東方Ψ綺憚 〜 Disastrous Life in Lotus Land.   作:ヘドロ爆弾

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幻想郷が架空の存在である事を知りつつも、幻想入りを夢見た事のある奴の為のクロスオーバー。





序説 ─ または僕は如何にして隣り合わせの平穏な世界に侵入するようになったか

僕は別に有名人でも何でもないのだから、僕のことを知らない人は沢山いることだと思う。

なので、まずは自己紹介させて欲しい。

 

 

僕の名前は斉木 楠雄(さいき くすお)

 

超能力者である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おっと、まだブラウザバックしないで欲しい。

 

これは頭がちょっとアレな人の妄言とか胡散臭い宗教の類いとかではない。

僕は(れっき)とした本物の超能力者である。

 

★超能力

例えば、手を触れずに物を動かすサイコキネシス。

例えば、言葉を介さず意志を伝達するテレパシー。

例えば、重力を振り切って空を飛ぶ空中浮遊能力。

例えば、一瞬で別の場所へ移動してしまう瞬間移動。

 

他にも、透視、千里眼、発火能力(パイロキネシス)発電能力(ヴォルトキネシス)氷結能力(クリオキネシス)、etc…

 

僕の使える超能力の種類は数え上げれば枚挙に暇がない。

 

こういう言い方をすると、もしかしたら「なんて羨ましい!1つぐらい分けてほしい!」みたいに思う人がいるかもしれない。

 

確かに、

 

瞬間移動を使えば学校や会社へは一瞬で移動出来るし

 

サイコキネシスを駆使すればコタツに入りながら遠くの台所にあるミカンを持って来れるし

 

飛行機に乗らなくても空中を鳥のように飛び回ることも出来るし

 

テレパシーのお陰で気になるあの娘の考えていることも全てお見通し、である。

 

 

 

超能力者の人生、それはまさに、夢のように素晴らしい人生…?

 

 

 

 

 だと思ったら大間違いだ!!

 

 

 

 

僕の超能力には必ずと言っていいほど大きなデメリットが存在する。

持続時間が短かったり、自分で上手く扱えなかったり、それどころか勝手に暴発したり…

テレパシーに至ってはON/OFF機能の切り替えが出来ない有様である。欠陥品も良い所である。消費者センターに電話してクレームを入れるだけじゃ到底気が済まないレベルだ。早急にリコールをお願いしたいものである。

 

どういう事か分かりやすく言おう。

つまり、僕は自分のテレパシー能力のせいで、『僕の半径200m以内にいる人や動物の思考が()()頭の中に流れ込んでくる状態』なのである。

 

恐ろしい事だと思わないだろうか。

僕は24時間365日、頭に流れ込んでくる大量の心の声を聞き続けているのである。

今までの16年間、如何に僕が精神を蝕まれてきたかを少しでも慮ってくれたら嬉しい限りだ。

 

テレパシーという1つの超能力を取り上げただけでこれなのだから始末に負えない。

 

その他の超能力も例外ではなく、僕の手に余る物ばかりだ。あまりにも力が制御出来ないものだから、寝返り1つ打っただけで家を吹き飛ばしたこともあるぐらいだ。

それに加えて、僕の超能力は年月を経るごとに強化されていくという嫌味な親切設計ぶりである。

 

このままでは日常生活を送ることさえままならないので、今は頭にアンテナ型の制御装置(周囲にはヘアピンということで通している)を装着することで力を大幅に抑えるのに成功しているのだが、それも一時的な対処に過ぎないのは言うまでもない。

もし今後、この制御装置を紛失するような事があったら…きっとトンでもない事になるだろう。

想像しただけでも背筋が凍る思いである。

 

 

こんな風に、僕の超能力は決して便利なものではなく、寧ろ厄介な災難事を呼び込む元凶にしかなっていないのである。

 

そう、今目の前にいるコイツもその災難事の内の1つ──────

 

「斉木さ〜んさっきから話ちゃんと聞いてるんスか〜?」

 

いや、よく見たら目前の軽薄そうなヤツは名前のないただのモブキャラだった。通行人Aである。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!人気投票で4位を獲得した超超超人気キャラを通行人A扱いなんて酷いっスよ!」

 

やたら自己主張してくる珍しいモブだな…

 

「いいっスか皆さん!オレの名前は鳥束零太!寺生まれのイケメン坊主!!斉木さんと同じPK学園に通う、赤丸人気急上昇中の高校二年生!!

し・か・も、なんと霊能力まで持っていて幽霊退治なんてお茶の子サイサイなスーパーボーイなんスよ〜!

…あっオレとご飯行きたいって娘はいつでも連絡下さいッス!オレの電話番号は090の……」

 

コイツのセリフは基本全部聞き流してくれて構わない。

皆さんお察しの通り、この男、鳥束零太はロクでもない軽佻浮薄(けいちょうふはく)な高校生なのだが、困ったことに霊能力者である事だけは紛れもない事実なのである。

 

★霊能力

幽霊を視認したり、幽霊と会話したり出来る能力。

鳥束本人はこの能力のせいで、生身の人間と幽霊の区別があやふやなまま育ったらしい。ご愁傷様である。

 

超能力者の存在が公になれば世界中が大騒ぎになり、僕の平穏な高校生活は大いに脅かされるに違いないだろう。

それを危惧して、僕は親兄弟等の身内の人達を除く他人には超能力の事は極力秘密にしているのだが、例外もいる。

 

コイツはその例外の1人でもあり、僕の超能力の事を知っていて尚僕に絡んでくる迷惑極まりない穢れた煩悩の塊である。

 

「煩悩の塊とは人聞きが悪いっスね!オレはただ、本能に身を任せて生きているだけっスよ!」

 

そんな奴はさっさと警察に逮捕されてしまえば良い。

 

というか、そんな事はどうでもいい。

今日は7月下旬の1学期終業式。

現在、学校からの帰途についている所である。

(ようや)く待ちに待った夏休みが幕を開けたと言うのに、お前は一体僕に何の用があるんだ。

僕は一刻でも早く帰って1人夏休みを満喫したいんだが。

 

「まぁまぁそう焦らないでください、実はっスね、折り入って頼みがあるんスよ。」

 

そう言って鳥束が厳かに学生カバンの中から取り出したのは、一冊の古書であった。

 

「斉木さん。これ、なんだと思います?」

 

?なんだそれは。随分と古びた書物だな。

何十年も前の昔に出回っていたような、かなり年季の入った本みたいだが。

 

「今オレが修行、というか居候させてもらってる寺の、物置の奥底に眠ってたシロモノなんスけど…」

 

そんな物を掘り起こしてる時間があったら、その頭脳にこびりついた煩悩を何とかする為に瞑想でもしておけば良かったのに。 

と、僕は人知れず心の中で悪態をついた。

 

そんな僕の考えはよそに、鳥束はパラパラとその書物を捲ってとあるページを僕に意気揚々と見せつけてきた。

 

「見てくださいよ、ココの記述!!」

 

そこには美麗な少女達の挿絵と共に、古ぼけていながらもハッキリとこう記されていた。

 

幻想郷(げんそうきょう)、そこは人間や妖怪や神霊達が一堂に会し、共に生きる幻想的な場所。美しい大自然に囲まれ、見目麗しき人妖神達が数多く暮らしている…』

 

なるほど、人間や妖怪や神霊達が集まる幻想郷、か…

 

…何?

 

妖怪?

 

神霊?

 

幻想郷?

 

一瞬様々な思考が脳内を錯綜し少しばかり混乱した僕を尻目に、分からないスか斉木さん、と鳥束は何故だかちょっと誇らしげである。

 

「要するに、種族に関わらず可愛い女の子達がいっぱいいるってことっスよ!凄くないですか!正にここは幻想郷という名の桃源郷!人目から隔離され、閉ざされた美少女だらけの楽園(パラダイス)!!こんなの行くしかないでしょ!!」

 

そうか…

鳥束お前、モテなさ過ぎて遂にこんな胡散臭い本をアテにしてしまう程に頭がイカれてしまったか…

 

「イ、イカれてませんってば!…ちょ、やめて下さい、そんな可哀想な人を見るような目でオレを見ないで下さいよ!」

 

鳥束はコホンと咳払いをすると、改まって僕の方へ真剣な顔つきで向き直った。

 

「いいスか斉木さん。よく聞いてください。

────オレ、凄い事閃いちゃったんスよ…」

 

…で、その凄い事というのは、何だ?

 

「何でこんなイケメンで霊能力もあるオレが女の子にモテないのか…どうして女の子達はオレという逸材をスルーしてしまう程に男を見る目がないのか…その真の理由っスよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、帰るか。

 

「ちょ、ちょちょちょ待って下さい!ここからなんスよ!いいスか?オレは霊能力者で斉木さんは超能力者、言ってしまえばオレ達はオカルトな存在なんスよ。」

 

お前と一緒にするな。帰らせてもらう。

 

「いいから聞いてください!…そう、つまりっスね、オカルトな存在のオレは人間相手だと相性が悪くてダメだったんスよ。妖怪!そして神霊!こういったオレ達と同じオカルト的存在にならモテモテ間違い無しなんスよ!!」

 

聞いて損した。さぁ、帰るか。

何はともあれ家が一番である。

 

 

「頼みますよ斉木さん!幻想郷に行くの手伝ってください!!いやもう一緒に行きましょうよ!!一緒にモテモテになりましょう!!」

 

人間に相手にされなさ過ぎて、遂に頭がおかしくなってしまったのか…

可哀想にな、さっ帰るか。

 

「この場所はなんかスゲー結界が二重に張ってあったりするらしくて、オレ一人じゃ絶対入れない感じなんスよ〜!」

 

必死に泣きつく鳥束に僕は目もくれず、家へと引き返そうとした。

 

とその時、鳥束はある言葉をボソッと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「…コーヒーブランマンジェ。」

 

 

 

 

 

 

何の脈絡もないその呟きに、僕は思わず歩みを止めた。

 

…突然何だ?

 

「知らないんスか?コーヒーブランマンジェ。牛乳をベースとした、全く新しい〈白いコーヒーゼリー〉です。」

 

そんなコーヒーゼリーがあるのか。

それは知らなかったな。

だが僕にはまるで関係のない話だ。

…それが、どうかしたのか。

 

「斉木さん行きつけの喫茶店、有りますよね。そこの新メニューとして、遂に出されるらしいっスよ。値段は少々張るみたいっスけど。」

 

 

…へぇ。そうか。興味ないな。

 

 

 

 

興味はないけど敢えて聞くが、実食してみたのか?

 

 

「はい。並のスイーツとは全く比較にならないほど絶品だったっスよ。」

 

 

 

…そうか。まぁ興味はないけどな。

 

 

 

 

興味はないけど敢えて聞くが、食感はどうだったか?

 

「コーヒーゼリーとは思えない程に口の中で優しくトロけるような食感でした。濃厚なミルクの甘みとほろ苦いコーヒーの奏でるハーモニー…それはそれはとても素晴らしい何物にも代え難い至高の味っスよ。」

 

 

 

………ふぅん。

 

 

 

「奢りますよ斉木さん。いえ、是非奢らせて下さい。幻想郷に忍び込むのを手伝ってくれるなら。コーヒーブランマンジェ。」

 

 

そう言って鳥束はまるで勝利を確信したようにニヤリと笑った。

が、その程度の浅薄な策を講じたぐらいで僕を都合良く利用しようとした鳥束に対して、僕は冷ややかな視線を送った。

全くもってやれやれである。

 

 

確かに僕は、甘味は、まぁ嫌いでは無い方だ。

それを今ここで改めて否定するなんてことはしない。

だがその程度の甘味に釣られて、そんな幻想郷だとか妖怪だとか神霊だとかいう下らないチャチな妄想話(ファンタジー)に付き合ってしまうほど僕は馬鹿ではないし、幼稚でもない。

鳥束、釣り針を垂らして僕を引っ掛けようとした相手がお前ならそれは尚更のことだ。

 

 

ただのコーヒーゼリー1つ如きで僕が簡単に動くと思ったら大間違いだ、ということをその煩悩だらけの頭によく叩き込んでおいたほうがいい。

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬にして、僕達は左脇腹町北部の中流エリアにある住宅街のド真ん中から人気の全くない薄暗い山中へと移動していた。

 

やれやれ、ここでいいのか?

 

「えぇと…記述によると多分ココでいいみたいっスね。いやぁ、瞬間移動って本当便利っスよね!」

 

★瞬間移動

点と点で場所を移動出来る能力。

制御装置を付けている間は、インターバルとして3分おきにしか使えないというデメリットが付随する超能力ではあるが、これはまぁ割と有用な超能力であると言って差し支えないだろう。

 

 

しかし、長野県の山奥か…随分と秘境めいた所に来てしまったな。確かにこの辺なら妖怪の1匹や2匹がひょっこり顔を出しても何ら可笑しくない。

そう思わせるだけの神秘的な雰囲気がここにはあった。

 

今気づいたが、僕達のすぐ(そば)には神社のようなものが建っていた。

僕は最初、それをただの薄汚い小屋か何かと勘違いしていたが、どうやら正真正銘神社のようである。

いや、正真正銘とまでは言い切れないかもしれない。

何故ならその神社は、誰にも手入れのされていない…所謂(いわゆる)廃神社の様であったからである。

 

薄暗く人通りの皆無な山奥に廃神社、なんだか神秘的を遙かに通り越して酷く不気味である。

日が落ちて夜になれば、ココはきっと絶好の心霊スポットに様変わりするであろうと容易に推察された。

 

「コレが多分…博麗神社と呼ばれる廃神社っスよ。これこそが幻想郷へ行く際の重要な目印なんだそうです。」

 

博麗神社、か…

 

「なんでも、この神社は幻想郷と外の世界を隔てる境界線上にあるらしいんスよ。」

 

鳥束は幻想郷へ行くことしか頭に無いらしく、神社を目印として目標である結界そのものを探すことに躍起になっていた。

 

その間僕はその廃神社をぐるぐると何周か歩いてみた。

が、抱く印象は寂れたボロ神社のままやはり変わらなかった。

僕には、これが鳥束の言う『幻想郷』とやらの入り口には到底見えないのだが。

 

「恐らく、ここら辺に結界が張ってあるハズなんスけど…」

 

熱心に辺りを捜索する鳥束の足がピタリと止まった、かと思うと突然

 

「あっスゲェ!本当に有りましたよ斉木さん!アレですアレ!!」

 

と叫びだした。

僕にはそこはただの無の空間にしか見えないんだが。

一般人から見れば、無を見つめて興奮しているヤバイ人である。

 

不審者を1人放っておく訳にもいかないので、いや僕には何も見えないんだが、と鳥束に呼び掛ける。

それを聞いた途端、鳥束は嫌味ったらしくほくそ笑んだ。

 

「あれれ〜?まさか斉木さんには見えないんスか〜?オレにはバッチリ見えてるものが斉木さんにはなぁーんにも見えてないんスか〜?」 

 

よし、僕だけ帰るとするかな。

 

「じょ、冗談っスよ。」

 

霊能力の一貫なのかは分からないが、コイツは幽霊が見えるだけでなく、例えば透明化能力を使った僕やこういった結界などの、本来であれば不可視であるハズの存在までも何故か視認出来るのである。

 

というか、この古書にある記述をよく見てみると

 

『何処まで行っても延々と同じような景色が続くだけで境界には辿り着けず、引き返そうとすると一瞬で元の場所に戻される』

 

と書かれているじゃないか。

 

つまり、ポケモンで言うところの「もどりのどうくつ」みたいなもので、恐らくではあるが結界付近の空間が歪んでいるんだろう。

そんなとんでもない結界を簡単に視認出来てる鳥束(お前)が異常なだけだ。

 

 

しかし、僕には結界が見えない以上どうしようもないんだが。

どうする?帰るか?

これはもう帰るしかないな。

よし帰ろう。

 

「何言ってんスか斉木さん。サイコメトリーがあるじゃないスか!折角結界発見にまで漕ぎ着けたんだから、絶対幻想郷へ行くっスよ!」

 

…やれやれ、まさかサイコメトリーまで使う羽目になるとはな。

 

★サイコメトリー

物体に残る人の残留思念を読み取る超能力。

カッコよく言うなら、『物体に秘められた“記憶”を読み取る超能力』。

素手で物体に触る事で無条件に発動してしまうので、普段は極薄で透明の手袋を付けて発動を未然に防いでいる。

人に触れた場合は、触れた対象の五感を共有・体感することが可能になる。

 

余談ではあるが、僕はこの能力が1番のクソ能力だと思っている。

それは何故か?

例えば素手のままトイレの便器などをうっかり触ってしまったとする…

 

いや、もう多くは語らずともお分かり頂けるだろう。つまり、そういうことである。

 

 

僕はビリビリとその極薄の手袋を破いて鳥束の肩に手を置いた。鳥束の視覚を共有するためである。

 

するとなるほど、確かにそれらしい結界が広がっているのが今にしてやっと僕にも視認できた。

 

…しかし、まさか本当にそんな胡散臭い場所が実在するとはな。

 

実は僕は、自身が超能力者でありながらもオカルト的な存在はあまり信じていない方である。

今では当たり前のように存在を受け入れている幽霊も、鳥束と出会う前は全く信じていなかった。

というか、鳥束という霊能力者に出会ったことで信じざるを得なくなった、と言うのが正しい。

 

そう考えたら、今まで有り得ない、存在するわけがないと僕が思ってきた妖怪やら神霊やらも、幽霊がいるぐらいならひょっとしたら本当にいるのかもしれないな。

微かではあるが徐々にそう思い始めていた。

現に今、胡散臭い古書の記述通りの場所で非常に巨大な結界を目の当たりにしている訳である。

 

「じゃ、斉木さん、お願いします!」

 

何をだ?

 

「何をだ?じゃないっスよ、一度ぶっ壊してくださいよコレ。」

 

そう言って鳥束は目の前に広がっている結界を指差した。

 

いやいや、わざわざ張ってあるぐらいなんだから壊しちゃ駄目なんじゃないのか。何か不吉な事が起こるとか世界が滅ぶとか、何かから自分達の身を守っている、だとか。

 

「だって壊さないと入れないじゃないスかオレ達。それに、斉木さんには復元能力があるんだからそれで間髪入れずに元に戻しちゃえば平気じゃないスか!大丈夫っスよきっと!」

 

★復元能力

物体や動物の体を以前の状態に戻す能力。

制御装置付きの場合、同じ対象には1日1回1日分しか遡れないが、制御装置を外せば、同じ対象に1日3回7年分(つまり同じ対象には最大21年分)、状態を巻き戻すことが出来る。

 

簡単に言えば、割ってしまったお皿を1日前の元の状態に戻したり、40歳のオバちゃんを19歳のピチピチギャルに戻したり出来る能力である。

確かにこの能力を使えば一度壊した結界はすぐに元に戻せるだろう。

 

だからと言って、鳥束お前な…

 

「なんか論理的な結界がどうたらこうたららしいんスけど、斉木さんなら多分なんとかなると思うんで、どうかお願いします!!」

 

いよいよもってコーヒーゼリー1つでは割に合わない仕事になってきたな。

勝手に他人が設置した結界をぶっ壊すだなんて随分と乱暴で身勝手な行為ではあるが、しかしコーヒーブランマンジェの為だ、仕方あるまい。

 

結界を張ったであろう人に心の中で僕は小さく謝ると同時に、僕は責任を負わないぞと鳥束に念を押しておいた。

 

そして、僕は手を前に突き出して力を少し込め、目前の結界に意識を集中させた。

すると(たちま)ち結界に綻びが生じると共に、朧げで不規則な波が発生し始め、その直後瞬間的に人間大のサイズに穴が開いて僕達二人を包み込んだかと思うと…

 

 

 

 

 

周囲は暗転した。

 

 




プロローグ、つまり初めて幻想郷に入るまでの話です。

序説…本論に入る準備としての説明・論説。序論
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