読んでくれた方々に、とても感謝です!
これからも精一杯作品を執筆していきます。
今回は夏の終わり…夏祭りの話になります。
事の切っ掛けは数日前に遡る…――
「あ、先輩!それにパルスィさん!今日もお二人でデートですか?…妬けちゃいますねぇ」
そうして目の前の少女…僕の後輩、早苗ちゃんがいつものようにからかってくる。
「いや、そうしたい所なんだけど…今日はちょっと天魔様に用事があってね」
すると不思議そうな顔でこちらを向く早苗ちゃん……まぁそうだよね。
「珍しいですねぇ?差支えなければ、お伺いしても?」
別に隠すことじゃないんだけどね…
「えっと、夏もそろそろ終わるから…この夏にパルスィさんと一緒に撮った写真の現像をしてもらおうと思ってね…ね?パルスィさん?」
すると少し照れた表情で…――
「えぇそうね。それに、こういう写真を残すのって初めてだから…ちょっと楽しみなのよ…///」
もう…相変わらず可愛いんだから…。すると早苗ちゃんが少し呆れた表情で…――
「…あ~、その…ごちそうさまです…(ホント…羨ましいなぁ…)。あ、夏の終わりと言えば…そうでした!」
…?!…突然大声を出す早苗ちゃんに少し驚いてしまった…どうしたんだろう?
「あのですね!先輩達…今週末は空いてますか?」
パルスィさんと目を合わせて確認する……しかし彼女も僕も、首を横に振るだけ…。
余程何もない限り、週末はいつもパルスィさんと旧都で、ご飯を食べてるからね……―――そんな僕達の反応を見た早苗ちゃんが――
「でしたら先輩!守矢神社で納涼夏祭りをするんですけど…良ければ来ませんか?」
へぇ…幻想郷にも夏祭りがあったんだ……というか夏祭り自体、ここ数年行った事が無いから…――
「…いいんじゃないかしら?私も旧都のお祭り事なら見た事あるけど、地上のお祭りは参加したことが無かったから…どう?」
その顔には、少しだけ楽しそうな顔が……もう、答えは決まってるようなものじゃないか…――。
「パルスィさん…なら参加しようか?……えっと早苗ちゃん、祭りはいつ頃始まるの?」
すると嬉しそうに…――
「――ありがとうございます!…えっと、そうですね。夕方には屋台も出てますし…日も暮れたら、奉納の舞もしますので…それまでにきて頂ければいいですよ?」
じゃあ少し早めに来ようかな?……後、ちょっと気になる言葉が聞こえたんだけど…――
「奉納の舞?」
「えぇ!毎年神社で行う秋に向けて…豊作を祈って奉納の舞を行うんです。その舞台で…その私が舞うので……先輩に、見て欲しいなって…」
早苗ちゃん…そんな役割もしてたんだ…。まぁ巫女さんだから…それもあるのかな?
「うん、楽しみにしとくよ。「やったー!」…えっと、じゃあ少し早めに向かう事にするから、また当日に会おうね」
―――――――――――――――――――――
「ねぇ、碧?」
「うん?どうしたのパルスィさん?」
無事、天魔様との用事を済ませた僕達は、現在八雲家でお茶を飲んでいる。
「あの…聞きたいのだけど…地上のお祭りって、相応の服装があるのかしら?」
……服装…夏祭りだと…女性は浴衣で男性は甚平…かな?
「うーん、外の世界だと浴衣と甚平だったけど…幻想郷はどうなのかな?」
すると隣でくつろいでいた紫さんが…――
「――あら?浴衣ならあるわよ?折角の初めてのお祭りなら、キチンとした身なりで行きなさい?……それの方がより一層良い思い出になるわよ♪」
すると、パルスィさんが食いつき気味に…――
「紫さん!是非、浴衣を貸して下さい!できれば碧とお揃いのやつを!!」
おぉ……あの紫さんが少し引いてる……ん?…ちょっと待って、今何て言った?…お揃い?
「…あの…聞き間違いでしょうか…お揃いって…?」
「あら?碧は私とお揃いは嫌なの……そんな……ひどいわ…」
わざとらしく、およよ…といった感じの姿勢になるパルスィさん……あぁ…これ絶対遊ばれてる…。そうだ、紫さんは?!
「えっと…ごめんなさい…、男性用の浴衣は無いのよ…ぷくく…でも、碧なら女性用でも問題なく似合うわよ…ぷふっ…♪」
楽しそうですねぇ…紫さん……。でも、パルスィさんにも楽しんでもらいたいし……はぁ…仕方がないか…。
「じゃあそれでいいのでお願いします…。あ、でも色は「私は緑色が好きだから」…緑色でお願いします…「はいはい…くすっ♪」…まぁ緑ならいいかな?」
―――――――――――――――――――――
そしてお祭り当日…―――
守矢神社に行く前に、八雲家で着付けをしている……のだが。
「すみません藍さん…まさか着付けがここまで難しいものだったなんて…」
浴衣を着て帯を適当に巻くだけ…と思っていた僕は、着付け開始早々に藍さんからダメ出しされ、今はキチンと着付けをして貰っている。
「まぁ、普段から着物を着ない者からしたら大変な作業だからな…っと…ちょっとこの帯を持っていてくれ…」
「あ、はい……。それにしても藍さん…手馴れてますねぇ…」
すると、少し懐かしそうな顔をした藍さんは…――
「まぁ、昔はよく着ていたからな……さて、これを締めて……よし、出来たぞ」
すると、姿鏡をこちらに向けてくる……うん、我ながら……微妙に様になってるのが悲しいね……。
薄い緑色をベースに白い芍薬(しゃくやく)の花をあしらった浴衣…そして、帯は青い無地の物を使用している…――少しは男らしく…見えないね…。
そして髪も、いつもは降ろして二つに纏めている髪を、後ろで一つに括って、左肩から胸に掛けて垂らしている。
うわ…これ色々と恥ずかしいな……。
「うわぁ!碧お兄ちゃん、すっごい似合ってるよ!」
橙ちゃんに褒められるけど……うーん…どうせなら男性用の浴衣で褒められたかったなぁ…。
「ありがとね。橙ちゃんはお祭りには行かないの?」
すると、楽しそうな顔で……―――
「ううん、今日は寺小屋のみんなと一緒に行くんだ~。でも、お兄ちゃん達とも会えたら嬉しいな~♪」
そっか、橙ちゃんは日中は寺小屋に行ってるから…――
「そうだね、でも友達は大切にするんだよ?「うん!」…いい子だね…。そう言えばそろそろ時間になるけど…『み、碧……』…?」
パルスィさんの声…だけどそれは襖の外から……どうしたんだろう?
「パルスィさん?どうしたの?……ひょっとしてまだ準備が出来てないとか?」
『ち、違うわよ…!……ええい!女は度胸!行くしかないわ!』
そうして襖を開けて入ってくるパルスィさん……。
その姿は、いつもの姿と異なり…――
僕の着ている浴衣と同じ色…だけどあしらわれた紋様は薄紅の牡丹(ぼたん)の花…それと同じくピンクの帯…嫌味の無い色合いは同性ですら憧れるだろう―――
そして髪も浴衣に合わせ、後ろで纏めアップにし…僕の渡した桔梗の花の簪を付けてくれている…やばい…嬉しすぎて……―――
「な、何よ?……何とか言ってよぅ…」
はっ?!一瞬意識が飛んでた気がする……―――
「ご、ごめんね…思わず見惚れちゃって……その言葉に出来ないくらい……似合ってるよ…それから、簪を付けてくれて…ありがとう///」
「~~~//////…そ、そういう碧も……うん、似合い過ぎてなんだか冷静になれたわ…」
それって……ちょっと泣きたい……まぁ身長もパルスィさんの方が高いし…仕方ないんだけどね…。
「そ、それにしても…この浴衣…本当に素敵な柄ね…紫さんに感謝しなきゃ」
柄……ふと思ったんだけど…―――
「あのさ、女性の浴衣の柄ってどういう意味があるの?」
「ふむ…碧もまだまだ女心が分かってないなぁ」
すると横に居た藍さんが教えてくれる。いや、これって女心なの?
「そうだな、例えば幽々子様など、いつも蝶の紋様をあしらった着物を着ているだろう?あれには『長寿』『復活』『変化』それと『移り気』という意味が込められているんだ」
何て言うか…とっても幽々子さんらしいなぁ…――
「そして、パルスィと碧の浴衣にあしらわれているのは、牡丹と芍薬…この二つは『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』と言う言葉があるくらい女性の象徴として描かれる花なんだ。その意味は二つとも『幸福』……今の二人に、これほどまでに会う絵柄はないだろう?」
そう言われるとなんだか照れる……でも、そこまで考えて用意してくれたなら…嬉しいな///
隣を見るとパルスィさんも同様に照れた…でも嬉しそうな表情を浮かべていた。
「さあ、そろそろ祭りも始まる。今日は私が二人を転移札で送るから着いて来るんだ」
「あ、はい「お願いします」」
そうして僕とパルスィさんは藍さんに着いて札を使い移動した。
―――――――――――――――――――――
「さて、その階段を登れば境内だ。帰りは好きな時間に帰ってくると良い…パルスィも今日はうちに泊まっていけばいいさ」
そうして、その場を後にしようとする藍さんに……
「あの!色々とありがとうございます!」
と感謝の言葉を伝えるパルスィさん…すると――
「ふっ…何、家族が幸せな時間を過ごせるんだ…。二人とも…ゆっくり楽しんでおいで?」
と言って転移していった…本当に八雲家の人達には頭が上がらないな…――
「さて、じゃあ初の夏祭り…行ってみようか?」
「うん!思いっきり楽しみましょう♪」
そう言って二人は手を繋ぎ…境内へと向かった……―――
境内は思った以上に屋台で賑わっており、色々な場所から食べ物の良い匂いが漂ってきた……そういえば何も食べてないからお腹が…
ぐぅ~……――――うん減ってるね…僕とパルスィさん…二人のお腹が同時に鳴る…――
「えっと…とりあえず…まずは何か食べようか?」
少し照れた表情で…――
「~~~///…そ、そうね…こんなにも屋台が沢山あるから、迷っちゃうわね///」
「じ、じゃあさ。定番所から行ってみようか?まずはほら?たこ焼き屋さん!」
「きゃっ?!ちょっと碧?!そんなに手を引っ張らないでよ…クスッ♪…ほんと、まだまだお子様なんだから…」
お子様でもいいよ!だって今はこの屋台を、一刻も早く制覇したいんだからね!
そうして僕達の屋台回りが始まったんだけど……―――
「らっしゃい!おや、浴衣美人が二人とは…今日はついてるねぇ。たこ焼き…サービスしとくよ!」
「あ、ありがとうございます……(自分の姿を忘れてた…)」
「クスッ♪気にしなくてもいいのよ?…あそこに食事スペースがあるわね。行きましょ?」
パルスィさんに手を引かれて行く……美人て……
「ほら、元気出しなさいよ?…はい、あーんして?」
「う…流石に人前じゃ…「あーん」…あーん…はふっ…あっつ……でも…んぐっ…美味しい!」
「良かったわ♪ならもう一個…あーん」
「あーん……んむんむ…うん。ならお返し…はい、あーんして?」
するとパルスィさんは照れた顔で…――
「わ、私は良いわよ///「二人で楽しむんでしょ?はい、あーん」…いや、でも…「あーん」……あーん…んっ…はふっ…あふふぃふぁ……んっ…でも…美味しいわ…」
そうして、全てのたこ焼きを二人で食べさせ合った…うん…こういうのも…祭りの醍醐味なのかな?
別の店で―――
「へぇ…汁物もあるんだ…『牛のモツ煮込み』…ゴクッ…「良いわよ?」…ホント!?じゃあ行こっ!」
「いらっしゃいませ…ってあら?パルスィさんと碧さんではないですか?」
そこに居たのは料亭『翡翠』の女将さん…あれ…何で?
「あら?女将さんじゃないですか。どうしてこんな所で?」
パルスィさんも同様に思ったようで、女将さんに聞いていた。
「えぇ、地底と地上の親交も回復したので、今年から参加させて貰うことにしたんですよ。定番のお祭りの食べ物は多いので、うちでは汁物にしたんです。良ければいかがですか?」
成程…そこまで考えてたんだ…凄いな、女将さん…。
「是非頂きます!…えっとパルスィさんも、いいかな?」
「もちろん!女将さんの作るモツ煮込みなんて…楽しみだわ♪」
笑顔で応えてくれるパルスィさん……―――
「ありがとうございます。では…ふふっ♪お二人には少しだけサービスさせて頂きますね……どうぞ?お熱いので火傷には気を付けて下さいね?」
「女将さん…ありがとうございます!」
「どういたしまして…では、引き続きお祭りを楽しんでくださいね♪」
そうして、丁寧にお辞儀をする女将さんの見送りを受け、再び食事スペースへ…――
「じゃあ改めて…いただきます!「いただきます」」
そうして食べ始めたんだけど……
「あふっ…んっ…うわっ…お肉がほろっとしてて、すごく美味しいよこれ!」
対面で食べてたパルスィさんも…
「んっ…そうね。お肉はトロッとしてるのに…全然重たくない…それでいて味付けもしっかりしてて、食べごたえもあるわ…こんなに美味しい食べ物が屋台で食べれるなんて……ホント、お祭りさまさまね♪」
それから僕達は、辺りが暗くなるまで色んな食べ物を食べ歩いた…出店の食べ物って…こんなに美味しかったんだなぁ……―――
「あら?碧、何か始まるみたいよ?」
そんなパルスィさんの声で目を向けると…本殿の方に人が集まってる……あ、もしかして早苗ちゃんが言ってた奉納の舞かな?
「見に行くわよね?いえ、きちんと見届けないとね…私達を折角招待してくれたんですから…ね?」
そして、僕達は人垣の集まる本殿へと足を向けた。そしてそこに居たのは……
「綺麗……」
「えぇ…本当に…」
いつもの白と青の巫女服ではなく…青を基調として、赤、緑、黄…様々な色の装飾がされ、巫女服というよりも姫が着ている十二単のような衣装。
片方を括った髪も、全て降ろしており…篝火に反射し、照らされるその姿は、彼女の幻想的な雰囲気をさらに高めていた……――
そうして、舞が始まる―――
最初は静かに―――
徐々に力強く―――
緩急を付けながら―――
流れる様に舞い続ける―――
どれくらいの時間が流れたのか……その幻想的な舞は終わりを告げ、観客からは拍手の嵐が巻き起こる…
――本当にすごい…舞の意味や形は分からない…でも、そんな僕でさえ圧倒された…これが巫女として『現人神』としての早苗ちゃんの顔…―――
舞を終えた早苗ちゃんに声を掛けたかったが、忙しそうだったので後日、改めて感想を伝える事にした。
そして、今僕達は…―――
「静かね……」
「うん…本当に…」
神社から少し離れた場所にある休憩場所……夜空に浮かぶ星が煌めき…さっきまであった祭りの喧騒を忘れさせてくれる…。
「今日は楽しかった?」
「えぇ…あなたと初めて回ったお祭り…楽しくないわけがないわよ」
そう言ってくれると嬉しい。
「僕も…今日はパルスィさんと一緒に祭りに来れて…本当に幸せだよ…」
「ねぇ…碧…」
何かを言おうとしたパルスィさん……すると、どこからともなく口笛じみた乾いた音が…これって…?
次の瞬間……それは、耳を聾する炸裂の音と共に、夢のように儚く…一瞬の花を、夜空へと咲き誇らせ。空の中に消えていった…。
「花…火……?」
「これが…花火…なの…?」
「パルスィさん…花火を見るのは初めて?」
そうしている間にもまた一つ一つ…次々と咲き誇る夜空の花々…――
「いえ…旧都にも、花火はあるのだけど…こんなに綺麗な花火…初めて見たわ…」
「そっか……僕も…久しぶりに見たけど…やっぱり綺麗だね……」
打ち上がる花火…その一滴一滴が息を呑むほど煌いて、大輪の雫はたちまち消えていく…―――あぁ…なんて綺麗な光景なんだ
「ねぇ…碧?」
すると花火を見ながら、パルスィさんがこちらに寄りかかってくる…――
「うん。どうしたの?」
なんとなく……伝えてきたい事は分かる…。でも、それを直接聞きたい。
「私ね…今までずっと…地底で暮らしていくんだって思ってたの…。でも、碧が来てくれた…私の世界を広げてくれた…」
そういって頭を肩に乗せてくる…――
「ありがとう……それと、これからもよろしくね…♪…んっ…」
―――こちらこそ…よろしくね…パルスィさん…
そして、乱れ咲く…夜空の花の中…二人の影は一つとなった…――
―――光の花に照らされる二人の顔は、花火が終わっても繋がったまま…――
―――パルスィさんとの、幻想郷で過ごした初めての夏の思い出…嬉しくて、とっても幸せな時間になった
久しぶりに二人っきりの時間でした。
次からは秋の話を書きたいと思います。
ご意見、ご感想、アドバイスなど、よろしければお待ちしております。