書くこと特にないので行ってらっしゃい。
視点:梓
負けたのか……
残して……消えるのか……
スゥ……
体が後ろに向かって倒れた……
「うぅ……」
体に走るはずの痛みが、いつまで経ってもやってこない。
疑問に、閉じていた目を開くと、そこには、私の顔が。だがそれは、上下が反転していて、頭には、着けているはずの髪飾りが無い……
何より、硬い地面の上に倒れているはずなのに、頭だけが柔らかい、不自然な感触……
「……ひざ、まくら……」
ようやく、今私のされていることが分かった。
「……」
青さんは、何も喋ることは無い。だが、その感触は、直前まで受けていたはずの、決闘の痛みを、和らげさせる。
とても心地が良い。頭をひざに乗せているだけなのに、頭が楽で、しかも青さんが相手なためか、このままいつまでも、寝ていたい気分になってくる。
そうか。あの時青さんは、これを感じながら、私の上で眠っていたのか。このままずっと、眠っていたいな……
だが!
……カッ
「っ!!」
カシッ
目を開くと同時に、頭を彼に向かって持ち上げた。だが彼はそれを、左手を前に出したことで防いだ。
「……」
また、彼のひざの上に倒れ込む。
これが限界だ。もう、体に全く力が入らない。
視界が赤く染まっているが、その赤い世界で、彼は傷付いた左手を眺めている。その左手からは、殊更に赤い液体が、まるで噴水のように吹き出ている。
すると、懐に手を入れ、ハンカチを取り出した。色は、白だろうか。
それを傷に当てるのかと思えば、彼は私の顔にそれを近づけ、そして、濡れた私の顔を拭き始めた。
この人は本当に不思議な人だ。こんなことになっても、私のことを……
そして、彼がハンカチをしまった時、世界は赤から、普通のものへと変わった。
「……っ」
体が消えていくのが分かる。
だけど、青さんに、これだけは、伝えなければ……
「……忘れないで……その傷を見る度、思い出して……あなたを愛し……あなたに殺された……そんな人達のこと……忘れないで……」
「……」
沈黙するその顔には、分かっている、言われるまでもない、そんな言葉がうかがえた。
あなたがずっと覚えているというのなら、それで良い……
そして願わくば、導いて……
彼を……あるべき道へ……
「梓!!」
「……!!」
「……!」
この声は、アズサ? いつの間に目覚めて……
「梓! 梓……!」
青さんの殴った腹部を押さえながら、這いつくばって、こちらに近づいてくる。
「梓……」
「いけない、来ないで……」
そんな声も届かない。大きな声を出せない。アズサまで届かない。そして、体が動かない。
「梓……」
「……青さん」
残った手段、青さんを呼ぶ。
「後生です。私を、アズサから遠ざけて……」
「……」
もし今の状態の私に触れたなら、決闘の勝者である青さんはともかく、第三者でしかないアズサは、私と共に消えてしまう。そんなこと、絶対にダメだ! なのに、アズサは分かっているのかいないのか、私を見つめ、こちらに近づいてくる。
「青さん……」
「……」
おそらく虎将の力で出血を止め、青さんは私を抱きかかえた。
「青さん……」
「……」
安心に声を漏らすと同時に、彼は歩を進める。その先には……
「っ! 青さん……!」
違う、そっちにはアズサが……!
「青さん!」
「私には、彼女の気持ちが分かる。そして紫さん、あなたの気持ちも
「……っ!」
そして、それ以上の反論も許されず、彼はアズサの前に立って、私を足下に下ろした。
「ダメです……今の私に触れたら……」
「梓……」
そんな……嫌だ……
「梓……」
アズサの手が私に伸び、そして、触れた……
それと同時だった。
私と、私に触れたアズサ以外の、視界に見えるもの全てが変わった。
何にも触れられない。何にもぶつかることはない。ただ、目の前の光景が、目まぐるしく変わっていくだけ。そんな空間に、二人は放り出されている。
闇のゲームで消えた者は死亡するか、消える。消えた後はどうなるのか、それは分からなかった。だがどうやら、私達二人ともが、先程までとは違う場所へ、連れていかれるようだ。
「アズサ……」
そしてそんな空間で、私を掴んで離さないアズサに、声を掛ける。
「どうしてこんな、無茶を……」
「……無茶って言葉、君にだけは言われたくないよ……」
前にも言われた言葉だけど、今回は顔を伏せながら、涙に揺れる声で返事をしている。
「一体、どうして……?」
それでも、答えを聞きたかった。
アズサだけには、消えて欲しくない。
彼女のそばにいたい、そう言ったのは私だけれど、そのせいで彼女が消えるなど、あってはならない。なのに……
「どうして……?」
もう一度尋ねると、彼女はうつむいていた顔を上げた。涙に濡れて、真っ赤に染まり、ただ必死な感情を、私に向けている。
「……きなの」
「え?」
聞き返すと、彼女は更に顔を近づけた。
「好きなの」
「は?」
「君が好きなの! 梓のこと、大好きなの! だから、離れたくないの!!」
「!!」
好き……彼女は私にそう言ったのか?
「それはつまり、私のことを……」
「うん。愛してる。仲間とか家族とか、そんなこと以上に、君のことが大切なの。だから、離れたくない。君が僕に、私にもそう言ってくれたみたいに、僕も君から、離れたくない……」
「……」
やっと分かった。私が、彼女から離れたくないと思った理由。
ずっと共に生きてきた家族だから、彼女を失いたくない。そのために、離れたくない。
そう思っていた。と言うより、そう、自分に言い聞かせて、必死に私自身をごまかしていたのかもしれない。
そんなもの、初めから関係無かった。そんな理屈や理由があっての行動では無い。
私はとっくに、彼女無しではいられなくなっていたんだ。
なぜなら私の心は、あなたで満たされていたのだから。
「アズサ……」
私は、重い両手を動かして、彼女の背中に回した。
「私は、最低だ……こんなことになったのに……あなたがそばにいることに、感謝している……あなたの言葉に、歓喜している……あなたの存在が、私の心を満たし、癒している……これから私達は、どうなるのか分からないのに……」
私も同じだ。私も、アズサ、あなたのことを……
「じゃあ、僕も最低だ」
アズサが、最低……?
「僕は君が必死に止めてくれたのに、僕の我がままで、ここにいるんだもん。好きだって言ってる人のお願いも聞けない女だよ。だから僕だって、君と同じ、最低だよ」
「……」
嬉しい……
こんな、愚かな私のために掛けてくれる言葉が、嬉しい……
こんな私を思ってくれることが、嬉しい……
あなたがここにいることが、嬉しい……
彼女の何もかもが、全て、嬉しい……
「アズサ……」
「……」
「愛しています……グリムロさん」
「うん……」
その言葉が最後だった。
突然周囲の空間が光り、何も、彼女も、見えなくなった。
ただ、唇に触れた、儚いけど、柔らかく、温かい感触だけを残して……
……
…………
………………
視点:外
「……!」
「ノエリア?」
母親の腕に抱かれながら、エリは突然、顔を上げる。
「……戦いが、終わった……」
「本当に?」
そんなエリの言葉で、周囲の者達は一斉にエリを見る。
「トリシューラが、いなくなった」
「本当か!?」
「うん。あとワームも、魔轟神も、全部いなくなった」
「マジかよ……」
「いなくなった? 俺達の敵が全部?」
「本当か……」
「終わったんだ……戦争が、終わったんだ……
「
『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
歓喜、安堵、興奮、それらの声が、一気に壊れた里を包んだ。
戦争が終わった。
敵も全ていなくなった。
そのことで、それぞれの形で体中から溢れ出る喜び。誰もがその喜びに身を浸し、それを、絶叫と言う形で周囲へと轟かせた。
魔轟神も全部。その言葉の真意を理解できないまま。
「でも……」
そのエリの小さな声に、気付いたのは母親と、その前にいた数人だけ。
「……舞姫も、青も、紫も、ハジメも、カナエも、誰も帰ってこない」
「え……」
未だ喜びの絶叫が響く中、その話しを聞いた者達は、一様に落胆の色を浮かばせた。ワームを、魔轟神を、そして三体の龍を、全滅させ、自分達を救ってくれた英雄達。その死は、喜び以上の、悲しみそれぞれの心に芽生えさせた。
「……これからどうしようか?」
母親のそんな問い掛けに、エリは答える。
「別の所行こう」
「別の所?」
「うん。だって、もうここにはいたくないもん」
「……そう」
母親も、その気持ちを察したのだろう。エリに答えながら、共に立ち上がった。
「どこに行くの?」
「……お婆ちゃんが言ってた所」
「……ノエリア、それって……」
「うん。元いた場所に帰ろうよ。風水師の故郷の、『リチュアの海』」
「……」
母親は返事をしなかったが、それでもノエリアの手を引いて、歩いた。
その後、しばらく歓喜の声を上げていた者達も、立ち上がり、里に背を向ける。
「さて、とりあえず
「ずっと寒い場所にいたからな。暑いところ……となると火山か。よし、『ラヴァル炎火山』だ」
「さて、これからどうするお姉ちゃん?」
「そうだねぇ。私らの取り柄なんて、戦闘以外には飾りくらいしかないしねぇ……」
「じゃあ、
「おお、名案! そういえば火山地帯の近くに宝石が、取れるどころか歩いてるって噂を聞いたばかり」
「オッケー。じゃあ、行こー!!」
それぞれの行くべき場所を求め、歩き始めた。
もう、氷結界の里は存在しない。だからこそ、ここに立ち止まるのではなく、新たな場所を見つけよう。そしてまた、生きていこう。
そんな共通の思いを、胸に抱きながら。
……
…………
………………
視点:???
……
……
……?
ここは……
「……山、か?」
……間違い無い。地面は土と草、周囲に木々、夕暮れらしく薄暗い空は普通よりも近い。
うん。山以上の何物でもない。
もう一度周りを見てみると……
「カナエ……」
あの時、俺と一緒に縛られていたカナエ。それがどういうわけか、俺と同じように、倒れて気絶している。
「おい、カナエ」
呼び掛けながら、体を揺らすと、
「……うぅ」
目を覚ました。
「良かった……」
大きなケガをしている様子は無い。大丈夫だな。
「ハジメ……?」
と、カナエは目を見開いて、俺に触れてきた。
「ハジメ? 本当にハジメ……?」
「お、おい……」
「透けてませんよね? 足は着いてますよね? 体温は平熱ですよね?」
「いや、ちょっと……」
……よく分からんが、とりあえず、満足するまで触らせることにした。
「ハジメ……」
満足したのか俺とまた目を合わせてくる。おまけに、
「なぜに泣く? カナエ……」
あの、俺、あなたに何かしましたか?
「ハジメ!!」
「そしてなぜに抱き付く!?」
しかも抱き付きながら余計に号泣してるし! どうなってるんだ!?
視点:カナエ
しばらく泣いて、心が落ち着いた所で、何も分かっていないハジメに事の説明をしました。
「俺が、消えた? あの決闘でか?」
「はい……」
アズサに怒って文句を撒き散らした直後、消えてしまった。
そのせいで私も、おそらく人生で一番の悲しみに包まれた。
その後にこうして生きているあなたに出会えて、心からホッとしています。
「……」
「ハジメ?」
私の話を聞いた後、なぜかハジメは、浮かない顔を見せた。
「どうして俺は、あんなことを言ったんだ?」
「あんなこと?」
もしかして、アズサのことですか?
「俺はアズサのことを、受け入れようって決めてたんだ。魔轟神だが、ずっと一緒に過ごした家族には違いない。敵とか味方とか、そんなもの以前に、アズサを否定するなんてこと、俺にはできそうにないからな」
「ハジメ……」
「カナエは、どう思ってた?」
「私ですか?」
……私も、
「同じです」
「そうか……」
その返事を聞いた直後、またハジメは顔を伏せました。
「なのに、どうしてあんな心にも無いこと、怒鳴っちまったんだ……」
「……」
確かに、あの時のハジメは、いつものハジメとは違っていた。とても怖くて、どこかおかしかった。
「……」
けど、今ハジメはここに、こうして生きてる。
私には、それだけで良い。
「よう」
と、突然、ハジメとは違う男の人の声が聞こえました。
「何だ?」
そちらを見ると、ボロボロの着物を着て、ぼさぼさの髪を揺らしながら、四人組の男の人達が近づいてくる。
「可愛い姉ちゃんがいるなあ」
「こんな所で出会えるなんてついてるぜ」
「なあ、ちょっと遊んでくれよ」
「……」
ハジメは呆れ顔で見てます。まあ、私も正直、同じ気持ちですが。
「お! おまけに二人とも高そうな物持ってるじゃねえか」
高そうな……ああ、ハジメの刀と、私の杖のことですか。
「男の方は用は無えや。適当に金目のものもらって放り出して、女で楽しもうぜ」
「なら、男は俺にくれよ」
「へへ、好きにしろよ」
「……」
短絡的と言うか、唐変木というか、阿呆というか馬鹿というか……
「へへへへ……」
ボカッ
「へ?」
笑っているうちに、ハジメを狙っていた人を殴りました。
そして、ハジメも、
「おい」
「は?」
バキボコ
バカスカ
ドカバキゴッツン
「う、うぅ……」
パッパッパ……
「女だからと、舐めないで下さい」
今まで戦争でずっと戦って、ワームとも戦ってきたんです。暴漢が四人くらい、素手で十分です。
「まあ、そういうことだな。これ以上殴られたくなかったら、さっさと家に帰った方が良い。な……」
「ひ、ひぃ……!」
結局全員、私達に怖がって、帰っていきました。
「さて、これからどうするか……」
ハジメが山を眺めながら、困ったように声を出しました。
最初から、違和感はありました。おまけに先程の人達を見て、確信しました。ここはどうやら、私達の
「とりあえず、山を下りて町を探してみませんか?」
「いや、それはやめておけ」
「どうして?」
「さっきの男達を見ただろう。あの格好や外見が普通なんだとしたら、今の俺達の外見は、十分に目立つ」
「……確かに」
ここがどんな世界かは分からないけど、確かにそんな人間を見て、良い反応を示す人は少ないでしょうからね。
「では、どうしますか?」
「……山を、登ってみるか」
「……はい」
どちらにせよ、ここに立ち止まっているわけにはいかない。なので、ハジメに並んで、山を登りました。
視点:ハジメ
カナエと並んで、山を登っていると、
「あ、あれを」
カナエが指差した先、そこには、
「山小屋か……」
「誰かいるかもしれません」
うん。誰もいなくとも寝泊まりできるし、いたとしてもあの大きさなら精々一人か二人だ。事情を話せば、入れてくれる可能性もある。
そう判断し、二人で山小屋へ向かった。
トントントン
「誰かいますか?」
「はーい……」
一度のノックで、そんな老人の声が聞こえた。
ガラ……
「はぁ、こらぁめんこい娘っ子だなぁ」
随分と訛っているな。そんな爺さんは、俺達に笑顔を向けた。見るからに優しい人だと分かる。
「悪いが道に迷ってな。少しだけ休ませてくれないか?」
「ああ構わねえ。大したもてなしはできねぇが、入って休んでいくとええ」
そう言って、横開きの戸を開けてくれた。
「ほれ、茶ぁ飲め」
「ありがとうございます」
「すまない」
返事をしながら、出されたお茶を啜る。うん。味は少し薄いが、落ち着くな。
「所で、爺さん」
お茶を飲んで、俺は疑問を爺さんに聞くことにした。
「済まないが、ここがどこなのか教えてもらってもいいか?」
「この山か?」
爺さんはまた笑顔を向けて、話しを始めた。
「ここはな、『
「どみのやま?」
「おお。ここは、江戸の外れにある山でよ、だぁれも登る
えど……
「誰も登らないって、何かあるのか?」
「逆だぁ。なーんもねぇ。野生の果物やキノコが
「なるほどな」
確かに、何の面白味も無い山に、好き好んで昇るような奴はいないよな。
「では、お爺さんはどうしてここに?」
カナエが爺さんにそう聞いた。
「ああ。ここに、畑を作ろうと思ってよ」
『畑?』
「おお。ここは見ての通り普通の山だがよ、果物も魚も動物も獲れるし、土だけは良くてな。昔登った時にたまたま気付いて、そんでここに住むついでに、畑を作って野菜を育てようと思っただ」
「なるほど……」
畑、か……
「……それ、俺達にも手伝わせてくれないか?」
「えぇ?」
「ハジメ?」
爺さんもカナエも、疑問の声を上げた。
「俺達に、爺さんの畑仕事を手伝わせてくれ」
もう一度言う。
「そうかぁ……?」
爺さんは少し疑問のようだ。
「お前さん達にできるか?」
「こう見えて、故郷では野菜を作って生計を立てていたからな」
「ほぉ……」
そしてまた、俺を値踏みするように見て、
「んじゃあ、頼んでみっか」
「ああ」
まだ疑いはあるようだが、一応は信用してくれたか。
「そういや、まだお前さん達の名前を聞いてなかったな」
「ああ、そうだな。俺はハジメ」
「カナエです。よろしくお願いします」
「名字は?」
……ん?
「……名字?」
「名字だ」
名字……
もしかして、あれか?
「えっと……みなせハジメと、みなせカナエ、だ」
「水瀬か、綺麗な名前だなぁ」
やっぱり、これだったか。
梓の名前を聞いて以来ずっと疑問だった。俺達には、名字なんて存在しなかったからな。
だが待て。ということは、梓が来たのって……
「二人は、兄弟か? それとも夫婦か?」
「え?」
カナエが声を上げた。これも当然の疑問、なのか?
「ああ。俺達は夫婦だ」
「っ!?」
そう驚くなよ。
「そうかぁ。おらは、『
「大谷さん……」
互いに自己紹介した後で、俺達二人はこの山を案内された。
畑の場所、川の場所、狩りの穴場など、なるほど自給自足には何の不自由は無い場所だが、それ以上の面白味はない。誰も登らないっていうのも納得できるな。
「こんなもんだが、他に聞くことあるけ?」
「いや、よく分かった。ありがとう」
「ありがとうございます」
「すったら明日は早速畑仕事頼むわ」
「ああ」
これでしばらくの宿は確保できた。
最後に爺さんと話した後、俺達二人は外で、二人だけで話した。
「ハジメ……」
「ん?」
「その……さっきの、夫婦って……」
まあ、疑問にも思うよな。
「とっさのことだったからな。勢いでああ言っちまった」
「勢い、ですか……」
「ああ。勢いと、希望だがな」
「……希望?」
まあ、言ったことは無かったがな。
「あり得ないこととは思うが、正直、俺が将来嫁をもらうとしたら、ずっと、カナエしかいないと思ってたからな」
「な!?////」
まあ、あくまで希望だ。
「迷惑だったよな。ずっと家族として生きてきたことだし。明日ちゃんと説明する……」
「嬉しいです……」
「……ん?」
今、何か言ったか?
「私……ハジメのお嫁さんになったんですね////」
「え?」
顔を真っ赤にしながら、かなり嬉しそうに、俺を見てる。
「私もずっと、ハジメのこと好きでした////」
「……え?」
「だから、ハジメのお嫁さんになれて、すごく嬉しいです////」
「……本気で言ってるのか?////」
「はい////」
「……////」
そうだったのか。
「じゃ、じゃあ、少しタイミングはおかしいけど……////」
俺はカナエの右手を取って、その場にひざまずいた。
「カナエ、俺と、結婚して下さい」
「////」
……え、ちょっと待て!
「なぜに号泣だ!?」
「……だって、嬉しくて……////」
やべ、泣くとは思ってなかった。
だが、そんなふうに焦ってる俺の手を、カナエも握って、
「喜んで////」
「……////」
こうして俺達は、『水瀬 始』と、『水瀬 叶』という夫婦になった。
これから、この世界で何が待ってるのかは知らないが、少なくとも俺は、カナエがいてくれれば生きていける自信がある。カナエも、そうだったらありがたいが。
さて、畑仕事は早朝仕事だ。眠るとしよう。
「ハジメ」
「ん?」
「ずっと、一緒です」
「ああ」
第三部 完
お疲れ様~。
さて、ようやっと前のサイトで打ち切ったところまで来ましたわ。
この先はどうなることか、大海にも分かりませぬ。
新しく書き始める分今までほど早く上げられなくなると思うけど、そのこと踏まえて待っててくれる人、ちょっと待ってて。