東方嫉妬姫   作:桔梗楓

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タイトルの通りです。
作者の住む地域ではここまで雪が積もる事は無いので、実際どんな感じなんだろうと思います。




37話 白銀の世界と思い出

 

いつもよりも寒さのキツイ朝方―――

 

お互いの温もりを求めるように、パルスィと身を寄せ合いながら目を覚ました。

 

 

「―――んっ…(ぶるっ)…何だろう、いつにも増して今日は寒いな…」

 

それでも……。

 

「ふふっ…隣にパルスィさんが居なかったら、もっと寒かったのかもね。まだ時間も早いし…もう少し寝ても良いんだけど」

 

今は目の前にある、最愛の人の寝顔を楽しんでいたい。

 

そう思いながら、パルスィが目を覚ますまで、その頬を撫で…時折くすぐったそうにする彼女との時間を過ごした。

 

 

 

「もう!起きてたなら教えて頂戴よ。私だけが恥ずかしい思いをしたじゃない///」

 

「あはっ、前にされたお返しだよ」

 

そんな会話をしながら、いつものように朝食を取る。

 

 

今日は、お味噌汁を僕が作って、魚の塩焼きと、ホウレン草のお浸しをパルスィさんに作って貰った。

 

最初はどちらか自分が作るから、と言い合っていたのだけど、こうして二人で作る事で解決した。

 

―――むしろ、そのお陰でより、充実した朝食が取れるようになったのかな?

 

 

 

 

「それにしても、今朝は一段と寒いわね……碧がいなかったら、もっと寒かったんでしょうけど…」

 

あ、パルスィさんも同じように思ってくれたんだ。

 

「そうだね。いくら地底でも、ここまで寒くなるものなんだね……やっぱり幻想郷は奥が深いなぁ」

 

 

そうして朝食を食べ終わった頃、陰陽玉に連絡が来た……こんな朝から誰だろう?

 

 

「碧、出ましょうか?」

 

「ううん、僕が出るよ。―――はい、碧です…あ、紫さん!おはようございます!」

 

『おはよう碧君。パルスィとの生活には慣れてきたかしら?』

 

「えぇ、お陰様で。仕事の方も頑張ってさせて貰ってます」

 

翡翠での仕事は大変だけど、やりがいはあるし、何より自分が気に入っている。

 

『そう、それはよかったわ♪』

 

「えっと…それで、今朝はどうしたんですか?こんな時間に…珍しいですね?」

 

いつもなら、無理やり起こされて朝食を食べた紫さんは再び部屋でくつろいでいるんだけど……?

 

 

『えぇ、その事なんだけど…なんと、幻想郷に今年初雪が降ったのよ』

 

初雪?……あぁ、それで今朝はこんなに寒かったんだ。

 

「そうなんですね、地底だと流石に分からなかったんですが…それで今朝は寒かったんですね」

 

『えぇ、それでなんだけど…かなりの量の雪が積もったから、地上に来て、幻想郷の雪景色を見てみたくはない?』

 

あ、それは気になる。

 

外の世界でも雪は降っていたけど、住んで居たのがそこまで雪の積もる地域じゃなかったから、なおさら気になる。

 

パルスィさんも同様のようで、見たそうにそわそわとしている。

 

なら行くしかないけど……その前に。

 

「ぜひ…と言いたいんですけど、仕事が入ってまして、ちょっと女将さんに聞いてからでもいいですか?」

 

『そうよね、ふふっ♪何だか碧君も大人になってきたのねぇ…なら、後でまた連絡を頂戴ね。それじゃあまたね♪』

 

 

そうして、通信が切れる―――さて。

 

 

「それじゃあ、女将さんに連絡してみるよ」

 

「えぇ、女将さんなら、半日くらいなら休みをくれるんじゃないかしら?」

 

「うーん…そうだとありがたいけど…急な話だからね…とりあえず連絡してからだね」

 

 

それから、続けて女将さんに連絡を入れる(余談だが、女将さんも陰陽玉を持っている)

 

 

「女将さん、おはようございます。今、お時間大丈夫でしょうか?」

 

『あら?碧さん。珍しいですね?こちらは大丈夫ですが……どうされたんですか?』

 

そして女将さんに、紫さんから誘われたことを伝える―――どうだろうか?

 

 

『なるほど、それで今朝はこんなに寒さが強かったんですね。……ふむ、では、碧さんお昼の営業だけで良いので来ていただけないでしょうか?お昼も少し早めに上がって貰って構いませんので…そうですね、良ければパルスィさんと来られてうちでお昼を一緒に取られては如何でしょう?』

 

 

こちらとしては、とてもありがたいけど―――

 

「あの、いいんですか?そこまで甘えてしまって……?」

 

そこまでして貰うと、流石にちょっと気が引けてしまう。

 

『えぇ、構いませんよ。碧さんにはいつも頑張って働いて貰ってますし…幻想郷に来て、初めての雪でしょう?パルスィさんと一緒に、楽しんできてください』

 

 

「女将さん…ありがとうございます!」

 

『いえいえ。それではお昼の営業の際にまたお会いしましょう。パルスィさんにもよろしくお伝え下さいね?では…――』

 

 

そして、通信が切れ―――

 

「と、いう訳でお昼は翡翠で食べて、そのまま紫さんの所に行こう」

 

「えぇ、本当に…女将さんには頭が上がらないわね」

 

 

そして、その連絡を再び紫さんに伝え、僕達は準備をして翡翠へと向かった。

 

 

 

 

 

お昼の仕事を早めに切り上げさせて貰った僕達は、今は翡翠の一室でお昼ご飯を食べている。

 

 

「今日は、チキン南蛮か。僕ここの大好きなんだよね~」

 

見た目は外の世界で食べていたものと基本的には変わらないのだが、味は段違いなのだ。

 

お肉はお箸で掴んだ瞬間に、その柔らかさが分かるくらいの上質なお肉を、硬くならないように丁寧に揚げ、これまた丁度いい塩梅の甘酢に絡めている。

 

特製のタルタルソースとの相性もバツグンで、いくら食べても胸焼けの一つもしたことがない。

 

これだけでご飯を軽く3杯は食べれてしまうくらいに美味しいのだ。

 

「むぅ…私もここまでの物が……流石に無理ね…」

 

同じものを食べているパルスィさん…ただ、その味に打ちのめされている。

 

「確かに、僕は翡翠のチキン南蛮も好きだけど、パルスィさんの作ってくれる料理はもっと好きだよ……その…愛情とかが沢山詰まってるのが分かるから…///」

 

「碧ったら…もう…///」

 

 

「愛情に勝る調味料はないという事ですね。ふふっ♪相変わらず仲が良さそうで何よりです」

 

すると、ご飯のおかわりを持ってきてくれた女将さんから言われてしまった。

 

「お、女将さん?!……うぅ…聞かれてしまったのね…///」

 

「すみません…今のはちょっと忘れて頂けると…」

 

「大丈夫ですよ。むしろこちらこそご馳走様でしたと言いたいくらいですので♪」

 

「あぅ…///」

 

本当に…女将さんには絶対に勝てないなぁ。

 

 

 

それから昼食を済ませた僕達は、前に貰った転移地図を使い、マヨヒガへと向かった。

 

 

「よっと。ふぅ…マヨヒガ…半月ぶりだけど…何だか懐かしい感じがするなぁ」

 

「それだけ地底での生活が濃密だったのかしら?えっと…紫さんは…?」

 

すると扉が開き、中から紫さんがすごいスピードでやってくる。

 

「碧君!パルスィちゃん!会いたかったわよ!」

 

そう言いながら、僕とパルスィさんを二人纏めて抱擁してくる紫さん。

 

「ちょ、ちょっと紫さん?!苦しいでむぐっ!?」

 

パルスィさんが何かを言う前にさらに抱き寄せる。

 

そして僕はというと―――

 

「むぐーっ?!んー!」

 

最早、何一つ言えない状態……有体に言えば、紫さんの豊満な胸に圧迫されて呼吸すらままならないでいた。

 

あぁ…息が……―――

 

 

そう思った所で、紫さんが気が付き、解放してくれる。

 

 

はぁ…助かった…。

 

流石に女性の胸で窒息死は……世間の男性ならむしろご褒美なのかな?

 

 

「ぷはっ?!はぁ、はぁ…お、お久しぶりです…紫さん…」

 

「ご、ごめんなさいね。碧君とパルスィちゃんと会うのが久しぶりで……つい」

 

怒られた子供のようにしょんぼりとする紫さん、こんな姿を見るのも久しぶりだなぁ。

 

 

「いいんですよ。流石に今度からは手加減して欲しいですけど…ね?パルスィさん?」

 

「えぇ、私も会えて嬉しいです。……それと、今日は招待して貰ってありがとうございます」

 

マヨヒガは特殊な空間にあるため、天候の影響を受けないから分からないけど……。

 

「二人ともありがとう。じゃあ、早速だけど行きましょうか?今、幻想郷で一番綺麗な雪原に…ね?」

 

そしてスキマを開く紫さん。

 

あれ?そういえば―――

 

 

「あの、紫さん「何かしら?」…藍さんと橙ちゃんの姿が見えないんですけど?」

 

「あぁ、そういえば言って無かったわね。二人とも朝早くから、別の雪原地帯に遊びに行ってるのよ」

 

そうだったんだ……あれ?でも橙ちゃんって寒さは……まぁ妖怪だから大丈夫なのかな?

 

 

「ということで行きましょうか…さ、二人とも、準備は良いかしら?」

 

楽しそうに聞いてくる紫さん。

 

「はい!(えぇ)」

 

「よろしい。じゃあ行くわよ」

 

 

そして、紫さんを先頭に、スキマを潜っていく……この先に…どんな光景が広がっているんだろう?

 

 

 

暗いスキマを潜り抜け、開けた先は……一面の銀世界だった。

 

 

太陽の光を浴び、光り輝く白銀の雪原。

 

あまりの眩しさに、最初は目を開けるのが辛いくらいだった。

 

 

だんだんと目が慣れていき、その景色をキチンと見る事が出来るようになり―――

 

 

「―――すごい……」

 

「……えぇ……本当に……」

 

 

雲一つない青い空の下に広がる景色は、地面から山…その全てが真っ白に染められた世界だった。

 

そして、その美しさもさることながら…その積雪の量も凄まじいものだった。

 

碧が暮らしていた場所では積もっても10cmくらいだったのが、今この場所ではゆうに1mを越える積雪量だった。

 

「こんなに積もった雪…初めて見た…」

 

「私もよ……地底に住んでたら分からなかった…これが地上の…ううん…幻想郷の本当の冬景色なのね…」

 

 

見渡す限りの雪景色、少し離れた場所には小高い山も見える……歩いたら行けそうだし…あそこから見る風景は綺麗なんだろうな…。

 

 

「二人とも、気に入って貰えたかしら?」

 

 

「紫さん…はい!こんな景色…生まれて初めて見ます!」

 

「私もです、住んで居たのに知らなかったこと…本当にありがとうございます」

 

 

「喜んで貰ったなら何よりよ…さ、それじゃあ後は好きに遊びましょう?」

 

それから僕達は、まずこの雪景色を写真に撮りたいと思い、持ってきたカメラで色んな場所を撮影した。

 

「ふふっ♪碧君ったら、はしゃいじゃって…子供みたいよ?」

 

「す、すみません…///…あ、そうだ。紫さん、折角なんでみんなで一緒に写真を撮りませんか?」

 

すると予想外だったのだろう、きょとんとした顔で―――

 

「あら?私が入っても良いのかしら?どうせなら二人で撮れば良いのに」

 

えっと…ちょっと照れくさいけど―――

 

「―――その、紫さんは僕にとって…パルスィさんと同じ…大切な家族なんです…だから…その…家族との写真を撮りたい「碧君!」むぐっ?!」

 

目にも止まらぬ速さで紫さんに抱きつかれた。

 

え?なんで?

 

「ありがとう…碧君も、私が守るべき大切な家族よ…。それにパルスィちゃんも…ね?」

 

コクンと頷くパルスィさん。

 

「えぇ。確かに私達が出会えたのも紫さんのお陰ですし…私も、紫さんと一緒の写真を撮って…その…思い出として残しておきたいです」

 

すると、紫さんが軽く目元を拭い―――

 

「―――もう…二人とも、そんなに私を泣かせたいのかしら?…じゃあ…一緒に撮りましょう。大切な…思い出を…ね?」

 

それから、雪景色を背景に、三人で集合した写真を何枚も撮った。

 

これでまた…大切な思い出が増えたんだ……。

 

 

そして、満足のいく写真を撮った後は、実際に雪原地帯を歩いてみる事にした。

 

 

「碧君、急に深くなっている場所もあるから、気を付けてあるいてね?それと、あまり、遠くへ行ってはダメよ?周囲の色と、崖や谷の境界があやふやになっていて危ないからね?」

 

「はい、分かりまし…はうっ!?」

 

言ったそばから雪に埋もれる―――うぅ…服の中に雪が入って冷たい。

 

「まったく碧ったら…言ったそば、きゃふ?!」

 

僕を助けに来ようとしたパルスィさんも同じく雪に埋まってしまった。

 

二人とも下半身が雪に埋もれてるから、とてもシュールな光景だ。

 

 

そして僕達はお互いを見て―――

 

「あはっ…」

 

「ふふっ…」

 

「「あはははっ(ふふふふっ)」」

 

三人しかいないその場所で、声を上げ笑い合った。

 

「パルスィさん…あはっ…言ったそばからはまるなんて…あははっ♪」

 

「碧こそ…くすっ♪…何よ、はうっ?!って…ふふっ♪」

 

 

「まったく…二人とも、気を付けてって言ったじゃ「えいっ」わぷっ?!」

 

一人ふよふよと浮かんでいる紫さんに、さらさらの雪をかける。

 

そしてパルスィさんも―――

 

「一人だけ浮いてるのはずるいですよ?それっ!「きゃっ?!」…ふふっ♪」

 

 

すると、雪をかけられた紫さんは俯き、ぷるぷると震えだした…マズイ…怒らせたかな…。

 

「あなた達……やってくれたわね!」

 

直後、紫さんの足元にあった雪が、一斉に僕とパルスィさんに向かって飛んでくる。

 

「うわっぷ?!ちょ、これ卑怯?!」

 

「ご、ごめんなさ、ひゃん?!」

 

雪玉ではないものの、プチ吹雪とも言える紫さんの攻撃に僕達は瞬く間に、雪だるまと化した。

 

 

「くすっ♪あなた達…良い格好になったわね…そうだ、写真に撮ってあげるわよ?」

 

そしてとっても良い顔をした紫さんが、雪だるまとなった僕達を撮る…うぅ…やっぱり怒ってる。

 

「大丈夫よ碧君「…?」…こういう事をしてくれて、嬉しかったの…藍や橙は絶対にしないし…他の人間や妖怪も、絶対にしてこない…“妖怪の賢者”、“楽園の守護者”…確かに親しくしてくれる人はいるけど、こんな風に接してくれたのはあなた達が初めてなの…」

 

それから一呼吸置いた紫さんは―――

 

「ねぇ碧君……今、幸せかしら?」

 

その問いに、僕は迷いなく―――

 

「はい!パルスィさんがいて、紫さんがいて…支えてくれるみんながいて……僕は…幻想郷に来て…本当の幸せを見つける事が出来ました」

 

その答えに満足したのか、フッと紫さんは笑い。

 

「そう、なら…これからもその幸せを…みんなで作っていきましょうね…あなたは私の大切な家族なんですから…ね?」

 

 

「紫さん……はいっ!」

 

 

それから僕達は、三人で夕暮れになるまでひたすら遊び続けた。

 

雪合戦をしたり、転んだり、雪玉で服がびちょびちょになったり……。

 

こんなに遊んだのはいつ以来だろう?

 

そして、楽しい時間も終わりを告げ―――

 

 

「さて、日も落ちるし…そろそろ帰りましょうか?」

 

紫さんの言葉にうなずく僕達。

 

「はい……その、紫さん。今日はありがとうございました」

 

「私からも……また、新しい思い出…地上の素敵な場所を知れて…嬉しかったです」

 

「いいのよ。そうね…また、こうして遊びたいわね。今度は藍と橙も一緒に…ね?」

 

そうしてスキマを潜りマヨヒガへと戻る。

 

 

 

「ところで今日は二人は、家に泊まっていくのかしら?一応、部屋は空いてるけれど?」

 

紫さんのお誘いは嬉しいけど……。

 

 

「いえ、服もびちょびちょなんで…風邪を引く前に、パルスィさんの家に帰ろうと思います」

 

「そう…なら、体調には気を付けて……それから、今度は夕飯の準備をしておくから、その時はみんなで団欒しましょうね♪」

 

 

そして僕達はパルスィさんの家へと帰っていった。

 

 

 

帰った僕達は、そのままお風呂へと直行した。

 

幸いな事に、地底にある家の大半は温泉をひいており、常に源泉かけ流しの天然温泉を楽しむことが出来る。

 

 

パルスィさんの家のお風呂は、和風の檜風呂で広さもそれなりにある。

 

だから二人で入っても全然問題はない。

 

 

 

お互いに身体を洗い合い、湯船へと浸かる。

 

 

「はぁ~…温まるね~」

 

軽く霜焼けになりそうだった手足が少し、ヒリヒリとするが、それも心地良い。

 

「本当ね~…やっぱり温泉は良いわね~」

 

隣に座り、二人で寄り添う形で湯船に浸かる。

 

付き合い始めた頃は、恥ずかしくてタオルを巻いたり、お互い視線を逸らしたりしていたが、今では普通にこの体勢が当たり前になっている。

 

 

こうして、肌と肌でくっ付いていると落ち着くんだよね。

 

「それにしても、今日は楽しかったね」

 

今日の事を思い出しながら話をする。

 

「えぇ…あんなにはしゃいだのなんて久しぶりだし…何より、紫さんの楽しそうな顔も見れたから…」

 

うん……いつも見えないところで自分の役割をこなして、その上僕達に気を遣ってくれて…。

 

「だね。今度行くときは、何かお土産を持っていかないとね」

 

 

そして、そんな話をしながら身体の芯まで温まるまで二人で湯船に浸かっていた。

 

 

 

 

 

「さて、今日は寒いし…お鍋にしたんだけど…良かったかな?」

 

パルスィさんが着替えや、髪を乾かしている間に晩御飯の準備を済ませておく。

 

「えぇ…お鍋なんて久しぶりね。お仕事がお休みなのに晩御飯を作らせてしまって…ごめんなさいね」

 

「作りたいから作ってるんだよ。だからそこは、ありがとうって言ってほしいかな?」

 

「うん……ありがとう…碧…///」

 

 

そして鍋を机に置き、二人で食べ始めた。

 

 

「味はどうかな?シンプルに出汁のお鍋にしてみたんだけど?」

 

 

作った側としてはやはり気になるところ。

 

 

「えぇ、とっても美味しいわ。お野菜も新鮮だし…出汁もキチンと出てて…うん…美味しい♪」

 

喜んでもらえて何よりだ。

 

 

そして、鍋を食べていると、思い出す―――。

 

「こうしてると…外の世界での事を思い出すなぁ…」

 

「…?…碧…?」

 

様子のおかしい事に気が付いたのか、心配そうな顔でこちらを見てくるパルスィさん。

 

 

「冬になるとね、こうして家で鍋パーティーをやってたんだ。その時はまだ料理が出来なかったから、親友の女の子に頼んでたんだけど…」

 

「前に言ってた…あなたの親友…祥華ちゃん…だったかしら?」

 

「うん、祥華さんは料理が上手でね、偶に家に来てご飯を作ってくれてたんだ」

 

「そうなのね…(多分…ううん、絶対その子…碧の事が好きだったわね)」

 

「あの時は楽しかったなぁ…、かぼすをかけるか酢橘をかけるかで揉めたり…三人で初めてお酒を飲んだり…締めをうどんにするか雑炊にするかで言い合ったり…」

 

 

思い出すのはあの時の光景…三人で笑い合った記憶。

 

 

「でも…そんな二人を置いて…僕はこっちに来た……手紙は送ったけど…それ以降、どうなったのかも…本当なら、紫さんに直ぐに聞くのが一番なんだと思う…でも…」

 

 

でも……できなかった。

 

「―――そう、怖いんだ…もし、あの手紙が二人の負担になってしまって…今でも二人を苦しめてしまっているんじゃないかって思ったら……」

 

 

すると、パルスィさんが僕の後ろに来て、優しく抱きついてきた―――?

 

 

「碧…大丈夫。その人達は…あなたの親友なのでしょう?…だったら大丈夫…信じてあげて?」

 

そのままギュッと抱きしめてくるパルスィさんを見上げる。

 

 

「僕だけこんなに幸せで良いのかな?……本当に…むぐっ?!」

 

パルスィさんにキスをされ、それ以上の言葉を止められる。

 

 

「んっ…、ちゅっ……ぷはっ…。碧、言ったでしょう。信じてあげて。それに、あなたには幸せになる権利がある。紫さんも言っていたでしょう?みんなで幸せになりましょうって…ね?」

 

 

パルスィさん―――

 

「―――ありがとう…パルスィさん」

 

 

もしかしたら、こうしてお鍋を食べるたびに思い出すかもしれない。

 

二度と会えない親友との、大切な思い出……。

 

だけど、それは決して悪い事じゃない―――

 

それは、今の僕を支える大切な欠片―――

 

 

そして、これからも大切な人達と…幸せになるために…ううん、幸せを掴むために。

 

――――色んな思い出を作っていこう

 

 





という訳で、幸せな現在と、幸せだった過去の話でした。
次回は、冬と言えば…の黒幕さんでも出してみようかと考えています。

ご意見、ご感想、アドバイスなど、よろしければお待ちしております。
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