こっから新主人公、藤原雪乃の日常が始まります。
ただ先に言っておくけど、この小説の雪乃、顔はTFと全く同じだが、性格は全く違うので、事前に謝罪しときます。
具体的な違いは、本編参照ということで。不愉快になったら、謝りますわ。ごめんなさいね。
んじゃそげなことで、行ってらっしゃい。
視点:アキ
「初めまして。今日から転校してきた、藤原雪乃です」
目の前に立った梓……いえ、雪乃が、そう挨拶をする。
それだけで、男子も女子も、その姿に見惚れてるのがよく分かった。
それはそうね。本当に綺麗なんだから。少なくとも、私より遥かに綺麗で可愛い顔だわ。
紫色に染めた髪を、可愛らしくツインテールに縛ってるけど、赤いコンタクトレンズを挿した目を向けるその顔は、とても大人っぽい色気を醸し出していて、ジッと見ているだけで虜になってしまいそうになる。
変装の賜物、じゃなくて、素であんな顔だから凄いわ。
「それじゃ、席に座ってもらうが……」
あら、先生は別に平気なようね。
そう思った瞬間……
「はいはいはい! 俺の隣空いてます!」
「いえ、ぜひこちらに!!」
「ここも空いてるわよ!!」
ガヤガヤガヤガヤ……
「……」
「……」
隣が空いてる人達が、我先にと騒いでる。男子も、女子まで。
気持ちは、まあ分からなくもないけどね。
「……先生」
と、雪乃は先生に話し掛けた。
「私、十六夜アキさんと知り合いだから、彼女の前の席に座っても良いかしら?」
『……』
あ、静かになった。
「十六夜はそれでいいか?」
「え、ええ……」
まあ、慣れるまではその方が良いわよね。そうでなくとも、学校というものを知らない梓を、一人にはできないし。
と、考えてるうちに、雪乃は目の前まで歩いてきた。
「よろしく。アキさ……アキ」
「え、ええ……」
危うくアキさん、て呼びそうになった。
口調もかなり変えてる。そうするように事前に言っておいたから。
ただでさえ男子が女子になるんだから、何もかも変えておかないとすぐにばれちゃう。
まあ、本人は望んではいなかったことだけど……
……
…………
………………
「藤原雪乃?」
「そうだ。それが今のお前の名前だ」
「はあ……まあ……」
「少なくとも、お前の考えた『
「む……」
ジャックのその言葉に、梓は顔をしかめた。
「失敬な。今や知らぬ者の無い日本一の落語家が、かつて身に起きた危機から逃れるために名乗った由緒ある偽名だというのに」
「由緒があろうが無かろうが、女装してるんだから男の名前は意味ねーだろう」
「……」
あら? クロウが言った途端、急に顔を伏せたわね。どうした……
「だ! か! ら!! そもそも女装である必要は無いでしょうが!!」
『っ!!』
梓がキレた!!
「そりゃあ生まれつきこんな顔してましたし!! 着ている服だって好きだから女性物の着物着てますけど!! だからって感情まで女性なわけではなくて、そこは正真正面の男子なんですよ私は!!」
「ちょ、先生、落ち着いて……」
「これが落ち着いていられますか!? 服装だけならいざ知らず、名前から何から女性に変えられては男子としての尊厳もへったくれも無いでしょうに!! そんなに私が男子だとは信じられませんか!? 女子の方が良かったですか!? 私を女子とすることであなた方は私をどうする気ですか!? えぇ!?」
「えぇって、いや、どうするも何も……」
「いくら女子だ女子だと言われたところで男子としての心も感情も変わりませんからね!! 愛する性別が女性ならお付き合いする異性も女性がいいですよ!! この中の誰かとお付き合いしろと言われれば迷わず女性であり妙齢であるアキさんを選びますよ必然的に!!」
「そ、そう……それはありがとう////」
「そりゃ、そうだよな……」
(む……)
「そんなに信じられぬならいっそ脱ぎますか!? 男子であることを証明しますか!? そんなに私が男子だと知りたいですか!? 私の男子を見たいですか!? えぇえ!?」
「いえ、それだけはお願い、やめて……」
「私は……」
「男だああああああああああああああああああああああ!!」
『……』
「はぁ……はぁ……」
大騒ぎして、大声出して、やっと落ち着いたみたい。
ていうか、髪まで染めた今になって言うのも遅すぎる気がするけど……
「……クス」
と、隣からそう聞こえた。
「あははは……」
見ると、龍可が、笑ってる。
「ちょ、龍可、失礼だろう」
「ごめんなさい……だって、今まで教室でずっと梓先生のこと見てきたけど、いつも上品に笑ってた梓先生が、こんなに怒るなんて意外だったから……」
『……』
確かに、彼の普段の態度を考えると、今の怒り方と言い口調と言い、すごく意外よね。
「それは時には叫びもすれば涙も流しますよ。私とてにん……」
……あら? 急に口を閉ざしたわ。
「梓先生?」
「……いえ、何でもありません」
「……まあ、何にしてもだ」
と、遊星が言葉を挟んできた。
「お前が身も心も男であることも、男としての尊厳を大切にしていることもよく分かった。だが、簡単に正体を見破られてはまずい。ただでさえお前は男としては目立つ顔立ちをしているからな。だったらいっそ、性別ごとごまかした方がばれる危険が少なくて済む。分かってくれ」
「……分かりました」
怪訝そうな表情は変わらないけど、それでもどうにか納得はしてくれたみたい。
「では、一つ条件というか……」
「条件?」
「ええ。遊星さん、ジャックさん、クロウさん」
「あ? 俺も?」
「俺もか?」
三人が疑問の声を出した後で、梓は三人の顔を見ながら、きっぱり言った。
「あなた方三人も、女装していただきたい。今この場で」
『……』
『はぁ!?』
言われた三人は、揃って大声を上げた。
「な、なぜそうなる!?」
「何で俺らが女装する必要があるんだ!?」
「まるで意味が分からんぞ!!」
うわぁ、当然だけどすごく嫌そう……
「その悲鳴、そして抵抗、全て私が今感じていることです」
『う……』
梓がそう言うと、三人は途端に口を閉ざした。
「正体を隠すためとはいえ、私は今後、あなた方が今感じている恥辱と屈辱を日常的に感じ続け、それに耐え続けねばならない。分かりますか?」
「そりゃあ……」
「……確かに、これはかなり辛いが……」
「そうでしょう。助けて下さった御恩は一生忘れる気はありませんし、あなた方のご厚意は身に余る光栄だと受け止めておりますが、それでも、男子としての尊厳のことごとくを否定されてしまった以上、それをしようとしている方々にも同じ目に逢って頂かねば……はっきり言って、やってられませんよこちらとしても」
『……』
「どうしますか?」
『……』
「……分かった」
返事をしたのは、遊星!?
「それでお前が納得するなら、仕方がない……」
「……分かったよ」
クロウも、頷いた。
「ほら、ジャックも」
「な、俺もか?」
「当たり前だろう。梓は俺達三人て言ったんだから」
「……」
ジャックも、かなり嫌そうな顔を見せながらだけど、納得したみたい。
「先生、俺は?」
と、三人を見ていた梓に、龍亞が話し掛けていた。龍亞、まさかしたいの?
「龍亞さんは結果が分かりきっているので、結構です」
「分かりきってって……?」
そりゃあ、龍可とは双子だもの。女装したとしても龍可になるだけでしょうね。
「あなたはフォーチュンカップの時に一度、女装して龍可さんとして出場していたではありませんか」
「えぇ!!」
えぇ!! あれ、龍可じゃなくて龍亞だったの!?
「分かったんですか!? 梓先生!!」
「一目見てすぐに分かりました。私の教室に通ってくれる生徒達の顔は全員覚えておりますから」
「梓先生……」
「梓先生……////」
龍亞も、龍可までうっとりと梓を見た。そんなに嬉しいことだったのかしら。
「と、いうことで、お三方」
『お、おう……』
「ご覚悟のほど、よろしいか……(ニヤリ)」
『(ゾク)……!!』
それで、さっきとはメンバーが逆になって、私と龍亞と龍可、そして梓で、三人に女子の格好をさせてみたんだけど……
「うわぁ……」
「梓先生とは違う。全然似合ってない……」
「当たり前だ!!」
思わず不快な声を出した龍可と、正直なコメントを返した龍亞に、軽いお化粧に赤色のチャイナドレスを着せたジャックが大声で叫んだ。
「俺らは梓みたく、顔が女子でもなきゃ美人でもねえから、何着たって男子でしかねえよ」
同じように薄化粧と、黒いゴスロリファッションで決めたクロウは、そう呆れ口調で返した。
それはそうよ。三人とも、顔自体はむしろ二枚目で格好良いと思うけど、それは梓みたいな、綺麗、とは全然違うんだから。
「……」
フリフリな純白のメイド服姿の遊星は、顔を伏せたままで何も言わない。
遊星のメイド姿……
……
アリかも……(ジュルリ)////
「……(ニヤニヤ)」
と、肝心の梓は、そんな三人の姿を満足そうな笑顔で眺めてる。
多分だけど、内心大爆笑してる顔だわ。評判と違って意外と腹黒いのね。
「……満足したか?」
「はい」
うつむいたままそう聞いた遊星に、梓はそう返事を返した
「……着替えてもいいか?」
「どうぞ」
許しが出たところで、三人が一斉に元の服に手を伸ばした、その時、
ガラッ
「あんた達、何だかバカに静かだけど、大丈夫かい?」
『あ……』
「ゾラの婆さん……」
「……」
『……』
「……邪魔したね」
ゾラはそれだけ言って、目を背けながらドアを閉めて出ていった。
『……』
「梓!! てめえのせいで誤解されちまったじゃねえか!!」
「ははははは……」
「はははだと!! 貴様!! そこに直れ!! 助けてやろうと思ったがそれもやめだ!!」
「あっははははは……」
「てんめえ、
「それは……ふはははははははははは!!」
「貴様笑うな!!」
「もうダメだ……生きていけない……」
「ちょ、遊星?」
「死のう……」
「まって!! そんな!! マイナスドライバーをのど元にあてがわないで!! 危ないから!!」
「遊星!!」
「落ち着いて遊星!! 似合ってるよその恰好!! 遊星美人だよ!!」
「誰か、いっそ殺してくれ……」
「あぁはははははは……!!」
「梓!!」
「貴様!!」
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ……」
「遊星!!」
「遊星!!」
「遊星!!」
「ふははははははははははははは……!!」
とまあ、こんなことがあった後、どうにか事態も治めて、また全員で冷静に話し合った。
梓は今後『藤原雪乃』としてこの工場で三人と一緒に暮らすことになった。
次の日には、梓をうちへ連れてきて、パパと、ママの二人に会わせた。
「お久しぶりです。十六夜節子さん」
「え、あの、どこかでお会いしたかしら……?」
「……長い時間が経ったうえ、この姿では無理もありませんね。けど、ヘラの扱いが誰よりも優れていたあなたのその手は、どれだけ時間が経っても変わりません」
「……!! まさか、あなたは……」
「改めまして、藤原雪乃です。そして本名は……水瀬梓と申します」
その時のママの狂喜乱舞のほどったら、もう一生会えないと諦めていたらしいから、かなりのものだったわ。
梓の方も、自分が消える前、ネオドミノシティ全体から敵視されてたから会うのは不安ではあったらしいけど、ママが会いたがってるっていう私の言葉を信じてくれた。
そして、サプライズで感動の再開が実現したってわけ。
そこでパパに事情を説明すると、
「梓先生を助けるためなら、全面的に協力します。いえ、ぜひあなたの手助けをさせて下さい」
パパもママほどじゃないけど、梓先生のことは尊敬していたみたい。無事に支援してくれることも決まった。
「申し訳ありません。私如きのために、ここまでのことを……」
「気にしないで下さい。あなたからは、どれだけ返しても返しきれないくらいお世話になっているんですから」
「その通り。こんな形でお役に立てるなら、願っても無いことです」
「……ありがとうございます」
……
…………
………………
そんなこんなで、転校生の編入ということで、編入試験にも無事に合格して、今に至るというわけ。
ガヤガヤガヤガヤ……
ホームルームが終わった後の休み時間、クラスのほとんどの生徒が私の前の席、雪乃の席を囲んでる。
「ねえねえ雪乃さん」
「雪乃さん」
「雪乃さん」
予想した通り、クラスのほとんどに囲まれて、質問責めにあってる。転校生だからある意味仕方がないことね。
そして、そんな状況の中、雪乃はと言うと、
「どこから転校してきたの?」
「米国から」
「へえ、じゃあなんで日本に来たの?」
「両親の仕事の都合で住んでる場所を移すことになって、せっかくだから私だけ母国の日本に移り住んだの」
「そうなんだ。ご両親はどんな仕事してるの?」
「あまり有名ではないけど、二人で俳優をしているわ」
『俳優!?』
「ええ。名前は言えないけどね」
もちろん、
今言ってるのは全部、入学する前に私達が一緒に考えたもの。彼女の正体がばれないよう、正体とは真逆のプロフィールにしてある。
ただ、事前に話し合っておいたとはいえ、それを平然と間違いなく言える雪乃も凄いわね。おまけにかなり自然に言ってる。私もみんなと同じなら間違いなく騙されてる。普段から人前に立つことには慣れているのは知ってたけど、目の前で見せられるとさすがだと感じるわ。
キーンコーン……
ガララ
「はーい、授業始めるぞー」
そんな声が聞こえて、集まっていた生徒達はすぐに自分の席へ戻っていった。
「……」
雪乃も周りの生徒と同じように、カバンからノートと教科書を取り出した。
今まで学校には一度も行ったことが無いとは聞いてるけど、授業の受け方は分かるかしら。一応、私や龍亞と龍可で教えはしてあるから、大丈夫だとは思う。けど、それでも不安。なにか、とんでもないことをしでかさなければいいけど……
……
…………
………………
キーンコーン……
「はーい、授業はここまでー」
終わった。
一時限目は特に何の問題も無く授業が終わった。まあ、元々先生に当てられるような授業でも無かったから、よっぽどでなきゃ何も起きることはないんだけどね。
「はぁ……」
雪乃は早速溜め息を一つ。
(どうだった? 生まれて初めての授業は?)
前の席の彼女にしか聞こえないよう、そう小声で話し掛けてみる。
(どうもこうも、言われた通り、黒板に書かれたことと、先生の言葉の要点をノートにメモしましたが、これでよろしかったでしょうか?)
(ん?)
そう聞かれて、差し出されたノートを見てみたけど、
「……おー」
かなり、よく書けてる。おまけに、すごく綺麗にまとめられて、とても見やすい。
(すごいわね。とても初めて学校の授業を受けた人とは思えない)
(学校はともかく、子供の頃から勉強はしてきましたから。むしろ、横槍が無い分こちらの方がいくらかやり易いです)
(へぇ……)
横槍って言葉がすごく気になったけど、聞かない方が良いんでしょうね。
(ちょっと、お手洗いに行って参ります)
そう言いながら、立ち上がった。
(言ってらっしゃい)
そう返すと、立ち上がって教室を出ていった。
まあ、この分なら、あとはクラスに馴染みさえすれば、大きな問題は起きなさそうね。
……
ん? お手洗い?
ポッカーン……
そんな擬音が、こっちにも聞こえてきそうになった。
思った通り、男子トイレと女子トイレ、二つを前に立ち尽くしてる。
(これは……一応、今は女子である以上、女子トイレに入るべきところではあるのだろうけれど……いやだからと言って、女子トイレに入るのは、性別云々の前に、人としてどうなのか……)
て、事情を知ってる人間が見れば、そう書いてある顔をしてるわ。
……仕方がない。
「雪乃」
「んあ!? ああ、アキ……」
「早く行ってらっしゃいよ」
そう話し掛けながら、女子トイレへ背中を押す。
(いや、しかしですよアキさん……)
(ここまで来た以上腹を括りなさい。どうせ個室なんだから、ばれはしないわよ)
ガチャ
(ほら……)
(あー!!)
バタン
視点:雪乃
ジャー……
やれやれ。どうにか終わらせることができた。
それにしても、女子トイレというものに入ったのはこれが初めてですが、確かに全てが個室になっているのですね。まあ、女子と男子では、出し方が違うのだから当然ではあるのですが。
そう言えば、何度か公共のお手洗いに入った時、先に入っていた人達からあからさまに驚愕の表情を向けられたことは何度かありましたが……今の私と真逆の感情なのだろうか。
まあいい。おそらくアキさんが待ってくれている。早く出なくては。
ガタン
おや? お隣に誰か入ったようですね。音が聞こえてくる。
衣服をずらして便器に座り……ん? この後は、まさか……
ツゴウニヨリギオンハナシ……
いやぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!!
同性ならいざ知らず、異性のこんな音聞きたくない~~~~~~~~~~!!
やめてぇえええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇ……
視点:アキ
ギー
あ、出てきた。
「……」
「何だか、ヤツレてない?」
「気のせいよ……ただ、排泄という行為にここまで精神的な疲弊を感じたことは無いけれど」
「大げさな……手は洗った?」
「無論よ」
「じゃあ、戻りましょうか……」
「……」
(私、もう学校のお手洗いは使用しない方が良いでしょうか……)
(そんなわけには行かないわよ。早く慣れなさい)
(うわぁ~……)
まあそんなこともあったけど、その後の授業でも、特に問題なく雪乃はこなしていった。
時々先生に当てられたこともあったけど、その時は平然と問題の答えを解いていたし。
一応、入学する前にある程度勉強を教えていたのが役に立ったみたい。元々頭も良かったから、授業の勉強をこなすことは難しく無さそう。
キーンコーン……
そんなこんなでお昼休み。ようやく一息つける。
「雪乃、昼食に行きましょう」
「昼食……いえ、私はいいわ」
「いいって……」
ああ、そう言えば……
ガシッ
「ダメよ。一日に三食は必ず食べなさい」
「え、けど……」
「いいから」
これ以上反論する前に、無理やり食堂へ引きずっていった。
入学する前にも、何度か私達の用意した食事を断ったことがあった。最初はみんな遠慮しているものだと思っていたけど、
―「食事など、そう何度も行うような行為ではないでしょう?」
―「一日三食!? 三日に一食の間違いでは?」
『……』
梓の場合、遠慮とかいう以前に、そもそもの食事をすることの意義を理解していないみたいだった。
まあ、話しを聞くと、子供の頃から相当苦労して、結果空腹を感じなくなったから、いつの間にか仕事上の接待以外では食べなくなったらしい。
何も食べないっていうのは、ある意味便利ではあるけど、さすがに全く何も食べなきゃいつか死んでしまうわ。空腹も感じないとなると、倒れる寸前になっても気付かないだろうし。
彼が頭首をしていた時も、そんなふうに、誰かが無理やり食べさせてたのかしら。
もしそうなら、結構苦労してたでしょうね……
「ここよ」
「ここが……」
多分、食堂という場所に来るのも初めてなんでしょうね。
基本的に購買だけど、奥にはセルフサービスもあって、そのメニューも充実してる。
置いてあるテーブルには、既に何人かの生徒達が、一人、もしくは数人のグループを作って食事を取ってる。
「ふむ……何というか……」
「……?」
「生きる、ということを感じさせる場所、ですね」
「……そうね」
あまり深く考えたことはないけど、確かに、雪乃の言う通り、ここは『生きる』という行為そのものを行う場所だわ。
生きることは、イコール何かを食べること。それをするために集まってくるここは、確かに、みんなが生きることを行うために集まる場所。その通りだわ。
「じゃあ、早速ご飯を取りに行きましょうか」
そう、セルフサービスまで歩こうとしたら、
「……」
あら? 何をじっと見てるの?
「どうかした?」
「……あれは、饅頭?」
「饅頭? ……ああ、中華まんね」
「中華まん……中国の饅頭、と、いうことですか?」
「ええ。興味があるなら、買ってみる?」
「……ええ。饅頭はいくつも作ってきましたが、中国製というものは知らないので興味があります」
「……」
今時どこにでも売ってる中華まんを知らないなんて、結構世間知らずなのね……
「え、これは、肉……?」
「ええ。豚肉とか、色々混ぜて料理したものが入ってるの」
「饅頭というのは普通、餡子を入れるものでは……?」
「餡子入りもあるけど、一番代表的なのは、この『肉まん』ね」
「饅頭に肉……その発想は無かったです……」
そりゃあ、日本の饅頭に肉を入れるって話は聞かないわよね。日本から見れば饅頭はお菓子だけど、中国では一種のメイン料理だし。
「……では、この肉まんとやらを一つ」
そんなわけで、肉まんを一つ買った後で、あらためてセルフサービスまで歩いた。
「いただきます」
「いただきます」
雪乃がキチンと手を合わせて挨拶したから、私もそれにならって挨拶をする。
メニューは、私がカレーライスとサラダ。
雪乃は、ご飯とみそ汁、焼き魚、漬物、そして納豆。
雪乃……いえ、梓らしいメニューだけど、明らかに肉まんとは合わないメニューだわ。
「ではまず、この肉まんとやらから……」
なんて、感想を思ってる間に、味に一番疑問を感じていた肉まんを手に取る。私にとってはとても美味しい食べ物だけど、初めて食べる雪乃はどんな反応を見せるのか……
パク……
「……」
「……(もにゅもにゅ)」
「……」
「……(ごくん)」
「……」
「……」
綻んでる! 癒されてる! お花畑が見える! ほんわか天国に旅立ってる!!
雪乃にとってもすごく美味しい食べ物だったのね。かなり幸せそうな表情で、何だか異世界に旅立ってるみたい。
「美味しい?」
聞かなくても分かるけど、一応、お決まりってことで。
「……」
何も言わない。ただ、私を見ながら、満面の笑みを浮かばせたから、やっぱり美味しいのね。
「良かったわね」
「……」
返事はしないまま、二口目以降を楽しみ始めた。
「……」
食事は確かに、生きるために必要な行為だけど、何も生きることだけが食事の目的じゃない。
食事という行為そのものを捨てたも同じの梓には、もっと、食事を楽しむ、ということを知ってほしいわね。
「やあ、藤原雪乃さん」
食事を終えたところで、そう、誰かから話し掛けられた。雪乃とそっちを見ると、
「え、誰、あなた達……?」
「……?」
「僕達は野球部。そして僕は主将の『
と、何やら勝手に挨拶を始めた。
「実は君にぜひ、我が野球部のマネージャーになって欲しいんだ」
いきなり現れて何を言ってるのやら。
「ま、ねい……?」
(要するに、クラブのお手伝いや身の回りをする人のことよ)
(ああ、家政婦さん)
(全然違う……!)
「どうかな?」
と、耳打ちした直後に、机に手を置いて顔を近づけてきた。
「えっと……」
「ちょっと待った!」
と、別方向から声が聞こえた。そっちを見てみると、
「その話し、我々サッカー部も希望する」
「何だと?」
「ちょっと待った!」
今度はなに?
「ならば、我々バスケ部もだ!」
「いや、陸上部が!」
「バレー部も忘れられては困るな!」
『いや! 我が部だ!!』
……まさか、この食堂に、この学校の男子運動部全員が集まってるの?
『雪乃さん! どうする!?』
て、しばらく睨み合った後で、雪乃を見てそう聞いてきた。
「いや、どうするって、聞かれても……」
ここは、私がフォローしなきゃ。
「ごめんなさい。この子、まだ転校してきたばかりでよく分かってないのよ。だから、その話は……」
「ならば!!」
遮られた……
「放課後、ぜひ我々の部を見学してくれ。きっとその素晴らしさが伝わるはずだ!」
「見学……」
『そうだ!!』
『そうだ!!』
ちょっと……
こっちの意見も聞かずに、勝手なことばかり言って……
「あのね……」
「分かりました」
「そう。分かった……え!?」
『よし!!』
雪乃の返事の後で、全員がまた雪乃の前に来て、
「待ってますね」
「入部してくれるって信じてます」
「うちは、良い部ですよ」
そんな感じの言葉を一言ずつ言っていって、そして、食堂を後にした。
「……」
「……」
周りの生徒達が沈黙する中で、
(ちょっと雪乃!)
そう耳打ち話し掛けた。
(何でオーケーしたのよ! 断ればそれで良かったのに! 変に目立って正体がばれちゃまずいから部活動はダメって言ったでしょう!!)
(あんなふうにお願いされては、むげにできませんよ……)
と、困ったふうに返事をする。
まったく、雪乃がすごく優しい人なのは分かってるけど、それで面倒を増やしたら本末転倒よ。
(……じゃあ、私も行くわ。その見学)
(アキさんも?)
(ええ。校内の案内がてら一緒に周ってあげる)
雪乃のことだから、もしここで絶対に入部するなって言い含めても、向こうが泣き落としの一つもすれば、簡単に入部してしまいそうだし。私が隣について、上手いことフォローするしか無いわ。
(それにしても……)
と、雪乃が声を出した。
(たった一人の転校生をあそこまで奪い合うとは、その、まねえじゃあ、とやらは、よほど人材が不足しているのですね)
(……)
そう解釈したんだ……
……
…………
………………
そうこうして、午後の授業を終えて、放課後現在。
「やあ、雪乃さん。よく来てくれたね」
「ええ。お招きありがとう」
「……君はどうしてここにいるんだ? 十六夜アキさん」
「ただの道案内よ。気にしないで」
そう挨拶を済ませた後で、練習が始まった。
とりあえず、たくさんある運動部の中から、
カキーン
まずは、最初に話しかけてきた野球部に来てみた。
まあ、大方のイメージ通り、基礎的なトレーニングの後で、ノックをしたりボールを回したり。何だか雪乃がいるからいつも以上に気合いが入ってる気がする。その辺どうなのかしら?
と、肝心の雪乃は……
「……」
無言で見つめてるけど、口元には微笑みが浮かんでる。
……そっか。一応、男の子だものね。今日までずっと男の子らしい遊びはできなかったでしょうし、新鮮に映るでしょうね。
「やあ雪乃さん。僕らの練習はどうかな?」
休憩になって、野球部のキャプテンが話し掛けてきた。
「ええ……ねえ」
「はい?」
「もしよければ、私にもやらせてくれない?」
……え?
「え、雪乃さんも?」
「ええ。見ていて体を動かしたくなっちゃって」
「……」
ああ、やっぱ男の子なのね……
ということで、雪乃がマウンドに立って、キャッチャーの前にバットを構えた。
「つまり、この太くて硬いもので、あなたの球を捕らえればいい、そういうことね」
「は、はい……////」
なにその卑猥な表現。バットとボールでしょう……
「じゃあ、遠慮はいらないから、思い切りイきなさい」
「は、はい……////」
バットをピッチャーに突き付けて、そう言い放った。ピッチャーは顔真っ赤だけど、ちゃんとした球が抛れるのかしら……
「いきます////」
「……」
雪乃が構えて、ピッチャー大きく振りかぶって、第一球……投げた!
「……!」
ブンッ
バシッ
「ットーライク!」
あら、空振りか。当たったと思ったけど、まあ、初めてなら仕様がないわね。
「……あれ? おーい」
と、キャッチャーの人が、なにかピッチャーに呼び掛けた。
「どうした?」
「おかしいぞこの球。真っ二つに割れてる」
「割れてる?」
割れてる?
言いながらキャッチャーの人が球を掲げると……
なにあれ? 確かに綺麗な真っ二つになってる。まるで、何かで切ったみたいに……
「元々割れてたんじゃないか? 新しいボールくれ」
そう言った後で、キャッチャーの人はポケットから別のボールを取り出した。それを、割れてないかどうかよく見た後で、ピッチャーに投げてよこす。ピッチャーもよく確認して、割れてないってことが分かったみたい。
「じゃあ、二回目投げまーす!」
「さあ、いらっしゃい。あなたのその、強くて硬いのを……」
「////」
だからなにその卑猥な表現……!
……なんて思ってるうちに、第二球を振りかぶって……投げた!
「……!」
ブンッ
バシッ
「ツーストライ!」
二球目も空振り。
「……なあ」
と、またキャッチャーが声を出した。
「どうした?」
「……二球目も割れてるぞ」
「……え?」
……本当。二球目も、割れてる。さっき、割れてないかどうか確認してたわよね。
「あと、もう一つ気になってたんだけど……」
「何が?」
「いや、今のスイングもそうだったんだけど……雪乃さんのスイング、一球目の時もヒットしてるんだよ」
「ヒットしてる?」
「ああ。見間違いかとも思ったけど、俺の目から見たら、間違いなくジャストヒットしてた。見えた瞬間、ホームランだって思ったからさ」
「つまり……どういうことだ?」
「それは……分からないけど……」
『……』
「……とにかく、残り一球残ってる。それを投げてから考えよう」
「そうだな……」
相談は終わったみたい。
何だか二人でこそこそ話した後、元のポジションに戻った。
と、キャッチャーは後ろには立たずに、何だか横にずれてる?
「ずれてない?」
「ええ。これでいいんです。三球目は取らずに見てみようと思うんで」
「……? そう……」
そんな会話が終わった後で、ピッチャー第三球……投げた!
「……!」
ブンッ
ガシャンッ
ガシャンッ
キャッチャーのいない投げられたボールは、そのまま後ろの金網にぶつかった。
前の二球と同じ、真っ二つに割れた状態で。
「……やっぱり、雪乃さんのバット、当たってる……というか、通り抜けてる感じ……」
「それって、つまり……」
要するに……
「あら、ごめんなさい。ぶつけるだけのつもりが、どうやら斬っちゃったみたいね」
『……』
ガシッ
「……?」
頭を掻いてる雪乃の手を取って、
「次、行きましょう」
「え……? え、ええ……」
呆然とした野球部をそのままに、私達はグランドを後にした。
「……」
ポッカーン……
~サッカー部~
ここでも、練習途中に雪乃がやりたいと言い出して、グランドに立った。
「あの網に向かって、この球を、足を使って挿れればいいのね」
「その通り////」
どうして雪乃の言葉はいちいち卑猥に聞こえるのかしら……
「ただし、僕らを抜く必要があります……////」
「そう、なの……?」
「え? ええ……」
と、そんな会話もそこそこに、全員がポジションに着いた。
「それじゃ、始めますよ!」
「いつでもいいわ」
『……』
ピーッ
ホイッスルが鳴り響くと同時に、サッカー部が一斉に雪乃へ向かう。
そして雪乃は、ボールを蹴って……
バシッ
『……!!』
ボールが、生徒達を乗り越えて、ゴールへ一直線!?
ゴールまでは半分以上の距離があるのに、たったの一蹴りで!?
「うお!!」
キーパーも驚いてたけど、それでもキーパーとしての気合いが先立ったのね。
あまりの威力に後ろに跳ね飛ばされながら、雪乃のボールをどうにか弾いた。
ボールは生徒達の頭上を飛んでいった、そこを……
バッ
『……!!』
雪乃が跳んだー!!
ボールの高さまで跳んで、ボールの前で体を回転させて、頭を下にしたその体制は……
『オーバーヘッドキックゥゥゥゥゥ!』
「……!」
パァンッ
『……え?』
サッカーボールが、梓に蹴られた瞬間、破裂した……
「あら、力を入れすぎちゃったかしら……」
地面に着地しながら、そう、頭を掻いてる。
『……』
ガシッ
「次、行くわよ」
「え、ええ……」
「……」
ポッカーン……
~陸上部~
バキッ
「あら、砕けちゃった。強く握り過ぎたかしら」
「強く握って砕けるって……砲丸ですよね、それ……」
「しかも、一番重くてでかい一般男子用……」
ガシッ
「次よ、雪乃」
「ええ……」
「……」
ポッカーン……
~テニス部~
「サーブ……!」
グニュリ……
「……あら?」
「何だ、このテニスボール……」
「……あれよ、きっと。ところてん」
『ああ……いやいやいやいや!!』
「……?」
ガシッ
「次、行くわよ」
「……」
ポッカーン……
「屋外はあらかた周ったから、次は体育館へ行くわよ」
「はい」
~バスケ部~
バッ
何人もの選手が取り囲んだ中、大きくジャンプしてーの……
ガンッ
ゴール板の上に着地して……
ヒョイ
ボスッ
真下の輪の中にボールを抛って、入れた。
「これで点が入るのかしら?」
「……多分、場外アウトです……」
「あら、ダメなの……?」
そう聞きながら、ゴールから飛び降りた。
ガシッ
「次よ、次」
「え、ええ……」
ポッカーン……
~卓球部~
「サーブ……!」
バキャッ
「うわ!!」
「何だ!? ショットガンか!?」
「あら、ごめんなさい。力を入れすぎたみたい……」
ガシッ
「次よ、次」
「ええ」
ポッカーン……
~バレー部~
「スパイク……!」
シャリン……
……あら? 今の金属音はなに?
なんて、思った瞬間……
ボト
ボト……
ボールが、真っ二つ……?
「ごめんなさい。手の向き間違えちゃった……」
手の向きを変えながら、可愛らしくそう言った。
……ああ、なるほど。つまり、スパイクのつもりが、手の向きを間違えたせいで、手刀に……
ガシッ
「さあ、次よ」
「ええ」
ポッカーン……
「もう球技は大方回ったかしら」
屋外から、屋内の部へ順に移動していって、大体は周ったと思うけど……
「……」
「どうかした? 雪乃」
何だか、落ち込んでる?
「……私、運動神経無いのでしょうか……」
「……うん、まあ、ある意味……」
「やはり……」
「……」
これ以上は言わないでおきましょう。突っ込まないわよ、なにも……
「じゃあ、次は武道場へ行きましょうか」
「武道場……ということは、格闘技?」
「え、ええ……」
どうしたの? 今まで以上に表情が弾んでない……?
……ああ、そう言えば、武闘家系だったわね、雪乃って……
~空手部~
「じゃあ、これを好きなように殴ってみて」
と、差し出されたのは、吊るされた大きなサンドバック。
「これを、殴るの?」
「ええ。遠慮はいりませんよ」
「じゃあ……」
と、雪乃は、その場でジャンプした、かと思ったら……
シャリン
バス……
「……え?」
今起きたのは、雪乃が上に跳んで、吊っていた鎖を蹴った途端、サンドバックが下へ落ちた、ということ。
「え? 一番硬い所を攻めるんじゃないの……?」
「……////」
言い方がいちいちエロい!
あと、手刀の次は足刀かい!
ガシッ
「次よ、次」
「ええ」
ポッカーン……
~剣道部~
「さあ、どこからでも打ち込んでごらん」
と、雪乃に竹刀を持たせた後で、竹刀と道着一枚の姿で彼はそう言った。
「どこからでもいいの?」
「ああ。どこから打たれても止めてあげよう……」
「もう打ち込んだわよ」
「え……?」
バラバラバラァ……
「……いやん!」
話してる間に、彼の竹刀と道着が全て輪切りになって、パンツ一丁姿に。
……なんか、昔見たアニメ映画にこんなシーンがあったわね。
ディズニーの、アラジン3だっけ……?
「隙だらけだったから、十回くらい切り込んじゃった」
「十回……いつの間に……?」
ガシッ
「次よ」
「ええ」
ポッカーン……
~柔道部~
(ば、バカな……俺と彼女との体格差は、身長が三十センチ以上、体重は軽く見積もっても四十キロ以上はある! なのに、こんな、彼女の細腕一本に、俺が、動けなくされているだと……)
「それ……」
腕一本で、彼を押さえていた雪乃は、それを今度は上に持ち上げた。そして、そのままゆっくり地面に下ろして……
「一本、よね?」
「……」
ガシッ
「さあ、行くわよ」
「……」
ポッカーン……
「これで、運動部はあらかた周ったわね」
と、どれもある意味散々だったけど……
「ふむ……皆さんの表情を見た限り、どうやら私に、まねえじゃあ、とやらは、向いていないようですね」
「……まあ、ある意味」
雪乃の場合、マネージャー以上に、力はだいぶ押さえなきゃだけど、選手としての方が……
「これで全てなら、もう帰りますか?」
「そうね……」
帰りたくなったのなら、それも助かるわ。
「……あら?」
と、立ち上がった時、また疑問を声を上げた。
「どうしたの?」
「すみません。あの施設は何でしょう?」
「……ああ」
雪乃の指さした方向には、三階建の小さな校舎が一つ、建ってる。
「あれは『文化部棟』よ」
「文化部、棟……?」
「ええ。グランドや体育館、武道場の使える運動部とは違って、音楽や美術なんかの文化部は全てあそこに集められてるの」
「ほお。部活動というのは、運動だけではなかったのですね」
ああ、そう言えばそのことも説明してなかったわね。
「ただ、今ではある部の人口が増えすぎて、実質その部が棟をまるごと占領してるのよね」
「ほお……」
「……興味あるの?」
「そうですね。これだけ時間を掛けて、ほぼ全ての運動部を周った以上、全て見てみたい気もします」
「……やめた方が良いと思うけど……」
「なぜ……?」
「それは……いえ、いっそ見た方が早いかもね」
「……?」
「行きましょうか」
と、雪乃の手を引いて、文化部棟まで歩いた。
中の作り自体は、普通の校舎とそんなに変わらない。廊下があって、いくつかの教室がある。
「実は、ここに一番、学校の生徒が集まってる部活があるのよね」
「先程言っていた部ですね」
「ええ。その部っていうのが……」
「アキさん」
と、部の名前を言おうとした瞬間、女子の声が聞こえた。そっちへ振り返ると、
(……!)
黒髪のおかっぱ頭の女子生徒。
「あら、ちょうどよかった」
「こんにちは。そちらの方は?」
「転校生の藤原雪乃よ。ここの部に興味があるらしいから、ここまで連れてきたの」
「ほお、見学希望の方ですか。それは嬉しい。では、私共が案内しましょう」
「紹介するわね雪乃。こちらは……」
(……『
「あ、おーい!」
と、私が名前を言う前に、そっちから別の女子の声。そっちを見ると、女子が二人。
(……!!)
桃色の髪と、長髪の青髪。
(『ツァン・ディレ』さんに、『
ちょうど、これから行こうと思ってた部の主要メンバーがそろった。簡単に紹介を済ませて、私達五人は移動した。
そして、とうとう目的の部の、教室へ。
「では、中へどうぞ」
紫が言いながらドアを開く。
ガララ……
中にはそれぞれ、華道、書道、茶道を嗜んでる女子生徒達が、五十人くらいいるかしら?
「ようこそ」
そして、また三人が前に並んで、
「私共、華道部と……」
「僕達、書道部と……」
「私達、茶道部の、三つの部が一つになって生まれた……」
『『
ポッカーン……
今度は雪乃がそうなった。
(どう? 行かない方が良いって言った理由、分かった?)
(……ええ。よく分かりました)
(この教室にいる女子生徒全員、私がかつて開いていた教室の、元生徒達だ……)
お疲れ~。
一応、決闘は次話の予定ですわ。
今度はいつになるかな~。
待っててくれるなら、ちょっと待ってて。