今回も、決闘回で、そして長いです。
まあそれでも言うことはいつもと同じ。
行ってらっしゃい。
視点:雪乃
生け花、文字、作法、舞踊、演奏……
こういった、人の手より直接生まれる芸術品というものには、多かれ少なかれその人の感情が表れる。
聞く人によっては笑い話にしか聞こえない事実かもしれないけど、こういったことに長い間身をやつしてきたことで、そして、誰よりも人間の醜さの中に身を浸してきた者として、いつからかそういう感情が、目の前で形作られたそれらを見て、心に伝わってくるようになっていた。
まるで機械のように、精密なだけの何の感情も見られない作法を見て。
文字になっていない、なのに見つけ出してほしいものが見えてくる文字を見て。
本当は嫌悪しながら、それでも義務として手を動かし完成させたお花を見て。
何に思い悩んでいるのか。
何に苦しんでいるのか。
何を嫌悪してしまっているのか。
具体的な何かまでは分からないけど、少なくとも、今目の前の人が、そういったことに心を痛めてしまっていることは分かって、それらを取り除くことができないものか、そう思うようになった。だから私は、習い事を通して、その人達に言葉を掛けるようになった。
以前、取材を受けた時、こんな言葉を投げかけられたことがある。
―「あなたの教室は、多くの人達にとってのカウンセリングの場だ、と評する声もあります」
聞いた時は、特に意識することなく、簡単に答えを返して終わったけれど、これはそういう意味だったのでしょうね。
私としては、目の前に座る大切な生徒達が、辛そうにしていたから放っておけなかった。せめて、この教室が苦痛になってしまわないようにしてあげたかった。ただ、それだけのことです。
けど、私にとってのそれだけの行為が、節子さんや龍可さん、更にはアキさん、大勢の人達にとっては、救いとなっていた。そして、そのことに不必要なほどの謝恩の念を抱かせ、大仰なまでの敬意を受けることとなってしまった。
ある人達にとっては神。
ある人達にとっては夫。
そんなふうに称されるほどに……
……
…………
………………
そして今、私が生み出してしまったそれらが、私に向かって牙を向いている。
もっとも、その感情は水瀬梓ではなく、藤原雪乃に対して、だが。
しかし、それでいい。おそらく水瀬梓としてそれらのことを語り掛けたところで、かえって火に油を注ぐことになってしまう。
だから、水瀬梓が彼女達に抱かせてしまった盲信、それを、この藤原雪乃が壊す。
水瀬梓は、誰かを救うことのできる神などではない。誰かを選ぶだけの夫にもなれない。
水瀬梓がなれるもの、それは……
視点:外
『決闘!!』
雪乃
LP:4000
手札:5
場 :無し
ラン
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
紫
LP:4000
手札:5枚
場 :無し
「先行は私が貰うわ。私のターン、ドロー」
雪乃
手札:5→6
「……モンスターを伏せる。更にカードを二枚セット。これでターンエンドよ」
雪乃
LP:4000
手札:3枚
場 :モンスター
セット
魔法・罠
セット
セット
「大きなことを言っていた割には消極的な一手ですわね」
「油断大敵ですよ」
「はん。あなたに言われるまでもありませんわ」
「なら……私のば……」
「私のターン!」
「……!」
ラン
手札:5→6
「ちょ、あの……」
「負け犬は大人しくしていなさい。言っておくけど、私は慣れ合うつもりなどないわ」
「負け犬……」
「……」
「私は、『アトラの蟲惑魔』を召喚」
『アトラの蟲惑魔』
レベル4
攻撃力1800
「バトルロイヤルルールにより、最初のターン攻撃はできない。これでターンエンド」
ラン
LP:4000
手札:5枚
場 :モンスター
『アトラの蟲惑魔』攻撃力1800
魔法・罠
無し
雪乃
LP:4000
手札:3枚
場 :モンスター
セット
魔法・罠
セット
セット
「……私の番です。引きます」
紫
手札:5→6
「緑の歯車を召喚」
『グリーン・ガジェット』
レベル4
攻撃力1400
「緑の効果により、札束より赤の歯車を手に加えます」
紫
手札:5→6
「札を四枚、場に伏せます。終了です」
「なら、そのエンドフェイズに速攻魔法『サイクロン』を発動!」
「な……!」
「エンドサイク……」
「今伏せた中から、真ん中左側のカードを破壊してもらうわ」
「……」
『次元幽閉』
通常罠
「当たりね」
紫
LP:4000
手札:2枚
場 :モンスター
『グリーン・ガジェット』攻撃力1400
魔法・罠
セット
セット
セット
雪乃
LP:4000
手札:3枚
場 :モンスター
セット
魔法・罠
セット
ラン
LP:4000
手札:5枚
場 :モンスター
『アトラの蟲惑魔』攻撃力1800
魔法・罠
無し
「さて、私のターンね。ドロー」
雪乃
手札:3→4
「まずは、この子を反転召喚するわ。『E・HERO フォレストマン』」
『E・HERO フォレストマン』
レベル4
攻撃力1000
「『E・HERO』……でも、あんなカードは見たことがない……」
「けど、『融合』主体のカードとは、意外に古いカードを使うのね」
「何とでもおっしゃい。私は更に、『E・HERO エアーマン』を召喚するわ」
『E・HERO エアーマン』
レベル4
攻撃力1800
「攻撃力1800ですか……」
(獲物が掛かりましたわね)
「手札から罠カード『狡猾な落とし穴』! 私の墓地に罠カードが存在しない時に発動できる。モンスター二体を選択して破壊できる。あなたの召喚したエアーマンと、フォレストマンを破壊しますわよ!」
「おお! 決まりましたわ!」
「あの生意気な女のモンスターを破壊しました!」
「確かに、この子は破壊されてしまうわね。なら、速攻魔法『HERO’S ボンド』! フィールドにE・HEROが存在する時、手札にあるレベル4以下のE・HERO二体を特殊召喚する」
「……! チェーンですって!」
「この効果で、私は更に手札から『E・HERO オーシャン』と、『E・HERO ザ・ヒート』を特殊召喚するわ」
『E・HERO オーシャン』
レベル4
攻撃力1500
『E・HERO ザ・ヒート』
レベル4
攻撃力1600+200×4
「ザ・ヒートはフィールド上の、自身を含むE・HERO一体につき、攻撃力を200ポイントアップさせるわ」
「攻撃力2400……」
「そしてここで、フォレストマンと、エアーマンは『狡猾な落とし穴』の効果で破壊されるけど、実はエアーマンには召喚時に選んで発動できる二つの効果がある。私は第一の効果を選択し、発動。このカードの召喚時、自身を除くフィールドのE・HEROの数までフィールド上の魔法・罠を破壊できる。私は、紫、あなたから見て右のカードを破壊させてもらうわ」
「……!」
『
通常罠
「また当たり、ね」
「くぅ……」
「もっとも、場のE・HEROの数が減ったことで、ザ・ヒートの攻撃力も下がってしまうけれど」
『E・HERO ザ・ヒート』
レベル4
攻撃力1600+200×2
「じゃあ、バトルよ。まずは『E・HERO オーシャン』で、紫、あなたのフィールドの『グリーン・ガジェット』を攻撃。ビッグウェーブクラッシュ!」
「うぅ……!」
紫
LP:4000→3900
「続いて、『E・HERO ザ・ヒート』で、ラン、あなたの『アトラの蟲惑魔』を攻撃。ヒートナックル!」
「くぅ……!」
ラン
LP:4000→3800
「私はこれでターンエンドよ」
雪乃
LP:4000
手札:0枚
場 :モンスター
『E・HERO オーシャン』攻撃力1500
『E・HERO ザ・ヒート』攻撃力1600+200×2
魔法・罠
セット
ラン
LP:3800
手札:4枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
紫
LP:3900
手札:2枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
セット
セット
「くぅ……私のターン、ドロー!」
ラン
手札:4→5
「私は『トリオンの蟲惑魔』を召喚!」
『トリオンの蟲惑魔』
レベル4
攻撃力1600
「このカードの召喚に成功した時、デッキから落とし穴、またはホールと名の付く通常罠カードを一枚手札に加える」
「ここで罠を発動!」
「え……?」
「『激流葬』!」
「な……!」
紫が発動した罠によって、巨大な津波が発生した。
「ちょっと、どういうつもり!?」
「うるさい! あなたはどうせその札を伏せることができるでしょう。戦闘破壊も一体しかできない。なら、破壊のための出汁にでもなっていて下さい」
「な、出汁ですって!?」
「あらあら……
紫がそんなことを言っている間に、激流はフィールドのモンスター達を呑み込んでいった。
「……『トリオンの蟲惑魔』の効果で、デッキから『奈落の落とし穴』を手札に加える!」
ラン
手札:4→5
「……私はカードを二枚伏せますわ! これでターンエンド!」
「ならこの瞬間、永続罠『リビングデッドの呼び声』を発動するわ」
「え……?」
「墓地のモンスターを一体、攻撃表示で特殊召喚する。『E・HERO オーシャン』」
『E・HERO オーシャン』
レベル4
攻撃力1500
「罠カードは伏せたターンに発動できない、でしょう?」
「くぅ……」
ラン
LP:3800
手札:3枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
セット
セット
雪乃
LP:4000
手札:0枚
場 :モンスター
『E・HERO オーシャン』攻撃力1500
魔法・罠
永続罠『リビングデッドの呼び声』
紫
LP:3900
手札:2枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
セット
「……私の番、引きます!」
紫
手札:2→3
「……」
「あら、その顔を見ると、どうやらオーシャンを倒せるカードは来なかったようね」
「……!」
「三体の『ガジェット』達に、オーシャンを超える攻撃力を持つモンスターはいない。ならできることは、ただ並べることくらいよね」
「く……」
「ちょっと! 私のモンスターを巻き添えにしておいてなによその体たらくは!?」
「あなたに言われる筋合いはありません。待っていることしかできない恋する乙女は黙っていて下さい」
「何ですって!? そっちこそ、ただ途切れないよう並べながら待っているだけの信徒のくせに!」
「……」
「何だよその言い方! 紫はモンスターを破壊するために罠を発動したのに!」
「それが余計なことなのですわ!!」
「ならそれ以外に良い方法があったっていうの!? あったなら言ってみなさいよ!!」
「やかましい! やっぱりあなた達のような信徒共と組んだのが間違っていたわ!!」
「何よ!! 恋心ばかりが一流のぼっち女!!」
「ぼっち……! そちらこそ、ただの似非狂信者ではありませんか!!」
ズカァッ!!
『……!!』
また、一斉に沈黙が訪れる。
またしても雪乃が、今度はその足を地面に突き立て、亀裂と足型を刻んでいた。
「悪いけど、決闘中だから続けてもらえるかしら?」
『……』
(本当すごいのね、男の子って……)
「……私は、赤の歯車を召喚します」
『レッド・ガジェット』
レベル4
攻撃力1300
「効果でデッキから、黄の歯車を手札に」
紫
手札:2→3
「永続の罠、『血の代償』! これにより、私は500の命を削り、モンスタアの通常召喚を追加できる。私は500の命を削り、黄の歯車を召喚」
紫
LP:3900→3400
『イエロー・ガジェット』
レベル4
攻撃力1200
「緑の歯車を手札に。更に500。緑の歯車」
紫
LP:3400→2900
『グリーン・ガジェット』
レベル4
攻撃力1400
「これで終了します」
紫
LP:2900
手札:3枚
場 :モンスター
『レッド・ガジェット』攻撃力1300
『イエロー・ガジェット』攻撃力1200
『グリーン・ガジェット』攻撃力1400
魔法・罠
永続罠『血の代償』
雪乃
LP:4000
手札:0枚
場 :モンスター
『E・HERO オーシャン』攻撃力1500
魔法・罠
永続罠『リビングデッドの呼び声』
ラン
LP:3800
手札:3枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
セット
セット
「さあ、私のターンね。ドロー」
雪乃
手札:0→1
「ここで、オーシャンの効果。自分フィールド、または墓地に眠る『HERO』一体を手札に加えられる。私は、墓地にあるエアーマンを手札に加えるわ」
雪乃
手札:1→2
「そして、エアーマンを召喚するわ」
『E・HERO エアーマン』
レベル4
攻撃力1800
「……罠発動『落とし穴』! 攻撃力1000以上のオーシャンを、召喚時に破壊するわ!」
「……なら、エアーマンの効果で、そっちの『奈落の落とし穴』は破壊させてもらうわ」
「く……けど、これ以上の展開は許さないわ」
「そう。なら、これはどうかしら? 魔法カード『ミラクル・フュージョン』」
「え!?」
「フィールドまたは墓地に存在するモンスターを使い、E・HEROの融合召喚を行う。私は墓地の、フォレストマンと、炎属性ザ・ヒートを除外。『E・HERO ノヴァマスター』」
『E・HERO ノヴァマスター』融合
レベル8
攻撃力2600
「な、なにあのE・HERO……!!」
「さっきから召喚しているE・HEROといい、あのカードといい……」
炎と共に現れた紅の鎧、ノヴァマスター。その姿に、そんな声を漏らすのを見ながら、アキは思っていた。
(これだけ大勢の生徒全員が見たことが無いなんて。やっぱり、私や遊星達だけが知らないわけではなかったのね。E・HEROはかなり昔からあるシリーズなのに、梓、あなたは一体……?)
「さあ、バトルよ。まずはオーシャンで、『イエロー・ガジェット』を攻撃。ビッグウェーブクラッシュ!」
「くぅ……!」
オーシャンの槍による斬撃が、『イエロー・ガジェット』を切り裂いた。
紫
LP:2900→2600
「続いて、ノヴァマスターで、『グリーン・ガジェット』を攻撃。
続くノヴァマスターも、その剛炎で『グリーン・ガジェット』を燃やし尽くした。
「うあぁ……!」
紫
LP:2600→1400
「ノヴァマスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、カードを一枚、ドローできる」
雪乃
手札:0→1
「……魔法カード『マジック・プランター』を発動。表側表示の永続罠カードを墓地へ送り、カードを二枚、ドローする。『リビングデッドの呼び声』を墓地へ。同時にオーシャンも破壊されてしまうけど……二枚ドロー」
雪乃
手札:0→2
「……カードを一枚伏せる。これでターンエンドよ」
雪乃
LP:4000
手札:1枚
場 :モンスター
『E・HERO ノヴァマスター』攻撃力2600
魔法・罠
セット
ラン
LP:3800
手札:3枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
紫
LP:1400
手札:3枚
場 :モンスター
『レッド・ガジェット』攻撃力1300
魔法・罠
永続罠『血の代償』
「一体何をしているの!? 倒すどころか相手のフィールドをより盤石にしてしまったじゃない!! おまけに『血の代償』の効果を発動するためのライフまで減らして!!」
「なら穴を掘る以外にもっと仕事をしてはいかがですか!? それもことごとく無駄にして、そんなに穴が好きなら大人しく梓先生の顔でも下半身でも思い浮かべながら自分の穴だけいじっていて下さい!」
「な……!!////」
(紫、意外と言うことがゲスイわ……)
「人が毎晩していることを……//// そちらこそ、さっきから大して強くもないモンスターを交換しては出し交換しては出しの繰り返しばかりで、不必要なものは切って新しくするのは見てくれだけのお花だけで十分よ!!」
「……私の愛する華道は梓先生と共に歩んできた道です。それをバカにするとは許しがたい! 服装と踊りばかりが立派なだけの愚か者!!」
「な! 私の日本舞踊は梓先生から直接指導を賜った神聖なもの! それを侮辱するなど、愚かはそっちだわ!!」
「何ですか!?」
「なによ!?」
(まったく、いい加減に決闘に集中してほしいわ……)
アキが、そう溜め息を吐くが、その周りの女子にもまた、喧騒が巻き起こっていた。
「僕の文字が下らない!? 梓先生から習った文字だぞ! それをバカにするなんて許さないぞ!!」
「私のお琴を愚弄するということは、梓先生を愚弄するということです! 許しがたい!!」
「誰がお茶を点てる以外能がないですって!? 梓先生からご指導を受けたお茶を点てる以上の能があるというの!?」
「私のことは何と言われても構いません! しかし、梓先生のおかげで上達できた三味線の腕をバカにしないで下さい!!」
ギャーギャー
ギャーギャー
そんな、共通する言葉を吐き出し合いながら、ひたすらに互いを罵り合う。
だが、本人達は気付いてはいない。自分達が正統な理由で激怒しているようで、その実、怒りの矛先は全て共通してしまっていることに。
そして、そんな怒りの矛先に立つ本人は、
「梓先生……梓先生……」
そう、呟き始めた。
「梓先生……梓先生……」
だが、その声が徐々に大きくなるにつれ、周りの喧騒もまた、徐々に静まっていく。
「梓先生……梓先生……」
次第に、雪乃へ視線は集まっていき、最後には沈黙と共に、全ての視線が雪乃に集中した。
「さっきから、黙って聞いていたら……」
どんなことになるかは分かっているその言葉を、雪乃は再び、口にした。
「よく分かったわ。梓先生という人は、やっぱりただのろくでなしよ」
『はぁ!!』
先程までと同じ、全ての声が唱和した、怒りの絶叫。
「あなたは三度同じことを……!」
「なら聞きたいのだけど……」
紫の言葉を遮りながら、全員を見据え、問い掛ける。
「あなた達が争っている原因の根本は、一体なに?」
「それは……」
『……!』
全員が、ようやく気付いたように、口を閉ざしてしまった。
「……答えられないのなら、私が代わりに答えるわ。あなた達が下らない喧嘩を続けているのは、全て水瀬梓が原因でしょう」
「な、ちがっ……」
「だから、強いはずのあなた達はお互いに足を引っ張り合っているし、そのせいで二対一という状況で敗けかけてる」
「それは……」
「かと思えば、そのことに怒って、言い合いになるにもいちいち梓先生って言葉を使ってる。つまり、水瀬梓があなた達を弱くして、喧嘩をさせてるってことでしょう。違う?」
「ち、違います! 喧嘩をしているのは、私達の勝手です!」
「そうですわ! このことは、梓先生は何も悪くはないわ!」
「そうです!」
「そうよ!」
「けど、少なくとも水瀬梓は、そう考えるんじゃないかしら?」
『……!!』
「私は水瀬梓という男のことは知らない。けど、もし彼が、あなた達の言うように素晴らしい人だというのなら、この二つの部の惨状を見たら、自分のせいだと思って、自分を責めるんじゃないかしら?」
正に今、雪乃自身がそうしているように。
「それは……」
「……確かに、あの人なら、そう考えそうです……」
『……』
「要するに、あなた達は、水瀬梓のことが好きなんでしょう?」
「え……あ、当たり前です! 好き以上だと、先程言いました!」
「私達和奏文化部は全員、彼の妻になることが夢! 全員が好き以上に、愛しているわ!」
「だったら……」
一度目を閉じて、また二人を見据えて、
「だったら、これ以上水瀬梓が苦しむような真似は、しない方がいいんじゃない?」
「梓先生が……」
「苦しむ……?」
「喧嘩するくらいならいっそ、梓先生なんて忘れてしまえ」
『……!!』
「なんて、残酷なことまでは言えないけど、少なくともお互いに、同じ人を思うもの同士、どちらがよりその人を思うかで争えるなら、お互いを尊敬し合うことだって、できるのではないかしら?」
「お互いを……」
「尊敬し合う……?」
(もっとも、火を点けた当人である私が何を言っているのか、という話しですが……)
「さあ、次はランのターンでしょう」
ラン
LP:3800
手札:3枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
雪乃
LP:4000
手札:1枚
場 :モンスター
『E・HERO ノヴァマスター』攻撃力2600
魔法・罠
セット
紫
LP:1400
手札:3枚
場 :モンスター
『レッド・ガジェット』攻撃力1300
魔法・罠
永続罠『血の代償』
(伝わってくれたでしょうか……)
「……私のターン」
ラン
手札:3→4
「……魔法カード『成金ゴブリン』を発動。私はカードを一枚ドロー。そして、相手のライフ……紬紫のライフを1000回復させる」
「ら、ランさん……?」
ラン
手札:3→4
紫
LP:1400→2400
「魔法カード『おろかな埋葬』。デッキから、『ティオの蟲惑魔』を墓地へ落としますわ。そして、二枚目の『ティオの蟲惑魔』を召喚」
『ティオの蟲惑魔』
レベル4
攻撃力1700
「このカードの召喚に成功した時、墓地の蟲惑魔を一体、守備表示で特殊召喚できる。私はたった今墓地へ送った一枚目の『ティオの蟲惑魔』を特殊召喚」
『ティオの蟲惑魔』
レベル4
守備力1100
「『ティオの蟲惑魔』のモンスター効果。このカードの特殊召喚に成功した時、墓地のホールまたは落とし穴と名の付く通常罠カード一枚をセットする。この効果でセットされたカードは、次の私のターンのエンドフェイズ時に除外される。『奈落の落とし穴』をセット……紬紫」
プレイをした後で、ランは紫の名前を呼び、紫はそちらを見た。
「私が藤原雪乃の動きを止めてみせるから、あなたはどうにか逆転して見せなさい」
「ランさん……はい」
「ターンエンド」
ラン
LP:3800
手札:2枚
場 :モンスター
『ティオの蟲惑魔』攻撃力1700
『ティオの蟲惑魔』守備力1100
魔法・罠
セット
雪乃
LP:4000
手札:1枚
場 :モンスター
『E・HERO ノヴァマスター』攻撃力2600
魔法・罠
セット
紫
LP:2400
手札:3枚
場 :モンスター
『レッド・ガジェット』攻撃力1300
魔法・罠
永続罠『血の代償』
(そうだ……)
「私の番です!」
紫
手札:3→4
「起動兵士を召喚致します」
『起動兵士デッドリボルバー』
レベル4
攻撃力0
「攻撃力0?」
「起動兵士は私の場に歯車がいる時、攻撃力を2000上げる効果を持ちます」
『起動兵士デッドリボルバー』
攻撃力0+2000
「そして、速攻魔法による限定解除! 私の場の機械族を全て、攻撃力を倍とします」
『レッド・ガジェット』
攻撃力1300×2
『起動兵士デッドリボルバー』
攻撃力0+2000×2
「戦闘を開始します。起動兵士で、爆炎の英雄を攻撃します」
デッドリボルバーの拳が、ノヴァマスターを殴り飛ばした。
「く……」
雪乃
LP:4000→2600
「そして、赤の歯車で、雪乃さんに直接攻撃! これが通れば……」
「通さない。罠発動『トゥルース・リインフォース』! デッキから、レベル2以下の戦士族モンスターを特殊召喚する。私はデッキから、レベル2の『ヒーロー・キッズ』を特殊召喚」
『ヒーロー・キッズ』
レベル2
守備力600
「更にこのカードの特殊召喚に成功した時、デッキから『ヒーロー・キッズ』を任意の枚数、特殊召喚できる」
『ヒーロー・キッズ』
レベル2
守備力600
『ヒーロー・キッズ』
レベル2
守備力600
「く……なら、幼き英雄を攻撃!」
『レッド・ガジェット』の拳が、『ヒーロー・キッズ』の一体を殴り飛ばした。
「一枚伏せ、終了します。そしてこの時、限定解除された機械族は全て破壊されます」
紫
LP:2400
手札:1枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
セット
永続罠『血の代償』
雪乃
LP:2600
手札:1枚
場 :モンスター
『ヒーロー・キッズ』守備力600
『ヒーロー・キッズ』守備力600
魔法・罠
無し
ラン
LP:3800
手札:2枚
場 :モンスター
『ティオの蟲惑魔』攻撃力1700
『ティオの蟲惑魔』守備力1100
魔法・罠
セット
「私のターン、ドロー」
雪乃
手札:1→2
「チューナーモンスター『ジャンク・シンクロン』を召喚」
『ジャンク・シンクロン』チューナー
レベル3
攻撃力1300
「チューナーモンスター!?」
「ということは、シンクロ召喚を……!?」
「『ジャンク・シンクロン』の召喚に成功した時、私は墓地からレベル2以下のモンスター一体を、効果を無効にして守備表示で特殊召喚できるわ。『ヒーロー・キッズ』を特殊召喚」
『ヒーロー・キッズ』
レベル2
守備力600
「いくわよ。レベル2の『ヒーロー・キッズ』に、レベル3の『ジャンク・シンクロン』をチューニング!」
共に飛び上がった二体のモンスター。そのうち『ジャンク・シンクロン』が三つの星となり、『ヒーロー・キッズ』の周囲を回る。
「棄なる魂集結せし時、闇夜に閃く闘志へ変わる」
「シンクロ召喚!
『ジャンク・ウォリアー』シンクロ
レベル5
攻撃力2300
「『ジャンク・ウォリアー』のシンクロ召喚に成功した時、私の場のレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分、攻撃力に加える。二体の『ヒーロー・キッズ』のレベルは2。パワー・オブ・フェローズ」
『ジャンク・ウォリアー』
攻撃力2300+300×2
「攻撃力、2900……」
「けど、私の伏せたカードを忘れたのかしら? 罠発動『奈落の落とし穴』! 相手の召喚、特殊召喚した攻撃力1500以上のモンスター一体を破壊し、ゲームから除外するわ!」
現れたと同時に、『ジャンク・ウォリアー』の足下に穴が開き、そこへ落ちていった。
「もっとも、このカードを破壊できるカードが無い以上、どの道何もできなかったでしょうけど」
「そうでもないわ。これで心置きなく、私のエースモンスターが呼べる」
「え……エースですって!?」
「そう、エースよ。魔法カード発動! 二枚目の『ミラクル・フュージョン』!」
『二枚目!!』
(そんな……また、無駄撃ち……?)
「墓地のエアーマンと、水属性のオーシャンを除外して、融合。現れよ、氷結の英雄『E・HERO アブソルートZero』!」
そして、その宣言で現れたのは、全身を純白の鎧に身を包み、マントをなびかせ、雪と共に舞い降りた、英雄の姿。
『E・HERO アブソルートZero』融合
レベル8
攻撃力2500
「こ、これが、藤原雪乃のエース……」
「う、美しい……」
「これは……」
「こんな美しいモンスター、見たことがない……」
「これが雪乃の、今のデッキのエースカード……」
「バトル!」
『……!!』
雪乃のその声によって、Zeroの姿に魅入られていた者達は、正気を取り戻した。
「アブソルートZeroで、ランの『ティオの蟲惑魔』に攻撃。
「うぁ……!」
その宣言の通り、『ティオの蟲惑魔』は氷漬けにされ、砕かれた。
ラン
LP:3800→3000
「これでターンエンド」
雪乃
LP:2600
手札:0枚
場 :モンスター
『E・HERO アブソルートZero』攻撃力2500
『ヒーロー・キッズ』守備力600
『ヒーロー・キッズ』守備力600
魔法・罠
無し
ラン
LP:3000
手札:2枚
場 :モンスター
『ティオの蟲惑魔』守備力1100
魔法・罠
無し
紫
LP:2400
手札:1枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
セット
永続罠『血の代償』
「私のターン、ドロー!」
ラン
手札:2→3
「……『カズーラの蟲惑魔』を召喚」
『カズーラの蟲惑魔』
レベル4
攻撃力800
「更に、『ティオの蟲惑魔』を攻撃表示に変更!」
『ティオの蟲惑魔』
レベル4
攻撃力1700
「バトル! 『ティオの蟲惑魔』、『カズーラの蟲惑魔』で、『ヒーロー・キッズ』に攻撃!」
巨大なハエトリグサと、巨大なウツボカズラ。それが再び現れ、二体の『ヒーロー・キッズ』を飲み込んだ。
「私ができるのはここまで。ターンエンド」
「ではこの瞬間、永続の罠、機動砦!」
『機動砦 ストロング・ホールド』永続罠
レベル4
守備力2000
ラン
LP:3000
手札:2枚
場 :モンスター
『ティオの蟲惑魔』攻撃力1700
『カズーラの蟲惑魔』攻撃力800
魔法・罠
無し
雪乃
LP:2600
手札:0枚
場 :モンスター
『E・HERO アブソルートZero』攻撃力2500
魔法・罠
無し
紫
LP:2400
手札:1枚
場 :モンスター
『機動砦 ストロング・ホールド』守備力2000
魔法・罠
永続罠『血の代償』
永続罠『機動砦 ストロング・ホールド』
「私の番です」
紫
手札:1→2
「……ランさん」
「ん?」
「あなたから頂いたこのライフ、決して無駄にしません」
「……さあ、逆転よ!」
「はい!」
「……が、頑張って下さい! 紫さん!!」
「紫様!」
「紫さん!!」
「……和奏のみんなが、紫を応援してる」
「私達も、負けていられないわ」
「う、うん! 頑張れー!!」
「紫ー!!」
(そうだ。これでいい。争いの根本が一つなら、その一つで、繋がることもまたできるはずだから。皆さんは、水瀬梓のせいで繋がることができなかった。なら、今度は私で繋がれば良いんだ。私、水瀬梓という、共通の敵に立ち向かうことで)
「緑の歯車を召喚」
『グリーン・ガジェット』
レベル4
攻撃力1400
「効果で赤の歯車を手札へ。そして、500の命を代償に、召喚」
紫
LP:2400→1900
『レッド・ガジェット』
レベル4
攻撃力1300
「効果で黄の歯車を。そして、召喚」
紫
LP:1900→1400
『イエロー・ガジェット』
レベル4
攻撃力1200
「そして、機動砦を攻撃表示に。機動砦の攻撃力は、緑、赤、黄の歯車全てが存在する時、3000上がる」
先程と同じ光景。ストロング・ホールドの三つのくぼみに、三体のガジェットが装着された。
『機動砦 ストロング・ホールド』
攻撃力0+3000
蒸気を放ちながら立ち上がり、それまで無かった攻撃性を示した。
「戦闘を開始します! 機動砦で、氷結の英雄を攻撃です!」
『いっけー!!』
紫の言葉に、そして、声援に呼応しながら、その拳を、Zeroへ放つ。
放たれた拳はZeroを捕らえ、破壊した。
「……っ」
雪乃
LP:2600→2100
「や、やった……! 三体の歯車の攻撃で勝てる……!」
「やりましたわ!」
「紫さん!!」
「ラン姉様ー!!」
(そうだ。これでいい。私は……水瀬梓は、神でもなければ、夫でもない。あなた方にとって、ただの先生だ。先生如きのために、あなた方が争う必要など、どこにもない。少なくとも私は、先生として、あなた方の争う様など、見たくもない。私の生徒は、誰もが優しい心を持つ人達だ。なら、こんなふうに、必ず分かり合える……)
「参ります。三体の歯車で……っ!!」
(私は先生。そして……今はあなた方と対する、決闘者)
「こ、これは……!!」
「な、なんですの!?」
ランと紫が、途端に目を見開き、目の前の光景に硬直した。
いつの間にか、フィールドに無かったはずの吹雪が巻き起こり、二人の前に並ぶ、ガジェットと蟲惑魔、五体のモンスター全てが凍り付いていた。
「アブソルートZeroのモンスター効果、
「モンスター効果?」
「そう。Zeroはフィールドを離れた時、相手フィールドのモンスター全てを破壊する」
『えぇ!?』
二人が驚く間に、凍りついたモンスターは全て砕け散った。
「こんな、ことが……」
「……札を伏せます。これで終了」
紫
LP:1400
手札:0枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
セット
永続罠『血の代償』
雪乃
LP:2100
手札:0枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
ラン
LP:3000
手札:2枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
「さあ、私のターン」
雪乃
手札:0→1
「魔法カード『HEROの遺産』を発動。墓地にレベル5以上のHEROが二体以上存在する時、カードを三枚、ドローできる。墓地にはレベル8のノヴァマスターとZero」
雪乃
手札:0→3
「さあ、終わらせるわよ。チューナーモンスター『ゾンビキャリア』を守備表示で召喚」
『ゾンビキャリア』チューナー
レベル2
守備力800
「魔法カード『
『フュージョニスト』融合
レベル3
攻撃力900
「いくわよ。レベル3の獣族『フュージョニスト』に、レベル2の闇属性『ゾンビキャリア』をチューニング」
「暗士と凍士交わりし時、永久凍土の時代が始まる。熱無き世界へ」
「シンクロ召喚! 冷たき魔人『氷結のフィッツジェラルド』!」
『氷結のフィッツジェラルド』シンクロ
レベル5
攻撃力2500
「氷の、シンクロモンスター……」
「そして……さすがにしつこいと言われるわね。三枚目の、『ミラクル・フュージョン』!」
「三枚目!?」
「本当にしつこいですわ!!」
「墓地のノヴァマスター、そしてZeroの二体を除外。再び現れなさい、氷結の英雄『E・HERO アブソルートZero』!」
その宣言で現れた、アブソルートZero。
雪乃を中心に据えながら、二体の氷結が並び立った。
『E・HERO アブソルートZero』融合
レベル8
攻撃力2500+500
「攻撃力が上がっている!?」
「ZeroはZero以外のフィールドに存在する水属性モンスターの数だけ、攻撃力を500ポイントアップさせるわ」
「あ、あぁ……」
「さあ、バトルよ。『氷結のフィッツジェラルド』で、紫、あなたにダイレクトアタック!」
「まだです! まだ終わってはいない! 罠を発動! 『魔法の筒』……え!?」
紫はそう宣言し、決闘ディスクに手を伸ばしたが、カード表になろうとした瞬間、凍りつき、そこに伏せられただけだった。
「フィッツジェラルドが攻撃する時、相手は魔法、罠を発動できない。あなたの『
「そ、そんな……!」
「
守るカードも、迎撃するカードも全て無くし、紫はただ、その氷を受けた。
紫
LP:1400→0
「紫さん!!」
「紫!!」
「紬紫!」
ランの悲鳴、そして、
「アブソルートZeroで、ランにダイレクトアタック!」
雪乃の宣言。ランが決闘に目を向けた時、アブソルートZeroは、目の前まで迫っていた。そして、
「
静かに、だがはっきりと、技の名を聞き、ランは、その冷気を受けた。
ラン
LP:3000→0
視点:雪乃
二対一という厳しい状況下、どうにか勝利を得ることができた。
これで、私のやることは、あと一つ。
「さあ、約束よ」
お互いにひざを着いて、項垂れている二人の女子に、そう話し掛ける。二人は顔を上げ、私の顔を見た。
「私が勝ったら、私の言うことを一つずつ聞いてもらう約束だったわよね」
『……』
二人ともが、不安げな顔を見せている。
だが、心配しなくとも、そんな理不尽なお願いをする気は毛頭ない。
「まず、ラン達和奏文化部」
「……」
「あなた達には、今すぐ、紫達の和装文化部解体の要求を撤回してもらうわ」
「……え?」
ランさんは面喰らったような顔を見せましたが、すぐに紫さんの方へ向く。
「そして、紫達の和装文化部」
「は、はい……」
「二度とラン達と喧嘩をしないこと。この二つが、私の要求よ」
「……」
「守ってもらえるかしら?」
最後の質問は、二人だけでなく、ここに立つアキさんを除いた全員に語り掛けた。
『……』
「……ラン、さん」
周りを見ていると、そう、紫さんの声が聞こえた。
「……すみませんでした」
「……?」
「梓先生に恋をする気持ち、本当はよく分かっていました。けど、少なくとも私達にとっては、彼はどんな人でも救って下さる神だった。そんな思想を押し通すために、一方的にこちらの主張ばかりを叫んで、もっと、単純な事実を見落としていたようです」
「……ええ」
紫さんのその話に、ランさんも、応えた。
「梓先生が神。その気持ちだって、よく分かるわ。そして私達は、そんな神様に恋をした者が集まった部だから、彼への気持ちは、どこの誰よりも強いと思い込んで、一方的にあなた達を敵視していた。敵視する理由なんて、全く無かったのに……」
「私達は、お互いに……」
「ええ。お互いに……」
『梓先生のことを、愛している』
『……』
「……紫」
「え?」
おそらく私の知る限り、初めてフルネームではなく、名前で呼んだ瞬間でした。
「お互い、梓先生を愛する者同士、二つの部を一つにしない?」
「一つに?」
「そう。そして、お互いに、先生から習った事柄の全てを教え合い、お互いの梓先生への思いを語り合う。そんな部にしていく気はない?」
「……」
『……』
その提案に、紫さんは、笑った。
「他の部員達が、それを望むなら」
そう言って、周囲の女子達を見渡した。
女子達は、曖昧に視線を泳がせたりしていたものの、すぐにその目を輝かせ、微笑み、最後には全員が、頷いた。
「……名前はどうしましょうか?」
「決まっているでしょう」
そう言い合った後で、二人は立ち上がった。
「和の総ての文化の部。名付けて、『
「和の総ての文化の部……良い名だと思います。皆さんは、これでよろしいですか?」
そしてまた、全員が、頷いた。
(ていうか、結局同じ名前じゃない……)
「アキ……」
「……? 雪乃……?」
「行きましょう」
そう話し掛けて、ベランダの出入口へ歩き出した。アキさんも、それについてきた。
「あれで良かったの?」
アキさんがそう質問してきたので、私は頷きました。
「あれが最善の結果かどうかは分かりませんが、少なくとも、これであの人達が、下らない争いを行うことは無いと思います」
「下らない、ね。あなたのことなのに」
「ええ。全ては、私のせいです……私は先生として、愛しい生徒達を教え、導いてきたつもりだった。その結果、こんな私を慕ってくれる、形の不調和という対立を生んでしまった。間抜けな話しだ……」
「それは、あなたのせいじゃないわ」
「それでも、原因は私にある。なら私は、彼らの先生として、それを解決する責任がある。今回、その責任を全うすることができたのかは分からないけど、彼女達にとって、少しでも救いになったことを、祈ります」
「責任、か……けど、決闘には勝つのね」
「当然です」
それだけは正直、譲れない。
「私は永遠に、彼女達の先生だ。しかし今は同時に、決闘者だ。決闘において、手を抜くことは、したくありません」
「ええ。それで良いと思う」
「あら、十六夜さん」
と、突然第三者の声が聞こえた。そちらを見ると、
「……ああ、先生」
「……」
アキさんが、緑色の髪に、眼鏡が光っているその女性に話し掛けましたが、私は内心、またか、と感じた。
「あず……雪乃、この人は、二つの和そう部の顧問をしてる……」
(日本料理教室の、『
「ちょうどよかった。二つの和そう部の生徒が一人もいないのですが、見ませんでしたか?」
「全員、ベランダにいます」
その答えを聞いて、麗華さん……いいえ、原先生はベランダへ歩いていきました。
「……では、私達も帰りましょう」
「そうね」
そして再び、歩き始める。
「……それにしても、ランさんはなぜ、毎晩耳かきをしながら私の顔を思浮かべるのでしょう?」
「……え? 耳かき?」
「はい。穴をいじると、言っていたでしょう」
(そう解釈したんだ……梓ってこういうことには疎いのかしら……)
「アキさんも、遊星さんの顔を思い浮かべながらするのですか? 毎日」
「私は……まあ、毎日じゃないけど、週二回くらいは……て!! なに言わせるのよ!!////」
ガンッ
なぜ殴られるのでしょう……?
まあいい。いずれにせよ、私達の今日すべきことは、全て終わった。
今はただ、一つになった和総文化部の前途を祈って、黙って去るのみ、です……
ガララ……
「出てきた!!」
「藤原雪乃さんよ!!」
「藤原雪乃さん!!」
『……!!』
二人で驚いている間に、そこに集結していた女子達が、私達に迫ってきた。
「な、なに、なに……?」
体操着、ユニフォーム、ギブス、道着、水着(!?)、少なくとも、運動部と聞いて大よそ思いつく格好をした、全ての女子が目の前に集結している。
「藤原雪乃さん!!」
「は?」
「ぜひ我がソフトボール部に!!」
「いえ、ぜひ女子バレー部に!!」
「女子テニス部に!!」
「女子サッカー部に!!」
「女子柔道部に!!」
「女子剣道部に!!」
「女子陸上部に!!」
「女子水泳部に!!」
『一緒に全国を目指しましょう!!』
「……」
(ど、どういうことです、アキさん……?)
(そうだ……そりゃ、色んな部であれだけ派手なことをしたんだもの。近くにいた女子部が放っておくわけがないわ。多分今のあなた、学校中の女子運動部から目を付けられてるわよ)
(そんな……先程、私には運動神経がないと……)
(……ごめん。あの時は適当に返したのよ。あなた、自覚は無いだろうけど、運動神経が良いとか、そういう次元を超えた凄まじい身体能力の持ち主よ)
(はぁ……)
よく分からないが、いずれにせよ冗談ではない。ただでさえ部活動は禁じられているのに、あろうことか、着替えや露出の危険を常に伴う、女装している身として最も避けるべき、運動部だなんて……
『雪乃さーん!!』
とは言え、このままでは彼女達は諦めることなく私を勧誘するでしょう。学校は初めてですが、それだけは何となく想像できる。
となると……
「アキ」
「え?」
「任せた」
そう言いつつ、後ろへ走り、文化部棟を上りました。
「ああ! 逃げた!!」
「もの凄い身体能力! 階段を使わず、腕さえ使わず、文化部棟の壁を足のみで駆け上がっている!!」
(男の子すげー!!)
「階段から追い掛けましょう!」
「ええ!」
「え!? あ、ちょ……フィールド魔法『ブラック・ガーデン』発動!!」
『……!!』
「ちょ、アキさん、なぜ邪魔をするの!?」
「そんなこと言われても……」
(梓めぇ、こんなところで私に力を使わせないでよぉ……)
タンッ
『……!!』
ベランダまで一気に登り、紫さんとランさんの間へ走り抜く。
そして、言いました。
「私を、和総文化部に入れてもらえないかしら?」
『……え?』
ということで、今日より私、藤原雪乃は、和総文化部の部員となりました。
(うわぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ~~~~~~~~~……)
お疲れ~。
とりあえず、藤原雪乃の、原作と小説の違いを列挙しときますわ。
性別:男(ここ重要)
性格:全て演技
使用デッキ:漫画産(今作では異世界産)E・HERO+シンクロ
大きさ:小っちゃい(どこがとは言わない。聞かれても答えない)
多分、以上。ひょっとしたら今後追加してくかもしれない。
とまあそんなこんなで、和総文化部に入部することになった雪乃は今後どうなっていくのかな?
気になってくれる人いるかな?
いるなら言いたい。
ちょっと待ってて。