東方嫉妬姫   作:桔梗楓

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永遠亭にて、てゐの加護。輝夜の守護を得る事に、そして永琳から(性的に)狙われる様になったなった碧。
次なる目的地無縁塚…出会うのは死神と閻魔。
尚、当作品での閻魔様はロリではなく死神に負けず劣らずの長身グラマラスな女性となっております。


10話 挨拶回り~無縁塚編~

「”六十年周期の大結界異変”」

 

「それが、今、向かってる場所…”無縁塚”で起きた異変ですか?」

 

「えぇ、魔法の森を抜け、『再思の道(さいしのみち)』を進んだ先にある、木々に囲まれた小さな行き止まりの空間、無縁仏のための墓地。無縁塚はそこにあるのだけれど、所謂、三途の川と地獄へと繋がる場所なのよ」

 

「地獄って…本当にあったんですね…」

 

「まぁ、あなたの想像している地獄とは少し違うと思うけど…。話を戻すわね、その無縁塚を中心に、幻想郷中でありとあらゆる全ての花が、季節を無視して咲き始めたの…。そして、その理由なのだけれど…六十年…これは人の寿命の平均と言われているわ。そして、それは外の世界も例外じゃない。外の世界で死んだ者の魂は、この幻想郷へと誘われる。そして、本来であれば死神がそれを地獄へと連れて行くの。ただ、その時は尋常ではない量の魂がこちらの世界に来たせいで、死神も処理が出来なかったの。その結果として、行き場を失った魂は花に宿り、一気に咲き始めた。これが異変の内容ね」

 

「つまり、その異変は今後も六十年周期で起こる可能性があるという事ですか?」

 

「いいえ、それは無いと思うわ。ネタばらしをするようですけど、その時魂が溢れかえった理由として、死神が仕事をサボっていたというのが事の真実だったのよ。まぁ、それ以来、同じ事が起きないように閻魔が直々に見回りや、人員の増員をしたみたいなんだけれどね」

 

「サボってたって…随分ぐうたらな死神さんなんですね…」

 

「そうね、まぁ、あなたのイメージする死神とはちょっと違うかもしれないですからね。さて、此処が”三途の川”なのだけれど…居たわね…」

 

紫さんの視線の先には、寝転がってスヤスヤと息を立てる二つの大きな山…もとい女性が居た。あの人がひょっとして死神なのかな?

 

「はぁ…小町!起きなさい!閻魔が来るわよ!」

 

「ふぇっ?!四季様?!すみません!サボってた訳じゃないんです!赦して下さい…って、あれ?…いない?」

 

「ようやく起きたわね、小町」

 

「あれ?紫さんじゃないですか?どうしたんですか珍しい?それに…そっちの子は生者ですよね?」

 

「えぇ…。本当なら、此処には死んでも来たくなかったけど…この子の紹介に、今幻想郷の各地を巡っているのよ。碧君、自己紹介を」

 

紫さんが来たくない…?どういう事なんだろう?まぁそれよりも…。

 

「あ、はい。僕は大神碧です…碧って呼んでください。つい最近幻想郷に来ました…よろしくお願いします」

 

「ふむ…良い子だねぇ。私の名前は『小野塚小町』…名字で呼ばれるのは好きじゃないから小町って呼んでおくれ。私は、この三途の川の水先案内人を務めている死神さね。よろしく頼むよ」

 

そう言って僕の前に立つ小町さん…うわ、今まで会った女性で一番背が高いかもしれない…。

 

「さて、自己紹介もした事ですし、さっさとあの閻魔に会わせて頂戴」

 

「四季様にかい?あいにく、今日は四季様は非番で、また日を改めて…「その必要はありませんよ」…四季様?!何でここに?」

 

そう言ってまた、別の人が現れた。緑色のショートヘアに左右非対称の色をした独特の服を着た、紫さんと同じくらいの背の女性…。

 

「あら?あなたから足を運んでくれるなんて、手間が省けたわ…閻魔様?」

 

?!…この人が閻魔様…?でも、何で紫さんは機嫌が悪そうなんだろう?

 

「先程、冥界の幽々子さんから連絡を頂きました。二度手間になっても困りますので、こちらから赴いたまでです」

 

「そう、なら、さっさと自己紹介を済ませて次に行きましょう」

 

「相変わらずの態度ですね…八雲紫…。まぁいいです。私は『四季映姫・ヤマザナドゥ』この幻想郷の最高裁判長です。ヤマザナドゥは役職名ですので好きなように呼んで下さい…まぁ、今日は非番なので良いですが…」

 

「非番なのに態度が偉そうですわね?随分なご身分ですこと…」

 

刺々しく紫さんが答える。それを払しょくするように…。

 

「えっと、僕は…「先程伺いました。大神碧さんですね」…はい。それでよろしくお願いしますと挨拶に来たのですけど…」

 

どうにも空気が良くない…主に紫さんがだけど…。小町さんも先程と打って変わって緊張してるし…。

 

「あなたの事は、幽々子さんから聞き及んでます。ですので、それを踏まえた上で勝手ながら”浄玻璃の鏡”であなたの過去を見させて頂きました」

 

「プライバシーも何もあったものじゃないわね…。それが閻魔のすることかしら?」

 

「八雲紫…少し黙っていなさい。”浄玻璃の鏡”は、あなたの過去の行い、全てを映し出すもの…それが善行であろうと悪行であろうとも…」

 

「僕の…行い…?」

 

「閻魔として言わせて頂きます。大神碧…。あなたは罪を背負っている」

 

「僕の…罪…?」

 

「あなたの行いは尊いものでしょう。他人を助け…友を助け、消えゆく自身を顧みず、最後の最後まで友を信じ続けた。ですがそれは、本当にその人の為に、友の為になったのでしょうか?……そう、あなたは少し優しすぎる」

 

”優しすぎる”…自身のトラウマとも言えるその言葉を聞き…僕は何も言えなかった…。

 

「……優しい事の…何がいけないんですか…?」

 

「あなたの優しさは責任感を問わない物…。対極の”厳しさ”を手術器具と例えるなら、”優しさ”は麻薬。痛みを消すことはできるが、問題の解決は何もしていない…いえ、むしろ自己回復を妨げる分、より一層、性質が悪い」

 

すると、僕の後ろから凄まじい殺気と共に声が聞こえた…。

 

「……四季映姫。それ以上の、私の家族への侮辱は、命を散らせることになるわよ…?」

 

ピリピリとした…いや、押し潰されるような空気…。

 

「あなたの能力と私の能力、相性が悪いのは知っているでしょう?それでも挑むのであれば、私が此処で裁いてあげましょう…幻想郷の賢者よ!」

 

あふれ出るプレッシャー…。

 

「四季様も紫様も…ふ、二人とも止めて下さい!お二人の力がぶつかれば、この幻想郷がどうなるか…」

 

しかし、一死神程度の力では、二人の力は抑えきらない…いや…この幻想郷で抑えられる者など誰もいない。

 

「閻魔風情が…!美しく残酷に…この大地から往(い)ね!」

 

怒号と共に周囲の大気が震える…。

 

「…審判『ラストジャッジメント』!」

 

強大な二人の力がぶつかろうとした、まさにその瞬間…。

 

「待ってください!」

 

「「碧君?!(大神碧さん?!)」」

 

その中心に僕は立ちふさがった…正直、怖かった…。いや…そんなレベルを完全に越えていた…でも…。

 

「…四季、さん…続きを…聞かせて…下さい…。紫さんも…僕は、大丈夫…ですから…」

 

震えながらだけど、何とか声は出せたと思う…。

 

「…いいでしょう。では続けます…優しさは、ある意味で病気の様な物です。自分にとっての優しさ、相手にとっての優しさ…。その二つが完全に一致しなければ、優しさは『自己満足な偽善』となってしまう。本当の優しさとは、相手の全てを背負う、”責任””勇気””精神力”がいります。そして、ただ優しいだけじゃ駄目なんです。相手の”怒り”や”苦しみ”、”憎しみ”や”妬み”…そういった負の思い…その理由を理解するのです」

 

じゃあ…僕が今までやってきた事は…一方的な自己満足だったのかな…。

 

”―優しすぎて面白くない―”

 

あの時の言葉が頭の中によぎる…。だとしたら…僕は一生…。「――ですが」…?

 

「ですが、碧さん…あなたがそれを本当に理解した時、優しさは一番の”力”になります。それが出来るのならば、私は…ヤマザナドゥとしてではなく…『四季映姫』個人として、あなたの助けになりましょう。あなたの支えとなりましょう…碧さん――」

 

すると四季さんはこちらに近づいてきて…。

 

「しき…さん…?」

 

子供をあやすように僕を抱き締めてくれた…。

 

「あなたの魂の純粋さ…そして、その尊さは私も理解しています…。だからこそ…あなたはもっと自分の事を大切に思うべきなのです。」

 

少しずつ、ゆっくりと語ってくれた…。

 

「幻想郷に来てあなたは、心の底から信頼できる友との離別を決意しました…。表には出さなくても、その魂が泣いているのは分かります…。でも、今のあなたには大切な家族がいるのです。私と言う…絶対に勝てないであろう相手でも、命を賭して戦おうとしてくれる家族が…。だから、今だけは泣いてもいいんです…絆があると言っても親友との離別は誰でも辛い…それが永遠なら尚更…。誰も見ていません…此処にはあなたの敵は居ない…だから泣いてください、今まで背負ってきた全てを…」

 

そうして、僕の顔を隠してくれる四季さん…その厳しさの中にある優しさに、僕は今まで抑えていた感情が決壊してしまい…泣いてしまった…。子供の様に、只ひたすら泣きじゃくった…。四季さんはそれを優しく…そして、愛おしそうに受け止めてくれた…。

 

 

――――――――――

 

 

 

「…あの、四季さん「映姫で構いませんよ。碧さん」…映姫さん…ありがとうございます…。それと、こんな恰好見せてしまって…」

 

「気にしなくて結構ですよ。ああやって、感情を吐き出すことも、人間の特権です。良い家族を迎え入れましたね…八雲紫?」

 

「――///?!…えぇ…自慢の家族よ…。さぁ、もうこれ以上此処に居る必要はなくなったでしょう?次の場所へ行くわよ!」

 

そうしてスキマを開き中に入る紫さん…何だか少し照れてる感じがする…。

 

「映姫さん…僕の罪…過去を受け入れ…そして、道を示してくれて、ありがとうございます。映姫さんの期待に応えられるように…これからも精進していきます。それでは、またどこかで…」

 

そう言って礼をして、紫さんに続きスキマを潜る…。次の目的地はどこだろう…?

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

彼は行きましたか…。

 

「ふぅ…何度やっても、こういう役回りは嫌ですね…でも…」

 

閻魔として、何度、人や妖怪から非難を受けてきたことか…。

 

その度に思う。自分の裁きは間違っていたのか?もっと良い答えがあったんじゃなかったのか…と。

 

そして、地獄に堕ちそうな者達を見る度に、説教をするが、まともに聞いてくれるのは、ほんの一握り…。

 

しかし、彼は全てを真摯に受け止めてくれた…。その上で自分の期待に応えたいと言ってくれた…。

 

全てに公平である閻魔としてではなく…四季映姫…個人として、これほどまでに嬉しい答えは無い。

 

だからこそ、碧さんには幸せになってもらいたい…。

 

あの子の儚い魂を守ってあげたい…。

 

優しさの先にある強さを見つけて欲しい…そう願った。

 

「珍しいですねぇ…というか、あんな事をする四季様なんて初めて見ましたよ」

 

そう言えば居ましたね…小町…。

 

「私とて、閻魔である前に一人の個人です。感情の無い機械ではないのですから…」

 

「てっきり私は、あの子に惚れたのかと思ったんですけど…って?!四季様?!何で”悔悟の棒(かいごのぼう)”を振り上げてるんですか?!」

 

「小町…私はからかわれるのは好きではありません…。それに、あなた…またサボっていたようですね…?」

 

「なんでバレて?!ひょっとして最初から?!」

 

「今日の私は非番ですからね…多少のお説教だけで済ませようと思いましたが…。小町…あなたは少し…いえ、かなり怠けすぎです!」

 

そうして、スコーン!といい音が三途の川に響き渡りました。

 

「きちんと仕事をこなすこと…これが今のあなたにできる善行です。分かりましたね?小町?」

 

あまりに綺麗に入ったのか小町は気絶していました…我ながらやり過ぎましたね…。

 

(しかし、碧さん…何と言いますか…母性本能がくすぐられるんですよね…。殿方に…あんな事をするのも初めてでしたし…///。小町の言うことも、あながち間違いではいのかもしれませんね///)

 

そうして、気絶した小町と、自身の煩悩と戦う映姫がそこには残されていました…。

 




碧は基本的にはお姉さん属性キラー持ちです。
あと優しさの解釈については個人の意見と、某怪獣映画のワンシーンの台詞を使わせて貰いました。
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