やっと原作の展開が来たね。待たせたんならごめんね。
まあいいや。長話はそれこそ毒だ。
あと、原作オリカを出しますので。
んじゃ行ってらっしゃい。
視点:梓
「はあ……はあ……」
「……くっ」
私の前で、キザンが顔を歪ませている。
鎧を着ていますが、その手に刀は無い。
当然です。彼の刀は、彼の遥か後ろの地面に突き刺さっているのだから。そして、そんな丸腰のキザンに対し、私は刀を突き付けている。
「私の……勝ち……ですね……」
「……ああ」
もっとも、息はとうに上がり、足は震え、刀が大変重く、もはや体中がだるい。正直、あと一撃でも受ければ簡単に倒されてしまうでしょう。
しかし、それでも、
「大会前に、間に合いました……」
「……まさか、本当にやってのけるとは」
フォーチュンカップの開催は明日。デッキは完成している。後の思い残しは、キザンに勝つこと。
そして……
「く、うぅ……」
さすがに体力の限界が訪れ、ひざを着いてしまった。
「はあ……はあ……これで、あと、一人……」
呟きながら、その一人を見た時、いつも寝ていた彼は目を覚まし、刀を手に取りました。
「まだやれるよな?」
「当然……」
返事をしながら、どうにか立ち上がりました。
「ちょっと、待って! さすがにもう限界だよ!」
「やめて下さい梓! 今彼と本気でやりあったら、大会どころでは無くなります!」
シナイとミズホが制止しますが、
「止めても無駄です……私は、一度も彼とは刃を交えていない……そんな状態で、彼を従える資格など、ありません……」
「……なるほどな。ずっと私を決闘で使ってくれなかった本当の理由はそれか」
「はい……だから、どうしても……大会前に……あなたに辿り着きたかった……あなたは強い……だからせめて……私があなたへ届いた時でなければ……あなたと戦う資格など……持つことはできないから……」
「そうか。そう思うなら、さっさと来な」
「鎧は、着ないのですか?」
「このままで十分だ」
「舐められた物だ……」
返事を言い切らないうちに、踏み込みを入れました。そして、一気に彼の目の前へ、そして刃を振り下ろす!
ガキッ!
当然受け止められます。彼がこの程度で終わるはずが無い。先程の言葉もハッタリでないことは、今の一撃でよく分かりました。
「はぁああああ!!」
ガキガキガキガキガキ……
大声を上げながら、間髪入れず斬撃を加える。しかし、彼はそれを全て受け止めてしまう。
「うぉおおおお!!」
ガキガキガキガキガキガキガキガキガキ……
更に速度を上げる。だがやはり、全てを受け切られる……
「すっげぇ。まだあんな体力が残ってたのかよ」
「……体力だけの問題では無いだろうな」
「ああ。奴と戦えることが、梓の中で力となっている」
「さすが僕らの主、てことかな?」
「しかし、あれだけの攻撃全てを受けている彼も、さすがと言うべきですね」
「あぁあぁああああ!!」
ガキガキガキガキガキガキガキガキガキガキガキガキ……
「ふふふ……」
くっ! どれだけ攻撃しても、全く当たる気がしない。
「何で当たらないか教えてやろうか?」
「は……?」
声を出した直後、足を掛けられ、派手に転んでしまった。
「お前は速さはあるが、腕力が無いんだよ」
「腕、力……?」
「ああ。今までの五人には、腕力が無い分速さを鍛えて、手数を増やしてどうにか戦えてた」
五人を見ながらそう言った。
……自覚はしていました。私は生まれつき、女性並みの筋力しか持ち合わせていない。そのために、今までの武道も、力に頼る必要の無い技術を身に付け、人よりもより早く動くこと。それしか無かった。
だから……今更そんなこと、言われるまでもありません。
「なら、その腕力を凌ぐだけの、速さと技を……」
「お前じゃ今が限界だ」
「なら、その限界を、超えれば良いだけのこと……」
そう。それだけです。
「限界など、今まで、何度も感じてきた……そして、その度に、それを、乗り越えた……だから、今回もそうするだけのこと!」
「……よく言った。それでこそ、私達の主だ」
「違う。それが主なのです」
「……ふ、そうだな。じゃあせっかくだ。私が一つ、特別に教えてやるよ」
「教える?」
聞き返した時、刀をかざし、構えました。
「え!? いや、ちょっと……」
「まさか、あれをやる気か!?」
「よせ! 梓を殺す気か!?」
「心配するな。梓なら、死にはしないだろう」
「何を……」
「踏ん張れよ! 覚悟しないと本当に死んじまうぞ!」
やけに興奮した様子で叫んできました。
「……!!」
その直後、ただならぬ力を感じました。尋常ではない圧力が私を襲う。
「ぐ……!」
しかし、逃げてはならない。ようやく見られるのです。彼の本気を。
「死ぬんじゃねーぞ!! 梓!!」
「ぬぅ!!」
……
…………
………………
……
「……も……」
……
「……い……もと……」
……
「……えもと……」
……うぅ……
「家元!」
目を擦り、眠く重たい体を持ち上げた時、体中が痛んだ。
「うぅ……」
「家元! 大丈夫ですか!?」
「はい……」
大谷さんに返事をした時、汗と土の臭いが鼻を突きました。どうやら、お風呂にも入らないまま、あのまま眠ってしまったようです。
「今は何時ですか?」
「もうすぐ朝の六時です」
「そうですか」
よかった。大会までにはまだまだ余裕があります。
「まずはお風呂に入ります。すみませんが、布団を干しておいて頂けますか?」
大谷さんが頷いたのを見て立ち上がり、お風呂へ歩きます。
シャワーを浴びながら、私は考えていた。
昨夜のあれは、私を襲った彼の斬撃と衝撃は、全て夢だったのか?
……いや、体の節々に残る痛みが、そして、この胸に残る緊張と恐怖が、間違い無く現実であったと教えている。
「……そうだ。私はようやく、彼に辿り着いたんだ」
これでやっと、あなたと戦う権利を得ることができた。私はやっと、あなたの主へと上り詰めることができた。
「……辿り着くだけでは終わらない。私は必ず、あなたを超える!!」
……
…………
………………
視点:外
ドン!
ドンドン!
『エブリバディリッスン!! いよいよ!! デュエル・オブ・フォーチュンカップ!! 遂に開幕!!』
『わぁああああああああああああああああああ!!』
MCの声と同時に起こる大歓声。血気と興奮、上気と激昂、それらの言葉が相応しい、熱気に包まれた大空間。
その熱気に彩られた視線は、一様に一点に集中されている。その熱気を盛り上げるMC、そして、そのMCの前に広がる空間に。
キイイイイィィィィィィィィィィィィィィ……
『現れたのは、『レッド・デーモンズ・ドラゴン』だー!! そしてこのホイール音は!?』
轟音と蒸気の発生と共に、彼は現れた。
世界に類を見ないリング状のD・ホイール、そこに
何より、それらとは対照的だが、だからこそその存在を際立たせる禍々しい赤と黒。
キングの象徴、『レッド・デーモンズ・ドラゴン』。
「キングは一人、この俺だ!! 俺と決闘するのは誰だ!」
その一言が、より一層、歓声を大きくした。
日本の中心都市、ネオドミノシティ。
世界中を熱狂させる物、決闘モンスターズ。
その決闘モンスターズの頂点に君臨する男、それが『ジャック・アトラス』という男。
それらの要素が一つになったことで、彼らの熱気の向上もまた必然だった。
『キングとのドリームマッチを賭けて、幸運のチケットを手に入れた決闘者達よ! いざここに!』
その言葉と同時に、MCの前の空間の床が開く。そして、そこから床がせり上がってきた。そこに立つのは八人の決闘者。MCの言った通り、この式典のために世界中から選ばれた、八人の精鋭決闘者。
それぞれが様々な表情を浮かばせる。
静かだが、確かな闘士を浮かばせる青年もいれば、興奮に笑みを浮かべる子供、そして、一切感情のうかがえない少女。
そしてそれは表情に限らず、服装に現れる者もいる。
これから戦いに出陣しようとする者が放つ鎧の輝き。一切の表情と姿を隠してしまうフード。そして、同じく一切の表情を隠す、面。
目の前の画面にそれぞれの顔が順に映される。だが、最後の一人の顔が映された時だった。
「お、おい、マーカー付きがいるぞ」
「お、ほんとだ」
「あんな奴を選ぶくらいなら、俺らを選んで欲しいよな」
「誰かの招待状、盗んできたんだろう」
そして広がる、冷たい空気と吹聴。あからさまな野次や非難こそ起きない物の、もはや誰も、目の前の光景を楽しもうとする者はいない。だが、それも当然と言えた。
『マーカー』。顔に刻印される黄色のライン。
それは、その人間が犯罪者とみなされた証。社会不適合者として、シティへの居住権を破棄された者の証。それは、イコール差別の対象。ゆえに、普通にシティやトップスで生きていた人間からすれば、最下級区域である『サテライト』の人間と同じほどの不快を示す証に存在に他ならない。
「ゆ、遊星……」
「気にするな……」
そして、空気と吹聴にも、八人共に表情は違った。観客にか青年にか、いずれにせよ分かり易い不快感を露わに、もしくは変わらず無表情に、ただ一人の子供は恐怖を浮かべながらあたふたとし、非難を浴びている張本人は、何も気にせず子供に話し掛けている。
そしてそんな中、一人の男が動いた。八人の中で最も体格の良い、長髪の男。彼はMCからマイクを奪い、前に立った。
『お集まりの諸君!』
その声と同時に、全員が無言となり、注目がまた一点に集中する。
『私の名はボマー。ここに立つ決闘者として、諸君が一体何を見ているのか問いたい』
『この男は我々と同じ条件で選ばれた、紛れもない決闘者だ。カードを持てば、マーカーがあろうが無かろうが皆同じだ。この場に立っていることに、何ら恥じる物は無い。むしろ下らぬ色眼鏡で彼を見る諸君の言葉は、暴力に他ならない!』
それだけ語ったところで、マイクをMCに返した。
パチパチ……
直後、一人の男が手を叩く。ネオドミノシティの安全を守る治安維持局。その長官『レクス・ゴドウィン』。街で最も上の地位に立つ男が拍手をした時、それに釣られるように他の人間も拍手をした。それに気を良くし、MCも笑顔になり拍手を送った。
その後でゴドウィンも立ち上がり、口を開いた。
『……決闘者は、身分も貧富の差も関係ありません。真の平等がここにあるのです』
彼の語った話しに対し、また歓声と拍手。
手の平返しとは正にこのことだろう。結局のところ、彼らはその理由がプラスであれマイナスであれ、盛り上がるきっかけさえあればそれに乗り、盛り上がることで楽しむ人間達。人が傷つこうとも、そうすることで愉悦を感じ、一時の喜びを得る。それが、見ていることしかできない人間の残酷さだった。
(不快な場所だ……)
……
…………
………………
「不快な場所だ」
開会式、第二試合の『十六夜アキ』と『ジル・ド・ランスボウ』、そして直前に行われた『不動遊星』と『死羅』の決闘。それらを思いながら、漏らした一言。
『まあ、観衆ってもんは大体あんなもんだ。理由はどうでも良い。とにかく盛り上がりに来てるんだよ』
「誰かを傷つけることになってもですか?」
『そう。むしろ、傷つけることで楽しんでいると言っても良い。大体の人間は、自分よりも下の人間の存在に心地良さを感じる。そして人にもよるけど、そういう人達を傷つけることを楽しいって思うのさ』
「……分かりたくもないのに、身に覚えがあり過ぎるのが余計に腹立たしい。どんな人間であれ、自分が傷つく行為が、相手をも傷つけてしまうということなど分かっているずなのに……」
『身に覚えがあるのですか? あなたにも?』
「ええ。私もずっとそうでした。傷つけられ、蔑まれることが日常でした。そしてそれに慣れてしまった。私になら、今更何を言われようとも構わない。なのに、それが他人なら、こんなにも腹立たしいのか……」
『それが普通の反応だ。非難されれば程度はあれ心は傷つく。だが非難を浴びていた、『不動遊星』だったか。彼も同じだったのだろう。慣れてしまって、今更苦痛にも感じなかったのだろうな。そしてお前は、人一倍優しい。傷つく痛みを誰よりも知っている。他人の痛みを自分の痛みとして感じることができる。だが現実は、そんな人間は少ない』
「そんな物は感じたくもない。人が傷つく所など見たくもない。誰もがそう思えば必然的に無くなるはずなのに、私以外の人間は、そう思わないのか……」
『……誰でもそう思っている。だが、あれが本音だ。ずっと優しくはいられない。自分が周りに優しくなるために、誰しもが誰かを傷つけてしまう。そして、それが大勢の人間に嫌われている人間なら、必然的に自分も傷つける』
「何という皮肉か……いや違う、私もそうだ。私が今の地位に立ったことで、私を蔑んだ人達は傷ついていた。私は、目の前の人達や、より大切な人達ばかりを見て、彼らの本音を見ようとはしていなかった……」
『……』
「……腹立たしい……先程までの人々の行為が……そうすることでしか満たされない人々の心が……そして、それを無意識に行っていた私自身が、何もかも腹立たしい……」
『……』
『んじゃ、そいつを決闘で解消しちまえよ』
「……決闘で?」
『ああ。決闘は常に、勝つか負けるかのどちらかだ。負けた方は傷つくが、誰だってそれを覚悟の上で戦っている。お前が、自分や周りを許せないって言うのなら、その思いを決闘でぶつけるのも、悪くはないんじゃないか?』
「……ええ。そうですね。いずれにせよ、今日があなたの初陣となる日。このぶつけようのない激情を、あなたに託すのも悪くはない」
『決まりだな』
『一回戦最終試合、対戦者はステージへ!!』
そのMCの声と同時に、彼は面を着け、立ち上がった。
『怒りと悲しみに満ちた顔。まさに、今のあいつにはピッタリだな』
……
…………
………………
『一回戦最終試合! 対戦者はー!!』
開会の時と同じ、彼の前の決闘リング、その左右にある決闘者の立ち位置、その床は、地下から昇るようになっている。
そして、その床から現れた、二つの影。
『カードによって、人の思いと感情を読み取る、決闘カウンセラー! 『プロフェッサー・フランク』!!』
『対するは、経歴は一切不明! しかしその強さは折り紙つき! 謎の仮面決闘者! 『
「何だあいつ!」
「うわぁ、何だよあのお面……」
「悪趣味ねぇ……」
『サテライトの流れ星』や『黒薔薇の魔女』の存在からその存在感は薄くなっていたが、『静花』と呼ばれた決闘者の存在もまた、観衆達には不快感を与えていた。
紫の着物を着ている。それ自体は普通のこと。問題は服装ではなかった。
先程も言ったように、決闘者の気概はその服装にも表れる。そして、その気概を敢えて隠すための格好をする者もいる。そして、静花もそれを隠すためか、MCの紹介した通り仮面を着けていた。
だがその仮面が問題だった。
白く、悲しみに歪み、角を生やした女性。
知識の無い者には、しばしば単なる『鬼』と呼ばれるだけの、『般若』の面。それは、見慣れない人間にとっては不快感しか催さない様相だった。
「なぜそのような面を被っているのか、それは分かりませんが、この決闘で、あなたの深層意識に隠された、本当のあなたを見つけましょう」
「……私は、この決闘を楽しむことはできない。あなたには申し訳ありませんが、すぐに終わらせて頂く」
「ほぉ……」
『それでは、始めて貰おう! 決闘、スタート!!』
『決闘』
フランク
LP:4000
手札:5枚
場:無し
静花
LP:4000
手札:5枚
場:無し
「私のターン、ドロー」
フランク
手札:5→6
「私は『
『R⇔Lロールシャッハー』
レベル3
守備力1200
「『ロールシャッハテスト』というのはご存知ですね。この
「……」
「……まあ良いでしょう。カードを二枚伏せ、ターンエンド」
フランク
LP:4000
手札:3枚
場:モンスター
『R⇔Lロールシャッハー』守備力1200
魔法・罠
セット
セット
「……私のターン、ドロー」
静花
手札:5→6
「……速攻魔法『サイクロン』を発動。対象は左のカード」
「ならば、破壊前に発動。『深層へと導く光』。相手はデッキの上からカードを五枚墓地へ送り、六枚目のカードをお互いに確認して手札に加える。そして、そのカードをプレイしなかった時、2000ポイントのダメージをあなたは受ける」
「さあ、カードを……一枚……二枚……三枚……四枚……五枚……六枚目は……」
「……永続魔法『紫炎の道場』。このまま発動させます」
静花のカードの発動と共に、フィールドは巨大な道場へと姿を変える。
「永続魔法『紫炎の道場』は、フィールドに『六武衆』と名の付くモンスターが召喚、特殊召喚される度、そのカードに『武士道カウンター』を一つ乗せる。そして、そのカードを墓地へ送ることで、乗っている武士道カウンターの数以下のレベルを持つ『六武衆』または『紫炎』と名の付くモンスターをデッキより特殊召喚できる。まさに、武将達のための試練場。互いに仲間を呼び合い、助け合い、力を引き出し合う真剣勝負の場」
「……手札より、『真六武衆-カゲキ』を召喚」
『真六武衆-カゲキ』
レベル3
攻撃力200
『紫炎の道場』
武士道カウンター:0→1
「攻撃力200。そんなモンスターで何を……」
「このカードが召喚に成功した時、手札の六武衆と名の付くモンスター一体を特殊召喚できる。『真六武衆-エニシ』を特殊召喚」
『真六武衆-エニシ』
レベル4
攻撃力1700
「更に、カゲキは同名カード以外の六武衆が場にいる時、攻撃力を1500ポイント上昇させます」
『真六武衆-カゲキ』
攻撃力200+1500
『紫炎の道場』
武士道カウンター:1→2
「そしてこのカードは、フィールド上に同名カード以外の『六武衆』と名の付くモンスターがいる時、特殊召喚できる。『真六武衆-キザン』を特殊召喚」
『真六武衆-キザン』
レベル4
攻撃力1800
『紫炎の道場』
武士道カウンター:2→3
「エニシとキザンは、場に自身以外の六武衆が二体以上いる場合、攻撃力をそれぞれアップさせます。エニシは500ポイント、キザンは300ポイントです」
『真六武衆-エニシ』
攻撃力1700+500
『真六武衆-キザン』
攻撃力1800+300
「ここで、『紫炎の道場』の効果を発動。効果は先程あなたの言った通りだ。説明は不要ですね」
「一気に四体とは、恐ろしい展開力だ……」
「道場を墓地へ送り、デッキから、レベル2のチューナーモンスター『六武衆の影武者』を特殊召喚」
『六武衆の影武者』チューナー
レベル2
守備力1800
「チューナー!? まさか、シンクロ召喚を!?」
「……参ります!」
顔を上げ、声を上げた静花の顔は見えない物の、その声は間違い無く、これまで以上の興奮が表れていた。
(行きますよ)
(『やっと出番か。ずっと待ってたぜ。この時を』)
(……ええ。私もです)
「レベル3の『真六武衆-カゲキ』に、レベル2の『六武衆の影武者』をチューニング!」
宣言された二体のモンスターが宙へ飛ぶ。そして、カゲキは光と化し、影武者は光の輪となり、光のカゲキを包んだ。
「
「シンクロ召喚!
静花の声と同時に、周囲は炎に包まれる。そして、その中から現れたのは、その炎よりも真っ赤に光る、深紅の鎧。
『真六武衆-シエン』
レベル5
攻撃力2500
「これが、あなたのエースモンスター……」
「さあ、バトルです! 『真六武衆-エニシ』、……私には、般若の顔に見えている、『R⇔Lロールシャッハー』を攻撃! 斬光閃!」
「ぐぅ!」
「続いて、『真六武衆-キザン』でダイレクトアタック! 漆凱の剣勢!」
「ぐぁあ!」
フランク
LP:4000→1900
「これで最後です。『真六武衆-シエン』、ダイレクトアタック!」
「まだだ! 永続罠『ゲシュタルト・トラップ』! このカードは相手モンスターの装備カードとなり、効果を無効化し攻守を0とする!」
発動と同時に現れた鉄の枷。それが、シエン目掛けて飛んでいく。
「ならば、シエンの効果を発動!」
静花が叫ぶと同時に、『ゲシュタルト・トラップ』の枷が破壊された。
「な! これは!?」
「『真六武衆-シエン』は一ターンに一度、相手の発動した魔法・罠の効果を無効にし、破壊する効果を持ちます」
「まさか、そんな効果が……」
「攻撃を続行! 『真六武衆-シエン』! 紫流獄炎斬!!」
「ぐぁああああああああああ!!」
フランク
LP:1900→0
「これほど虚しい勝利も無い……」
静花はそう呟くと、残り一枚の手札をデッキに納めた。
「な、あの動き!」
「どうしたの? 氷室のおっちゃん」
「六武衆デッキに、今のあいつの動き……間違いねえ。俺が最後に地下で決闘をした決闘者、『サイレントフラワー』」
「今の動き!」
「ああ、俺も見たことがある!」
「間違いない。あいつは、最近の非公式大会を荒らし回ってる……」
「サイレントフラワー」
「サイレントフラワー!?」
「サイレントフラワーだ!!」
「奴が表舞台に出てきたんだ!!」
「シンクロモンスターを連れて、表の世界に登ってきやがったー!!」
一気に彼の存在が、会場中に知れ渡った。
「フフフフ……まさか、あなたが噂のサイレントフラワーだったとは……」
ひざを着いていたフランクは立ち上がり、静花に向かって話し掛けた。
「……このテストは、あなたが意識の底で恐れている物を露わにするためのもの……あなたが恐れたのは、今付けている面と同じ、般若の面。怒り、悲しみ、憎悪……そのいずれか、またはそれら全て。いずれにしろ、あなたは恐れている。そんな、人ならば誰もが持っている負の感情、それに苛まれることを……」
フランクの言葉を聞いた後で、静花は決闘場を後にした。
視点:梓
誰もいない場所で、般若の面を外す。
非公式大会にも関わらず、既にあれだけの人間に知られていたのは予想外でした。これで、『サイレントフラワー』の存在は完全に表に出てしまいましたね。もっとも、さすがに素顔までは知られていないようで安心しましたが。
しかし、プロフェッサー・フランクの語った言葉……
(「あなたは恐れている。そんな、人ならば誰もが持っている負の感情、それに苛まれることを……」)
「……くっ!」
……そうだ。私は怖い。
怒りが、悲しみが、憎悪が……
そんな物に、私の心と感情が支配されてしまうこと。私には、そのようなことがあってはならないのに……
『よう、梓』
突然、後ろからシエンの声が聞こえました。振り返ると、そこにはいつもの着物を着た、シエンら真六武衆達。
『どうだった? 私の初陣は』
「……あなたの戦いが、良くないはずがありません。ここまで来るのに、大変な時間を要してしまったことを、改めてお詫びしたい」
『気にするなよ。久々に戦えて、それに、お前の役に立てて、嬉しかったぜ』
「……そうですか」
返事をした後も、私の気分は優れない。何度も彼の言葉が、私の中で繰り返される。
「……すみません」
『ん?』
決闘を終えた後になって気付いた。私のしてしまったこと。その意味を。
「……怒り、憎しみ、そんな物を感じてはならないと、いつも自分に言い聞かせているのに、私は結局、その感情を抑えることができなかった。シエンの言葉に従い、激情をぶつけてしまった。本来なら、そんなことはしないと、あなたに言わねばならないはずだったのに……」
『……』
「誤解はしないで下さい。シエンは何も悪くは無い。そうすると、決めたのは私なのだから。怒り、憎しみなど、真に人を思いやれていないから感じる物だ。それを感じるなど、私が人を思いやれていない証拠だ。そう自分に言い聞かせ、耐えてきたのに……」
「私は怖い。あの人の言った通りだ。そんな、負の感情を持つことが、そんな負の感情に苛まれる自分が……」
どうして怒りなど覚える……どうして人を憎める……どうしてそんなことに悲しむ……どうして私は、こんなに……
ポン
その時、私の肩に、手を置かれる感触が。
「お前、凄いな。」
「シエン……実体化できたのですか!?」
私の部屋以外で……?
『俺達の中ではシエンだけだ』
そう、カゲキが説明した。
「あのな、梓。誰かに怒ったり、誰かを憎んだり、そんな感情、誰だって感じる物なんだぜ。俺だって、最初梓に感じてたんだ」
「……私にですか?」
「ああ。他の五人が戦ってるの見て、私も戦いたかった。お前は然るべき舞台で私を使いたいって言ってたけど、正直理解できなかったし、どうでも良いから戦わせろって思った。それでも使ってくれなくて、結構傷ついてたんだぜ」
「あ……」
どうして気付かなかった?
彼は武将だ。なら、それが戦えないということが、どういう意味を持つのか、それを、なぜ気付かなかった?
「シエン……」
「おっと、謝らなくていい。もう怒ってないからな」
「……どうして?」
「毎日お前が仕事や修行で頑張る姿を見て、そんなバカな考えも無くなったんだ。何より、私を使わなかった本当の理由も聞いたしな」
「……」
「そういうもんだ。私だって、お前を憎いって思ったんだ。けどそれは、お前とは違って、自分にとって都合が悪かったからだ。けどお前は、自分のことじゃ絶対に怒らない。さっきも言ってたけど、慣れちまったらしいからな。なのに、あの二人への観衆の態度には激怒した。初めてだったんだろう? 自分以外の誰かが傷つくのを見るの」
「……」
ええ。その通りです。
毎日自分ばかりを傷つけられ、始めこそどうして私ばかりがこんな目に、そう思い、多くの物を憎みました。
しかし、それに慣れてしまい、感じなくなった。こんなこと、私以外の人間にあってはならない。だからせめて、私だけは多くの人々への思いやりを、そう考え、怒りも、憎しみも捨てた。
しかし、捨てたのは、いや、捨てることができたのは、自分に対してのそれだけ。
「皮肉な話ですね。誰かのことを思いやると言っておきながら、他人が苦痛に耐える姿を見たことが無い。見たことが無いから、初めて見た瞬間不快に感じた」
まったく。どこまで私と言う男は……
「最低だ。何が人を思いやるだ。初めからそんなこと、できるはずが無かったのに……」
自分の苦痛ばかりを見て、他人の苦痛を知らずに、何をバカげたことを……
「そんな純粋なお前だからこそ、私達はお前に仕えたいって思ったんだぜ」
シエンの声が聞こえました。顔を見ると、笑っていた。後ろにいる五人も、笑っている。
「誰かを思いやることができない? バカ言うなよ。お前ほど誰かを思いやれる人間はいねーよ」
「……なぜ、そう言えるのです?」
「例えばさ、さっきの話。お前は五人に勝って、私と戦えるようになるまで、自分には俺を使う権利は無い。そう思ったって言ったよな」
「それは……私の勝手な都合です」
「勝手でも何でも、お前はそうやって、必死で私を目指してくれた。それは、私に相応しい人間になりたいって、私のことを思いやってくれたからだろう?」
「……」
「それだけじゃない。お前が決闘をしたキッカケは、親父さんに喜ばせたかったから。本当はそんなこと関係無く決闘をしたくてたまらない。なのに、自分以外の人達のためにずっと我慢した。けど、親父さんと決闘者になるって、その姿を見せてやるって約束して、やっと決闘に手を伸ばせた。全部自分じゃなくて、誰かのためにやってる。他人を思いやれない人間が、そんなことできるかよ」
「……」
「お前はいつだってそうだ。自分のためじゃない。いつだって誰かのために戦ってる。人にはとても優しく、自分には最高に厳しくいられる。そんなお前だから、私達は仕えたくなって姿を現したんだ。お前を、守りたいって思ったから」
「……」
「お前が、怒ることに否定的なのはよく分かった。怒ることが怖いって思うのも分かった。けどな、怒ることだって大切なんだ。それが他人のためだって言うのならなお更だ。お前は今までずっと、人に優しくいられた分、もっと怒ったって
「シエン……」
「それでも怖いって思うなら、私達がそばにいてやる。誰かのために戦いたいのなら、私達が力を貸してやる。お前は私達の主なんだ。だから胸を張れ。どんな理由であれ私達を頼れ。どんな時だって、私達が支えてやる」
「……」
言葉が出なかった。
嬉しかった。
否定することしかできなかった、否定されることしか知らなかった私を、この人達は、正面から肯定してくれた。そして私を、主だと言ってくれた。自分達を頼れと、言って下さった。
今この瞬間、私はようやく、あなた達の主となれた。
ようやく、あなた達と戦う、本当の権利を得ることができた。
あなた達と共に立つ、資格を得ることができたのですね。
嬉しくて、思わず目の前の、シエンに抱き付いてしまった。また年甲斐も無く、誰かに甘えたい、そう感じてしまった。
「……私と共に……これからも共に……戦って、くれますか?」
「ああ、任せろ。これからも、一緒に戦っていこうぜ」
シエンの言葉を聞いた直後、触れることはできませんが、カゲキ、シナイ、ミズホ、エニシ、キザン、五人の温もりも感じた。
精霊に触れたのは初めてですが、こんなにも暖かかったのですね。
あなた方が共にいれば、私は何も怖くない。
共に行きましょう。今はまだ形すら見えぬ、しかし確かに存在する、私達の目指すべき場所へ。
お疲れ~。
シエンのシンクロ口上、考えるのかなり苦労したんだが、どうかな?
ひょっとしたら今後ちょっとずつ変化するかも分からないけど、まあ気にするな。
ほなオリカ。
『L⇔Rロールシャッハー』
光属性 レベル3
魔法使い族
攻撃力1200 守備力1200
このカードが相手モンスターを戦闘破壊した時、相手のデッキの一番上のカードをめくり、お互いに確認する。
その後、めくったカードをデッキの一番上に戻す。
微妙としか言えん。攻撃力低いし、めくっただけでそれをどうこう
出来るわけでも無いし。
使い道としては『徴兵令』とのコンボくらいかな。だとしても打点
が低すぎるわ。
『真相へと導く光』
通常罠
相手はデッキからカードを5枚墓地へ送る。
その後、相手はカードを1枚めくり、お互い確認した後で手札に加える。
相手にもよるけど、相手を喜ばせる結果にしかならないと思うのは大海だけか?
墓地を五枚肥やす上に一ドローですよ奥さん。
詳しくは言えんが、ぶっちゃけ大海のデッキに使われたらウハウハだよ。
『ゲシュタルト・トラップ』
通常罠
このカードは装備カードとなり、相手モンスターに装備する。
装備モンスターは攻撃力、守備力が0となり、効果は無効化される。
一応、『デモンズ・チェーン』の上位互換と呼べるのかな。
攻撃力0に出来るから今回も相手がシエンじゃなきゃ迎撃できてたことだし。かなり便利と言ってもいいと思う。
こんなもんか。んじゃ、次もなるだけ早く上げれるよう頑張るよ。
それまで待っててね。