら、梓さんは私にそう言った。
どうして……
「目的は何です?」
「ハジメ達から聞いていないのか? 三匹の龍を手に入れる。それが私の目的だ」
「そのために、舞姫であるアズサを?」
「何を言っている?」
と、梓さんは疑問の表情を浮かべました。違うというのですか?
「私はレイヴンの望みのままに、ここへ来ただけだ」
「レイヴンの、望み? 何を……?」
「レイヴンは、連れ戻そうとしているだけだ。最後の一人を」
「最後の一人?」
「そうだ。三神将と共にもう一人だけ生き残っていた魔轟神。そして、三神将も滅んだ今、世界にただ一人となった、最後の魔轟神を」
「最後の魔轟神……」
「ちょっと待って。生き残った四人の魔轟神て、三神将と、レイヴンの四人のはずじゃ……」
「違う」
アズサの言葉を遮ったのは、レイヴン。
「私は、既に死んでいる」
「は?」
キンッ
スパァ
『……!!』
突然、梓さんは刀を抜き、レイヴンを切り裂いた。
「……」
『!!』
だが、レイヴンは斬られるどころか、刀は体を通り過ぎただけ。
「見ての通り、私は単なる霊体に過ぎない。何かに触れられるのは、そうしたいと強く思った時だけだ。普段は疲れるのでこの状態だがな」
「じゃあ、その最後の一人って……」
「言ったはずだ。迎えにきたと」
そして、レイヴンは視線を真っ直ぐ、アズサに。
「さあ、帰ろうではないか。魔轟神の巫女よ」
「……は?」
私を含めた、アズサ以外の視線が、全員アズサに注がれる。
「何言ってるの? 魔轟神の巫女って、僕が最後に倒した女の魔轟神のことじゃん……」
「逆だ。舞姫は魔轟神の巫女に殺され、巫女は新たに舞姫の記憶と姿を得、氷結界に加わったのだ」
「ふざけたこと言わないでよ!!」
今までに無い、かなり取り乱した姿。
「僕が魔轟神なわけ……!! わけ……あれ?」
突然、否定していたアズサの顔に、疑問が浮かびました。
「待って……何この記憶……僕は、こんな記憶、知らない……」
「ようやく魔轟神としての記憶が戻ったらしいな」
魔轟神としての?
「ちょっと待って、なに、何なの、私は……私? 僕? あれ……?」
「まだ信じられないなら、分かり易くしてあげよう」
レイヴンはそう言いながら、アズサへ手をかざした。
「うぅ……!!」
その瞬間、今まで以上にアズサの顔が歪んだ。
「なに、これ……ちょっと、まって、これ……」
まず目が赤くなった。その次に肌全体が白くなり、髪も黒く染まっていく。
「アズサ、お前……」
「うそ、アズサ……」
ハジメさんとカナエさんが、アズサから手を離しながら名前を呼びましたが、その声は、真にアズサの名前を呼んではいない。
「アズサ……」
私も、二人のように名前を呼びました。彼女はアズサだ。その事実を、もう一度自分に言い聞かせるために。
けれど、目の前のアズサの背中からは、黒い羽が生えて……
「いや……いやぁあああああああああああああああああ!!」
「梓、見ないでええええええええええええええええええええええええええ!!」
その悲鳴を最後に、ハジメさんとカナエさんの間に座っていた、アズサは、服装をそのままに、黒い羽を舞い上げながら、レイヴンによく似た姿になった。
そして、アズサに向かって、レイヴンは手を伸ばす。
「さあ、私と共に帰ろう。魔轟神の巫女、『グリムロ』よ」
第二部 完
お疲れ様~。
つ~ことで、アズサの正体はグリムロでした~。
ベタベタな展開でごめんなさいね~。
ともかくこれで、第二部終了します。
次は第三部、『氷結界の龍争奪』編で会いましょう。
次はいつになるかな~。
まあなるだけ早く上げれるよう頑張るよ。
それまで待っててね~。