遊戯王5D's ~剣纏う花~   作:大海

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注意事項!

ちと、本編がシンドくなってきたから、ここらで箸休めの回入れますら。
本当は第五部終了後に書こうと思ってたけど、終わりが見えんので……

時系列的には、少し前のいつぞやです。

内容はまあ、タイトルで察しておくれ。

でもって一行目の通り、途中気分悪くなったら読むのおやめね。

てことで、行ってらっしゃい。


※なお、作中の文章は、大海なりに彼の心象を言葉として現代語訳したものであり、彼が実際に口にしたものではない。



特別編 孤独の……

視点:???

 

 

 ― サテライト-BADエリア ―

 

 

「……」

 

 朝……

 

 おぉ……寒いなぁ……

 寝ている間に、段ボール箱から体がはみ出してしまったようだ。

 一枚では、やはり足りんか。とは言え、目ぼしい段ボールは、既に他の人間達が拾っていっちゃったし……オレが使える段ボールは、もっと遠くに行ってみないと落ちてなさそうだ。

 

 まあ、ここの寝床に、また戻ってこられたらの話だが……

 この間の寝床は、寝て起きたすぐ後に瓦礫が崩れて埋まっちゃったし、何より、一度離れたらすぐ道が分からなくなって、戻れなくなってしまう。

 人間はどうやって、家とか帰り道を覚えているのだろう?

 ……て、オレに人間のことなんか分かるわけはないか。

 

 ……ん? あれは、まさか……!

 

 

 

 ~♪

 

  ~♪

 

 ~♪ ~♪

 

   ~♪ ~♪

 

『時間や社会にとらわれず、幸福に空腹を満たす時』

 

『束の間、ヒトは自分勝手になり、自由になる』

 

『誰にも邪魔されず、気を遣わずモノを食べるという、孤高の行為』

 

『この行為こそが、ゲンダイジンには平等に与えられた、最高の癒しと言えるのである』

 

 

episode. 『サテライト-BADエリアのフルコース』

 

 

 

 いやぁ……昨日からどうにも運がいいぞ。

 昨日はこの、厚手のコートを拾うことができた。おかげで、おとといみたいに新聞紙を重ねて寝るより、よっぽど温かく眠ることができたし、何より全裸にならずに済む。

 しかも、ついさっき見つけた、この靴。

 デカくてぶかぶかなのはどれも一緒だが、底が厚くて丈夫にできている。昨日までは、石やらガラスやら鉄くずやらのせいで歩けなかった道もすいすい歩ける。

 これは、今日は昨日よりも色々な所へ行けそうだ……

 

 歩けることが分かったら……

 

 唐突に……

 

 かつ猛烈に……

 

 腹が……

 

 減った……

 

 

 

           「●」

 

 

        「   ・   」

 

 

    「        .       」

 

 

 

 よし! メシを探そう。

 

 

 足の下を気にせず歩けるというのはいいもんだ。

 以前、足の裏に鉄くずが刺さった時は、痛くて一日中歩けなくなったからなぁ。

 たまたま水たまりが近くにあったから空腹は平気だったけど、あの痛みのせいで、素足じゃあ今でも恐ろしくてまともに歩けない。ただでさえこの季節は、ただ歩くだけで冷たくて痛くなるからなぁ……

 

 んお? あそこは……

 何かの工場跡。

 前々から気にはなってたんだが、周りが瓦礫だらけで近づけなかったんだよなぁ。

 だが、この靴なら、行けるかも……

 

 ジャリ ジャリ 

 ジャリ ジャリ……

 

 おお! 思った通り。どれだけ瓦礫を踏んでも痛くない。

 今多分、釘を踏んだが、それも痛くない。ガラスも、鉄くずも……

 

 痛て!

 

 転んじゃった……だが、あまり痛くない。このコートのおかげか。

 いやぁ、人間は便利なもの考えてくれるよなぁ。こんな所に落ちてたんだから、今じゃあオレと同じ、ただのゴミなんだろうが、こうして違うゴミの身を守ってくれるんだから、人間様様というやつか……

 

 ……と、着いたぞ。

 

 人間は、いないな。

 お互い言葉も通じないし、あいつらゴミが相手だと思って、出会ったら痛いことしかしてこないからなぁ……

 

 お邪魔しま~す……

 

 この寒いのに、湿気が残ってて、暗くて、いかにも何かいそうな雰囲気。

 

 いいんじゃないの……?

 

 ……んお? さっそく、ご馳走発見だ。

 

 

【名も無い雑草】

・わずかに残った緑色がうれしい。

 

 

「いただきます」

 ……固いな。まあ、地面はコンクリートだし、下の方は緑色だから、掘り出すのもちぎるのも難しい。苦労するのはメシを喰うための宿命だ。

 ……と、やっと取れた。

 

 バク……

 

 苦い……

 上の茶色、パシパシした食感で、水気は全くないが、おかげで簡単に口の中で崩れていく。まあ、歯や舌の色んな所に細かく引っかかるのが困りものだが……

 お次は緑だ……わずかとは言え、この瑞々しさはやはり嬉しい。噛むことでにじみ出る草汁の感触、いい感じだ……

 

 この寒い季節、緑の残った雑草に出会えるとは、やはり今のオレはツイている。

 もっと奥へ行ってみよう……

 

 

 ……お? あ! 葉っぱが落ちてる。

 

 

【緑色の葉っぱ】

・寒い季節には珍しい緑の木の葉。

 

 

 ……いや、待て! 向こうにも何か落ちているぞ! 何か……

 

 

【茶色の葉っぱ】

・寒い季節には珍しくない枯れ葉。

 

 

 うーん……茶色と緑で葉っぱがダブってしまった。

 まあ、両方食べちゃんだけど。他に喰い物ないことだし……

 

 枯れ葉の歯に引っかかる感じと、緑が舌にへばりつく感じ……

 これはこれで、新しい食感だ。

 

 

 さて、もっと奥へ進んでみるか……

 

 別れ道……目の前には、見るからに硬い壁と窓。

 右は明るいけど、物が散乱している。左は暗いが、薄暗い……

 どっちへ行く、どっちへ……あせるんじゃない! オレは腹が減っているだけなんだ。

 右……ごちゃごちゃ散らかってて、食えるものが落ちてそうな気はする。明るいし。

 だが、散らかってるせいで探すのも大変そうだ。

 薄暗くて見えずらいが、ここは素直に、左だ。

 

 よし決まった! 左へ行く。

 

 こっちはこっちで色々散らかってはいるが、右が細かいものが散乱していたのに対し、こっちはデカいものがあちこち転がっている。

 ……お? あの部屋の中央、どうやらこっちで正解だったみたいだ。

 

 

【水たまり】

・雨漏りかな? 喉へのうるおい。

 

 

 ジュルジュルジュル……ゴクリ。

 水というのは、いつでもどこでも美味いものだ。

 喉へのうるおいを感じると落ち着く……地べたの水への感動。こういうの、ゴミの特権なんじゃないかって気がする。

 

 喉はうるおったが、ここまで雑草と葉っぱの二枚だけだし、そろそろ生き物が恋しい。

 ここに水があるってことは、周りに何かいるかもしれんな。ここを中心に探してみるか……

 

 あ! いたぁ! 見つけた! ゴキブリ……

 

 

【ゴキブリの殻】

・他の生き物に食われたらしい、ゴキブリの食べかす。

 

 

 がーんだな……出鼻をくじかれた。

 ……? この看板……

 

『あ、ごめんなさい。それ来月からなんですよ』

 

 ……人間の文字は全く読めんが、なんだか哀しい気持ちになってくる。

 とは言え、食べかすがあるってことは、ここにはゴキブリがいるってことだ。

 探索の価値有り!

 

 ……とか言ってるうちに、今度こそゴキブ……!

 

 

【ゴキブリの殻】

・他の虫に食われたらしい、ゴキブリの食べかす。

 

 

 ……チラ

 

『ですからごめんなさい。それも来月からなんですよ』

 

 相変わらず読めはしないが……人間はオレに恨みでもあるのだろうか?

 まあ、食べかすであれ、食い物には違いない……

 

 

 ……? また食べかすか?

 ……いや、今度こそ本物!

 

 バッ――

 

 やった! 捕まえた!

 

 

【ゴキブリ】

・食べかすじゃない、本物の味をご堪能あれ。

 

 

 ……ああ。口の中で必死に暴れている。それを、舌と歯を駆使して捕まえる。

 歯に挟まれ潰されながらも、その命の限り、最後の抵抗を繰り広げている。

 その抵抗にこちらも抵抗し、噛み潰す。

 草とか葉っぱに比べて味も匂いもしないが、その先に待つこの苦み臭み……

 ああ……これこそ、生きている物の味だ。

 既に枯れ、命を散らしたものには無いこの味わい。正に味わい深い……

 

 ……もう喰い終わっちゃった。

 一生に一度でいいから、もういらないってくらいの、大量のゴキブリ食ってみたいなぁ……

 

 他にはなにか……ん? なんだこれ?

 

 

【ホウ酸団子】

・工場が動いていた時の名残。食べるとお腹を壊す。

 

 

 うーん……

 食べないで下さいって顔してたゴキブリや草と違って、いかにも食ってくれよという顔をしているが……

 こういうのに限って、食った後ろくなことにならないんだよなぁ。

 勿体ない気がするけど、ここはスルーだ……

 

 スルー……ん?

 おお! またゴキブリ!

 

 ……どうやら、この団子に寄ってくるのかな?

 ならばここで待ち伏せ……していたいところだが、今はその気配を感じない。

 そもそも、寒いこの季節にゴキブリって、あんまり見かけないんだよなぁ。

 暑い季節なら、たまにではあるが、瓦礫の下とかに見かけるんだが……

 

 それに、あそこに見える階段も気になる。

 上に行けば、もっと他になにかいるかもしれない

 

 どうしよう……

 動くべきか……動かざるべきか……

 

 なんて、考えてる間も、やっぱりゴキブリの姿は無いし。

 よし! 上へ行ってみよう!

 

 

 階段を上るのも、随分と久しぶりだな。

 大抵この辺にある廃墟の階段なんて、上り始めで崩れてたり、瓦礫で通れなくなってることが多いんだけど。

 この階段は、余裕で上っていける。途中で色々なものが落ちてはいるが、この靴があれば怖くはないな!

 

 ……よし! 二階に着いた。

 ここから上は無いな。外から見ても、デカさの割に二階建てだったし。

 さて、ここには……

 

 ……え? まさか、あれは……!

 

 ――バッ

 

 やった! つかまえた!!

 

 

【新鮮なネズミ】

・これから冬眠に入るところだったのに!

 

 

「いただきます!」

 暴れる手足と頭を押さえつつ、腹に軽く歯を立てて、まずは皮を剥ぐ。

 そして中身に、かぶり付く!

 

 ……うん! 肉だ。いかにも肉って肉だ。

 血の鉄臭さ、肉の泥臭さ、そして内臓の生臭さ。

 口内にむせ返るほどの生々しさが広がっていく。これこそが真の、THE NIKU!

 しかし、やっぱネズミって、ゴキブリと違って温かいなぁ。触ってるだけで、何だかホッとする……

 

 あー……皮と骨も食えればいいんだけど、皮は臭いだけな上に噛み切れないし、骨は硬いんだよなぁ。

 それにしても、今でこそネズミやゴキブリがいれば捕まえられるものの、やっぱ大変なんだよなぁ、捕まえるの。腹が減っていると、力も出せないし。この前なんか、せっかく捕まえたネズミ、途中で噛まれて逃げられちゃったし。

 

 最初から、死んでてくれれば食うのも楽なんだが、それだと腐ってるし。

 腐ってない、けど死んでいる、そんなネズミが食えたなら……

 

 ……ん? あれは、そんなまさか!

 

 

【ネズミの死骸】

・ついさっき衰弱死したネズミ。腐ってない。

 

 

 ほーいいじゃないか! こういうのでいいんだよ、こういうので!

 しかも、まだ温かい。今日のオレは、今までに無いほどツイている。

 

 ……このワザとらしい死骸味。しかも、さっきと違って暴れることなく、逃げる心配がない分、安心して食べていられる。

 考えてみたら、こいつらだって、喰われたくてこうして喰われてるわけじゃないんだよなぁ。

 けどそれを言い出したら、オレの方が死んでしまう。

 生きてることに何の意味があるのか分からんが、分からないなりに生きてかなきゃいけない。そんな気がする。

 だから、このネズミの命、無駄にしちゃあいかんな……

 

 なんて言ってるうちに、喰い終わっちゃった。

 探せばまだいるかもしれないな……

 今のオレはツイてるし、こうなったら、この中を徹底的に周ってやるか!

 

 

 ――四時間後。

 

 

 結局、隅から隅まで探したけど、ネズミやゴキブリどころか、枯れ葉一枚見つけられなかった……

 お? 裏は海だったのか。汗は掻いてないが動いたし、ちょっと舐めとくか。

 

 

【海水】

・壁を叩いて降ってくる。舐めるとショッパイ。

 

 

 ……このショッパサは、どこで舐めても一緒だな。

 せっかくの工場だったけど、多分、ここにはもう食い物は無いし、他を探そう。

 

 

 ジャリ ジャリ 

 ジャリ ジャリ……

 

 

 にしても今日は本当、一段と寒い……

 ……冷たい。あれ?

 これは……

 

 雪だ! しかもたくさん降ってきてる!

 道理で寒いはずだ。メシだ!

 

 

【雪】

・とっても冷たい、空からの贈り物。

 

 

 よーし! 喰うぞー!

 

 まずは上を向いて、大口を開けて……少しずつしか入ってこないが、この、一つ一つが口の中で溶けていく感じ。いいじゃないか。

 そうしている間に……思った通り、瓦礫の上に良い感じに積もっている。

 手ですくって……

 手も口の中も冷てぇ! だが、この大量に溶けていく感じ。

 これだよ。この季節にしか味わえない贅沢だよ!

 

 上から降ってくる雪を口で受け止めて喰い、下に積もった雪をすくい取り喰い、それを何度も繰り返し。寒空の下であろうとも、エネルギーを求め動き続ける……

 

 うおォん! オレはまるで、人間火力発電所だ!

 

 

「……クシッ」

 冷えてきた……

「ごちそうさまでした……」

 もっと喰いたいけど、これ以上は、人間火力発電所も凍結しちゃいそうだ……

 

 

 常々疑問に感じていることだが……

 人間は、食べることが最高の幸せの瞬間だと言うが、こんな生きるために必要なだけの気持ち悪い行為、なにが幸せというんだろうか?

 色々見つけて喰えはしたが、それ以上に動いたせいで、結局大して腹は膨れていない。

 人間もこんなふうに、寒い日も暑い日も、メシのために毎日疲れて、好き好んで喰いたいわけじゃないメシを、気持ち悪いのも我慢して喰っているのだろうか?

 けど、喰わなきゃ死んじゃうし、気持ち悪さも慣れるしかないんだよなぁ……

 

 やはり、人間のことは全く分からん。ゴミに最初から分かるわけないけど……

 

 まあ、それはもうどうでもいいとして、今のオレは、本当にツイているとつくづく思う。

 この雪が降り積もってる中、靴も無しに素足で歩くことになっていたらと思うとゾッとする。

 雪の冷たさは元より、雪のせいで地面に何が落ちてるのかさっぱり見えない。

 ただでさえ寒くて痛い足で、そんなものを踏んづけたら……

 

 この靴なら、その心配は無さそうだ。

 

 心配がないと分かったら、また……

 

 腹が……

 

 減ってき……

 

 

「おい……」

 

 ん?

 

 ――ガッ

 

 痛て!

 

「テンメェ……俺様を嘗めてやがんのか!? このクソゴミがぁ!!」

 

 痛い! ちょ、やめて、が……っ

 

「ぶっ殺すぞテメェ!! 穴の分際で探し回らせやがってぇ!! なんだってこの俺が!! テメェなんかのためにこのクソ寒い中歩き回らなきゃならねえんだ!! 穴にしかなれねぇゴミの分際で!! ゴミならゴミらしく大人しくしてやがれって何度も言ってんのが理解できねえのかぁああ!?」

 

「があああああああ……」

 ちょ、アームロックはやめて……それ以上いけない!

 

「なんだこの汚ねぇ格好は!? テメー穴だろうが!! 俺らがいつでもヤれるよう服なんか着るんじゃねえって、何度も何度も言っといただろうが穴ぁああ!!」

 

 ああ! せっかく見つけたコートと靴が……痛って!

 

「次何か着てやがったらぶっ殺すからなぁあ!! 分かったな!! 理解したな穴コラぁああ!?」

 

 痛い……殴られて痛いし、足が冷たくて痛いし、寒いし……

 

「教えてやろうかテメェ……人間がモノ食う時はよぉ、誰にも邪魔されず、自由でなんというか、救われてなきゃあダメなんだよ。独りで静かで豊かでよぉ……っ」

 

「食われる側の分際で人間様の自由と救いの邪魔してんじゃねえぞ!! ああん!?」

 

 いや、ちょ、本当に待って、寒い、痛い……

 歩くから、我慢して歩くから……冷たい! 痛い!!

 足が! 足の裏が……!!

 

「さっさと歩きやがれ!! 全員待ってんだぞ!! ゴミの分際で、タカがこんな寒さで一丁前に痛がってんじゃねえぞおおおおお!!」

 

 自分はコートも靴も履いてるくせに……

 うっ、足の裏から血が……

 

「歩けっつってんだこのバカ野郎!! 俺が歩けって言ってんだよ!! これ以上俺を待たせんじゃねぇぞ!! 穴にしかなれねーゴミが!! クソゴミ!! ゴミクズ!!」

 

 

「孤独のクズめがよぉ!!」

 

 

「……」

 

 

【ホームレスの男】

・喰われるのは……ア・ナ・タ♡

 

 

 食後の運動と、デザートの時間か……

 

 

 

 オレも人間になりたい……

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 

視点:梓

 

 パチッ

 

「……」

 いけない。どうやら、眠っていたようだ。

 なにやら、えらく懐かしい夢を見ていた気がしますが……

 

 ……て、やだ、テレビ点けっぱなし。

 ドラマ、でしょうか?

 しかも、一目で分かる。このご時世なのに、カードに一切関係のないドラマ。

 そういうのもあるのか……

 

 まあ、興味ありませんが……

 

 

 GO☆RO♪

 

 GO☆RO♪

 

 GO☆RO♪

 

 I☆NO☆KA☆SHI☆RA!

 

 Fu~~~~~~~♪

 

 プチッ……

 

 

 ※CMの後は、ふらっとOUMI

 

 

遊戯王5D’s ~剣纏う花~

 

 KONAMI

 

「とうとう私達の出番が来たわね?」

「……」

「私達の使ったカード、カードパックになったらしいわ」

 

『ヒーロー・キッズ』

『デブリ・ドラゴン』

『E・HERO アイスエッジ』

『E・HERO エアーマン』

『E・HERO アブソルートZero』

『E・HERO ガイア』

『氷結界の龍 グングニール』

『ミラクル・フュージョン』

『コンストレック・エレメント』New!

 

『暗黒界の番兵 ベージ』

『暗黒界の狩人 ブラウ』

『暗黒界の術士 スノウ』

『暗黒界の龍神 グラファ』

『魔轟神レイヴン』

『氷結界の龍 ブリューナク』

『暗黒界の門』

『暗黒界の取引』

『シンクロ・クリード』New!

 

「……」

「CMの時くらい喋りなさいよ……ほら、次、声合わせるわよ」

「……」

 

『遊戯王5D’sオフィシャルカードゲーム! 決闘者包装(デュエリストパック)!』

 

「『雪乃編』!」

「『コナミ編』……」

 

『譁�ュ怜喧縺� 月 �ュ怜※喧※ュ怜 日、発売!』

 

(ルール)を守って!」

「楽しく決闘……」

 

 KONAMI

 

遊戯王5D’s ~剣纏う花~

 

 

 

視点:外

 

 

「二次作者、大海が、実際にお店訪問」

 

『ふらっとOUMI ~サテライト編~』

 

 

 いや~……なんだかんだ、ちょくちょく特別編してきたあっちと違って、こっちで私がちゃんと出るのって初めてなんだよねぇ。

 ああ! 一応言っとくけど、ふらっとOUMIと言いつつ、本人はこっちに来られないから、実際に歩いてるのは代理の外だからね。

 

 

 さあ、来ました! ここ、サテライト。

 ここでねぇ、シグナ―と、ダークシグナーとの戦いがあって、そこから半年をかけてシティとサテライトの壁が無くなって、街の被害も物の見事に復興してみせたと。

 たった半年でだよ! すごいねぇ。

 これ見てると、2011年3月に発生した、東日本大震災に対する復興のトロさにはムカついてくるわなぁ。

 まあ、この時代の人間で覚えてる奴なぞおらんろうけど……

 

 ……あ! あれがマーサハウス。

 後のチーム5D’sの面々が育った施設。

 こうしてみると、中々立派な建物だけれど……今ならともかく、差別されまくって治安も最悪だったはずの当時のサテライトで、強盗なり自然災害なりありそうなもんを、よくここまで維持することができたもんだら。

 今でも子供らの面倒みてるそうだし……今はみんなお留守かな?

 まあ、おっても行かないけど。不審者扱いされるんが関の山だし。

 

 サテライトの普通のエリアを通り抜けまして、見えてきたるは、サテライトの象徴、ダイダロスブリッジ。そして、そこを更に超えた、ここが、旧BADエリア。

 『Barbaric(バーバリック) Area(エリア) after(アフター) Damage(ダメージ)』。縮めて『BAD(バッド)』。多分みんな忘れてるわな、この略称。

 サテライトの中でも、とりわけ治安が最悪だった地区。アニメだと、遊星と鬼柳の決闘一戦目の後、ラリーらが遊星号を押していったシーンが印象深いかしら?

 ゼロリバースを引き起こした旧モーメントがあった場所でもあるから、それだけ他よりも被害がすごいことになってたもんで、ただでさえ酷いサテライトの中でも余計に被害が深刻で、最終的に見捨てられちまった地区だったんろうね。

 そんで、セキュリティも近づけないというか、そもそも眼中にも無かったろうから、サテライト住民でもマーカー付きを始めとした、とりわけの落ちこぼれだったりキチガイだったりが最終的に行き着いたことで、余計に酷いことになっちゃったんだろうなぁ、と推測できますわ。

 

 ほんで、幼き日の梓は、不運にもここを拠点にしちまったと。

 マーサハウスからはだいぶ離れてるし、こんな所なら暴漢の群れは元より、人攫いの一人や二人も余裕でおったろうからなぁ。梓みたいな可愛い顔した子ぉが一人でいたら、そら恰好の餌食にならぁな。

 まあ、結果的にそれで梓は救われたことになるから、やっぱ生きることは捨てたもんじゃねえって感じるけどや。

 

 

 そんな旧BADエリアもや、今じゃあ瓦礫やらゴミやらも片づけられて、廃墟は並びつつもだいぶ綺麗になってきてるわけだども、やっぱ、本当のゴミもちゃーんと掃除して始末しとかねばなるまいよ。

 

 つ~ことで、今日のゲストは、こちらー!

 

「おい離しやがれ!!」

「テメェ!! なんの権利があってこんなことしてやがる!! ふざけんな!!」

「君!! 私を誰だと思っているんだね!! こんなことをして、タダで済むと……ごぉっ!?」

 

 デカい声出してんじゃねーや……こっちも、シティが一つになった後であちこち散らばっとったお前らのこと、面倒くさいのも我慢してこうして書いてやってるんだろうがや。

「もご……もご……!」

 あん? なに? ……ああ、口に足突っ込んだままだったか。なに?

「ゲホ……何をわけの分からんことを言っているのか分からんがね、私までこのゴミどもと同じにしないでほしい! 確かに私は、かつてはサテライトでホームレス同然の状態だった。だが、シティが一つになったのをきっかけに真面目に働いて、今では育児養護施設をいくつも経営している! シティからの信頼も得ているし、次回の市長選では最有力候補と言われている身だぞ!」

 えーえー、そりゃあすごいわなぁ……

 

 たった半年で成り上がり過ぎじゃね? ってツッコミは無しで頼むわ。

 たった半年で街があれだけ様変わりする方があり得ないんだから。

 

「何を言っている?」

 気にするな。確かにね、他に集めたクソどもに比べりゃあ、成り上がってるし立派にやってるわな。

 それで過去のこととかちゃんと反省して心入れ替えて、本当に変わったってんなら放っておこうかとも思ったけどや。集めようと思った中にはそういうのもいたし。一人か二人。

 そんで、その経営してる施設に預かった子供ら、里親の元へ旅立っていった子ぉらも多いけど、その内ちゃんとした里親の元へ行った子は、どんだけいたんかいね?

「なに? どういう意味だ?」

 一人二十万円からだっけ?

「……!?」

 不思議なことに、旅立ってった子ぉらの行先、八割以上が海外なんよなぁ。

 引き取られた後のことも簡単にではあるが、調べても国外に出た後の足取りは全く掴めなんだし。ただの一人も。

 まあ、仮に死んじゃってても、国外のことなんか国内にいて分かるわけも無ぇんけど。

「……っ」

 そもそもやぁ。民間とは言え基本は国の助成金だけで成り立ってて、けどそれだけじゃとても足りないから、人件費なりが削減されて給料が安いって昔っから問題になっとるんに、あんたの経営する施設、やたら職員への給料が高いわなぁ? それも評判が良い理由の一つなんろうけど。

 評判を聞いた金持ちとかからの寄付金なんかもあろうけど、一体、助成金以外でそんな金、どこから出とるんかいね?

「……」

 

 出とるんかいねええええええええええええ!!!!

 

「……っっ!?」

 とぼけても無駄。バレとんのよ全部。

 ちゃんとした里親に渡す場合も、あるにはある。

 けどそのほとんどが、海外の奴隷商なり娼館なりに売りに出すか、闇医者の元で臓器にバラして、それのキックバックで大儲けしとんの分かっとるんよ。平成を遥かに超えるこの超少子高齢化社会に、よくやんべなぁ。

「な、なんの証拠が……!」

 全部揃ってるよ? ほらこれ、写真。相手は海外の奴隷商かな? その筋じゃ有名らしいから、セキュリティのその手の方面に強い人が見たら一目で分かるろうね。電話の会話の録音もあるし。

 そんで、こっちは裏金の帳簿。ザッと見てみたけど、子供売った売上に加えて、支出として市長選のために随分と色々な所にお金配ってるみたいねぇ。票集めのための接待パーティの映像もあるでや。私にはよく分からんが、高そうなスーツ着た偉そうな人達が集まってる。多分、帳簿に載った名前の人らだろうね。カメラマンのカーリー辺りにプレゼントしてあげたら喜ばれそうだわ。

 その他資料もろもろ。なんなら今すぐ、これ持ってセキュリティに連れてってあげようかい? え?

「そ、そんな証拠、どうやって……第一、なぜおまえが、そんなことを!?」

 

 作・者・目・線!!

 

「……は?」

 んなこたぁどうでも良えのんよ。

 それに加えて、バラすのが決まった子供、引き渡す前の日に味見しとったっけな?

 もしくは逆に、我慢できん時は先に味見して、ソイツを優先的に金に代えとったべな?

「ぐ……ぅぅ……っ」

 

 こいつに限った話しじゃねーや。

 シティが一つになった後、2020年5月にこの国で施行された『氷河期世代救済法案』にならって発足された、『サテライト住民救済法案』で、お前らに限らず全てのサテライト民が就職斡旋の対象になって定職に就くことができた。中には法案を悪用した企業での、求人広告に記載が無い劣悪な労働環境やら過酷な勤務体系とか、薄給やらタダ働き、パワハラや根強い差別意識なんかで逃げ出したのもたくさんおるけど、お前らは全員が全員、ただ問題起こしてクビになるか逮捕されただけやんけ。

 しかも、起こした問題は全員が全員、幼児もしくは乳児相手の性的暴行。

「それがどうしたってんだ!? テメーに関係あんのかコラァ!?」

「俺らがそいつらとヤりてーからヤってんだろうが!? それで捕まえる方が大げさなんだろうがよぉ!!」

「それがお前とどう関係あるってんだ!? さっさと離しやがれええ!?」

 べっつにー? お前らがどんな性癖持ってようが自由だし、私の知ったことじゃないけど? 被害者は気の毒だが、一傍観者の私が助ける義理も理由も無ぇことだしや。

 ただ気になったんはやぁ……もしもだ。お前らがそんな性癖持つ根本になった子ぉが、目の前に現れたらどうするんかなぁ……てことだいや。

「あん? 誰だって?」

 今から、十年……もっと短いかな? まあそのくらい前まで、お前らがサテライトで、穴って呼んで無理やり遊んでた子供だよ。

 

『……!!』

 

「おい! 君はソレがどこにいるのか知っているのか!?」

 ……ああ。知ってるよ。この子だって言っても信じられんろうね。立派に成長して、友達にも恵まれて、苦労もあるけど毎日頑張っとるでや。

「おい! 今すぐソレを連れてこい!! 金はいくらでも出す!! あの穴は私のものだ!!」

 

「ふざけんな! あいつは俺の穴だ!! 俺だけの精液便所だ!!」

「バカ野郎!! あれは俺の穴だぞ!! 俺だけの肉便器だ!!」

「俺のだ!! さっさと連れてきやがれ!! 俺のオナホールここに連れてこい!!」

 

 ……

 

「おい聞いているのか!? 私はこの十年、成り上がった後も、半ば死んだと諦めながらずっとあの穴を探してきたんだぞ! そんな私の苦労も知らず、毎日頑張ってるだと? 服を着てか? この私の命令を無視して? 何度も何度も服を着るなと命令したのに?」

 

 ……

 

「ふざけるなっ!! 穴にしかなれねぇゴミの分際で、この俺とヤることもヤらねぇで、この俺が着るなと言った服を着て、何を人間のように頑張るってんだ!! 早く連れてこい!! 今度こそ二度と俺に逆らえないようにしてやる!! 早くしろ!! この俺が連れてこいって言ってんだ!! ゴミに金出してやるって言ってんだぞ!! これ以上この俺を待たせ――っ!!」

 

 ――バキャッ!!

 

「はっ……は……はっ、は! 歯、歯――っ! 歯ぁあああああああっっ!?」

 もう喋るな。書く方も不快だし、不快な言動考えて書くのって結構大変なんだよ……

 ちなみにセリフで分かったと思うけど、この養護施設のおっさん。本編の最後で痛がる梓を無理やり引っ張っとった奴ね。

 

「なにわけの分からねえこと言ってやがる!? さっさと連れてこいって言ってんだよ穴をよぉ!?」

「俺の穴!! 早く連れて来やがれ!! 穴!!」

「穴!! 穴穴穴穴穴穴!! 穴穴穴穴穴穴穴穴穴穴穴穴穴穴穴穴!!」

 

 まったく……こんだけ群れてて過去にはつるんどったくせに、結局は自分第一な孤独のクズめら……

 聞く気無いろうけど、教えといてやる。

 さっきも言ったけど、仮にお前らが街中でその子を見掛けたところで、絶対に当時の子とは気付かんろうよ。それだけ成長して見違えたけん。

 けどや、いつだって、された方は覚えとんのよな。おどれら全員の顔も含めてやぁ。

 仮に偶然、街中でバッタリ出会おうもんなら、あっちと一緒で間違いなく発狂案件なんだわ。

 そんなことになったら、あの子も気の毒だし、何より小説的にもクッソ面倒くさい事態になっちまうでな。

 

 どーせ、お前ら全員、行き着く先は牢屋なことだし。

 だからそうなる前に、私は私で勝手に罰を与えるから。

 

「な、なにをする気だ……?」

 手、出せ。足も……

「手? 足? がぁ! い、痛い……おい! 貴様なにを……っ!」

 ったく……いくら本家がグルメ物とは言え、こんなもの食わすとは。

 さすがに恨むぞ、大海……

「おい、まさか、や、やめ……!!」

 

 

【男達の指】¥0

・指は一人につき二十一本。全員分、いただきます♪

 

 

『ぎゃあああああああああああああああああああ!!??!!??!!』

『ぎゃあああああああああああああああああああ!!??!!??!!』

『ぎゃあああああああああああああああああああ!!??!!??!!』

 

 ……

 …………

 ………………

 

 

 顎痛いし臭いし不味いし……集まってる男全員の指、二十一本ずつ全部は辛いわ。

 ただでさえ汚れまくった手の指に加えて、足の指と、アレ……

 道端のネズミの肉と、どっちがより汚いんだか?

 まあ、かじり切っただけで全部捨てたったけど。途中からは普通に刃物使ったし……

 

 

 ……さあ! そんなわけで、かつてはゴミと瓦礫と廃墟と、果てはそれ以上に汚くてどうしようもないゴミが集まってたサテライトも、今では確かな復興と共に、綺麗になっていっとりますわ。

 まあ、いくら街が綺麗になろうとも、人間の方はと言えば、いくら綺麗にしようとダメなもんは本当にダメだからなぁ。

 せめて、それならそれで、相手にトラウマを植え付けるレベルの迷惑を掛けんでほしいもんだいや。どうせ誰も相手しないんだから。

 

 そんなわけで、サテライトは、東京都ネオ童実野シティの、多分海の方にありますわ。

 地図が手に入らなんだから、行くときゃ現地の人に聞いておくれ。

 

 じゃ、そういうことで~。

 

 

 

 次回

『サテライト-ダイダロスブリッジの土左衛門』

 

 続かない。

 

 

 

 




お疲れ~。

生きてくことに意味を義務づけられるのが、人間て動物の不便さなんだよなぁ……

つ~わけで、次話から本編書いてくでな。
それまで待ってて。

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