そんじゃ、決闘決着回、いってみよー。
行ってらっしゃい。
視点:外
『雪乃さんだ!!』
彼女らの叫んだ通り、和総部のメンバーとは向かい側の客席に、雪乃はいた。
後ろにある壁を殴り、へこませ、亀裂を発生させている。
雪乃の本気に比べれば可愛らしい破壊の跡に、見ていた者達は、皆その顔を引きつらせた。
「まったく……野暮用が済んで急いで来てみたら、情けないわね……」
「……」
その発言で、サクラの表情が、なお更曇った。
ああ、自分は、昨日助けてくれた雪乃にまで、呆れられていると……
「目の前で必死に戦ってくれてる娘を信じもしないで、応援もろくにしないで文句ばかり言って、あなた達、それでも仲間なの!?」
「……!」
『……!』
その言葉に、誰もが目を見開いた。
雪乃が怒っているのは、不甲斐ないサクラの姿にではない。その言葉通り、代表として戦っているサクラやメイを、罵倒ばかりして、ろくに応援しようともしない、彼女達だと。
「そりゃあ、私やあなた達が決闘すれば多少は違ったかもしれないわね。何せ、龍牙先生が自分の都合の良いように選んだ相手なんだもの。むしろ、不利なくらいが自然よ」
「……ちっ」
龍牙の舌打ちなど聞こえるはずもなく、雪乃は続ける。
「けど、少なくともそんな不利な状況でも、できることをやって真剣に勝ちに行ってる、そんな二人を罵倒する権利は、私達には無いわ! 和総部を失いたくないっていうのなら……!」
言いながら、右腕を大きく振り上げる。そして、それを前に向かって押し出した時、その右手から、何かが飛び、向かいの応援席にぶつかった。
「まずは二人を信じなさい! そして、応援なさい! それが仲間っていうものでしょう!!」
『……』
雪乃の怒声と動きに、誰もが言葉を失っていた。
そして、サクラと、龍牙は、そんな雪乃ではなく、雪乃が投げ、床に落ちたものに目を奪われた。
(あれは……真っ二つに折れて壊れてるけど、間違いない!)
(俺の携帯!? バカな、確かにここに……)
慌てて胸に手を当てるが、感触がある。急いで懐に手を入れて、取り出してみると……
「なっ……」
出てきたのは、大きさも、形も、手触りも、長く愛用してきた携帯電話とは全く違っていた。
「……はっ! まさか……」
ここに立つ、直前の記憶が蘇る。
体育館のドアを開こうとした瞬間、突然、藤原雪乃が走ってきて、すれ違いざまにぶつかった。注意しようとしたものの、そのまま大慌てでどこかへ走り去ってしまった。
あの時しか、携帯をすり替えるタイミングは無かった。
(くぅ……道理で、やけに服が臭うと思ったら……なんでよりによって納豆パックなんだっ! しかも大粒納豆……!)
忌々しげに顔を歪めながら、懐から出てきた、白い納豆パックを床に叩きつける。
直後に、雪乃に目を向けると、雪乃は見せつけるように、携帯に差してあったマイクロSDカードを、真っ二つに割っていた。
(何かに使えるかもしれないと、クロウさんから擦りの技を習っておいて正解でしたね。これを幼い頃知っていれば、もう少し苦労せずに済んだ気がします……クロウさんだけに……)
「サクラ!」
つまらない記憶を速攻で頭から除外しつつ、サクラに対して、声を張り上げる。
「なにも怖がる必要は無いわ! あなたはあなた自身と、メイの力を信じて、思いっきりやっつけなさい!!」
「……!」
雪乃のその言葉で、サクラは隣に立つ、メイの姿を見た。
「……」
前のターン、笑い掛けてくれた少女の顔には、不安が差していた。
「……サクラさん……」
「はい……」
そんな、不安の表情を見せるメイが、声を掛けた。
「その……怖いのは、あなただけではありません。私だって、あなたと同じように、決闘や、今が、すごく怖いです」
「……」
サクラの目を真っ直ぐに見据えながら、話した。
「勉強もスポーツも、人とのお付き合いも上手にできない。人に誇れるような部分も無く、ほとんど放り出される形で、習い事を習わされ、決闘アカデミアに通わされて、何となく日常を過ごしている。せっかくできた友人や仲間達から、いつ嫌われるか、いつここにいられなくなる日が来るかと思うと不安で、できるのは、そんなことにならないよう、できるだけ大人しくしていることだけ、でした……」
「……」
同じだ……と、思った。
サクラもまた、正直に言ってしまえば、この決闘アカデミアには、自分の意思で来たいと思ったから来たわけではなかった。
良家に生まれながら、落ちこぼれとしてしか育つことができず、そんな自分が行ける高校のレベルなど、たかが知れていた。
だから、どうせ三流の高校にしか入れないくらいならと、世間で広く受け入れられ、学歴も多少は華やかに彩ってくれる、決闘アカデミアに、半ば強制的に送りつけられた。
決闘は確かに好きだった。しかしそれは、周りがやっているから、自分も自然と手を伸ばし、たしなむ程度に楽しんでいた、というレベルでしかない。
プロになりたいなどと大それたことは考えたことがないのに、取り敢えず、決闘さえできれば何とかなると、わけの分からない理屈のもとに放り出された場所だった。
過去にはこの決闘アカデミアも、プロ決闘者への登竜門として、狭き門である時代が確かにあった。
だが、全てが決闘中心と言っても良いほどに変わってしまったこの世界で、アカデミアでも多くの生徒を受け入れるようになってしまった現在では、他に行き場所の無くなった大勢の若者達が進路として選ぶ、最後の逃げ道と化していた。
真剣な思いでプロ決闘者を目指す生徒達はもちろん大勢いる。だが、サクラやメイのように、ただ、アカデミアというブランド力のみを当てにして、決闘を学んでいるという人間もまた、この世界には大勢いた。
「先生を倒せるだけの力なんて、私は持っていません。けど……けど、今の私には、サクラさん、あなたがいます」
「……」
「私は、とっても弱い人間です。決闘でも、それ以外でも。だから、負けるのが怖いし、あなたの足を引っ張ってしまわないか、とても怖くて仕方がありませんでした。だけどせめて、この決闘の間、あなたのことは精一杯支えたい。私は、あなたの気持ちが、誰よりも分かるから」
「メイさん……」
その眼差しを見て、サクラは、また一つ、思い出した。
この目は、あの人に似ていると……
……
…………
………………
教室に通うことになったのは、何も無い自分にも、一つくらい特技を持たせようと、習い事に放り出されたから。
あの人の教室に通わされたのは、たまたまネオドミノシティで最も評判が良かったから。
三味線を選んだのは、楽器の方が見た目にも華やかで、ビジュアル的にも実用的だから。
そうして、いつも通り、親の決めた通りのことを、流されるままに行った。
本気で三味線を習う気など無かったし、義務以上の思い入れなど全く無かった。
なのに、そんな自分に対して、あの人は、家族さえ向けてくれない思いやりを、サクラに対して向けてくれていた。
「何を怖れているのですか?」
「へ……?」
その言葉は、最初は意味が分からなかった。だから彼は、続けて語ってくれた。
「あなたはこの教室や、色々なことに対して、怖れているように感じます」
「怖れて……?」
その言葉には、あり過ぎるだけの覚えがあった。
それまではただ、流されるままに、何も感じずに生きている。そのつもりだった。
だけど、本当は違う。本当は、ずっと怖かった。
家も、学校も、自分に対して優しくしてくれる人はいない。ただ、自分のダメさ加減ばかりを思い知らされて、最後には見捨てるばかり。
そんな中で、精一杯何かを成そうと思っても、失敗して、笑われるのが怖かった。
どうせ、何をしても、自分には怖い現実しかない。ならいっそ、何も怖くないように、周りに言われたことだけしていればいい。
そう思いながらも、その言われたことですら、失敗しないかといつも怖がっている。
それが、サクラにとっての日常だった。
「怖くない」
自分のことを振り返っていた時、彼は、サクラに対してそう声を掛けた。
「今後、何かをしようと思った時、こう言葉にしてみて下さい」
「怖く……ない?」
「そう。もちろん、言葉自体はさほどの意味を持ちません。それでも、怖れるばかりで何もできなくなるくらいなら、せめて、言葉だけでも強く……それだけで、もしかしたら本当に、怖くなくなるかもしれませんよ」
「……」
無神経な言葉だと思った。
これだけ大きな教室を開いて、これだけたくさんの人を教えられる。
そんなことができる人が、何もできないから怖がるしかない人の、なにが分かるんだろうって……
「私とて、怖いのは同じですから」
「……へ?」
いきなり、自分の心の声を聞いていたような言葉を言われ、マヌケな声が出てしまった。
けど、そんなマヌケには構わず、彼は、確かに不安そうな顔で、語りだした。
「教室を開いた当初は、生徒の数も少なかったですが、今では、これほど大勢の人達が、私の教えに期待して、教室を尋ねて下さります。こんな私の力量を信じて下さり、頼って下さることは、大変な誉れです……だからこそ、怖ろしい」
その言葉の通り、語っていた笑顔から、少しだけ、力が弱まるのが見えた。
「これだけ大勢の人達に頼られている私には、大勢ではなく、全員を導いていく責任がある。私にできることは、教えることだけです。そんな、教えることしかできない私に、これだけたくさんの人達を導いていくことができるのか。どこかで失敗してしまうのではないか。今日、サクラさんが教室へ来て下さったように、一人生徒が増える度、そんな不安を痛感させられて、怖ろしくなります」
「……」
「……けど、それでも私は、怖くない、そう言わねばなりません」
直前の笑顔とは変わって、消えていた力を、またその笑顔に宿すのが見えた。
「怖い、という感情は、世の誰もが感じていることです。そして、誰もがそんな怖さを感じながら、それでも、自分にできる精一杯を頑張っている。この教室に来て下さる全員が、そうやって何かに怖れながらも、目の前の努力に打ち込んでいる。そして、その努力を実らせてくれることを、私に期待している。なら私は、そんな皆さんからの期待に答えられるよう、努力をしなければなりません」
「努力……」
そう言えば、私は何かを努力したことがあったっけ?
ちょっと、勉強に挑戦してみた。そしたら、ダメだった。
スポーツ、ダメだった。誰かとお話し、ダメだった。
何かに挑戦する? どうせ無理だ……
思えば、いつもそんなふうだった。ちょっと何かをしてみたら、まるで上手くいかない。
もう一度やったところで、どうせ上手くいかないと勝手に諦めて、それ以上の努力を辞める。
どうせ、という答えを見るのが怖くて、それ以上の努力はしなかった。
そんな自分の姿に、家族は呆れていた。
たくさん、怖いと思ってきた中で、それを乗り越えようと思ったこと、一度でもあったっけ……?
「私は……」
思い出してみると、ただ怖がるだけ怖がった後は、すぐに逃げ出していた。
怖いのは、目の前にある物事じゃない。それを失敗する自分の姿だった。
どうしてそんなに怖かったのか。それは……
「……期待されたことなんて、ありませんから……」
兄や姉と同じように、できることは当然となっていた。当然に対して、期待なんてされるわけがない。
そして、そんな当然すらできないのだから、なお更期待なんてされない。
だから、努力の仕方も分からないまま、全て諦めるしかなかった。
「私は期待しております」
そんなサクラに対して、彼は、笑い掛けてくれた。
「私は、サクラさんが上達してくれることを期待しております。三味線を知らないサクラさんを教えることは、私の役目です。だからこそ、期待せずにはいられない。私ごときの指導で、サクラさんの腕前が、どこまで上達するのかを」
「……」
「こんな私でも、それができたのです。サクラさんにできないはずはありません。できない自分ばかり見るのではなく、できる自分の姿を期待して、そして、言ってみてください。怖くない、と」
「……」
自分のダメさを解決してくれるわけじゃない。
それでもこの人は、私なら、そんなダメな部分も含めて、できると言ってくれた。
家族さえ信じてくれなかったそのことを、心から信じてくれている。そう、彼の目は語ってくれていた……
……
…………
………………
その気持ちが嬉しくて、最初、嫌々だった三味線教室が、気が付けば、一番の楽しみに変わった。
もっとも、本当の目当ては三味線じゃなくて、彼に会うことだった。
彼に会って、彼の期待に応えられるよう頑張って、褒めてもらう。それが、一番の楽しみに変わっていた。
そんな彼に、私の心は満たされていた。いつもいつも、彼のことばかり考えて、彼に喜んでもらえたら……
そう思うようになった。
そんな、彼が向けてくれた目を、目の前のメイも、自分に向けてくれている。
メイもまた、自分と同じような境遇にあり、同じように、彼からの言葉に救われたことを、以前話に聞いて知っていた。
だから、同じ境遇のサクラに対して、同じ目を向けてくれたんだろう。
心から信じてくれている目。
私ならできる。それを、押し付けるのでなく、確信してくれている目を……
「そうよ! 頑張って!」
「あなた達は、一人じゃないわよー!」
「諦めてはなりません!」
メイの言葉の直後、後ろの客席から、先程までとは真逆の感情の声。
声を上げているのは、ランを含む、旧和奏部のメンバー。
旧和奏の全員が、サクラやメイと同じような境遇にあった。
家族から見放され、周囲から疎まれ続け、結果、楽器という習い事へ投げ出された人達。その先で、水瀬梓という存在を知り、彼からの言葉と思いやりを支えに、頑張ることができた人達。
放り出された先にいた人は、未来への希望と、自信を持つことができなかった私達に、優しい言葉と、確かな信頼をくれた。そして同時に、叶えたい夢を与えてくれた。
――梓先生のお嫁さんになる。
あまりにも子供染みた、単純で、短絡的で、ほとんど衝動にも似た夢。
それでも、幼い頃から、そんな夢を持つことも許されなかった彼女達にとって、それは、確かな輝きに満ちた、希望に溢れた夢だった。
そんな、共通の夢を持って、未来への希望を抱いた、メンバーからの声だった。
「私達がついてるわ! 」
「私達が見ているから、頑張りなさーい!」
「皆さん……」
後ろから聞こえる声援。
隣から向けられる信頼。
正面からの力強い激励。
破壊された脅迫の材料。
サクラにとっての怖い物、全てが無くなった瞬間だった。
そしてまた、あの人の顔を思い出す。
あの人にふさわしい女になるには、あんな最低な男に、敗けるわけにはいかない。
そんな決意が、彼女の総身に溢れかえった……
「……ちっ、続けるぞ! 俺のターンだ!」
龍牙
手札:1→2
龍牙
LP:7000
手札:2枚
場 :モンスター
『暗黒恐獣』攻撃力2600
『サイバー・ダイナソー』攻撃力2500
魔法・罠
セット
サクラ
LP:1400
手札:3枚
場 :モンスター
『椿姫ティタニアル』攻撃力2800
『姫葵マリーナ』攻撃力2800
『紅姫チルビメ』守備力2800
『エレキングコブラ』守備力500
魔法・罠
永続罠『血の代償』
セット
セット
「……伏せカード『地砕き』発動! 相手フィールドの守備力が最も高いモンスターを破壊する。対象は、守備力2800の『紅姫チルビメ』だ」
「うぅ……『紅姫チルビメ』の効果! このカードが相手によって墓地へ送られた場合、デッキから、『紅姫チルビメ』以外の植物族モンスターを特殊召喚できます」
「……」
余計なことをするんじゃない……
お前は黙って敗ければいいんだ……
これ以上の抵抗などするな……
「……(ギッ)」
「……!」
龍牙が、サクラに対して送った視線に対して、サクラもまた、強い視線で返した。
誰がこれ以上お前の言うことなど聞くものか。
お前は私達が、ここで倒してみせる……
「私はこの効果により、デッキから『ロードポイズン』を特殊召喚します」
『ロードポイズン』
レベル4
守備力1000
「更に、『姫葵マリーナ』の効果! このカードが表側表示で存在する限り、このカード以外の植物族モンスター一体が戦闘、または効果で破壊された時、相手フィールド上のカード一枚を選択して破壊します。破壊するのは『暗黒恐獣』です!」
「な! ぐぅ……」
「……ねぇ」
サクラやメイの後ろに座っていた、和総部メンバー達に対して、いつの間にやら移動していた雪乃が声を掛けた。
「……あの人、本当に元プロ決闘者なの?」
「なぜ?」
聞き返されると、雪乃は顔を歪ませながら、決闘に視線を戻す。
「だって……『サイバー・ダイナソー』って、名前は恐竜でも機械族でしょう? それに、今の『地砕き』を使ったタイミングも、サクラの場の植物姫の効果を把握していれば、普通は使わないでしょう……」
「……確かに。雪乃がいない時に『暗黒恐獣』を特殊召喚していたけど、そのために『超進化薬』なんて、使い辛いカード使ってたし……」
「恐竜族に、爬虫類族、そして機械族……ごちゃまぜ過ぎて何がしたいかいまいち分からないわね……」
「ぐぅぅ……」
彼らの会話を、龍牙は、全て聞いていた。
そして、サクラとメイも、聞こえていた。
「メイさん、この人大したことありませんわ!」
「ええ。今こそ、私達の力で、この変態を倒しましょう!」
「……調子に乗ってんじゃねえ!! 装備魔法『ビッグバン・シュート』を『サイバー・ダイナソー』に装備! 『サイバー・ダイナソー』は攻撃力を400ポイント上げ、更に貫通効果を与える!」
『サイバー・ダイナソー』
攻撃力2500+400
「いくら大口をのたまおうが、サクラのライフは風前の灯なんだよ! バトルだ! 『サイバー・ダイナソー』で、守備力1000の『ロードポイズン』に攻撃! これでサクラのライフは0だ!!」
『サイバー・ダイナソー』の口から、光の光線が、『ロードポイズン』目掛けて放たれる。
サクラは、決闘ディスクに手を伸ばした、先程は、怖さのせいで発動ができなかったカードを、今こそ……
「罠発動『ガード・ブロック』! 戦闘ダメージを0にして、カードを一枚ドローします」
サクラ
手札:3→4
「同時に、戦闘破壊された『ロードポイズン』の効果により、墓地に眠る植物族モンスター一体を特殊召喚できます。私は墓地から、『紅姫チルビメ』を特殊召喚します」
『紅姫チルビメ』
レベル8
守備力2800
「ぐ、ぐぅ……ターンエンドだ!」
サクラ
LP:1400
手札:3枚
場 :モンスター
『椿姫ティタニアル』攻撃力2800
『姫葵マリーナ』攻撃力2800
『紅姫チルビメ』守備力2800
『エレキングコブラ』守備力500
魔法・罠
永続罠『血の代償』
セット
龍牙
LP:7000
手札:1枚
場 :モンスター
『サイバー・ダイナソー』攻撃力2500+400
魔法・罠
装備魔法『ビッグバン・シュート』
(……奴らのフィールドに強化された『サイバー・ダイナソー』を超えるモンスターはいない。仮にこいつを除去されたとしても、手札に残ったこの『冥府の使者ゴーズ』で……)
「私のターン!」
メイ
手札:3→4
「チューナーモンスター『エレキツネ』を召喚」
『エレキツネ』チューナー
レベル2
攻撃力800
「レベル4の『エレキングコブラ』に、レベル2の『エレキツネ』をチューニング!」
「おぉ、シンクロ召喚……」
「轟ける雷よ。戦場に交わりて、
「シンクロ召喚! 駆け抜けよ、『エレキマイラ』!」
『エレキマイラ』
レベル6
攻撃力1400
「……は、はは、一丁前にシンクロ召喚なんかするから、どんな凄えのが来るのかと思えば、攻撃力1400? えらく貧弱だなぁ……」
「そんなこと、使っている私自身、百も承知です」
「あぁん……?」
「ええ、そうです。『エレキ』達はサクラさんや、あなたの使うカード達とは違って、あまりにも弱いカード達です。けど、力は弱くても、誰にも敗けない力を持っている。バトルです!」
メイが宣言し、フィールドのモンスターが身構える。
「バトル? おいおい、お前達の場に、『サイバー・ダイナソー』を超えるモンスターなんて……」
「『エレキマイラ』は、相手に直接攻撃ができます。『エレキマイラ』で、龍牙先生にダイレクトアタック! キマイラボルテックダッシュ!」
『エレキマイラ』が駆け抜け、その爪を龍牙に浴びせた。
龍牙
LP:7000→5600
「ぐぅ……このくらいのダメージ……」
「『エレキマイラ』のモンスター効果。このカードがダイレクトアタックに成功した時、相手の手札のカードをランダムに一枚、デッキの一番上に置きます」
「なんだとぉ!?」
「龍牙先生の手札はその一枚、戻してください」
「ぐぅ……」
龍牙
手札:1→0
「……このバトルでできるのはここまでです。私はカードを二枚伏せます。ターンエンド」
メイ
LP:3500
手札:3枚
場 :モンスター
『エレキマイラ』攻撃力1400
『椿姫ティタニアル』攻撃力2800
『姫葵マリーナ』攻撃力2800
『紅姫チルビメ』守備力2800
魔法・罠
永続罠『血の代償』
セット
セット
セット
龍牙
LP:5600
手札:0枚
場 :モンスター
『サイバー・ダイナソー』攻撃力2500+400
魔法・罠
装備魔法『ビッグバン・シュート』
「サクラさん、あなたが決めて下さい」
「うん」
「この野郎、もう勝った気になりやがって……俺のターン!!」
龍牙
手札:0→1
「ぐぅ……」
ドローしたカードを見た瞬間、その顔が醜く歪む。
たった今戻されたカードを、たった今、またドローしただけなのだから、当然のことだった。
「だが、バトルだ!! 『サイバー・ダイナソー』は全てのモンスターの攻撃力を上回っている!!」
「ちなみに『紅姫チルビメ』が場にある限り、あなたは他の植物族モンスターを攻撃できません」
「知るか!! だったら植物以外を攻撃してやるよ!! 『サイバー・ダイナソー』で、『エレキマイラ』を攻撃だ!!」
「罠発動『砂塵の大竜巻』。龍牙先生の『ビッグバン・シュート』を破壊します」
「なん……だと……」
「『ビッグバン・シュート』はその効果により、破壊された時装備モンスターである『サイバー・ダイナソー』を除外します」
「なぁ……」
「まだ、何かありますか?」
「ぐぅ……ターンエンドだ!!」
龍牙
LP:5600
手札:1枚
場 :モンスター
無し
魔法・罠
無し
メイ
LP:3500
手札:3枚
場 :モンスター
『エレキマイラ』攻撃力1400
『椿姫ティタニアル』攻撃力2800
『姫葵マリーナ』攻撃力2800
『紅姫チルビメ』守備力2800
魔法・罠
永続罠『血の代償』
セット
セット
「私のターン、ドロー!」
サクラ
手札:3→4
(くそったれ……もう不自然がどうの言ってられるか! サクラの魔法もこれで使用不可だ……)
「永続罠『リビングデッドの呼び声』発動!」
「なに!? 二枚目……!」
「メイさんの伏せてくれたカードです。私はこのカードにより、墓地から私のエースカード『桜姫タレイア』を特殊召喚します!」
『桜姫タレイア』
レベル8
攻撃力2800
「『桜姫タレイア』はその効果により、自分フィールド上の植物族モンスター一体につき、その攻撃力を100ポイント上昇させます。今、私のフィールドの植物族モンスターはタレイア自身を含む四体。よって、攻撃力を400ポイント上昇!」
『桜姫タレイア』
攻撃力2800+400
「バトルです! まずは『エレキマイラ』で、龍牙先生に直接攻撃! キマイラボルテックダッシュ!」
「ぐぅ……!」
龍牙
LP:5600→4200
「『エレキマイラ』の効果! 龍牙先生のその手札一枚を、デッキの一番上に置きます!」
「させるかよ! 俺の場にカードが無い状態でダメージを喰らった瞬間、『冥府の使者ゴーズ』を特殊召喚!」
『冥府の使者ゴーズ』
レベル7
攻撃力2700
「そして、こいつは受けたダメージの種類によって効果が変わる。戦闘ダメージの場合、受けた戦闘ダメージ分の攻撃力を持つ、『冥府の使者カイエン』トークンを特殊召喚する!」
『冥府の使者カイエン』トークン
レベル7
攻撃力?→1600
「はっ! バカが! これで『エレキマイラ』の効果は封じたぞ! 落ちこぼれがぁ!!」
「バカね……」
雪乃の呟いた一言。それに……
「バカですね……」
「バカだね……」
「バカですわ……」
「バカだわ……」
口々に、和総部メンバーの言葉が連なっていった。
「『エレキマイラ』しか見えてないわ……」
「……『椿姫ティタニアル』で、『冥府の使者ゴーズ』を攻撃」
「……は?」
高笑いしていた龍牙に対して、冷たい言葉と、赤い花からの一撃が、ゴーズを消し去った。
「な……!」
龍牙
LP:4200→4100
「『姫葵マリーナ』で、カイエントークンを攻撃」
黄色の花もまた、その姿通りの熱い一撃で、カイエントークンを破壊する。
「あ、あぁ……」
龍牙
LP:4100→2900
「カイエントークンを守備にしておけば、このターンは耐えられたのに……」
「もっとも、既に手札0枚で、次のターンでどうにかできたとも思えませんが……」
「とどめです。『桜姫タレイア』で、龍牙先生のダイレクトアタック! 始高の麗雨!」
『桜姫タレイア』の振るった扇子から、美しき桜吹雪が舞う。それが、龍牙へ雨の如く降り注いだ。
「うわああああああああああああああああ!!」
龍牙
LP:2900→0
お疲れ~。
長くなってすまんかったね。
そんじゃ、九話はまだ続きますゆえ、次話までちょっと待ってて。