遊戯王5D's ~剣纏う花~   作:大海

41 / 86
第四話完結。
さあどうなることか。
行ってらっしゃい。



第四話 邪心経典 ~結末~

視点:梓

 ……

「……」

「……?」

 何です?

「あれ?」

「これは……?」

 私もアズサも、そして梓さんも、何が起こったのか分かっていません。

 いや、逆だ。何も起こらなかった。先程のハジメさんやカナエさんのように消えていない。変わらずここにいるだけ。

「バカな……これは!?」

 レイヴンが周囲を見ながら叫んだ。

「……お前達は……」

 私と、アズサと梓さんの、三人のすぐ後ろ。そこに虎王、ドゥローレンが一匹ずつ、計三匹。

「ドゥローレンが、虎王の力で守ってくれたの?」

「バカな! そんなことで邪心経典の儀式は遮られはしない」

「……おそらく、経典が求めた邪心が不完全だったためだろう」

 静かに、梓さんが喋りました。

「不完全だと!?」

「そうだ。貴様はハジメとカナエの二人を、グリムロに対する怒りと悲しみの生贄にした。だが、私達三人が抱いたそれぞれの感情は、全てグリムロではなく、貴様に抱いた物」

「まさか……なら、邪心経典による生贄の感情は、私ではなく、私の相手に向けられたものでなければならないということか!?」

「そのようだな。普通の人間ならあるいはそれでも生贄にできたかもしれない。だが、私達は虎将となり、虎王によって守られている。貴様の知識不足と慢心が生んだ、完全なる失敗の結果だ」

 その言葉で、レイヴンは力が抜けたように、放心した。

 

「それにしても……」

 梓さんはもう一度、二の腕に浮かぶ『疑』の文字を見る。

「疑う、か。見くびられたものだ。私はお前を疑ったことなどない。なぜなら、一度でもお前を信用したことなどないのだから」

 そう話しながら、二の腕を離れ、上に浮かんだ『疑』の文字を握りつぶした。

「……何が憎むだ。そんな物はとうの昔に超越している。もし今アズサと決闘をしていなければ、私は今すぐ貴様を……」

 私の胸からも、『憎』が離れ浮かび上がる。私もその文字を握りつぶした。そしてそんな私達の言葉で、レイヴンは怯みを見せる。

「くぅ……」

 

 すると、右手を空に向かって伸ばした。そして上空に、かつて雑魚どもを呼び出したのと同じ結界が生まれた。そして、そこから出てきたのは、

「三神将……」

 レイジオン、ヴァルキュルス、レヴュアタンの三人。

「やれ!!」

 そして向かってくる三神将達。

『グオオオオオ!!』

 だが、それを見た三匹の虎王が上に飛び、それぞれに一匹ずつ向かっていった。

「いずれにせよ、私達ならばあの程度の三人は意味が無いことは分かっているはずだ」

 梓さんの言う通りです。あんな人形達、敵では無い。

「くぅ……まあ良い。既に邪心経典の力は発揮されている。闇の力、不完全ではあるが、トリシューラを滅ぼすには十分だろう。トリシューラを滅ぼした後で、人間達は私が直々に葬ってくれる」

 そんなことは、アズサと倒してから言って頂きたい。

「『邪心経典』の効果。『邪心教義』と名の付くカードが墓地へ送られた時、このカードを墓地へ送り、手札、デッキ、エクストラデッキから、墓地へ送った種類×2のレベルを持つ暗黒界モンスターを一体、特殊召喚できる。五種類送ったなら、レベル12のモンスターを特殊召喚できる……」

(レベル12の『暗黒界の混沌王 カラレス』を呼びたいところだが、やはり不完全な儀式では無理なようだな……)

「私はデッキより、レベル8、最後の『暗黒界の龍神 グラファ』を呼ぶ」

 

『暗黒界の龍神 グラファ』

 レベル8

 攻撃力2700

 

 三度現れ、咆哮を上げるグラファ。

「さあ、まだお前のターンだ」

「……ターンエンド……」

 

 

アズサ

LP:1700

手札:5枚

場 :モンスター

   『ナイトメア・デーモン・トークン』攻撃力2000

   『ナイトメア・デーモン・トークン』攻撃力2000

   『ナイトメア・デーモン・トークン』攻撃力2000

   魔法・罠

    セット

    セット

 

レイヴン

LP:1800

手札:4枚

場 :モンスター

   『暗黒界の尖兵 ベージ』攻撃力1600

   『暗黒界の龍神 グラファ』攻撃力2700

   魔法・罠

    無し

 

 

「さて、私のターン」

 

レイヴン

手札:4→5

 

「終わらせよう。ベージを手札に戻し、グラファを特殊召喚」

 

レイヴン

手札:5→6

 

『暗黒界の龍神 グラファ』

 レベル8

 攻撃力2700+300

 

 これでレイヴンの場には、グラファが二体並んだ。

「『ナイトメア・デーモン・トークン』が破壊された時、お前は800ポイントのダメージを受ける!」

 つまり戦闘ダメージと合わせて、二体破壊されれば終わる。

「バトルだ! グラファで『ナイトメア・デーモン・トークン』を攻撃! 魔龍の息吹 ヘルズブレス!」

「……罠発動『聖なるバリア -ミラーフォース-』」

「なっ!!」

 これは……レイヴンもですが、私も驚きました。まさか一ターン目からずっと伏せられていたカードが、それとは。

 グラファは二体共に、跳ね返った攻撃で破壊された。

「く……メインフェイズ、魔法カード『ライトニング・ボルテックス』を発動! 手札を一枚捨て、お前の場の表側表示のモンスター全てを破壊だ!」

 

レイヴン

手札:5→4

 

 墓地へ捨てたのは『暗黒界の刺客 カーキ』。捨てられた時、場のモンスター一体を破壊できる。

 ですがこの場合、手札コストとして捨てられた時は、暗黒界の効果は発動されません。

「……手札の『ハネワタ』を捨てて、このターンに受ける効果ダメージを全部無効にする」

 

アズサ

手札:5→4

 

 雷によって破壊され、放出されアズサへ向かった魂の塊。それを全て、『ハネワタ』が防いでしまった。

「ありがとう、エリ……」

「くそ! 『暗黒界の狂王 ブロン』を召喚!」

 

『暗黒界の狂王 ブロン』

 レベル4

 攻撃力1800

 

「このカードを手札に戻し、墓地のグラファを特殊召喚!」

 

レイヴン

手札:3→4

 

『暗黒界の龍神 グラファ』

 レベル8

 攻撃力2700

 

「カードをセット! ターンエンドだ!」

 

 

レイヴン

LP:1800

手札:3枚

場 :モンスター

   『暗黒界の龍神 グラファ』攻撃力2700

   魔法・罠

    セット

 

 

アズサ

LP:1700

手札:4枚

場 :モンスター

    無し

   魔法・罠

    セット

 

 

 ライフの差は大きく、レイヴンの場にはグラファ。レイヴンが有利ですが……

 

「ふふふ……ふふふふ……」

 

 手の甲に浮かんでいた『苦』の文字。それがアズサの手から離れ、粉々になりました。

 そして伝わってくる。アズサの怒り、苦しみ、憎しみ、悲しみ、それら全ての、レイヴンへ向けられた負の感情。

「ふははは……はははははははははははははははは!!」

 何と、狂気に満ちた、禍々しい笑い声なのです。狂っている。完全に。

「苦しい……本当に苦しい……」

 狂った口調をそのままに、狂気を露わにしながらその言葉を繰り返す。

「そうだよね……結局僕は、二人の家族にはなれなかったんだ。分かってたよそんなこと。最初から諦めてた。どれだけ受け入れられようとも、結局元には戻れないんだから……」

 そんなことない! けど、何も言えない。

「分かってた……諦めてた……それでも、二人のことが好きだった……それを……」

 下を向いていた顔を、目の前に、グラファに向ける。

「グラファ……お前なんかのためにハジメとカナエは……絶対に許さない!!」

 

「アズサ……」

「……」

 

「ドロー!!」

 

アズサ

手札:4→5

 

「魔法カード『二重融合(ダブルフュージョン)』!! ライフを500払い、このターン、融合召喚を二度行う!!」

 

アズサ

LP:1700→1200

 

「手札のボルテックと、アイスエッジを融合!! 『E・HERO アブソルートZero』!!」

 

『E・HERO アブソルートZero』

 レベル8

 攻撃力2500+500

 

「そして、Zeroとクノスペを融合!! 『E・HERO ガイア』!!」

 

『E・HERO ガイア』

 レベル6

 攻撃力2200

 

「このカードの召喚に成功した時、相手の場のモンスター一体の攻撃力を半分にして、ガイアの攻撃力に加える!! 対象はグラファだ!!」

「くっ……!」

 

『暗黒界の龍神 グラファ』

 攻撃力2700/2

 

『E・HERO ガイア』

 攻撃力2200+1350

 

「同時にZeroの効果!! フィールドから離れた時、相手の場のカードを全て破壊する!! 氷結時代(アイス・エイジ)!!」

「ぐあああ……!!」

 これでレイヴンの場はガラ空き。ガイアの攻撃で終わりですが……

「まだだ! まだ終わりじゃない!!」

 やはり。

「魔法カード『HEROの遺産』!! 墓地にレベル5以上のHEROが二体以上ある時、カードを三枚ドローする!! 僕の墓地にはZeroが二体!! よって三枚ドロー!!」

 

アズサ

手札:0→3

 

「『ミラクル・フュージョン』を二枚発動!! 墓地のボルテックとエアーマンを除外!! 同時にクノスペとザ・ヒートを除外!! 『E・HERO Great Tornado』、『E・HERO ノヴァマスター』を融合召喚!!」

 

『E・HERO Great Tornado』

 レベル8

 攻撃力2800

 

『E・HERO ノヴァマスター』

 レベル8

 攻撃力2500

 

「二枚目の『HEROの遺産』発動!! カードを三枚ドロー!!」

 

アズサ

手札:0→3

 

「もう一枚!! 『HEROの遺産』!!」

 

アズサ

手札:2→5

 

「バカな!! 一ターンに合計十枚のカードをドローだと!!」

「魔法カード『融合』!! 手札のフォレストマンとボルテックを融合!! 『E・HERO The シャイニング』!!」

 

『E・HERO The シャイニング』

 レベル8

 攻撃力2600+1200

 

「シャイニングは除外されたE・HEROの数だけ攻撃力を300アップする!! 魔法カード『融合回収(フュージョン・リカバリー)』!! 手札の『融合』と融合素材モンスターを手札に戻す!! 『融合』とボルテックを戻し、もう一度融合!! ボルテックとシャドー・ミストで、『E・HERO エスクリダオ』!! 墓地のE・HEROの数だけ攻撃力を100アップ!!」

 

『E・HERO エスクリダオ』

 レベル8

 攻撃力2500+600

 

「何だ、これは……」

 すごい……

 

『E・HERO ガイア』

 攻撃力2200+1350

『E・HERO Great Tornado』

 攻撃力2800

『E・HERO ノヴァマスター』

 攻撃力2500

『E・HERO The シャイニング』

 攻撃力2800+1800

『E・HERO エスクリダオ』

 攻撃力2500+500

 

「バトル!! 五体のE・HEROで、ダイレクトアタックだ!!」

 

「ぐああああああああああああああ……何てな」

 

「あ?」

「直接攻撃時、手札より、『バトルフェーダー』を特殊召喚! バトルフェイズを終了させる!」

 

レイヴン

手札:3→2

 

『バトルフェーダー』

 レベル1

 守備力0

 

 場に現れた『バトルフェーダー』が鐘を鳴らし、E・HERO達の動きを止める。

 しぶといですね。ベージとブロン、そして最後の一枚がそれだったとは。

(これで一ターン凌いだ。更に私の場に伏せられたカードは『リビングデッドの呼び声』。これで次の私のターンにグラファを呼び出し、体勢を立て直して……)

 

「リバースカードオープン!!」

 

「なに!?」

「速攻魔法『時の女神の悪戯』!! 発動した瞬間、次の自分のターンのバトルフェイズになる!!」

「次の自分の、バトルフェイズ……まさか!!」

「そう! 『バトルフェーダー』で終了されてメインフェイズになったのが、再びバトルフェイズに変わった!!」

「なん……だと……」

「お前には、一ターンの時間も与えない!! ハジメやカナエと、一言の会話すら許されなかったように!! 再びバトル!!」

「ひっ……」

「五体のE・HERO!! レイヴンを殺せ!!」

 その声と同時に、ガイアが『バトルフェーダー』を戦闘破壊する。

「あ、あぁ……」

 狼狽しながらも発動された、永続罠カード、『リビングデッドの呼び声』。

 

『暗黒界の龍神 グラファ』

 レベル8

 攻撃力2700

 

 しかし、グラファ一体だけでは、グリムロの攻撃を防ぐことなどできない。

 呆気なくグラファは破壊され、そして向かっていく、E・HERO達。

 

「ぐあああああああああああああああああああ!!」

 

レイヴン

LP:1800→0

 

 

 ライフがゼロとなり、レイヴンの体は後ろへ吹き飛ばされた。

 

「レイヴン!!」

「待って、アズサ!!」

 レイヴンの元へ向かおうとするアズサを、反射的に制止しました。

「これ以上はダメです。これ以上は……」

「離して!! あいつはハジメとカナエを!! ハジメとカナエを!!」

「奴は幽体だ。貴様が何をした所で意味は無い。何よりこれは闇のゲーム。負けた時点で奴は……」

 梓さんがそう説明した直後、レイヴンの体が透明になっていく。

「くくく……これで良い……」

 笑っている? 負けたと言うのに……

「かつて肉体が滅び、幽体となってからと言うもの、ずっと死ねなかった……もう、復讐に生きるのも、戦うのにも疲れた……儀式も失敗に終わり、力も不完全である以上、もうどうでも良い……」

「ふざけるな!! そんなどうでも良いって言えることのために、ハジメとカナエを!!」

「まさか、私に死を与えてくれたのが、闇の決闘とは……それも、娘の力とは……」

「黙れ!! 誰が!! 誰がお前の娘なもんか!!」

「ふふふ……好きなだけ否定するが良いさ……否定した分だけ、お前は自分という存在をも否定することになるのだからな」

「黙れ!!」

「ふふふ……梓よ……」

 梓さん?

「守る気は無かったが、約束だ……その闇の力、好きに使うと良い。もっとも、二度も使えば消えて無くなるだろうがな……」

「……」

 言われた梓さんは、そこに集まった闇、それを、手に取りました。

 

「まあ、これで良しとしよう……どの道、その力は……梓のものに……」

 

 何かを呟いたと思った瞬間、レイヴンは光となり……

 

「レイヴン!!」

 

「レイヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!」

 

 完全に、消えた。

「レイヴン!! レイヴン!!」

 

 ドガァッ

 

「あぁ……」

「アズサ!!」

 私に押さえられながら叫ぶアズサを、梓さんが殴り、気絶させた。

「このまま騒がれたのでは、どの道邪魔になるだけだ」

「梓さん、あなた……!!」

「『ワーム・ゼロ』を見ろ」

 私を制止しながら、空に浮かぶ『ワーム・ゼロ』を指差す。

「今の決闘で、ゼロに封印されたトリシューラが目覚めたらしい」

 説明している間、ゼロは大きく震え、その球状の表面に亀裂が入っていく。

「ほう。まるで孵化だな」

「トリシューラが、目覚める……」

 亀裂は徐々に広がり、その隙間から青い光が漏れ、その周囲が凍りつく。その氷が徐々に広がり、やがて完全な氷の球体となる。

 そして……

 

 バリィイイイイイイイィィィ……

 

 現れる、三つの巨大な、長い首。

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

「あれが……」

「あれが……」

 

『トリシューラ』

 

 

 

 




お疲れ~。
よしオリカ。


『HEROの遺産』
 通常魔法
 自分の墓地にレベル5以上の「HERO」と名のついたモンスターが2体以上存在する場合に発動する事ができる。
 自分のデッキからカードを3枚ドローする。

漫画版GXにて十代が使用。
うん、酷過ぎる。以下略。
詳しくは向こうの第二部十四話参照。


『時の女神の悪戯』
 速攻魔法
 1ターンスキップして、自分のターンのバトルフェイズになる。

遊戯王DMにて登場。
これも中々に酷いね。普通にワンキルが狙える。
一ターン目から使えるからカードさえ揃えば先行ワンキルもできちゃうし。


『二重融合』
 通常魔法
 500ポイントのライフを払い発動する。このターン、下記の効果を2回使用する事ができる。
 自分のフィールドか手札から融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地へ送り、融合モンスター1体を融合召喚扱いとして融合デッキから特殊召喚する。

遊戯王GXにて十代が使用。
今回みたいに属性HEROに使ったり、あと有効なのは『究極竜騎士』くらいかな。
他に一度に二回融合しなきゃいけないって場面も滅多にないことだし。


以上。
それじゃ、第五話まで待っててね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。