愛する人を守れるようになる為、妖夢に稽古をつけてもらうが…。
地底での出来事から数日後…。
僕は今、白玉楼の近くにある、妖夢さんの修行場に来ている。
パルスィさんを守れなかった事…。
このままでは自分の事すら守れないという事実…。
皆は気にしなくて良いと言ってくれたけど…これから此処で生きていく為には、そうは言っていられない。
そして、そんな僕を見てか、丁度いいタイミングで妖夢さんから稽古を付けてくれるという連絡があった。
―――――――――――――――――――――
そして、今は妖夢さんから色々と聞かれている…。
のだけれど…。
「あの…一つ良いですか?」
「…?どうされましたか碧さん?」
「えっと…今から僕に稽古を付けてくれると言うのは分かってます。分かってるんですが…妖夢さん…。その服で、動きにくくないんですか?」
そう、特訓すると言うのは分かるが、妖夢さんの来ているのは、明らかにパーティードレスの様な服…稽古とは程遠い姿だったのだけど…。
「えっと…似合ってませんか…?」
不安気な顔で聞いてくる妖夢さん…いえ…そういう事じゃなくて…。
「いえ、とても良く似合ってますよ。その…一瞬見惚れる位には…///」
「あ、ありがとうございます///」
「良かったわね~。妖夢、一日かけて選んだ甲斐があったわね~」
そして、何故か当たり前の様にいる幽々子さん…。なぜ…居るんですか?
「…そうじゃなくて…、その服だと、動くのに不便じゃないですか?それに…稽古で汚れたら、勿体ないですし…」
すると、あ?――と気が付いた様な顔になった妖夢さん…。
「す、すみません!そうですよね…今日するのはあくまで稽古…。私ったら何で……直ぐに着替えて来ますので、そのまま待っていて下さい!」
そうして、すごいスピードで白玉楼へと飛んでいく妖夢さん…。やっぱり…気が付いて無かったのかな?
「それと…幽々子さん…何でいるんでしょうか?いえ…冥界ですから幽々子さんが居るのは当たり前なんですけど…どうして此処に?」
するとふんわりとした笑顔で…。
「そんなの…碧くんの顔を、見たかったからに決まってるじゃない♪」
「……嬉しいですけど…僕には彼女が出来たんですから…少しだけ自重して下さいよ…」
でも、そんな僕の言葉とは裏腹に、幽々子さんは近づいてきて…。
「別に幻想郷は一夫一妻制じゃないからいいでしょう?……それに、あなたが地底で襲われたって聞いたときは…凄く心配したんだから…」
俯きながら、悲しそうに言う幽々子さん…。
「心配を掛けてごめんなさい…。でも、あの時はああするしか無くて…むぐっ?!」
前みたいに幽々子さんから抱き締められる…。
「あなたの寿命は無い…。でもそれは死なないって事じゃない…。そして、できるなら碧くんには此処に…冥界に来て欲しくはないの…」
―――幽々子さん…本当に心配してくれてるんだ…。
「あなたの命は、もうあなただけの物じゃないの、大切な人と生きるんでしょう?幸せを掴むんでしょう?だったらもう…無茶しないで?これからは私達が何とかするから?だから約束して…――絶対に無茶はしないって…ね?」
優しい心を感じる…幽々子さんの思いを感じる…。
「はい…。ですけど…確約は出来ません…。愛する人が…パルスィさんが危ない目に合うなら、僕は全力で助けるでしょう…それこそ、自分の命を賭する覚悟で…。―――だから…その時は、止めて欲しいんです僕の事を。…お願いします…幽々子さん」
真剣な眼差しで見詰め合う僕達…そして、先に目を伏せたのは幽々子さんだった。
「――…分かったわ。でも、本当に危険な事になりそうなら、その時は直ぐに駆けつけるから…安心して頂戴?もちろん…あなたの愛しの彼女さんの為にもね♪」
「感謝します幽々子さん…」
そして、暫くして妖夢さんが帰ってきた。今度はちゃんと動きやすそうな白い着物に着替えて。
「ふぅ…すみません、お待たせ致しました…。――…?お二人とも…何かありましたか?」
「い~え、何にも無かったわよ妖夢♪それじゃあこれ以上ここに居ても、邪魔になるから…私はお屋敷に戻るわね~」
そして、幽々子さんは、ふよふよと飛んで行った…ホントに心配して来てくれてただけだったんだ…。
「さて…では始める前に、いくつか聞いておきたいのですが…碧さんは何か武道の経験などはありますか?」
武道…あると言えばあるのかな…?
「一応部活動…短時間の練習で、剣道と弓道をしたことならあります」
すると妖夢さんは何かを考えながら…。
「成程…背筋が曲がって居なかったのは、武道の経験があったからなのですね。では碧さん…そうですね…仮に剣を持ったとして…前に襲われた鬼に勝てると思いますか?」
それはムリだ。何せ体格や純粋な力が違い過ぎる。
「無理…ですね。同じく弓を持たされていても。勝てる気がしません…」
本当に…何もできないんだな…。
「碧さん…いいのですよ?あなたは普通の人間なのですから…。鬼は妖怪でも上位の存在…そんな者に。普通は勝てる筈がないのです」
「じゃあ…今からやる稽古って…?」
無意味な事なのかな…?そう思うと怖かった…。でも…――
「何を考えているのか、何となく分かりますが…今から碧さんに教えるのは、逃げ隠れの仕方です」
「ふぇ?」
我ながら変な声が出たと思う…でも、それくらいに、意表を突いた答えだったのだから。
「逃げ方と、隠れ方…ですか?」
「えぇ、何かあっても…逃げて、隠れて…生き残れば勝ちなんです。だから、碧さんにはその基本から覚えてもらいます。――いいですね?」
「は、はい!お願いします!」
正直、剣を使った戦い方や、追い詰められたときの立ち回りなどを、教わると思っていたから、少しだけ気が抜けたのは否めない…。
「そうですね…。ではお聞きしますが…逃げる事の何が行けないんですか?逃げずにそこに留まる事で得られる物が、何かありますか?」
「それを言われると…ぐうの音も出ませんね…」
「はい。それでいいんですよ。ですので、碧さんには、逃げる為の術を教えて行きたいと思います。それでは先ずは心を落ち着ける偶に水行に行きましょう」
そうして、妖夢さんに着いて行くと、大きな滝があった。滝に打たれるなんて生まれて初めてだから、少しドキドキする。
「では、私が先に入りますので、真似して隣に来てください…――」
そうして妖夢さんに続いて水辺へと入っていく…この水…何だろう?冷たいのに…痛くない?そして滝に向かい妖夢さんに習い手を合わせ目を瞑る。
無心の心が一番良いらしいのだが、一番大切な人の事を思い浮かべてもいいと言われたので、パルスィさんの笑顔を浮かべながら滝に打たれた。
そして、一時間くらい打たれた後、妖夢さんと共に滝から出たわけだが…炊き火にあたる妖夢さんを見て、すごいことに気が付いてしまった…。
そう…妖夢さんが来ているのは白い着物の様な服…そして水に濡れれば、当然下着が透けるわけなんだが…何とビックリ…妖夢さんはその下着をつけて居なかったのだ。妖夢さんの胸元に見えるピンク色の物…あぁ…パルスィさん…ごめんなさい…これは浮気じゃないんです…。
慌てて顔を反らしながら…。
「よ。妖夢さん!…その…大変失礼なのですが…なぜ、下着を着けていないのですか…?」
すると妖夢さんは下を見て、自分の格好に気が付いたようだ…。
「す、すみませんでした!いつもは一人でしていたもので…特に人目を気にせずにしていたのです…///…あの…貧相な物を見せつけてしまい…申し訳ありませんでした…///」
「いえ、貧相だなんて、そんな「――ダメですよ?それはちゃんと彼女さんに言ってあげて下さいね///」――…はい」
「で、では。服が渇くまでは此処で体を温めて、稽古はそれからにしましょう///」
そうして微妙な空気の中…僕と妖夢さんの稽古が始まった。
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「それじゃ、稽古がいつ終わるか分からないから。暫くは、ご飯は気にしないでね――」
そう言って碧からの通信が切れる。
あれから数日、傍目には分からないでしょうけど碧は落ち込んでいたわ。
私も何度か励ましてあげたんだけど…。
そして、今日から数日…冥界で稽古を付けて貰うという事で連絡を貰った。
紫さんから貰った陰陽玉は思った以上に高性能で、周囲の音声と、そこから映し出される光景までこちらに見せてくれる。
でも、正直に言って寂しい…。もしかしたら数日は碧と会えないかもしれないのだから…。
だから、最初はちょっとした出来心で陰陽玉を通して、こっそり碧の様子を伺う事にしたの。
ほ、ほんとに悪気はなかったのよ!
でも、映し出された光景は、私の斜め上を行くものだったの…。
最初はお洒落した半霊と冥界の主が、二人で碧と話していたわ…稽古じゃなかったの…?
すると、半霊は慌てて着替えに行き、西行寺さんと碧だけが残されたのだけど…なんで碧を抱き締めているの?!
それをしていいのは、私と碧の家族だけよ!……あぁ…妬ましい…。
でも聞いていたら、それは碧を、心から心配しての事だった…そんな事言われたら…何にも言えないじゃない…。
それに愛しの彼女って…///あぁもう!調子が狂うわね!
それから半霊が戻って来たの。碧って少しだけ武道の経験があったのね…知らなかったわ…。
私が最初に知りたかったのに…何で半霊なんかに…妬ましい…あぁ…妬ましいわ…。
それから心を落ち着ける為にまずは水行をすると言ったのだけれど…水行?…あの服で?
…気が付いてないのかしら?白い服が濡れたらどうなるのかを?
そうして水行が終わって二人とも滝から出てきたのだけれど…あ、碧は気が付いたみたいね…慌てて顔をそらしてる…。
それにしてもあの半霊…何でブラも付けて無いのかしら?誘ってるの?私の彼氏を…?
碧も碧で…そんな貧相な身体を見て…顔を赤らめて…!
もしかして女性の身体に慣れてない?だったら本当なら最初に見せるのは私だった?
それを、あの女は横取りした?……妬ましい…碧の初めてを持っていくあの女が、本当に…心の底から妬ましい…。
キチンと会話を聞いていれば、そんな事は無かったのかもしれない…。
でも、この時の私は嫉妬心のあまり。そんな余裕は全く無かったわ…。
もうこれ以上…こんな光景は見たくない…。碧のあんな顔を…他の女がさせるなんて許せない…。
そう思い…私は通信を切ったの…。それが後日、あんな事になるなんてね…。
当初は妖夢に来て貰う設定でしたが、冥界に行った方が書きやすかったので変更しました。
そして、タグにもある様にヤンデレ要素が入りました。
が、この作品では誰かを傷つけるといった描写は予定しておりません。