白玉楼にて、幽々子の庇護と妖夢の指南を受ける事になった。
次の目的地は永遠亭…出会うは、月の頭脳と御伽話のかぐや姫。
「紫さん、次はどこに向かうんですか?」
「今から行くのは…春雪異変の次に起こった異変…永夜異変と呼ばれる異変の場所。碧君、あなたの世界にはかぐや姫という御伽話があったでしょう?」
「えぇ。かぐや姫って言えば、子供なら誰しも知ってる様な物語ですから。それと何の関係があるんですか?」
「今から行く場所…永遠亭にはね、そのかぐや姫…本人がいるのよ?」
はい?…え?嘘でしょ?かぐや姫って実際に居たの?
「本当なんですか?!で、でも、かぐや姫が居た時代って奈良時代とかそれくらいじゃ…?」
「あら?よく知ってるじゃない?そのかぐや姫のモチーフになった人物こそ、異変の主、『蓬莱山輝夜』永遠と須臾を生きる月のお姫様なのよ」
「永遠と…須臾?」
「永遠は分かるわよね?須臾はその逆、刹那よりもさらに短い時間の事。彼女達はその能力を使い、異変を起こしたの」
「それは…どんな異変だったんですか?」
「最初は誰も気が付かなかった、博麗の巫女も、そして、私すらも。でも時間が経つにつれてその異常さに気が付いた。そう、本来ならば満月なのに、空に浮かぶ月は、何故か欠けていた。本物の月は隠され、空に浮かぶのは偽物の月だったのよ。月が無いことは妖怪達にとって死活問題。そこで私が夜という時間を止めて、その間に異変を解決することにしたのよ」
「月の光は、妖怪にとってそんなに重要な物なんですか?」
「えぇ…妖怪によっては、力の回復、精神の不安定、自我の消失…様々な弊害を生んでしまう。そこで、私と霊夢、レミリアと咲夜、幽々子と妖夢。後は……まだ碧は出会ってないけど『霧雨魔理沙』と『アリス・マーガトロイド』という二人も参戦しての総力戦になったわ」
「それだけの人達が共闘しなければ倒せない相手だったんですか?!」
「いえ、実際は共闘と言うよりも、それぞれの思惑で動いていたから、実際は足の引っ張り合いになってしまったのだけどね…」
「まぁ、目的が統一していない味方は、敵って言葉もあるくらいですしね…。それで、結局そのかぐや姫と月は何の関係があったんですか?」
「良い所に気が付いたわね。輝夜は元々月から追われていた罪人だったの。そして、逃げ回る内にこの幻想郷へと辿り着いたのだけれど…」
(かぐや姫が罪人?…どういう事なの?)
「その追ってから逃げる為に、偽物の月を造り出し、永遠亭へと来れないようにしたの。まぁ、そもそも、月の使者は博麗大結界に阻まれて、入る事すら出来なかったから、結局、無意味だったのだけれどね…。ホント、無駄足だったわ…」
(御伽話で聞いてるかぐや姫は帝の元から、使者と共に月へと帰って行った。そのお姫様がなぜ罪人になったのか…)
「考えてるとこ悪いけど…着いたわよ。ここが”迷いの竹林”にある”永遠亭”。今では病院代わりの事をしているのよ」
(病院?ますます分からない…)
「さて…優曇華!てゐ!居ないのかしら!」
すると中からドタドタと音がして一人の少女が現れた…ウサギ耳?
「ゆ、紫様?!い、いらっしゃいませ。本日はどういったご用件でしょうか??」
「お出迎えご苦労様、優曇華。そうね…あなたの主人と月の頭脳はいるかしら?」
優曇華と呼ばれた少女が慌てて対応する。
「はい!輝夜様でしたらお部屋に、師匠でしたら研究室の方に居ます!」
「そう、なら悪いんだけど、輝夜の部屋に集めて貰えないかしら?」
「直ぐに対応致します!少々お待ちください!」
そうして、再びドタドタと屋敷に入っていく優曇華さん。なんだろう…シンパシーを感じる。
暫くして、少しやつれた感じの優曇華さんから、屋敷の奥に案内されて行った。
「輝夜様、師匠、失礼いたします…」
するとそこに居たのは二人の女性…長い銀髪を三つ編みにし、白衣を着た女性と……。
言葉にすることすら恐れ多いとすら思える、まさに傾国の美女…。一目見て分かった、この人がかぐや姫なんだと。
「久しぶりですわね。『八意永琳』、『蓬莱山輝夜』その後、安心して暮らしているかしら?」
「えぇ、輝夜の御守りと町医者という二束のわらじだけど、前みたいに追っ手を気にせず暮らせるから助かっているわ」
「御守りなんてひどいわねぇ…私の方も、永琳の心にゆとりが出来てくれて安心しているわ。それで、今日はどうしたのかしら?」
「この前新しく幻想入りした子の話は聞いているかしら?この子がそうなんだけど…。実はその事で折り入って頼みがあるのよ」
「あら?賢者様ともあろう方が頼みなんて珍しいわね?何か事情があるのかしら?」
そうして、僕は自己紹介をして、紫さんが説明をしてくれた。
僕は悪い妖怪に狙われやすく、一人で行動したら危険が高い。
それで、幻想郷の各勢力の人達に守ってもらう為に、挨拶がてらお願いして回っている事を。
「ふぅん…。話は分かったわ。それで、その子を守るメリットは何?悪いけど他の勢力みたいに私は感情では動かないわよ?」
「別に、それならそれで構わないわ。既に”紅魔館”、”冥界”、そして”八雲家”はこの子を守ることに決めているから」
すると驚いた輝夜さんがこちらにやってきて、僕の眼鏡を取り、髪を上げた…何を…?
「動かないで!……そのまま私の目を見て頂戴……」
そのまま、暫くの間、僕と輝夜さんは見つめ合った。傾国の美女…。
でもなんだろう…?瞳から感じるこの感情は…?
そして、どれくらい時間が経ったか、どこか懐かしそうな顔をした輝夜さんが、僕から離れて行き…。
「ふぅ…いいわよ。私は特に問題ないわ。ではこちらも名を名乗りましょう。私は『蓬莱山輝夜』この永遠亭の主。そして、隣に居るのは『八意永琳』月の頭脳、今は医者をしているわ。…とは言え私達はあまり動けないから護衛に付かせるのは優曇華とてゐになるけど…永琳もそれでいいかしら?って永琳?聞いているの?」
しかし、当の永琳さんはこちらを見たままフリーズしている。
「はぁ…検討は付くけど…これはまずいわね…。面倒な事にならないうちにさっさと出て行きなさい?まぁ、家に来るなら、お茶とお菓子でも用意しておくから」
「ありがとうございます、輝夜姫様…「輝夜でいいわよ」…なら、輝夜さんで。でも、本当に良かったんですか?」
「これでも、魑魅魍魎溢れる都で過ごした人間よ?人を見る目はあるわ。あなたの目は…いいえ、今はいいわ」
そう言って、そっぽを向く輝夜さん。
「お忙しい中すみませんでした…。何か僕にできる事が出来たら、直ぐに手伝いにきます。それで、今は、勘弁して下さい」
「気にしなくて良いわ、必要な事はうどんげとてゐに言って頂戴?…それから、てゐ!」
すると優曇華さんの横に控えていた小柄な少女が反応した。橙ちゃんと同じくらいの年なのかな?
「なんでしょうか?姫様?」
「自己紹介と、あなたの能力を使ってあげなさい。いいわね?」
「了解です。あたしゃ『因幡てゐ』そっちの世界じゃ因幡の白ウサギって言われてるのかね?まぁ、いいさ。あたしの能力は”人間を幸運にする程度の能力”。まぁちょっとした幸運だから良いことがあればラッキー程度に考えてくれればいいよ」
ちょっと待って?!因幡の白ウサギ伝説って御伽話の…しかも時代で言えば百万年以上前の話になるんじゃ?!
「あぁ…驚くのも無理はないか。こんな形(なり)でも実は幻想郷でも割と古参の部類なんだよ?じゃあちょっと目を瞑って貰えるかい?」
そうして、僕は目を瞑り何をされるのか不安半分で待つと…。
チュッ…。?!頬に今、柔らかい感触が…?!
「ふぅ…目を開けていいよ?これで君には私の加護が授けられた。ただし過信はしないでおくれよ?私の幸運は、あくまでも、ほんの少しなのだからね?」
すると、少し呆れた顔をした輝夜さんから…。
「てゐ…自重なさい?普通に頭を撫でるだけでも、あなたの加護は十分に受けられるでしょうに…」
「あはは♪これも一つの役得ってやつさね♪さて、後はうどんげに任せるから、あたしは気が向いたら護衛に回るよ。それじゃあね!」
そう言っててゐさんは去って行った。色々とインパクトの強い人だったなぁ。
「なら、永琳が気を取り戻す前に次の場所へ行きなさい?彼女には私から伝えておくから」
「はい、色々とありがとうございます。輝夜さん」
「なら、次の目的地にこのまま向かうわよ?…輝夜…ありがとうね」
「あなたから、お礼を言われるなんてね…。良いわよ、好きでやった事なのだから」
「さぁ、じゃあこのままスキマで移動するわ。付いてきて」
そういってスキマを開き中に入っていく紫さん。僕も輝夜さんに一礼し、その中に続いていく。
「御伽話のかぐや姫…実際に会ってみてどうだったかしら?」
僕は少し考えた後に…
「見た目は、本当に伝承通りの、美しい人でした…。でも、あの瞳にあった感情は……なんだろう…郷愁?いえ…哀愁の様な物が伝わってきたんです。何不自由なく育てられたお姫様…もっと高貴で崇高な人なのかと思ってたんですけど…」
「誰にでも、そういった感情はある物なのよ。傾国の美女でも、それは例外じゃない。それが感じられたなら、あなたにとっても良い経験だったわね」
そうして、二人はスキマの中を進んで行く…次なる目的地”無縁塚”に向けて…。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「姫様?よろしかったのですか?誰にも与さず…が姫様の信条だったはずなのに…?」
「うどんげ…あなたのその生真面目さは美点だけれど、もっと臨機応変に、広い視野で物事を捕えなさい?それと…永琳!いい加減戻ってきなさい!」
すると永琳は、ハッとした表情で意識を取り戻し…。
「輝夜!…あの人は!?なぜここに居るの?!あの人は私が…?!」
「落ち着きなさい!!!月の頭脳ともあろう者が軽々しく取り乱すな!」
女王たる風格、その一喝により永琳は鎮まる…。
「あの子とあの人は別人よ?確かに顔立ちは似てるけれど、魂の質が違う。まぁ、あなたが錯覚するのも無理はないけれどね…」
そう、碧は似ていたのだ。月に居た頃に永琳の恋人だった人に…。彼女が月を発つ時に自ら殺した恋人に…。
「あの時、あなたがその選択をしてくれなければ、私は此処には居なかった。そして、彼の事を思い出させてしまった事を、本当に申し訳なく思う…。もし、彼の…碧の護衛に反対なのならば、あなたは外れてくれてもいいわ。その分は私が何とかするから」
「輝夜…何故そこまで、彼の事を?」
そうして、一息ついた輝夜は、懐かしむ様に語った。
「似ていたのよ…。彼の優しい瞳が…おじじ様とおばば様に…。ただ純粋に、私を優しく愛してくれた、あの時の二人の瞳にね…。感情では動かないって言っておきながら、結局は自分の感情で動く…軽蔑したかしら?」
永琳は知っていた。輝夜がどれだけあの二人の事を愛していたのかを…。あの二人から遠ざけられ、どれだけ絶望したのかを。
そして、そんな優しい瞳をこの幻想郷に来た今でも忘れていない事を。
「いいえ、そんな事は無いわ。それに輝夜が決めた事なら反対はしない。彼の…碧の事は私も守りたいと思う。勝手な事だけれど…あの時の贖罪になればと…あの人とは違うと分かっていても、私も感情には逆らえないの。それは同じだわ」
「なら決まりね。永遠亭は全力で彼を守る…。この幻想郷に居る限り。どんな敵からも守って見せると…。それよりもいいの永琳?」
「…?何がかしら?」
「あなた、一目惚れしたんでしょう?「?!///」丸分かりよ…。まぁ昔の恋人に似てたってのもあるのでしょうけど…まさか永琳がショタ属性だったなんてねぇ…」
「か、輝夜!違うわよ!私はまだ惚れてはいないし!偶々気に入った子が少し背の低い子だっただけで…はっ?!」
「はぁ…月の頭脳も、語るに落ちたわね…」
こうして、永遠亭は、今日も賑やかな喧騒に包まれる。新しい風が駆け抜けるのを感じながら…。
永琳の設定は少し弄っています。
元恋人有りで、現ショタ属性。
どうでしょうか?
挨拶回りは地霊殿まで行います。
理由は途中で分かります。