五話目の完結編で~すよ~。
ほんじゃら、行ってらっしゃい。
視点:ハイトマン
昔、あまりに幼すぎて、歩くことはできても、正確な言葉の発音はままならない、それほどまでに幼い頃、私には、父と母、歳の近い姉、そして、だいぶ都市の離れた兄がいた。
あまりにも昔過ぎて記憶は曖昧なものだったが、幼いながらに家族を愛し、特に、兄に対しては、姉と共に誰よりも強い敬愛の情を向けていた。
だが、そのことを思い出したのは、私が十代の半ばに差し掛かった頃。
私の育ての親は、海岸まで流されて、かろうじて生きていた私を助けてくれた。幼かったゆえか、はたまた海に投げ出されたショックか、いずれにせよ、その時私には、ほとんど記憶が残っていなかった。そんな私に、二人は新たな名前を与え、子供がいなかったことからそのまま引き取ってくれたらしい。
育ての両親は二人とも優しく、養子などという事実とは関係なく、私に息子としての愛情を注ぎ、育ててくれた。
そんな私が決闘モンスターズに出会ったのは、十二歳の誕生日。
それまで興味はあったが、両親への遠慮の気持ちから手を伸ばすことはずっと
それからは、決闘モンスターズの魅力に取りつかれ、近所の友人達との決闘はもちろん、住んでいた町で開かれる大会にも出場し、その実力を伸ばしていった。
だが同時に、決闘を繰り返していくうち、幼いころに失っていたはずの記憶が、少しずつ顔を出すようになっていた。
どこか大きな部屋の、丸いテーブルを家族で囲み、向かい合う家族。そして、その中の一人、一番上の兄に、姉と共にプレゼントを渡し、兄は大喜びしてくれる。
そして、その直後、地面が大きく傾き、私達の繋いでいた手が離れ……
記憶はいつもそこで終わっていた。
ただ正直に言えば、幼い頃に失った過去など、とうにどうでもよくなっていた。決して興味が無いと言えば嘘にはなるが、私には、今の家族といる時間が大切なのだから、それ以前の、失う程度の記憶の事柄などどうでもいいと、過去とは決別をしていた。
私が十代の半ばに差し掛かった頃だった。
その日はたまたま地元の図書館を訪れていた。当然のことだが、図書館には、多くの様々な本と共に、昔の新聞や雑誌の記事を置いてある場所もある。
そんな場所を歩いていた時、偶然、当時から見て数年前の記事を見つけた。
豪華客船の沈没事故の記事。
それによって、死者、行方不明者が多く発生したことを報せる記事。
そして、その三年後、その事故で投げ出されながら、奇跡的に生還したという、一人の少年の記事。
その記事を見た瞬間、私の失われていた記憶が戻った。
私の家族。両親、姉と兄の存在、そして、私の本当の名を。
生き別れ、生きていたことが分かった家族。
会いたい。どうでも良いと断じていた記憶のはずなのに、心底そう感じるようになった。
それから調べたところ、彼は決して表の世界には現れない、裏の全米最強決闘者、『伝説のガーディアン使い』として名を馳せていたことを突き止めた。そしてやがて、裏の世界からも姿を消したこと。
だから、そんな存在を見つけ出すことは容易ではなかった。
ならばどうするか。その手段が、決闘だった。
決闘をし続けていれば、もしかしたら兄もまた自分の存在に気付いてくれるかもしれない。そして、またあの時のように、笑顔での再開を果たすことができるかもしれない。
そう考え、決闘をし続け、実力を身に付け、やがて、プロ決闘者となることができ……
そして遂に、兄と再会することができた。
兄は、死んでいた物と諦めていた家族の一人である私との再会を、心の底から喜んで下さった。
両親や姉という、他の家族の消息はついぞ分からなかったものの、それでも、お互いに再開の喜びを分かち合い、また、幼かった頃のような、家族の絆を取り戻すことができた。
その時、兄は命よりも大切なはずのデッキを、私に与えてくれた。
決して強力なデッキというわけではない。しかし、そのデッキを見ただけで、そのデッキに籠められた思い――愛情、情熱、執念、それらの感情、全てが理解できた。そんなものを頂くなどできないと最初は拒否したものの、兄は私に使って欲しい、それが、カード達の望みでもある。そう言って下さった。
だから、そのデッキを受け取り、そのデッキでの戦術を学び、このデッキと共に闘うことを決めた。
以来、私なりにも強化・改良したそのデッキを使い続け、それ以前よりも遥かに強くなった。
常勝無敗、というわけにはさすがにいかない。敗ける時ももちろんあった。しかし、私がカードを信じているように、カード達もまた、私のことを信頼し、答えてくれる。その感覚を肌で感じた。このデッキと共になら、どこまででも強くなれる。そう信じ、このデッキと共に、闘い続けてきたが……
……
…………
………………
「どうしたの?」
「……!」
いけまっせん。ついつい昔のことを……
「あなたのターンよ」
「分かっているでアリマス!」
ハイトマン
LP:1300
手札:1
場 :モンスター
『ガーディアン・グラール』攻撃力2500
『ガーディアン・エルマ』攻撃力1300+300
『ガーディアン・ケースト』攻撃力1000
『バックアップ・ガードナー』守備力2200+500
魔法・罠
永続魔法『守護神の宝札』
装備魔法『蝶の短剣-エルマ』
装備魔法『静寂のロッド-ケースト』
雪乃
LP:1100
手札:0
場 :モンスター
『氷結界の龍 グングニール』攻撃力2500
魔法・罠
セット
そう。あの頃と同じでアリマス。このデッキと共になら、どこまででも強くなれる。
今またもう一度、このデッキと共に……
スゥ……
(……! 何です? 今、あの人から、何か……)
「……?」
「どうしたの? アキさん?」
「今、教頭先生の背中から、白い、翼みたいなものが……」
「翼?」
「……いえ、何でもありません。(多分、気のせい、かしら……)」
「私のターン、ドロー!」
ハイトマン
手札:1→3
スゥ……
(……! また!)
(気のせいじゃない、あの人……)
(来てくれたでアリマスか。私の手に……)
「魔法カード『アームズ・ホール』。このターンの通常召喚を放棄する代わりに、デッキより装備魔法カードを一枚、手札に加えるでアリマス」
ハイトマン
手札:2→3
「装備魔法『女神の聖剣-エアトス』を、『バックアップ・ガードナー』に装備!」
『バックアップ・ガードナー』
攻撃力500+300
「そして、墓地にモンスターが存在しない時、このカードは、手札より特殊召喚できるでアリマス!」
(来る、あのデッキから感じた力の正体が……!)
「出でよ! 『ガーディアン・エアトス』!」
このデッキに眠る、最高のパートナーの名を叫び、カードをセットした時、彼女は、現れました。
民族衣装を思わせる装束に、白い翼を羽ばたかせながら、戦闘者としての力強さと、天女のような美しさを兼ね備えた、このデッキ最強のモンスター。
『ガーディアン・エアトス』
レベル8
攻撃力2500
「見ただけで分かる。それが、そのデッキのエースカード……」
「その通り。そして、『バックアップ・ガードナー』に装備された女神の聖剣を、『ガーディアン・エアトス』に移行!」
地面に突き刺さったその剣を、エアトスは引き抜き、構えました。
『ガーディアン・エアトス』
攻撃力2500+300
「このターンで決めるでアリマスよ。『ガーディアン・エアトス』の特殊効果! 装備された女神の聖剣を破壊することで、相手の墓地の上からモンスター以外のカードが出るまで、カードを除外するでアリマス。そして、除外されたモンスターの攻撃力の合計分、エアトスの攻撃力をアップさせるでアリマス。聖剣のソウル!」
「な、あ……」
エアトスが聖剣を頭上に掲げ、その切っ先が光り輝いた、その瞬間、彼女の左腕の決闘ディスクが、強制的に上へと持ち上げられる。
そこから、モンスターの魂が現れました。
『沼地の魔神王』
攻撃力500
『デブリ・ドラゴン』
攻撃力1000
その二つの魂が聖剣の周囲を回ります。その魂が、エアトスに力を与えるでアリマスよ。
『ガーディアン・エアトス』
攻撃力2500+500+1000
「攻撃力4000……」
「すげ……」
「この攻撃が通れば、雪乃の敗け……」
「行くでアリマス! 『ガーディアン・エアトス』で、『氷結界の龍 グングニール』を攻撃! フォビドゥン・ゴスペル!!」
エアトスが輝く聖剣を掲げ、グングニールに向かっていきました。
「まだよ! 罠発動『攻撃の無力化』!」
「む……!」
グングニールに向かった聖剣でアリマしたが、聖剣は見当違いな場所を切り裂き、そのまま砕けてしまったでアリマス。
「外しましたか……一枚カードを伏せて、ターンエンドでアリマス」
ハイトマン
LP:1300
手札:0
場 :モンスター
『ガーディアン・エアトス』攻撃力2500
『ガーディアン・グラール』攻撃力2500
『ガーディアン・エルマ』攻撃力1300+300
『ガーディアン・ケースト』攻撃力1000
『バックアップ・ガードナー』守備力2200+500
魔法・罠
永続魔法『守護神の宝札』
装備魔法『蝶の短剣-エルマ』
装備魔法『静寂のロッド-ケースト』
セット
雪乃
LP:1100
手札:0
場 :モンスター
『氷結界の龍 グングニール』攻撃力2500
魔法・罠
無し
このターン、グングニールを破壊できなかったのは痛かったでアリマスが、まだまだ余裕でアリマス。
私の墓地には、先程『アームズ・ホール』の効果でデッキから墓地に送られた、除外することで私のカードを対象とするモンスター効果を無効にする罠カード『スキル・プリズナー』、そして、この伏せカードが存在するであります。
つまり、グングニールの効果でも、戦闘でも、あなたはこちらのモンスターを破壊することは不可能であるということでアリマス。
この状況で勝てるものなら、やってみるでアリマスよ!
「私のターン!」
雪乃
手札:0→1
「……来た」
「……!」
「行くわよ、ハイトマン教頭。私は魔法カード『
雪乃
手札:0→2
「その二枚を使い、私のモンスターを破壊する気でアリマスか?」
(無駄でアリマスよ……)
「いいえ。私は魔法カード『融合』を発動よ」
「な、この局面で、融合召喚ですと!?」
「手札の『E・HERO フォレストマン』と、場の水属性『氷結界の龍 グングニール』を、融合! 現れよ、氷結の英雄『E・HERO アブソルートZero』!」
「こ、これは……!」
『E・HERO アブソルートZero』融合
レベル8
攻撃力2500
「おー……」
「綺麗……」
「雪乃の、エースモンスター……」
「……」
……は!
いけまっせん! あまりに美しいモンスターに、つい心が奪われてしまったでアリマス! 集中せねば!
「アブソルートZeroの効果。このカードは、アブソルートZero以外の水属性モンスターが存在する時、一体につき500ポイント、攻撃力をアップさせる」
「何ですと!? わ、私の場の『ガーディアン・ケースト』は水属性、つまり、アブソルートZeroの攻撃力は……」
『E・HERO アブソルートZero』
攻撃力2500+500
エアトスを、超えられたでアリマス……!
「バトルよ。アブソルートZeroで、『ガーディアン・エアトス』を攻撃!
アブソルートZeroが、エアトスに向かってきました。
ですが!!
「リバースカードオープン! 速攻魔法『収縮』!」
「……!」
「モンスター一体の元々の攻撃力を、エンドフェイズまで半分にするでアリマス! 対象は、『E・HERO アブソルートZero』でアリマス!」
『E・HERO アブソルートZero』
攻撃力2500/2+500
「迎え撃つでアリマス! 『ガーディアン・エアトス』、精霊のオペラ!!」
向かってきたアブソルートZeroに対し、エアトスが、大きなソプラノボイスを発します。
その衝撃がアブソルートZeroとぶつかり、結果、アブソルートZeroは破壊されたでアリマス。
『ああ……』
「雪乃さんの、エースモンスターが……」
雪乃
LP:1100→350
「こぉんれぇでぇ、私の勝利は確定したのでアリマス。次のターン、私のガーディアン達が、あなたにとどめを刺すでアリマスよ!」
「……」
「声も出ないでアリマスか?」
「……(クス)」
「む?」
この期に及んで、まだ笑っていられるとは。
「ですが、その笑顔も、次の私のターンで……」
「終わらせることができるのかしら?」
「む?」
そう言葉を返したかと思ったら、俯かせていた顔を、こちらに向けました。
「気付いていないの? 今、あなたのフィールドに何が起きているか」
「何ですと……?」
「……っ!? な、なんでアリマスか!?」
彼女に言われてフィールドに目を戻した時、初めて気付いたでアリマス。
私のフィールドに、見るからに冷たい吹雪が発生していることに。
「アブソルートZeroのモンスター効果。このカードがフィールドを離れた時、相手の場のモンスター全てを破壊する」
「なぁ……!!」
「
彼女が叫んだ途端、私の前に並ぶガーディアン達が一人残らず凍り付き、そのまま、砕けてしまいました。
「そんな……」
「……ターンエンド」
雪乃
LP:350
手札:0
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
ハイトマン
LP:1300
手札:0
場 :モンスター
無し
魔法・罠
永続魔法『守護神の宝札』
「私の……ガーディアン達が……」
ガク
視点:外
体からは力が抜け、表情からは力が消える。
その場に崩れ落ち、両ひざを着く。顔を俯かせ、視線を地面に向け、動かない。
戦意喪失。誰もがそうだと見て分かる姿勢。それが、現在のハイトマン教頭の姿。
「教頭先生……?」
雪乃の呼び掛けにも、反応は無い。今、ハイトマンは何も見ていなかった。
「教頭先生……」
「ただ、モンスターが破壊されて墓地に行っただけじゃん」
「一体、なぜあそこまで……」
「また……」
「……?」
姿勢を変えないまま、そんな声を漏らした。
「また、守れなかったでアリマスか……」
「また?」
苦しげに、痛々しげに、悲しみの声を出しながら、吐露したのは、彼自身の過去。
「……かつて、プロ決闘者から、アカデミアの教員を目指そうと考えていた時、私は決闘を行いました。その決闘でも、私はモンスター達を必死に守ろうとしましたが、あまりに相手の力は圧倒的すぎて、結果は惨敗。それ以前にも敗北は何度も経験して参りましたが、モンスター達を全滅させたことだけは一度もありませんでした。このデッキのモンスター全てを墓地へ送ることとなったのは、その時の決闘と、この決闘だけ、でした……」
「……」
「その時の決闘を通して、分かってしまった。どれだけデッキを愛し、力を尽くそうとも、圧倒的な力の前では、守りたいものも守れない。成すすべなどない。本当に、大切なものを守りたいのなら、こちらもまた、相手を圧倒するだけの力を使う、それ以外に無い、と……」
「……」
その時、なぜか雪乃の脳裏には、見知らぬ光景が浮かんだ。
一面の雪、暗い空、空に巨大な陰、自分以外に人が二人――隣に一人、そして、腕の中に一人……
そこで光景は途切れ、ハイトマンに目を戻す。
「だから、低レベルのモンスターの力を否定して、高レベルモンスターで闘うデッキを使ったていたの?」
「……」
何も言わない。だが、その沈黙が、何よりの答え。
「呆れたわね」
未だ顔を俯かせる教頭に、雪乃が放ったのは、冷たい一言だった。
「たった一度、守れなかったからどうしたの? なぜそこまで墓地を恐れるのかは知らないけど、闘っている以上、全てを守りきるなんてこと、難しいに決まってるじゃない。そして、あなたはその難しいことを、その決闘と今日の決闘をするまでの、全ての決闘でこなしてきたというわけでしょう? 十分凄いじゃない」
「……一度でも守れなければ、過程など、意味が無いのでアリマス……」
「……ええ、そうかもしれないわね」
なぜだか、その言葉には雪乃も共感できた。
共感できたが、それでも伝える言葉は同じ。
「じゃあ聞くけど、あなたは一度の失敗で、そうやって投げ出すの?」
「……」
「必死に愛して、守ろうとして、今日まで守ってきて、そして、あなた自身を愛してくれた、そのカード達のこと、たった一度守れなかったから諦めるの?」
「……」
「あなたが忘れてるのはそれよ。あなた、そのデッキのこと、どんなふうに思って決闘してきたの?」
「それは……」
そして、雪乃自身が、もっとも言いたかった言葉。
「あなた、何のために、先生になろうと思ったのよ」
「……」
もう一度、ハイトマンは、デッキを見つめる。
最愛の兄に託されて以来、共に歩み、共に研鑽し合い、愛し、そして、愛してくれていると感じさせてくれた、己のデッキ。
そのデッキのことを、どう思っていたか。
(私は……このデッキのことを、信じていた……)
何のために、先生になろうと思ったか。
「……そうでアリマス、私は……」
声に出しながら、足に力を入れて、立ち上がっていく。
「私は……カードを信じ……共に闘い強くなる……そんな、決闘の素晴らしさを……子供達に、伝えるために……」
立ち上がり、もう一度、雪乃を見据えた。
「ドロー」
ハイトマン
手札:0→2
「……」
その二枚のカードを見て、口元に笑みを浮かばせた。
「今、分かりました。私はただ、敗北が怖かったのでアリマス。愛するデッキのモンスター達を墓地へ置き、結果敗北させてしまうのを恐れていたのでアリマス。だから、上級モンスターを使って、それで敗北したなら仕方がないと、自分をずっと、ごまかし続けて……」
それは、懺悔の言葉。今日までの決闘と、今日まで使うことなく死蔵させてきた、デッキのカード達への悔恨と、本音の言葉。だが同時に、強い覚悟と、力の籠もった決意の言葉。
「だから、もう、恐れません。私は、愛するカード達と共に歩み続けます。自分の決闘を、愛するカード達を信じて。決闘の素晴らしさを、未来の子供達に伝え行くために」
そして、手札のカードに指を掛ける。
「これが、その誓いでアリマス。速攻魔法『ご隠居の猛毒薬』」
「『ご隠居の猛毒薬』は、自分のライフを1200ポイント回復させるか、相手に800ポイントのダメージを与える効果のどちらかを選択して発動させるカード」
「これでダメージを与えられたら、雪乃は……」
「私は、1200ポイントのライフを回復するでアリマス」
ハイトマン
LP:1300→2500
「え、どうして今、回復なんか……」
「魔法カード『ソウル・チャージ』。墓地に眠るモンスターを、任意の枚数特殊召喚するでアリマス」
『ガーディアン・エアトス』
レベル8
攻撃力2500
『ガーディアン・グラール』
レベル5
攻撃力2500
『ガーディアン・エルマ』
レベル3
攻撃力1300
『ガーディアン・ケースト』
レベル4
攻撃力1000
『バックアップ・ガードナー』
レベル4
攻撃力500
「また五体のモンスターが……!!」
「いいえ」
アキが叫んだが、隣に座るマリアは、その懸念を否定した。
「『ソウル・チャージ』を発動したターン、バトルは行えない。そして、この効果で特殊召喚したモンスター一体につき、500ポイントのライフを支払う効果があるわ」
「え、それじゃあ……」
「これで、私の墓地にモンスターはいません。これで、良いのでアリマス……」
モンスター達を見つめながら、そう声を出した時、モンスター達もまた、ハイトマンを見ていた。
こちらを見るモンスター達の目に宿る物、それは、愛情、友情、信頼、絆の光。
誰も、彼のことを責める者はいない。彼のことを愛し、信じていた。
そして、そんな彼らの姿と共に、別の姿もまた見えた。
その人物もまた、モンスター達と同じように、自分を愛し、信じてくれた人。
――ジュリアン……
微笑みながら呼び掛けた、ルドルフ・ハイトマンの、本当の名前。
その声に、ハイトマンもまた、微笑んだ。長年、流すことを忘れていた、一筋の涙の輝きと共に。
ハイトマン
LP:2500→0
「藤原雪乃さん」
決闘が終わり、ハイトマンは、雪乃の名前を呼んだ。決闘中に見せたものと同じ、強い覚悟と力の籠もった決意の顔で。
「私を、殴って欲しいのでアリマス」
「殴る?」
「え、どうして?」
「決闘したら、殴られないんじゃなかったのか……?」
「私は今日まで間違っていましたが、本当に間違っていたことを、あなたのお陰で気付いたからでアリマス。だから、もう二度と同じ過ちを繰り返さないために、私を殴って欲しいのでアリマス」
「……分かったわ」
「ちょ、雪乃!!」
アキが身を乗り出し、呼び掛けたが、雪乃は既に、拳を振り上げていた。
「いくわよ」
「来るでアリマス!」
「……っ!」
ドカァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ……
「うお! 揺れた!」
「なに! 地震!?」
「すげえ音したぞ今!?」
「隕石か!?」
「ギネスパンチか!?」
「いや、Dr.ス○ンプじゃねえか!!」
「いや、そこまででもなくね?」
『(ポッカーン)……』
雪乃の放った一撃は、決闘場の床一面に、観客席まで伸びる巨大な亀裂を生じさせ、建物を、アカデミア全体を揺らし、見ていた者達を、その一撃で黙らせた。
「あ……あ……」
「これで勘弁してあげるわ」
ハイトマンではなく、足下に放たれた一撃。床を貫通した拳を取り出し、埃を払いながら、雪乃はもう一度、彼に言った。
「もう二度と、忘れないでね。今日思い出した、大切なことを」
「……はい……はい……はい……」
雪乃の一撃に呆然としながら、そう、何度も頷き、返事を返す。
その様を見て、雪乃は満足そうに微笑み、背中を向けて歩き出した。
「アキ、行くわよ」
「あ、はい、はい、すぐに行きます」
アキもまた、なぜか丁寧語で返しながら、客席を降りていった。
『……』
残されたマリアとスライは、未だに目を見開いていた。
「……力持ちなのね、雪乃さんて……」
「良いな……欲しいな……あんな腕力……」
「……」
そしてハイトマンは、腰が抜け、その場にへたり込んだ。
「……私は、あれほどの力で、殴られるところだったでアリマスか……」
……
…………
………………
視点:梓
これで良い。
これであの人は、本当の先生となることができた。
先生と呼ばれる人間である以上、忘れてはいけない。自分が一体、何を教えているのか。
仕事だと割り切るのは簡単だ。諦めてしまうのも簡単だ。
だけど、教えるからには、何を真に伝えなければならないか、それを、決して忘れてはならない。それができるよう指導することが先生の務めなら、その素晴らしさで生徒を救うことができるのもまた、先生の持てる数少ない、そして、最高の力なのだから。
私には満足に震えなかったそんな力だけど、彼ならきっと、生徒達のために振ってくれる。
大切なことを思い出した、ハイトマン教頭先生なら……
「次は、藤原雪乃さん」
「あ、はい」
と、先生に呼ばれたので、立ち上がります。立つべき場所へ歩いていき、隣の人と並んで立つ。
それにしても、この体操着というもの、今まで着てきた服の中で最も動き易いかも知れない。腕とひざ下を露出させるだけでこうも機動力が増すものなのか。
というわけで、私は現在、一日の授業の最後、六限目、体育の授業を行っております。
種目は、ハードル走。
やるのは初めてですが、事前にアキさんから、どうすればいいのかは聞いている。
-「要するに、目の前に並んでるハードルを飛び越えながら、ゴールまで走ればいいの」
-「……それだけですか?」
-「そう、それだけ」
することは分かりました。そして、先生の合図を待ちます。
「よーい……」
それにしても、先程から見ていましたが、なぜいちいち一つずつ跳び越えるのでしょう。
ピーッ
一度に跳べば済む物を。
「ふんっ!」
バッ
『なぁ!!』
何やら女子の皆さんの声が聞こえた気がしましたが、このままスタート地点から跳んで、全てのハードルを越えてしまいます。一つずつ走って跳ぶなど面倒なので。
跳びながら順調に、ハードルを全て越えていきます……
が、どうやら少し力が足りなかったようですね。真下に一つ、ハードルが……
視点:アキ
チーン……
あら? 今誰か、
『すごーい!!』
と、そんなことどうでもいいわね。
雪乃ったら、また目立つことして。ハードル走であんなゴールの仕方ないわよ。
全部のハードルを越えてのゴール。と言っても、一台は跳び損ねて思いっきり足の中心にぶつけてたけど。まあその後平然と走ってゴールしてたし、どうせ大したことはないんだろうけど。
梓にはまず、力の加減から教えるべきだったかしら? まあ、正直教えなきゃいけないことだとは思ってなかったけど。
と、そんなことを考えてる間に、雪乃は戻ってきた。そんな雪乃に、女子のみんなは賞賛の嵐を浴びせてる。
「雪乃さん凄い!!」
「あんなの見たことないよ! どうやったの!?」
まあ、確かに賞賛に値することではあるけど。
「……えエ、気ニシなイで、大シたコトじャなイワ……」
……あら? 何だか口調が変ね。おまけに、目が死んでる?
キーンコーン
と、そんな疑問を感じたところで、チャイムが鳴った。
その後全員でハードルを片付けて、教室に戻った。
……
…………
………………
「ちょっと雪乃、どうしたの? さっきから変よ」
隣を歩く雪乃にそう聞いてみる。
あの後、和総文化部に行くかと思っていたのに、死んだ目のまま廊下で出会った和総部の女子生徒に、体調が悪いから休む、そう伝えて、一緒に帰っていた。
「……えエ、きニシなイデ、タいシたコトじャなイワ……」
さっきから、同じ言葉しか言わない。しかもさっきより何だか、人形染みてるというか機械的というか何というか……
そんな疑問を感じてるうちに、遊星達の家に着いてしまった。
「おー、帰ったか」
「あ、あず……雪乃姉ちゃん」
「お帰りなさい」
遊星達三人と、龍亞と龍可もいるわ。
「タダイマ、もドリマしタ……」
「どうした? 顔色が悪いぞ」
「えエ、スコしだケ、たイちョウが、わルクナっテしまイマしテ……」
「口調もおかしい、大丈夫か?」
「ダイジョウブでス……」
そう、機械的な口調のまま三人返して、雪乃は階段を上り始めた。
「ショウしョウ、オヘやデひトリにしテクダさイ。ダレモなカニハイラナいよウ、オネがイしまス……」
「わ、分かった……」
そして、階段を上って、部屋に入っていった……
バタ
ガチャ
「お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛お゛お゛お゛お゛お゛オ゛オ゛オ゛オ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」
『!!』
「な、なに!?」
鍵を掛ける音がした瞬間、そんな、耳をつんざくような、何かに身悶えてるような、絶叫がこだました。
「お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛オ゛オ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛オ゛オ゛お゛オ゛オ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お” オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛オ゛オ゛オ゛お゛お゛お゛お゛!!」
「梓さん!!」
龍可が悲鳴を上げて、部屋まで行こうとした、けど、
「待て待て、梓は入ってくるなって言ったんだろう」
クロウがその手を引いて、静止した。
「けど……!」
「大体、鍵が閉まってるんだ。誰も入れねえよ」
「それは……」
「お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛オ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!」
「だとしても、これは異常だ」
「学校で何かあったの? ねえアキ姉ちゃん」
「何かって、言われても……」
何か……
「まさか……いえ、そんなまさか……」
「覚えがあるのか?」
「多分、違うとは思うけど……」
けど、他に心当たりは無いし、私は、今日体育であった出来事を、みんなに話すことにした。
「ということがあったのよ」
『……』
「お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」
「それは多分、関係ないわ」
段々静かになってきてる梓の絶叫がこだましてる中で、龍可がそう言った。
「そりゃあ、ハードルに向かって高い所から落ちてぶつかったら痛いだろうけど、あの梓先生に限って、こんなことになるなんて……」
私も思ったことを、龍可が言ってくれた。
「そうよね。あの梓が、そのくらいであんなふうになるなんて……前に、クロウと一緒に屋根の修理をしてた時、足を踏み外して腰から地面に落ちたのに、平気でバック転しながら立ち上がってたし」
「そうよ。ジャックが間違えてD・ホイールで轢いちゃった時も、無傷どころか余裕で歩いてたし」
「遊星がスイッチを切り忘れて漏電してたコードに触って感電した時も、服が焦げただけで本人はケロッとしてたし」
「何より、アキさんとの決闘で、サイコパワーを受けても無傷だったしね」
……それはあまり言わないで欲しいけど……
「それだけ丈夫な人が、そのくらいであんなふうになるなんて」
やっぱり、別の原因かしら……
『……』
「お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」
「ちょっと、遊星達はさっきからどうしたの?」
さっきから、男子四人はずっと目を閉じて、黙ってる。
「……そうか。梓がな」
「何も不思議なことは無い。梓もまた、男だったというだけのことだ」
「その痛みに耐えながら、ここまで歩いてきたんだな。梓……」
「うぅ、想像しただけで痛そう……」
何だか四人だけで話して、勝手に納得してる。
「ねえ、みんなには分かるの? どういうことなの?」
「……悪いけど、これは男にしか分からねえことなんだ」
龍可の必死な質問に、クロウがそう、冷たい言葉を返した。
「ちょっと! なによ、その時代遅れの男女差別。恥ずかしくないの?」
私も今の言葉には納得できない。反論しようと思った。
ポン
けど、怒って声を上げた龍可の肩に、龍亞が手を置いた。
「ごめん龍可。差別じゃなくて、こればっかりは、本当に男じゃなきゃ分からないんだよ……」
「龍亞まで何言ってるのよ!?」
また、怒った声を上げた。けど、
「女には、女にしか分からない悩みがある。それは分かるな?」
そう、遊星が話し掛けた。
「え? ええ、そりゃあ……」
「男もまた然りだ。男でなければ分からない、痛みと苦しみというものがある。どれだけ強く鍛え抜いても、耐えられないほどの痛みがある。それを、分かってくれ」
『……』
また、四人とも目を閉じて、俯いた。
ガチャ
「あ、梓さん!」
と、ドアが開いて、梓が階段を下りてきた。
そして、私達と一緒に、椅子に座った。その顔は、死んだ目は元に戻ってるけど、さっきよりもやつれてるように見える。
「……話は聞いた。災難だったな」
「ええ……ハードル走で、ハードルをわざわざ一つずつ越える理由がよく分かりました……」
「そうか……」
何だか、随分ずれた会話ね……
「……それで、大丈夫だったか? ぶつけたところは」
「ええ……ただ……」
「ただ?」
「あと、ほんの少し勢いが増していれば、半分本当の女になっていた……」
『……』
四人と一緒に、梓も目を閉じて、俯いてる。
結局、話しの内容が理解できない私と龍可は、そんな五人を黙って見つめてるしかなかった。
ちなみに、次の日学校へ行くと、決闘場の床に発生した大きな亀裂のことで大騒ぎになってたけど、その直前に発生した地震のせいだってことで、みんな納得して解決した。
もっとも、そんな地震の震源まで知ってるのは、発生当時の現場に居合わせた、私と、スライ、マリア先生、教頭先生、そして、あなたしかいないのだけど。
お疲れ~。
どうでもいいけど、実際は女性もぶつけるとかなり痛いそうです。
男性と違って、骨に直接来る痛みなんだそうで。脛をぶつけた時の痛みを想像してもらえたら分かり易いかな。
まあどっちのがより危険かは言わずもがなですけどね。
んで、今回オリカが無しで、原作効果のみ。
『女神の聖剣-エアトス』
装備魔法
装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。
効果はこれだけ。原作じゃエアトスに装備する以外何にもないです。
それならエアトスに単体で装備移行できるくらいの効果があっても良いと思うけどなぁ。贅沢かな?
『ガーディアン・エアトス』
効果モンスター
「女神の聖剣-エアトス」が自分のフィールド上に存在する時のみ、このカードは召喚・反転召喚・特殊召喚する事ができる。
墓地にモンスターがいない場合、このカードは生け贄無しで特殊召喚する事ができる。
このカードに装備された「女神の聖剣-エアトス」を破壊する。
相手の墓地のカードを上からモンスターカード以外のカードが出るまでモンスターカードを取り除く。
取り除いたモンスターカードの攻撃力の合計値をこのカードの攻撃力に加える。
装備魔法が無きゃ場にも出せないのは他のガーディアンと同じ。
そんで、呼んだ後わざわざまた聖剣を装備させなきゃ効果も使えない。
使い辛いなぁ。
『ソウル・チャージ』
通常魔法
ライフは失うのでなくコストに、そんでそのコストは500となっとります。
後は、バトルフェイズができなくなるのでなく、特殊召喚したモンスターがバトルできないという違いがありますが、細かい違いなので省略。
……デスサイスも出した方が良かったかいの?
とまあこんな感じで、次は六話目で会いましょや。
んじゃ、ちょっと待ってて。