遊戯王5D's ~剣纏う花~   作:大海

72 / 86
五話いきま~す。
内容はタイトル通り。あっちでもそうだけど、だいぶキャラ違うんで、苦手な人はご注意をば。
そのうえで、ちっくと退屈な話かも分からんが、その分向こうを濃くしてあるから勘弁しておくれよ。
そんなわけで、行ってらっしゃい。



第五話 セクトの一日

視点:外

 

『百合絵さん!! 出してくれ! 俺は帰らなきゃいけないんだ元の世界に!!』

 

「マジか……」

「マジです……」

 夕飯の席で、テレビを見ながら食事を摂るセクトと、コナミは対面していた。

「アカデミアのタッグ決闘大会かぁ……そう言やそんなのもあったなぁ……」

 頭を掻きながら塩鮭をつつき、慣れた手付きで小骨を取っていく。

 それを口に運び、ご飯と、熱いお茶を一口。

「……で、それに出ることになっちまったと……」

「ええ。龍可さんには後で説明して途中棄権をするつもりですが、それでも当日は待ち合わせに遅れるかもしれません」

「おいおい……」

 そんな説明に、セクトとしても苦笑を禁じ得ない。

「今度から、そう言うことは先に日付を聞いてから受けような」

「……すみません」

 コナミのお人好しぶりは、セクトもよく知っている。

 それに、本来の目的は自分とのタッグ決闘に向けた訓練だということだし、誘った身としては文句も言えない。

 とは言え、今言った通りのことに気を付けるくらいのことはして欲しかった。

「……まあ、当日出られるって言うなら文句は無えけどよ。幸い、参加は事前応募制だけど、ペア登録は当日だし。開催ギリギリまで粘ることはできる。それは良いんだが……」

 自分自身のことをとりあえず横に置き、セクトは別の懸念を言葉にした。

「龍可、だっけ? その子は途中棄権したいって言って、納得すんのか?」

「そこは、大丈夫……では、無いかと思いますが……」

「確証無えのかよ……」

 龍可自身、あまり決闘に積極的な性格はしていない。

 それでも、決闘者である以上、やるからには勝利したい、という最低限の誇りはある。

 龍可の性格をよく知っているからこそ、コナミとしても、どんな反応を示すか予想が付かなかった。

「……まあ、やっちまったものは仕方がねえ。けどよ、ちゃんと説得してくれよな。アカデミアの大会がどうでもいいなんて言わねえが、俺だって真剣に勝ちに行きてえから恥を忍んでアマチュアのお前にタッグを頼んだからな」

「ええ。私としても感謝しております。龍可さんにはきちんと説得致しますので、何の心配もいりません」

「そうか。あと、もう一つ気になるんだがよ」

「はい」

 セクトとしては、大会以上に気になることを尋ねた。

「アカデミアの大会に出るって、普通に決めてるけど、大丈夫なのか? アカデミアには和総部の連中だっているんだぜ」

「ああ……」

 改めて言われ、コナミもようやく思い出したようだった。

 コナミが雪乃と呼ばれていた頃、長くは無いが、凄まじく濃い一ヶ月を過ごした。

 そこで、生徒達に好かれ、和総部という、多くの仲間達にも囲まれた。

 そんなアカデミアに出向き、例えば、ツァン・ディレ辺りにでも出会ったとしたら……

 

「……大丈夫ではないでしょうか?」

 少し考えて、そう結論付けた。

「まず、ネオドミノシティ中を逃げ回っていると思われている私が、わざわざ再びアカデミアに戻ってくるなど、誰も思いもよりません」

「まあ、確かに……」

「それに、雪乃であった時も、正体は見破られるまでばれることはありませんでした。仮に変装するとしたら、今度もまた、女子になると、思われるでしょうから……」

「ああー……」

 最後の、視線を伏せながら言った、納得できるも本人にとっては辛い現実に、セクトも同情の視線を送った。

「……まあ、お前がそう言うなら良いけどさ。とにかく当日、参加はできるよう頼んだぜ……ごちそうさまでした」

 話す間に夕飯を平らげ、それに反応したコナミはすぐに食器を片づける。

 それを横目に見ながら、セクトはテレビに視線を戻した。

 

『なんで……なんでこうなるんだよ……俺は……俺は……幸せになりたかっただけなのに……』

 

『ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……』

 

 ガシャーン

 

 ネットの隆盛が元で起きたテレビ業界全体の衰退や、アニメーターの低低低所得問題、アニメブームの下火、撮影現場のブラック企業化や新人ADの使い潰し問題。

 更には、十数年前に起きたらしい放送法改定。そのせいで、社員でいるメリットを無くした幹部らの内部告発等により、詐欺、横領、独占禁止法違反、電波受信の暴力的契約強要、受信料未納者への暴利、違法取り立て、その他諸々の犯罪が明るみになったことで起きた、長年続いてきた悪徳公共放送の倒産。それによって起きた大混乱。

 そんな、放送業界全体に大打撃を与える事件がいくつも重なったことで、国内のテレビ局や制作スタジオ、芸能事務所のほとんどが潰れてしまい、結果、地方アナウンサーやテレビスタッフ、監督、プロデューサー、マネージャー、放送作家、脚本家、タレント、俳優、声優、アニメーターに至るまで、数えきれないほどのテレビ関係者達が失業し、やがて、業界と共に見捨てられ、忘れ去られていった。

 その結果、そういった職業そのものが不要視されてしまい、国内でテレビドラマやアニメ、映画といった創作物が、少なくとも映像として制作されることはなくなってしまった。

 そんな有様なせいで、現在残っている映画館で放映されるのは外国映画のみとなり、日本映画は完全に姿を消した。

 テレビを点けて、CM以外に流れるのは、ニュースや天気予報、演劇、お笑い、粗末なリポーターと適当な解説を付けただけの将棋か囲碁かスポーツ中継、古い映像や無難なCGで安く作れるドキュメンタリー、需要のある大御所タレントのみ使ったバラエティ番組、適当な歌手を集めて作れる音楽番組、視聴率を安定して確保できる長寿番組。それ以外は、もっぱら過去の番組の再放送か、過去に作られ散々見せてきた映画を繰り返し放送するばかりとなっていった。

 もちろん、それらを収録したもの以外で、新作のBDやVシネマ、OVAすら作られることは無くなり、作られるとすれば、素人が勝手に作って動画サイトに投稿した二次創作物。それか、アニメやドラマより遥かに安く作れて需要がある、演技指導も受けたことの無い、顔とスタイルだけの女を安い給料でかき集めて作られたAVくらいになった。

 

 そして現在。テレビで流れるのは、決闘中心社会だからと、やたらカードに縁のある、古い番組ばかり。テレビ放送という概念そのものが、この日本から無くなる日もそう遠くない。

 もっとも、そんな再放送の中にも、名作と呼ばれる『当たり』もある。

 そんな『当たり』を視ながら、そんな業界の事情などまるで興味関心の無いセクトは、明日の学校のことと、目の前の『当たり』に対する感想だけを思うのだった。

(浅倉カッケェ……『蛇』デッキでも作ってみるかな、今度……)

 

 ……

 …………

 ………………

 

 翌日。その日はプロの仕事も無く、セクトは普通に学校に登校していった。

 買い物は前日に済ましていたため、外へ出る用事は特にない。

 そんな中、コナミは洗濯を終え、部屋の掃除をちょうど終わらせた所だった。

「……あらやだ!」

 掃除機を止めたところで気付き、思わず声に出てしまった。

「セクトさんたら、お弁当を忘れている……」

 玄関に置きっぱなしにしてある包みを手に取り、すぐに靴に履きかえた。

「すぐにお届けしなくては……」

 

 今更語るまでも無いことながら、コナミの主な移動手段は『脚』である。

 しかも、それがただ歩くことは勿論、自転車や自動車、果てはD・ホイール以上の速度を有し、且つ、下手な乗り物以上の機動力まで併せ持っている。

 そんなコナミは、セクトの住むマンションのベランダから飛び降りた後は、数あるビルやら邸宅の屋根、塀の上等を飛び回り、走り回り、普通なら徒歩二十分はかかるアカデミアまで、三分で到着してしまった。

「現在のお時間は……まだ余裕はあるか。それでも、なるべく急がねば……」

 藤原雪乃が過ごした時間帯を思い出しながら、アカデミアの様子を伺う。

 下で上を指差す民衆の騒ぎなど無視しながら、コナミは電柱から飛び上がった。

 

 

 

視点:セクト

「……さて、溜まりに溜まった仕事、さっさと片付けちまおうぜ」

「あの……すみません。私のせいで、こんなに朝早くから……」

「ああ、良いよ。気にすんな。俺の方こそ、仕事のせいでお前に生徒会の仕事、全部押しつけちまってるし。このくらいはするさ」

「うぅ……すいません。私がもっと、ちゃんとしていれば……」

「分かったから、もう謝るの禁止。さっさとやっちまおうぜ」

「……はい……」

 

 アカデミアの生徒会室。目の前に泣きそうな顔で座ってる生徒会副会長をなだめながら、目の前の資料に目を通していく。

 まあ、溜まりに溜まったって言っても大した量じゃねえ。とは言え、全部が全部、今日までに仕上げないとまずい資料なもんで、普通より早起きして、授業が始まる一時間前に登校してこうして作業してるわけだ。

 普通に仕事してればここまで溜まることなんて無いはずだが、積まれた資料のほとんどは、生徒会長の権限が必要な案件ばかり。俺と連絡が取れなきゃ当然処理できねえ。融通の効かねえお堅い職場の典型だな。

 それで、いざ目を通してみたら……

「……これで終わりか」

 わざわざ早起きするまでもなく片付けられる、仕様もない書類ばっかり。

 時計を見ると、始めてから十五分くらい。これなら昼休みに一人でやっても十分すぎた。

「まったく、こんな下らねえことでわざわざ生徒会長の権限求めやがって。てか、そもそも教師共も、生徒会に押し付けずに仕事しろってんだ」

「……」

 俺が愚痴ってると、生徒会副会長……『宇佐美(うさみ) 彰子(しょうこ)』は目を伏せちまった。

「どうした?」

「……いえ、すみません。私が、今言ったようなことを、先生達に言えたら、わざわざ会長のお手を煩わせることも無かったのかなって……会長は、プロのお仕事で忙しい身だから、学校のことは私がって、思ってるけど、最後にはいつも、会長に頼っちゃうから……だから……」

 ……やれやれ。優秀なんだがこういうところがあるからなぁ……

「ほらほら、泣くんじゃねえよ。終わったこといつまで嘆いてても仕方ねえ」

「でも……」

「あのな。実際、お前には随分助けられてんだ。そりゃあ、正直頼りない部分もあるにはあるが、それだって大して気にならねえレベルだ。それだけ優秀なお前がアカデミアにいてくれてるから、俺は何の気兼ねも無く仕事に専念できるんだぜ」

「会長……」

 俺がいつもこいつに思ってること。正直に話すと、暗かった彰子の顔は、少し明るくなった。

「お前は、お前にできる精一杯を、全力でやればいいんだよ。それに助けられてる奴は、俺も含めて大勢いるんだからよ。お前は、お前自身の力と、他の生徒会メンバーの力信じて、これからも副会長として頑張っていけ。足りない分はいくらでも支えてやっから」

「……はい!」

 よし、良い返事に良い笑顔だ。

「……さて、仕事も終わったことだし、教室行こうぜ。ついでに、先生方にも言いたいこと言わせてもらわねえとな……」

 案件による生徒会長権限の緩和。そもそも生徒会への仕事の丸投げ。その量と質。教師共の手抜き。そのせいで起こっちまう未処理案件の累積。その他諸々。言いたいことは山ほどある。

 今日はあいつら、どう言って泣かせてくれようか……

 文句を言いに職員室へ入る度、俺に頭の上がらねぇ教師共の顔が見物なんだよなぁ……

 

「……あ、あの、会長……」

「……ん?」

 と、教師共の顔と文句を考えてる所に、彰子の声が聞こえた。

「どした?」

「あ、あの、ですね、実は……その、会長に、お願いが……////」

 何でか顔を真っ赤にしながら、彰子はもごもご口を動かし始めた。

「お願い? 俺にか? 仕事の手伝いならいつでもやってやるぜ?」

「い、いえ、そうじゃなくて……」

 否定した後は、目を固く閉じた。そんな顔のまま……

「わ……私と//// タ、タ……タッ……////」

 

 トントントン……

 

 と、彰子が何か言い掛けた時、後ろからそんな音が響いた。

 ……てか、後ろは窓しか無いはずなんだが……

「うおおおお!!」

「きゃあああ!!」

 思わず悲鳴を上げて、彰子に至っては、悲鳴を上げながら俺に抱き着いてきた。

 身長差のせいで、頭がもろに挟まって……

 んなこたぁどうでもいい!

 俺はすぐに彰子を引き離して、窓を開いた。

「コナミ! いきなりなんだ! 逆さ吊りで窓の外に現れやがって! ここ四階だぞ!」

 そう怒鳴ったけど、コナミは逆さ吊りなまま、背中から包みを取り出した。

「……弁当?」

 コナミは逆さま……つまり、俺達から見れば普通な姿勢の弁当を手渡してきた。

「ああ……忘れてたのか? 俺……」

 そう言うと、こくり、とコナミは頷いた。

「ああ……それで、俺に届けにきてくれたと……?」

 また、こくりと頷いた。

「ああ……どうも、ありがとう……」

 礼を言うと、逆さ吊りなコナミの体は上に引っ張られて、消えていった。

 慌てて窓から上を見てみたが……

「いねえ……」

 

「か、会長、今の人は……」

 見ると、彰子はまだ脅えてやがる。その仕草はいちいち可愛いが、すぐ説明することにした。

「付き人だ。今俺の家に住んでる」

「え? 会長の家に、同棲してるんですか?」

「同棲って言い方したら恋人みたいであれだけど……まあ、そうだな。おまけに、決闘の腕もかなりのもんで、今度、プロのタッグ決闘大会にもあいつと組んで出場する予定だ」

「え……?」

 説明すると、彰子はなんだか暗い顔になった。

「……今の人が、会長と、タッグを……?」

「おお……なんだ? どうかしたか?」

「……い、いえ、何でもないんです。何でも……ちなみに、その大会って、いつ……?」

「ああ、それは……」

 大会の日付を普通に答えたら、彰子はどうしてか、余計に暗い顔になった。

「……じゃあ、お先に教室に戻りますね」

 それだけ言うと、生徒会室を出ていった。

 そんな彰子の様子が気にはなったが、今は職員室に言って、溜まってた書類に関する文句を言い散らす方が先だ。

 

 手抜き教師共をたっぷり絞った後、何人かの顔なじみに軽く挨拶しながら、最後尾の席に座る。で、朝のホームルームが始まった。

 その時、アカデミアで、赤い服着た不審者の話題が上がった。

(……俺、さっきその不審者から弁当受け取ったんだよなぁ……)

 

 

 ホームルームが終われば、授業が始まる。

 プロの生活が長いもんで、学校の授業が恋しくなる時はよくあるが、いざ受けてみれば、退屈で眠たくなっちまうのが生徒の生理現象ってもんだ。

 勉強は嫌いだし、ほとんど学校に来られないもんで、少なくとも普通の学科授業は、とっくの昔に付いていけなくなってるってのもあるが、先生の話を聞きながら、黒板の板書をノートにとって、時々教科書読んじゃあ、また黒板に何か書いて……

 こんな退屈な作業してて、眠くならねえ奴がいるなら教えて欲しいぜ。そいつは、少なくとも俺よりよっぽど優等生だろうからな。

 もっとも、俺以外も同じこと考えてるようで、見えてるうちの四人か五人は、コックリコックリ傾いてる。

 そもそもな話、ここは決闘アカデミアだ。決闘の授業や実習ならともかく、国語やら数学やらやったところで、そりゃあ退屈だっての。

 もっとも、俺達と他の奴らとじゃ、プロデビューして仕事して、中間・期末試験が免除されてるかどうか、ていう、結構な違いがあるんだがな……

(免除されてるから真面目にやらねぇ、なんて言わねえが……それでも、眠みぃ……)

 

 

 キーンコーン……

 

 昼休みのチャイムが鳴った。今日の午前中は全部座学だったが、一時間目に半分寝てたおかげで、あとの三時間は何だかんだマシに授業を聞いてられた。

(今日、早起きしなきゃもう少しマシだったのに……)

 そう思うと、また生徒会に仕事の丸投げしてた教師共に腹が立ってきた、んだが……

(アリッ……?)

 なんとなしに入口の方見ると、廊下から顔をひょこっと見せた彰子が見えた。

 机に置いた弁当箱を持って、そっちに行こうかと思ったが……

 

『セクトさん!』

 

「んガ!?」

 席を立とうとしたタイミングで、三、四……六人ばかりの女子に囲まれた。

 

「よかったらお弁当、食べてくれませんか?」

「私のお弁当をぜひ!」

「お昼、ご一緒してもよろしいですか?」

 

 ……面倒くせえから割愛するけど、まあ内容の大体がそういう話題だ。

「……弁当なら間に合ってるからいいよ。一緒に食いたいなら、周りの席に座れば?」

 そう適当に返してやると、半分はがっかりして、半分は大喜びしてはしゃぎだした。

 そのすぐ後、廊下を見ると、彰子はとっくにいなくなってた。

(彰子……)

 

「うわぁ……」

 弁当箱を開いたところで、俺の周りを囲む女子の、誰かがそんな声を上げた。

「何というか……和風で素朴なのに、色彩豊かで、豪華ですね……」

 そりゃあ、ほとんどプロ以上の腕前持った奴が、早起きして手間暇かけて作ってくれたんだから、そう見えるだろうよ。弁当箱は普通だが、重箱にでも入れて店に並べりゃ高値でも普通に売れそうだ。

 あず……コナミが付き人になってくれて、朝昼晩の飯全部の世話してくれるようになってから、俺はすっかり買い食いや外食ができなくなった。

 缶ジュースくらいは買うが、本当にそれくらい。何せ、下手な店に入るより、よっぽど美味いうえに、バランス良くて体にも良い料理を安く作ってくれるからな。

 そのお陰か、近頃はやたら体が軽くて体調も良いんだよな。夜はぐっすり熟睡できるし、便通も良くなった気がするぜ。

 こいつらの中で、コナミくらいに美味い飯が作れる奴がいるなら、一口食ってやってもいいがな。

(まあ、そんな奴がいるとすりゃあ……あいつくらいか)

 そいつがもういなくなっちまった廊下の方を見ながら、そんなことを思っちまった……

 

 ……

 …………

 ………………

 

 キーンコーン……

 

 飯が終わった後は、馴れ馴れしく話しかけてくる女子生徒どもを無視しながら、机に突っ伏して仮眠。

 んで、午後の授業のチャイムが鳴った。

 午後は移動教室だから、教室にいた生徒はゾロゾロと席を立ち始める。俺もな。

 それで、体育館へ移動した。

 午後の授業は、二時間まるまる使っての決闘の実習だ。

 まあ、実習っつっても大したことはしねぇ。ただ順番に生徒同士で決闘して、それを先生と生徒達が見学して、勝負が決まったら反省会。

 場合によっちゃあ、事前に用意されたデッキや、種族や属性なんかを指定して生徒達に組ませたデッキを使わせることもあるが、今回は普通に愛用のデッキを使える。

 それで、肝心の組み合わせだが……

 

「……六番、誰だ?」

「……お、俺だ!」

 話しかけると、確かに六って数字の書かれた紙を持った男子生徒が出てきた。

「よろしくな」

「お手柔らかに……」

 そいつは腰を低くしてるが、なんか秘めてるのが丸分かりな態度でそう言ってきた。

(こいつもそうか……)

 

 

 五組目の生徒同士の決闘が終わってから、六組目。

「……あれ? セクト君? セクト君?」

「おい、ここだ。ここ、ここ」

「ここって……どこ?」

「おい、皆既日食になってんぞ!」

「皆既日食?」

「声は聞こえるだろう?」

「声は……声は聞こえるけど……」

「声のする方へ声のする方へ……そして、見下~げて、ごらん~……」

「うわあああああああああああ!!」

 ……いい加減飽きた。

 そう思ってても、誰も彼もがこうなっちまう身長を呪いつつ、互いに構える。

 

「セクトさーん!」

「頑張ってくださーい!」

「すてきー!」

 

 ……周りからは、そんな女子の声ばっかりが聞こえてくる。

 で、正面を見ると……やっぱ分かり易い奴だ。今回の相手は……

 

(アカデミア最強の男……そして、モテモテの男子。プロなんだから勝てるわけねえにしても、もし万が一こいつを倒すことができれば、今日から俺が女子にモテモテだぜ……)

 

 口で言わなくても、そう思ってるのがバレバレだ。過去に何人もいたからな、そんなこと考えながら俺に決闘を挑んできた奴。全員楽勝で返り討ちにしてやったけど。てか、こいつ含め、本気で勝とうとして挑んできたのがどれだけいたことやら。

 モテたいってのも決闘の目的の一つかも知らんが……

 少なくとも、本気で勝ちたいって思わなきゃ、俺には勝てねぇよ。

 

「さて、やるか」

「行くぞ! セクト君!」

 

『決闘!』

 

 

男子生徒

手札:5枚

LP:4000

場 :無し

 

セクト

手札:5枚

LP:4000

場 :無し

 

 

「先行は俺か……よし、ドロー」

 

男子生徒

手札:5→6

 

「まずは場を整える……フィールド魔法『ヴェノム・スワンプ』発動!」

 カードをフィールドゾーンにセットした瞬間、俺と相手の間にある床から湯気が立ち上った。そして、普通に茶色だった床が、丸く紫色に変色して言って、毒々しいでっかい沼に変わった。

「『ヴェノム・スワンプ』……こいつが発動されている限り、互いのエンドフェイズにフィールド上の『ヴェノム』モンスター以外にヴェノムカウンターが置かれる。ヴェノムカウンターが一つ乗れば、そのモンスターの攻撃力は500ダウンし、この効果で攻撃力0になったモンスターは破壊される」

「なるほど……」

「そして俺は、『ヴェノム・コブラ』を守備表示」

 

『ヴェノム・コブラ』

 レベル4

 守備力2000

 

 効果を持たない通常モンスターか。だが、守備力2000は厄介だな……

「更に、カードを二枚伏せ、ターンエンド」

 

 

男子生徒

手札:2枚

LP:4000

場 :モンスター

   『ヴェノム・コブラ』守備力2000

   魔法・罠

    セット

    セット

    フィールド魔法『ヴェノム・スワンプ』

 

 

「……俺のターン」

 

セクト

手札:5→6

 

「……永続魔法『大樹海』発動」

 永続魔法をセットする。すると、また景色が変わった。

 目の前の沼の周り、それに体育館の床全体から、足下や向こうの景色が見えなくなるくらいの、青々とした草やら木やらが生えてきた。永続ってより、ほとんどフィールド魔法だな……。

(『大樹海』……?)

「更に、速攻魔法『エネミーコントローラー』発動。こいつの第一の効果により、お前のモンスターの表示形式を変更するぜ」

 丸まって小さくなってた『ヴェノム・コブラ』が鎌首を上げて、牙を立てながらこっちを威嚇し始めた。

 

『ヴェノム・コブラ』

 攻撃力100

 

「そしてこいつを召喚するぜ。『共鳴虫(ハウリング・インセクト)』召喚」

 

共鳴虫(ハウリング・インセクト)

 レベル3

 攻撃力1200

 

「『共鳴虫』?」

「『共鳴虫』で、『ヴェノム・コブラ』を攻撃だ!」

 俺が宣言すると、『共鳴虫』は『ヴェノム・コブラ』へ向かっていった。

 だが……

「単純すぎじゃね? 罠発動『反転世界(リバーサル・ワールド)』! フィールド上のモンスター全ての攻撃力と守備力を入れ替えるぜ」

 その宣言の通り、フィールド全体が揺れたかと思ったら、二体のモンスターの攻守が入れ替わった。

 

『共鳴虫』

 攻撃力1200→1300

 

『ヴェノム・コブラ』

 攻撃力100→2000

 

 その結果、体当たりしていった『共鳴虫』は、あっさり『ヴェノム・コブラ』に飲み込まれた。

 

セクト

LP:4000→3300

 

「……だが、これで『共鳴虫』と、『大樹海』の効果が発動する。まずは『大樹海』の効果。フィールドの表側表示の昆虫族モンスターが破壊された時、デッキから同じレベルの昆虫族を手札に加える。『共鳴虫』のレベルは3。デッキからレベル3の『アーマード・フライ』手札に加える」

 

セクト

手札:3→4

 

「そして、『共鳴虫』の効果。こいつが戦闘破壊された時、デッキから攻撃力1500以下の昆虫族モンスター一体を特殊召喚できる。俺は、『代打バッター』を召喚」

 

『代打バッター』

 レベル4

 攻撃力1000

 

「はは! 攻撃表示とは、リクルーターの効果がアダになったみたいだなぁ」

「……は? 何言ってんだ? 属性系のリクルーターと違って『共鳴虫』で特殊召喚された昆虫族は表示形式を問わねえぞ」

「なに?」

 今言った通り、『代打バッター』は守備で出すこともできた。戦闘破壊を介するリクルーターには攻撃表示で特殊召喚するモンスターが多くて有名なもんだから、『戦闘を介するリクルーター=攻撃表示』って間違う奴が結構いるんだよな。

「だったら、どうしてわざわざ攻撃表示で……!」

「こうするためだ。『代打バッター』で、『ヴェノム・コブラ』を攻撃!」

「はぁ?」

 『代打バッター』が向かっていったが、案の定、『ヴェノム・コブラ』に食われた。

 

セクト

LP:3300→2300

 

「『大樹海』の効果。デッキからレベル4の『アーマード・ビー』を手札に加えるぜ」

 

セクト

手札:4→5

 

「わざわざ手札一枚のためにライフを1000ポイントも失ったのか? 損してるだろう」

「そうかな? 『代打バッター』の効果。こいつがフィールドから墓地へ送られた時、手札から昆虫族モンスターを呼び出す。『ハデス・オオクワガタ』を特殊召喚」

 俺がカードをセットした時、頭にクワガタっぽい二本の角を生やして、赤黒い鎧と刀二本を持った、虫……てか、見た目完全に人間の女が現れた。

 

『ハデス・オオクワガタ』

 レベル7

 攻撃力2500

 

「げ! いきなりレベル7のモンスターかよ!」

「バトルだ。『ハデス・オオクワガタ』で、『ヴェノム・コブラ』を攻撃!」

 その宣言で、硬い鱗に覆われた『ヴェノム・コブラ』は、刀二本に細切れにされた。

 

男子生徒

LP:4000→3500

 

「くぅ……」

 

「きゃー! セクトさーん!」

「格好いいー!」

「素敵でーす!」

 

「はいはい……」

 ライフはこっちのが減ってるってのに……

「罠発動!」

 ん?

「永続罠『ダメージ=レプトル』! 一ターンに一度、爬虫類族モンスターの戦闘によってダメージを受けた時発動。デッキから、受けたダメージ以下の攻撃力を持つ爬虫類族モンスターを特殊召喚できる。来い! 『毒蛇王ヴェノミノン』!」

 

『毒蛇王ヴェノミノン』

 レベル8

 攻撃力0

 

「攻撃力0……?」

「こいつは墓地の爬虫類族モンスター一体につき、攻撃力を500アップさせる」

 

『毒蛇王ヴェノミノン』

 攻撃力0+500

 

「……バトル終了。俺はカードを二枚伏せて、ターンエンド」

 エンド宣言した時、目の前の沼から水でできたような蛇が一匹、『ハデス・オオクワガタ』に噛みついた。

「ターンエンドと同時に、『ヴェノム・スワンプ』の効果で『ハデス・オオクワガタ』にヴェノムカウンターが乗る。そして、攻撃力が500ダウンだ!」

 

『ハデス・オオクワガタ』

 ヴェノムカウンター:1

 攻撃力2500-500

 

「ちなみに、ヴェノミノンは『ヴェノム・スワンプ』の効果を受けないぜ」

 

 

セクト

手札:3枚

LP:2300

場 :モンスター

   『ハデス・オオクワガタ』攻撃力2500-500

   魔法・罠

    永続魔法『大樹海』

    セット

 

男子生徒

手札:2枚

LP:3500

場 :モンスター

   『毒蛇王ヴェノミノン』攻撃力0+500

   魔法・罠

    永続罠『ダメージ=レプトル』

    フィールド魔法『ヴェノム・スワンプ』

 

 

「……てか、おかしくない?」

「あん? どした?」

「どうしたもこうしたも、そのデッキ、テレビで見たのと全然違うよな」

 ああ、そのことか……

「こいつはサブデッキだ。仕事で使ってるメインデッキはこっちだ」

 胸ポケットから、いつも愛用してるデッキの、黒のデッキケースを取り出して見せた。

「サブデッキ? 何でメインデッキ使わねえんだよ?」

「仕様がねーだろう? 俺が本気出したらすぐ終わるからって、デッキを変えるよう先生に言われたんだから」

 そう言いながら、俺と相手とで先生の方を見る。

 先生は、申し訳なさそうに愛想笑いしただけだった。

「……先生が言うなら仕様がないか……」

 ……なんて言いつつ、本心は別のこと考えてるよなぁ……

 

(メインでなくてサブデッキとか……勝てるチャンスだ! サブだろうがプロ相手に勝っちまえばそれだけで俺のモテ天下だー!!)

 

 ……プロの世界で決闘してると、なんとなしに相手の思考が読めるって聞いたけど、本当だったんだ……

 

「俺のターン!」

 

男子生徒

手札:2→3

 

「魔法カード『スネーク・レイン』! 手札を一枚捨てることで、デッキから爬虫類族モンスター四体を墓地へ送る。手札の『ヴェノム・ボア』を捨てて、効果発動!」

 

男子生徒

手札:2→1

 

『ヴェノム・スネーク』

『ヴェノム・サーペント』

『ヴェノム・ボア』

『半蛇人サクズィー』

 

「これで俺の墓地の爬虫類族は六枚。よってヴェノミノンの攻撃力は……」

 

『毒蛇王ヴェノミノン』

 攻撃力0+500×6

 

「攻撃力3000……」

「更に、『ヴェノム・サーペント』を召喚!」

 

『ヴェノム・サーペント』

 レベル4

 攻撃力1000

 

「『ヴェノム・サーペント』は一ターンに一度、相手フィールドのモンスター一体にヴェノムカウンターを置く。さあ、喰らいな!」

 頭が二つある緑色の蛇が鳴き声を上げた瞬間、また沼から蛇が出てきて、『ハデス・オオクワガタ』に噛みついた。

 

『ハデス・オオクワガタ』

 ヴェノムカウンター:1→2

 攻撃力2500-500×2

 

 ちっ、攻撃力が1500まで下がっちまったか……

 

「さあ、バトルだ! まずは『毒蛇王ヴェノミノン』で、『ハデス・オオクワガタ』を攻撃だ! ヴェノム・ブロー!」

 ヴェノミノンが手を向けると、そこから大量の蛇が飛んできて、『ハデス・オオクワガタ』に噛みついた。

「ちぃ……」

 

セクト

手札:2300→800

 

「……『大樹海』の効果で、デッキからレベル7の『地獄大百足(ヘル・センチピード)』を手札に加える」

 

セクト

手札:3→4

 

「関係ねぇ! 何を手札に加えようが、こいつの攻撃で終わりだー! 『ヴェノム・サーペント』で、ダイレクトアタックだー!」

 

「やだ! セクトさん!」

「頑張ってー!」

 

 うるせー……

「『ハデス・オオクワガタ』、効果発動」

「なに?」

「こいつが破壊された時、デッキから『ポセイドン・オオカブト』を特殊召喚するぜ」

 向かってきた蛇の前に、銀色の鎧を着て、デカい三又の槍を持ったおっさんが現れた。

 ハデスに比べりゃだいぶ昆虫っぽい見た目した、このデッキのエースカードだ。

 

『ポセイドン・オオカブト』

 レベル7

 攻撃力2500

 

「攻撃力2500だと!? くぅ……ターンエンドだ! そしてこの瞬間、『ヴェノム・スワンプ』の効果でヴェノムカウンターを……!」

「悪いが断る。罠カード『砂塵の大竜巻』。こいつで『ヴェノム・スワンプ』を破壊させてもらうぜ」

「なぁ!?」

 今言った通り、相手の場に大竜巻が発生して、そいつがカードを飲み込んだ瞬間、目の前の毒沼は消えた。

「その後、手札からカードを魔法・罠をセットできる。俺はこいつをセットするぜ」

 『毒蛇の供物』辺りが飛んできたら厄介だから手札に温存しておいたが、これなら前のターンに伏せておいても同じだったな……

 

 

男子生徒

手札:0枚

LP:3500

場 :モンスター

   『毒蛇王ヴェノミノン』攻撃力0+500×6

   『ヴェノム・サーペント』攻撃力1000

   魔法・罠

    永続罠『ダメージ=レプトル』

 

セクト

手札:3枚

LP:800

場 :モンスター

   『ポセイドン・オオカブト』攻撃力2500

   魔法・罠

    永続魔法『大樹海』

    セット

 

 

(とは言え、ヤバいのは変わらねーんだが……)

 俺の手札は三枚とも、『大樹海』の効果でサーチしたモンスター。

 相手の場には、墓地の爬虫類族の数で攻撃力を上げる『毒蛇王ヴェノミノン』。

 攻撃力1000の『ヴェノム・サーペント』を破壊したとしても、ライフは削りきれない上に、ますます毒蛇王の攻撃力を上げちまう。しかも、永続罠『ダメージ=レプトル』の効果でモンスターまで呼ばれたら面倒だ。

 次のターンで奴を倒すには……

(……まあ、ドローしてから考えるか)

 

「俺のターン、ドロー」

 

セクト

手札:3→4

 

「……お」

「ん?」

「良いカードが来たぜ。永続魔法『強者の苦痛』を発動。相手フィールドのモンスターの攻撃力は、レベルの数×100ダウンする」

 

『毒蛇王ヴェノミノン』

 攻撃力0+500×6-800

『ヴェノム・サーペント』

 攻撃力1000-400

 

「ちっ……」

「そして、手札から『アーマード・ビー』召喚!」

 

『アーマード・ビー』

 レベル4

 攻撃力1600

 

「『アーマード・ビー』は一ターンに一度、相手フィールドのモンスターの攻撃力をエンドフェイズまで半分にする。俺はこの効果で、毒蛇王の攻撃力を半分にするぜ。ポイズン・ニードル!」

 『アーマード・ビー』の針から飛んでいった毒液を、毒蛇王は頭から被った。

 

『毒蛇王ヴェノミノン』

 攻撃力(0+500×6-800)/2

 

「攻撃力1100……!」

「バトルだ! まずは『アーマード・ビー』で、『ヴェノム・サーペント』を攻撃! ビー・カッター!」

 『アーマード・ビー』が『ヴェノム・サーペント』へ頭から体当たりを喰らわせて、その体を真っ二つにした。

「ぐぅ……!」

 

男子生徒

LP:3500→2100

 

「ぐぅ……だが、墓地に爬虫類族が増えたことで、ヴェノミノンの攻撃力は……」

 

『毒蛇王ヴェノミノン』

 攻撃力(0+500×6-800)/2

 

「……なに? 変化がない!?」

「『アーマード・ビー』の半減効果は攻撃力を固定する効果だ。だから半減した後にモンスター効果で攻撃力を上げようとしても、数値は固定されたままだから攻撃力も変化しねえ」

「……? へ? はい? なんて?」

 ……分かんねーか。まあ、プロにも知らねえ奴、割といるからなぁ……

「とにかく、少なくともヴェノミノンの攻撃力は、自身の効果じゃ変化しないってこった」

「んなアホな……」

 納得できない気持ちもよく分かるけど、ルールだからなぁ……

「……まあいい! この瞬間、『ダメージ=レプトル』の効果! 俺が受けた戦闘ダメージは1400。デッキから、攻撃力1400の『ナーガ』を特殊召喚!」

 

『ナーガ』

 レベル4

 守備力2000

 

「また守備力2000か。硬ってえデッキだな……んじゃ、続けるぜ。『ポセイドン・オオカブト』で、『毒蛇王ヴェノミノン』に攻撃! トライデント・スパイラル!」

 『ポセイドン・オオカブト』の槍が、毒蛇王の胸を貫いた。

「ぐおおお……!」

 

男子生徒

LP:2100→700

 

「だが、ヴェノミノンは戦闘破壊されたとしても、墓地の爬虫類族一体を除外することで、特殊召喚できる。墓地の『ヴェノム・ボア』を除外し、特殊召喚!」

 

『毒蛇王ヴェノミノン』

 攻撃力0+500×6-800

 

「さすがに一度フィールドを離れちまえば攻撃力は戻るわな。『強者の苦痛』の効果で攻撃力はダウンしたままだが、これでお前の攻撃は終わり……」

「『ポセイドン・オオカブト』で、毒蛇王を攻撃」

「……はい?」

「トライデント・スパイラル、第二打!」

 直前と全く同じことが再現されて、毒蛇王は破壊された。

「ど、どうしてぇ……!」

 

男子生徒

LP:700→400

 

「『ポセイドン・オオカブト』は攻撃表示のモンスターに攻撃する時、三回まで攻撃ができる」

「なんだとぉ……? くそ……墓地の『ヴェノム・スネーク』を除外し、守備表示で特殊召喚!」

 

『毒蛇王ヴェノミノン』

 レベル8

 守備力0

 

「三回攻撃は攻撃表示のみ。あと一回残ってるが、守備表示なら攻撃できねえだろう」

「ふ……永続罠『最終突撃命令』! フィールド上のモンスター全ては攻撃表示になり、表示形式を変更できなくなる」

 

『毒蛇王ヴェノミノン』

 攻撃力0+500×5

『ナーガ』

 攻撃力1400

 

「げっ! ……て、ちょっと待て、そんなカード伏せてたなら、攻撃力の低い『ナーガ』を攻撃すればその瞬間勝てたんじゃねえのか?」

「そんな勝ち方、面白くねえからな。相手のエースカードを前に素通りなんざ、プロのすることじゃねえ。相手をエースごとブッ倒すから、自分も相手も盛り上がるんだよ」

「くぅ……」

「とどめいくぜ! 『ポセイドン・オオカブト』で、毒蛇王を攻撃! トライデント・スパイラル、第三打!」

 三度目の槍。そいつが三度目の毒蛇王の腹を貫いた。

 

男子生徒

LP:400→0

 

 

「それまでー。勝者は、伊集院セクト君でーす!」

 相手のライフがゼロになったところで、担任の『加藤(かとう) 友記(ゆき)』先生の声が聞こえた。

 

「きゃー! セクトさーん!」

「格好良いー! こっち向いてー!」

 

 ……本当にうるせー。

 

「……サブデッキに……サブデッキなのに……」

 

 サブデッキに敗けたからって、ひざを着いてる相手を無視しながら、元の位置まで歩いていった。

 ……ま、白状すると、今のメインデッキを組む、だいぶ昔。

 水瀬家に隠れて決闘を始めた頃に初めて組んで、アカデミア中等部に入学した後も二年になるまで使い続けたデッキだから、ある意味これも、れっきとしたメインなんだがな……

 

「セクトさん、最高です!////」

「私にも決闘教えて下さい!////」

 

 俺が座った途端、大喜びで女子どもが寄ってくる。

(はぁ……)

 どいつもこいつも……

 今俺を囲んでる女子全員、入学した頃は、女子の自分達よりもチビな男子だって、他の男子どもと一緒になって見下したりバカにしたりしてきたくせに。

 それで決闘でぶちのめしてやったら離れて黙って、いざプロデビューが決まったらこの態度。

 女ってやつは……

 

『セクトさ~ん////』

 

 ……今思えば、初めて会った時から、俺のことを見下しもせずバカにもしないで、こんなふうに、無駄に敬うようなこともしない。

 そんな奴、一人しかいなかったんだよな……

(なんか……無性にあいつの顔が見たくなってきた……)

 

 ……

 …………

 ………………

 

 決闘が終わって、その日の授業も全部終わって、後は帰るだけ。

(あいつ、もう帰ったかな……)

 帰ったり部活へ行ったり。そんな生徒達の間を歩いて廊下に出る。

 

「……あ、会長」

 

「……おう、彰子」

 腹の中で考えてた顔が、ちょうど目の前から歩いてきた。

「一緒に帰るか?」

「え? あ、あの……は、はい! 帰りましょう////」

 あー……やっぱ癒されるわ、こいつ見てると……

 

 そんな感じで、放課後は彰子と楽しく話をしながら下校した。

 途中、お洒落なカフェに寄って、ケーキとコーヒーをおごってやった。

 遠慮する姿がかなり可愛らしかったが、それを嗜めながら、コーヒーを一口……

 

「……ぶぅふっ! 誰だ、コーヒーにミルクと砂糖なんか入れやがった奴は!」

 そう言いながら、カバンから取り出した味噌と出汁を入れると、何でか変な顔をされた。

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:外

 

「……」

 

「……あら? あず……ゆき、コナミ?」

 アカデミアの帰り、スーパーに寄ったアキは、何かをジッと見つめる赤い帽子を見かけた。

 話しかけようとかと近づくと、両手に何かを持っていた。

 それが何か、覗いてみると……

 

(『納豆の臭撃 ~ワームの体液~』か……『臭意注(くせいちゅう)! BARASA糸(バラサイト)』か……どっちがより臭い? どっちがより美味い……?)

 

「……」

 二つの納豆を手に、かなり真剣に悩むコナミを放って、自分の買い物に戻った。

 

 

 

 




お疲れ~。

久しぶりのオリカいこ~。


『ハデス・オオクワガタ』
 レベル7
 地属性 昆虫族
 攻撃力2500 守備力1900
 このカードが破壊された時、デッキから「ポセイドン・オオカブト」1体を特殊召喚できる。

漫画版5D'sにて、セクトが使用。
昆虫族はリクルーターが多いけれど、出せるのが一種類じゃ、まあ使われんわな。
その一種類も、OCGじゃ酷いことになっちまったしや。
出るこたぁ無さそうだけど、出るとしたらリクルート先はレベル7の昆虫族、辺りになるかなぁ……?


続いて、原作効果。


『ポセイドン・オオカブト』
 このカードは相手フィールド上に存在する攻撃表示モンスターを攻撃する場合、1ターンに3回まで攻撃する事ができる。

無論のこと、セクトが使用。
相手の場に攻撃表示モンスターがいる限り、三回まで攻撃ができます。
OCGがあまりにアレなんで、漫画版を採用しました。
でなきゃ、少なくともうちのセクト君がエースに採用するわけがねぇ。
原作の綺麗なセクトのエースだというのに、なしてあんなわけの分からん効果になっちまったんだ……


そんなわけで、次話まで待ってて。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。