遊戯王5D's ~剣纏う花~   作:大海

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じぃあ~。
それじゃあ新章の、本当の第一話ですじゃ~。
あと、だいぶ性格とか変えたけど、一人TFキャラが出ます。
んなわけで、行ってらっしゃい。



第一話 散った花はまた咲いて

視点:アキ

 

 ざわざわ……

 ざわざわ……

 

 ガララ

 

「はーい、静かにしろー」

 教室に先生が入ってくると、私を含め、話していた生徒達は全員口を閉じた。

「さて、今日はまず、お前達に言うべきことがある」

 今日は何かしら?

「今日からこの教室に一人、転校生が来ることになった」

 

「転校生……?」

「転校生か……」

「どんな子かな……」

 

「はーい静かにしろー」

 また先生が呼び止めた。

 今までずっと同じ人同士で、同じ教室の中で勉強してきた。そこに新しい人が入ってくるとなれば、誰だって興味を惹くわ。

「それじゃあ、早速紹介しよう。入ってきてくれ」

 

 ガララ

 

 先生の呼び掛けと共に、その人は教室に入ってきた。

 

「え……」

「おい、あれ……」

「うそ……」

 

 その人が教室に入った途端、誰もが言葉を失い、視線はその人に釘付けになった。

 それはただの注目じゃない。注目以上の感情を含めた視線、それが、クラスの全員分、あの人に注がれている。

「では、早速だが自己紹介を頼む」

 その人は背中を向け、チョークを持って、黒板に字を書き始めた。

 

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:外

 

「お前を、水瀬家二十代目頭首、父親殺害の容疑で逮捕する」

 

 ピカァ

 

「……え?」

「彼の入院していた病院の病室には、凶器と思える日本刀が落ちていた。そして、その日本刀の柄にはお前の指紋が付いていた」

「え?」

「お前が犯人だな。どうせ自分が追われる身となったのを逆恨みして殺したんだろう」

「……違う」

「さあ、来てもらうぞ」

「違う」

「言い訳は署で聞く。早く車に……」

 

「違う!!」

 

 バキッ

 

「な! 手錠が!」

「私は……私は父を、殺しなどしない!!」

 

 ヒュッ

 

 

「き、消えた!?」

「すぐに報告を……」

「いや、ダメだ。忘れたのか? 水瀬梓に関しては全て極秘裏に捜査しなければいけない」

「そ、そうか」

「ああ。それに、俺達だけじゃどの道捕まえられそうにないだろう。一旦署に戻り、それから報告だ」

 

 

 

視点:梓

 

 違う……

 

 私は……

 

 ―カラン

 

 ―「ああ……あああ……」

 

 私は!

 

 ―「×××……」

 

 私は!!

 

 ―「貴様だけは許さなぁぁああいぃ……」

 

 父を!!

 

 殺してなど!!

 

 いない!!

 

 ……

 …………

 ………………

 

 どのくらい走ったのか、そしてどこを走っているのか、分からない。

 ただ、あの人達の言った言葉、それを否定するために、そして忘れるために、私はひたすら走り続けた。

 なのに、あの二人の言葉が頭から離れない。

 よりによって私が父を、最愛の父を殺したなど、そんなこと……

 

 そう思った時、目の前の暗闇の中に、人影が見えた。

 二人いる。服装からして、セキュリティではなさそうだ。

「……」

 誰でも良い。ただ、分かって欲しかった。

 私は殺していない。私は父を、殺してなどいない。

 誰でも良い。誰でも良いから、私の言葉を、信じて……

 

 ピカッ

 ゴロゴロゴロゴロ

 

「……た……す……け……て……」

 

 その直後、意識が遠ざかった……

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 ……

 ……

 ……?

 ……ここは、どこだ?

「ベッドの、上……?」

 首を動かしてみると、少し狭いですが、まるで工場のような、そんな雰囲気を感じる部屋です。

 なぜこんな場所に……

 そう思いながら、体を持ち上げた時、

「……?」

 壁に貼られているのは、習字? しかもあれは、私の書いた文字。

 この場所には少々不釣り合いな代物ですが、というか、なぜあんなものが……

 

 コツコツ……

 

 と、奥にある階段から、誰かが歩いて、昇ってくる音が聞こえる。

 一体……

 

「む?」

 

 あれは……

 長身に、白いコート、独特な金髪の髪型、この人は……

「ジャック・アトラス……さん……?」

「ほぉ、目が覚めたか」

 ここは、彼の住まいなのか?

「待っていろ。お前に会わせたい奴らがいる」

 会わせる?

 ジャックさんは階段を下っていきました。

 そしてその数秒後、

 

 ドドドドドド……

 

 何やらジャックさんの時と比べて、五倍くらいでしょうか? それだけの人数の足音が……

 

『梓先生!!』

『梓!!』

「水瀬!!」

 

 ……

 その、それぞれ関わり合いはあるものの、随分統一性の無いメンバーというか……

「大丈夫ですか!? ケガ無いですか!?」

「先生! 急にいなくなるなんてひどいじゃん!!」

「お前、今までどこ行ってたんだよ!?」

「梓、私はあなたにずっと言いたかったことが……」

「水瀬、あの時は俺のことを救ってくれて……」

 ……

 

 パチッ

 

『……!』

 手を叩くと、彼らは口を閉ざして下さいました。

「落ち着いて下さい」

 一応現在の状況は把握しました。彼らがそれぞれ私に言いたいことがあることも理解しました。

 まずはベッドの上で正座になり、両手をつきました。

「まず、助けて頂いて、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました」

「あ、はい……」

「いえ、そんな……」

「お話は、お一人ずつ、順番に発言していきましょう。全て拝聴致します。もちろんお答えできることにはお答え致します」

『……』

 

(『さすが指導者(せんせい)』)

 

 ……?

 

 

「ではまず、龍亜さんに龍可さん」

『はい』

「私を見つけて下さったのはお二人だそうですね。改めて、助けて頂いてありがとうございました」

「そんな、お礼なんて言わなくていいよ」

「頭を上げてください、先生」

 そう言って下さったので、顔を上げました。

「それで、お二人はどうやら、言いたいことは共通しているようですね」

「あ、はい」

 ちなみにお二人とも、ベッドの前に置いて頂いた椅子に座ってもらっています。

「えっと、まず先生は今まで何してたんですか?」

 龍亜さんからの質問。まあ当然の疑問でしょうね。

「それが……バカげた話しだと思われるでしょうが、少なくとも、今日から遡って、半年間の記憶が残っておりません」

「記憶が無いって、半年も!?」

「ええ。今までどこで、何をして、どうやって生きてきたのか、まるで覚えが無いのです」

「そうなんだ」

「じゃあ、昨夜はどうしてあんな所にいたんですか?」

 今度は龍可さんです。

 ……少し話し辛いことですが、

「それに答えるには、一つお尋ねしたいことがあるのですが……」

「え?」

「私が消えてから今日まで、私の名を、例えばニュースや記事などで耳にすることはありましたか?」

「……いえ、特に……」

 うむ、やはりそうですか。

「そうですね。皆さんなら信頼できます」

「え?」

「私はどうやら、セキュリティに追われている身のようです」

『えぇ!?』

 双子のお二人が叫び、後ろに立って待っている方々も、驚愕の表情を見せました。

「どういうことだよ!! お前がセキュリティになんて!!」

「一体何をしたと言うんだ!!」

「何かの間違いですよね!?」

 

 パチッ

 

『……!』

「身に覚えは無いことです。それをまず、信じて頂きたい」

『……』

「セキュリティの方々が言うには、その……私が……父を、殺したと……」

『っ!?』

「もちろん、身に覚えなどないのだから、素直に捕まっても良かったかもしれません。ですが、よりによって、私が、父を殺したなんて……」

「確かに、水瀬の父親は死体で見つかったとは聞いていたが……」

「けど、それならニュースとかでもやってるはずじゃねえのか?」

「昨夜も逃げた後、追われることはありませんでした。おそらく、水瀬家の方で、この件は内密に処理するよう指示されているのでしょう」

「どういうこと?」

「なるほどな」

 と、遊星さんは理解して下さったようで、皆さんは一斉に遊星さんを見ました。

「水瀬梓は、歴代の水瀬家頭首の中でも神童と言われ、ネオドミノシティ全体から注目されていた存在だ。それが決闘者で、サテライト出身だということが分かって、水瀬家も大きな損害を受けたはずだ」

「なるほどな。そこにその頭首が父親を殺したとなれば、もはや水瀬家は崩壊したも同じになるということか」

「だからこの件は、世間の人々には知られないよう処理することにした。そうすれば、水瀬家でも邪魔者だった、私を秘密裏に抹殺することもできるから」

 

『……』

 

「おかしいよ!」

 叫んだのは龍亜さんです。

「何で先生みたいな立派な人が、そんなことされなきゃいけないんだよ!!」

 嬉しい言葉です。ですが、

「龍亜さんには分かり辛いことかもしれませんが、頭首になるということは、それだけの覚悟が必要と言うことです。恨み、妬み、頭首ならそれらは、むしろ受けて然るべき感情です。だから私が今こうなったなら、そうなることもまた必然です」

「先生はそれで良いの!?」

「ええ。こういったことにも慣れております」

『……』

「覚えておいて下さい。誰かに存在を認めてもらうということは、同じようにそれを許さない誰かもまたいるということです。大切なことは、そんな人が多いか少ないか、そして、そんな存在でいることができるか、ということです。そして、私にはそれができなかった。そういうことです」

『……』

 龍亜さんも龍可さんも、まだ納得はできていないようですが、椅子から立ち上がりました。

 

 次に椅子に座ったのが、アキさんです。

「えっと……」

 何やら言い辛そうですね。

「その……あなたにはずっと、お礼が言いたかったの」

「お礼、ですか?」

「ええ。フォーチュンカップでの私との決闘、覚えてる?」

 あのことですか?

「あの時あなたは、大勢の人間から、魔女や化け物と呼ばれていた私のことを、誰よりも人らしい、そう言ってくれた。しかも、嫌われていた私と同じように、わざわざみんなに嫌われてまで、私と同じ目線に立ってくれた」

「……」

 

 ―「力を恐れ、自分を恐れ、全てを否定し、それでもなおそんな自分を許してくれる誰かを求めたのは、人である証だ!」

 ―「笑い、憎み、怒り、震え、また笑う……」

 ―「胸を張れ!! あなたは誰より人らしい!! 」

 

「あの時の私は、その言葉にも行動にも怒りを感じるだけだった。けど、それでもあの言葉には、救われたから……」

「……今思えば、当たり前なことを随分と偉そう言ったものですが」

「当たり前?」

「ええ。あなたは魔女ではなく、人であるということを」

 と、アキさんは、不思議そうな表情です。

「けどあの時、大勢の人が私は魔女だって……」

「その度に、あなたは傷つき、苦しんでいた」

「……!」

「本当に魔女なら、それを受け入れていると言うなら、そんなことにはならない。あなたはむしろ、そのことに激怒し、それゆえに全てを否定し、結果に身を委ね、考えることを放棄した。これは、人だからこそそうしてしまうことです」

「……」

「しかし、多くの人達は、それだけで終わってしまう。それ以上の傷がつくことを恐れて、どうせ傷つくならと、同じ傷を付けられることを選び、我慢する道を選ぶ。それは傷を増やすことを防ぐ代わりに、一つの傷をより深く抉っていく結果にしかならないのに、多くの人たちはそのことに気付かず、と言うより気付いていない振りをして、傷つき続けることを選ぶ。私のように」

「……」

「しかし、アキさんは違った」

「え?」

「アキさんは、そんなことは許さぬと、むしろ、そんな自分を肯定しようと、ずっと、あがいてきた。さすがにあの時は、その形は間違っていたと言わざるを得ませんでしたが……」

「……」

「けど、間違っていても、自分という存在を正そうと、妥協せず、諦めなかったのがあの時のあなたです。誰だって、その境遇を否定する権利がある。そのために、悲しんだり、怒ったりすることは罪ではない。それができるということは、人としての意志を守ることを諦めていないということだから。あなたにはその意志がある。誰よりも強い、人としての意志が」

「……」

「だから何度でも言います。胸を張って下さい。あなたは私よりも、誰よりも人らしい」

「……ありがとう」

 また、お礼を言ってくれた。

「あの時の私は、ずっと一人だった。けど今は、こうして仲間に囲まれてる。私のことを受け入れてくれる人達に囲まれて、幸せな毎日を送ることができてる」

「胸を張って、生きているのですね」

「ええ」

「それで良い。仲間がいるのなら、大切にして下さい。そしてこれからも、変わらぬあなたとして生きていけばそれで良い」

「ええ!」

 アキさんは笑顔で返事をして、立ち上がった。

 

「えっと、久しぶり、だな……」

「ええ」

 なぜか深刻そうな表情を見せるクロウさんに、笑顔で返事をしました。

「その、まだ、サテライトの人間は怖いか?」

「まさか、そんなことはありません」

 ええ、ありませんよ。

「……手、震えてんじゃん」

「え……」

 言われて手を見てみると、左手の拳が震えている。

「えっと、最近は歳のせいか、こういうことが多くて……」

「先生、アキ姉ちゃんと同い年だよね」

「……」

 

『……』

 

「……ごめんなさい」

「謝ることねえよ」

 クロウさんはそう言って下さいましたが、

「いえ、私は仮にも、大勢の人達の指導者という立場にいた人間です。指導者が誰かを差別することほど、非道なことはありません……」

『……』

「もし良ければ、お前がサテライトで何をされたのか、聞かせてはもらえないか?」

「……」

 遊星さんの質問ももっともだ。彼らは何も知らない。そしてそんな状況で、持ちたくない差別の心に苛まれる私のことを、知りたいと思ってくれている。

 ですが、

「……お話しできるほどのお話しではない。何より……」

「何より?」

「その……少なくとも、龍亜さんや、龍可さんのいる前で、お話しできることではない……」

『!!』

「え、なに?」

「どういうこと?」

 龍亜さんと龍可さん以外の三人は、どうやら分かったらしい

「そう、だったのか……大変だったな、なんて一言で、済ませていいことじゃねえよな……」

 ……嫌な空気が流れてしまいました。

「どうか気にしないで下さい。クロウさんがそうだったわけではありません」

「そうだけど……」

「そう言えば、ずっと疑問だったのですが、あなた方がここにいるということは、ここは、サテライト、なのですか?」

 尋ねると、皆さんは首を横に振った。

「いや、ここはシティの中だぜ」

「シティの……では、なぜ……」

「俺達が普通に生活しているか、か?」

「え、ええ……」

 返事をすると、皆さんは、私が消えていた半年の間にあったことを、教えてくれた。

 ネオダイダロスブリッジという、シティとサテライトを繋ぐ巨大な橋の建造、それによって起こった様々な問題と、それに立ち向かった皆さん。

 そして、その結果生まれた、新たなネオドミノシティ。

「もう、サテライトへの差別は、無い……」

「ああ。だから、お前が怖がってたサテライトは無くなったんだ。もう、サテライトを怖がる必要なんて無え」

「……そうでしたか」

 差別が無くなった。良かった……

「ではもう、サテライトの人達だからと、差別をする人達は……」

「ああ。もうほとんどいねえ」

「……良かった」

 本当に良かった。

「もう、生まれることは無くなるのですね。私のような、愚かな子供が生まれることは……」

「……自分のこと、そんなふうに言うなよ」

「もう嫌なのです。サテライトだからと、誰かれ構わず憎み、嫌悪するなど。なのに私は……未だに、あなたや遊星さんを前にしているだけで、手の震えが止まらない……」

「そう言ってるだけで、お前は今まで差別してきた奴に比べればだいぶマシだ。ほとんどの奴は、そんな差別が無くなるのと一緒に、謝りもせずに自分がしたことまで無かったことにしたからな」

「私はただ、私の罪を、否定したくはないだけです」

「ああ。立派だと思うぜ」

『……』

「クロウさん」

「ん?」

「もしよろしければ……私の友人になって下さいませんか?」

「友人?」

「ええ。正直私は、まだあなたが怖い。あなたが良い人であることは分かります。けど、サテライトの人だというだけで、私はあなたを、恐れている」

「……」

「だから、私はもっと、あなたのことを知りたいのです。あなたのことを知り、サテライトのことを知れば、私が変わるきっかけも、生まれるかもしれない。だから……」

「梓……」

「私を、友人にして下さいませんか?」

『……』

 クロウさんが見せたのは、笑顔?

「ああ! 良いぜ」

「よろしいのですか?」

「おお! 俺がお前の友達になって、サテライトのこと教えてやるよ。そうすりゃ分かるはずだぜ。サテライトは、お前が怖がるような場所じゃ絶対ねえってな」

「……ありがとう」

 おこがましいお願いだと思いましたが、彼は笑顔で快諾してくれた。

「それとさ……」

「はい?」

「その友達にさ、遊星やジャックも加えてやってくれよ」

「お二人は、それでよろしいのですか?」

 それを尋ねると、お二人は微笑んでくれた。

「ああ。もちろんだ」

「ふん、元々お前とは顔見知りだったからな、今更どうなろうと同じことだ」

 反応は対照的ですが、二人も、私のことを受け入れてくれた。とても嬉しいです。

 そしてクロウさんは、立ち上がった。

 

「水瀬……」

「遊星さん……」

 最後に座ったのは、遊星さん。

「サテライトでは、世話になったな。ありがとう」

「いえ。当然のことをしたまでです」

 思えば、水瀬梓となって、自分からサテライトの人に触れたのは、あれが初めてでした。

「できれば、お礼をしたい」

「お礼だなんて、そんなこと……」

「大したことはできないが、何かしたいことはないか?」

「したいこと、ですか……?」

 そんなことを言われても……

「……」

 そんなこと、私は求められる人間ではありません。

 なのに、なぜか、心の奥から、その言葉が……

「したいこと……」

 ……私は、もう頭首ではない。今くらい、希望を言ってもいいのかな。

「……冗談だと思って聞いて下さい」

「何だ?」

 本当に、冗談です。

「私は……」

「……?」

「……学校に、行ってみたい、です……」

『学校に!?』

 全員が、大きな声を上げました。

「いえ、気にしないで下さい……ただ、水瀬家に来てから今日まで、勉強はずっと家でしてきましたし、十三歳には教える立場となっていたので、ずっと学校というものを知らずに生きてきて、同年代の方々とは、指導者と生徒という立場で以外、お話しした経験は皆無と言って良い。ずっと、憧れていたのです。学校というものに……特に、大好きな決闘を学ぶことができる、そんな学校が……」

『……』

「忘れて下さい。本当に、冗談ですから。学校へ行こうにも、今の私は無一文の状態ですし……」

『……』

「分かったわ」

 と、声を上げたのは、アキさん?

「私に任せて」

「……は?」

 任せて?

「私の父は、ネオドミノシティの議員なの。だから、父に口利きしてもらえば、手続きはできるはずよ」

「口利きなんて、そんな、会ったことも無い赤の他人のために、そんなこと……」

「あら、確かに父は面識は無いけど、母はあなたの知り合いよ」

「母……ん?」

 十六夜……もしかして、

「もしかして、あなたのお母様の名は、『十六夜 節子』さん、ですか?」

「そう。確か、日本料理教室でお世話になってたわよね」

「和菓子教室です」

「ああ、そう……」

 そういう縁ですか……

「いや、しかし、学校がどんな場所かは知りませんが、入学するだけでも大金が必要なはずです。今の私にそんなお金は……」

「お金はまた後々返してもらえば良いわよ」

「いや、けど……」

「良いじゃねえか」

 と、クロウさんが口を挟んできました。

「学校、行きたいんだろう?」

「それは、まあ……」

「だったらアキがここまで言ってるんだ。ここにいるジャック以外は、全員お前に恩を感じてる連中だ。一回くらい、その恩を返す機会をくれよ」

「……」

 そんな言われ方をされると、お言葉に甘えたい気持ちになってくる。

 ですが、

「忘れていませんか?」

「何を?」

「私は今、セキュリティに追われている身です」

『あ……』

 ようやく思い出したらしい。

「お気持ちは嬉しいですが、私が学校に通っているとなれば、いずれセキュリティに拘束されるでしょう。正直、捕まらない自信の方が強いですが、逃げれば今度はあなた方に害が及んでしまいます」

『……』

「お気持ちだけで十分です。私がこんな所にいれば、皆さんに迷惑が掛かってしまう。だから……」

「じゃあ、変装させるっていうのは?」

『……は?』

 変装?

「ねえ、変装させたら良いじゃない」

「変装って……」

「そう上手くいくか?」

「いや、以外と上手くいくかもしれんぞ」

 今度は、ジャックさん?

「水瀬は有名人だが、そういう顔が広く知られた人間ほど、少し変わっただけで分からなくなるものだ。誰もそんな人間が目の前に現れるなどとは思わんからな。どんな変装をさせるか知らんが、そのままよりもばれない可能性は高いだろう」

「なるほど、確かに……」

 遊星さんは納得している。

「じゃあそうしよう! 色々服とか持ってきてさ!」

「えっと、皆さん……?」

「なら、早速色々用意しようぜ!」

「もしもし?」

「待っていろ水瀬。すぐに戻る」

 最後に遊星さんがそう言って、全員部屋から出ていってしまった。

「……私のこと、忘れていませんか?」

 

 

 そのままこっそり出ていってしまえば良かったかもしれませんが、皆さんの顔を思い出すと、できなかった。

 その後、戻ってきた彼らに従って、服やら何やらを試してみることになりました。

 

「眼鏡は……似合わないわね」

「せっかくだから髪型も変えてみようよ」

「服はどれが良いかしら?」

「……」

 

「先生、これ着けてみて」

「ああ、はい……」

「それで、手をこうして、にゃあって言ってみて」

「……にゃあ」

「あずにゃん!!」

「ちょ、龍可……」

「決めた! この子うちで飼う!」

「猫じゃないだろう!!」

「……」

 

「化粧もさせてみようぜ」

「カラーコンタクトなんてどうだ?」

「髪の色も染めてみるか」

 

「……」

 

「あのぉ、皆さん……」

『ん?』

「……」

 皆さん、

「いえ、何も……」

 さっきから、

「そうか」

 私で、

「……」

 遊んでいませんか?

 

 

 そして、約二時間後、

 

「よし、完璧だ」

 しばらくそれを続けて、ようやく皆さんは納得したように手を止めました。

「はい、鏡」

 言われて手鏡を見てみましたが、

「……誰ですか? この人……」

「いや、お前だろう」

「本人が気付かないくらいだから、多分ばれないわね」

「あとは名前だな」

「名前か。さすがに梓という名ではダメだろうからな」

「そうだな……そういや、前は着けて無かった雪の結晶頭に着けてたな」

「雪……雪……」

「……」

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 とまあ、そんなことがありまして、(私の意思を無視して)とんとん拍子に話しが進み、入学試験も無事に合格し、それまで正体がばれることはありませんでした。私は現在、転校生として教室の前におります。

 

「入ってきてくれ」

 

 中から先生の声が聞こえました。

 

 ガララ

 

 中に入ると、随分と視線を感じます。耳を澄ますと、

 

「え……」

「おい、あれ……」

「うそ……」

 

 まずい、ばれたか……

 

『綺麗な(ひと)……』

 

 ……とりあえず、正体はばれていないようだ。

 名前を書けと言われたので、チョークを取ります。

 と、このチョークと言うものを使うのも初めての経験です。

 

 カッカッカッ……

 

 黒板に、皆さんが考えて下さった名前を書き、生徒の皆さんに向き直る。

 

「初めまして。今日から転校してきた、『藤原(ふじわら) 雪乃(ゆきの)』です」

 

 と言うことで、(わたくし)、水瀬梓を改め、『藤原雪乃』の、新たな決闘アカデミアの生活が、この瞬間始まりました。

 

(うわぁ~ん……)

 

 

 

 




お疲れ~。
つ~ことで、次回からは梓に変わって『藤原雪乃』が主人公です。
ただ以前もどこかで書いたが、大海はTFしたことないからちゃんと書けるか不安なんだよね。
なんでおかしなところとかあってもご容赦願いますです、はい。
みたいな感じで、続きも書いていきますゆえ、ちょっと待ってて。
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