姉弟ハンター奮闘記   作:やーみん

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第2話 その名はラギアクルス

二人がモガの村に来てから数日後、

 

「ふあぁ・・・うぉあ!?」

 

 ハンモックで寝ていたリュウジがあくびをしながら起き上がり、その拍子でハンモックから落ち、ズシンと

大きな音を立てた。

 

「そういやハンモックで寝ていたな・・・」

 

「ふあ~あ、うるさいよ?」

 

「おはよう、リュウジ」

 

トウガンとセレンが音を聞いて起きた。ちなみに三人はインナー姿で寝ていた。

 

「ああ、おはよう」

 

「おはよ、顔洗ってご飯食べに行こ」

 

「じゃあ顔洗いに行ってくる」

 

 セレンがそう言うと、家を出た。セレンは周りが海のモガ村で唯一真水の流れる所、農場へ向かっている。

 

「さて俺達も顔洗うか」

 

「そだね、その後ご飯食べてクエストね」

 

二人はセレンを追うように家を出た。

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

 農場、そこは村の特産品や野菜を育てるだけではなく、キノコにハチミツなどといったハンターにもなじみの物を育てるのにも最適な場所だ。しかし、最近例の地震の原因で畑を耕すアイルー達のほとんどが逃げ出している。アイルーとは、二本足の獣人種のモンスターだ。

人間の言葉を理解し、話すとても知的なモンスターでもあり、人間に対し、友好的である。そのため古くから人間とアイルーは協力し合っている。

アイルーの中には人間用の料理を作り、その料理を口にした者の身体能力を強化させたり、お供としてクエストに連れて行ったりする、前者はキッチンアイルー、後者はオトモアイルーと呼ぶ。

 

 アイルーの話はさておき、農場には真水の流れる小さな滝がある。三人はその滝を使って顔を洗っていた。

 

「ふう、冷たくて気持ちいい」

 

 リュウジがそう呟くと、横からセレンが話しかけてきた。

 

「ねえ知ってる?この滝の裏にはお面があるんだよ」

 

「お面?」

 

「うん、見てみる?」

 

セレンがそう言うと、滝の中に入っていった。二人も滝の中に入ってみると・・・

 

「ここ洞窟なんだ・・・」

 

トウガンが呟く。滝の裏は小さな洞窟になっていた。その奥にはなにか石像がある。その石像の頭にお面が被られている。

 

「これがそのお面?」

 

「うん、でも何のお面かはわからないの」

 

リュウジがセレンに問うと、セレンは答えた。しかし、何のお面かは分からないそうだ。

 

「どんな物かわからないけど、お腹空いたから行くわ」

 

 トウガンはそう言うと、洞窟から出て行った。

 

「まったく、姉ちゃんは・・・でもお腹空いたから行く?」

 

リュウジはセレンに聞く。

 

「うん、そうだね。行こっか」

 

二人も洞窟を出た。その後、三人は軽い朝食を済まし、家で装備に着替え、看板娘のアイシャの愚痴を聞きな

がら珍味として有名なモンスターのキモの納品クエストを契約し、モガの森、孤島へと向かった。

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

 ベースキャンプ。

 

「さて、さっき支給品ボックスから応急薬に携帯食料、携帯砥石と携帯酸素玉、LV2通常弾を出したから分けるよ。薬と食料、酸素玉は皆で、姉ちゃんは弾丸を全部、砥石は俺とセレンで分けるね。」

 

リュウジは到着してすぐに支給品ボックスから色んなアイテムを取り出して、二人の所に持ってきた。

 

「いつもながら悪いね~。パシっちゃって」

 

「ありがとう」

 

「どういたしまして、セレン。あと姉ちゃん、たまには自分で取りなよ」

 

「むう、わたしだけ扱いひどくない?リュウジが反抗期になっちゃったよ~」

 

「勝手に言ってろ」

 

「姉弟だから仲いいね、二人共」

 

「どう見たらそう見えるの?」

 

 少し話しをする三人。ちなみにリュウジとトウガンはユクモ村にいた頃は、二人でクエストへ行く時、リュ

ウジはいつも荷物運びをさせられている。

 

「さて、道具は分けたから早くポーチに入れて行こうか」

 

 リュウジはそう言うと、サイズが小さいが結構入るハンター用のポーチに分けたアイテムを入れて、立ち上がった。

その後二人もアイテムをポーチに入れて立つ。ちなみにリュウジの武器は太刀、ユクモノ太刀と、トウガンはボウガンのクロスボウガン、セレンはスラッシュアックスのボーンアックス。

三人の武器はどれも初心者ハンター用の武器だ。防具もリュウジはユクモシリーズ、トウガンはレザーシリーズ、この二つも新米向けのため頼りない。しかし、セレンの防具、ハンターシリーズは三人の中では一番耐久性がある。

 

「仕切んなって。いつも突っ込んで痛い目見てる癖に」

 

「いつも無茶してるの?」

 

「い、いや、いつもじゃないよ」

 

心配そうな目で見るセレンに対し、反論するリュウジ。

 

「まあいいや、ところでセレン、モンスターのキモってどうやったら手に入るの?」

 

トウガンがセレンに聞く。

 

「エピオスから手に入るよ。」

 

「エピオス?」

 

聞いた事のない名前に首をかしげるトウガン。

 

「エピオスは海を泳いでいるモンスターで、体内にキモがあるの。そのお肉を焼いて食べてもおいしいよ」

 

「へぇ、そんなモンスターがいるのか。本当に物知りだね。セレンは」

 

エピオンの説明をしたセレンにリュウジは褒めるが、セレンは「それほどでもないよ」微笑んで言った。

 

「それじゃ、そのエピオンってのを狩りに行きましょ」

 

「ちょっと待って、海への近道があるの」

 

 先に行こうとするトウガンをセレンが呼び止めた。

 

「近道?それってどこにあるの?」

 

 それからトウガンは近道について聞く。

 

「案内するよ。ついてきて」

 

 セレンはそう言うと、キャンプ周辺にあった釣りのできる桟橋に向かった。

 

「セレン、そこは釣り場しか無いよ?」

 

 リュウジはそう言いつつもセレンについていく。もちろんトウガンもだが。

 

「道ならあるよ、下にね」

 

「下に?下は海だよ?」

 

セレンの言ったことがよくわからないリュウジは首をかしげる。その時、セレンは海に飛び込んだ。

 

「セ、セレン!?何してるの!?」

 

セレンの行動に驚きを隠せないリュウジ。トウガンも驚いていた。その後セレンは水面から顔を出した。

 

「二人とも、早く潜ってよ。ここから海の近くまで行けるから」

 

「え?潜れって…冗談でしょ?」

 

「あたしらは泳げないって訳じゃないけど、狩り場で泳ぐの?」

 

二人がセレンに問う。

 

「冗談じゃないよ。狩り場で泳ぐよ。大丈夫、そんなに長く潜らないから」

 

「えと…どうする?姉ちゃん」

 

「ここはやっぱり泳ぐ?セレン待ってるし」

 

二人は少し相談して、泳ぐ事に決めた。そして、二人は同時に海に飛び込んだ。それから、セレンの先導で水

中にあった洞窟に入り、水から上がった後でも続く洞窟を歩んだ。

そして洞窟を抜けると、そこは海岸への通り道、エリア9だった。

 

「わあ…会った時に言ったけど、セレンはこのフィールドの事にすごく詳しいんだね。」

 

 

「それほどでもないって。早く海へ行こう」

 

二人はまたセレンの先導で海岸のほうへ向かった。幸いエリア9にはモンスターの姿が無く、楽に海へ行くこ

とができた。

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

海岸、またの名をエリア10。そこは三人の求めるモンスターのキモを持つモンスター、エピオスが泳いでいる場所だ。三人はその海岸の海付近に立っていた。

 

「ここにエピオスが…」

 

「あそこ、水面に何かでっぱりがあるでしょ?あれはエピオスの背中なの」

 

セレンは遠くの水面を指差す。確かにでっぱりがある。

 

「なるほど、あれが今回のターゲットか。それじゃあ早速行こうか!」

 

そう言ってリュウジは走ろうとするが、トウガンにユクモノドウギの襟を掴まれて止められた。

 

「ゲホゲホッ!何するんだよ!」

 

リュウジはその拍子で咳こむ。

 

「待ちなって。セレンは水中に慣れてるからいいけど、私達は水中で狩りをした事がないよ?どう狩るの?」

 

「う…確かにそうだった…」

 

 二人は水中での狩猟経験が無い。よって手も足も出ないのだ。

 

「それなら大丈夫、エピオスを練習がてら狩ればいいよ」

 

 セレンは提案を出す。この案なら水中に慣れるかもしれない。

 

「それ言い考え。リュウジ、早く行くよ!」

 

「ゲホ…ま、待ってよ~」

 

トウガンはそうと決まるとセレンの腕を掴んで海へ向かった。リュウジは後を追うように海へ向かう。

 

 そして海へ飛び込んだ三人は、すぐに水面に顔を飛び出した。

 

「ぷはぁっ。それじゃあセレン先生、ご指導お願いしますね」

 

「よろしくお願いします」

 

 リュウジとトウガンはセレンに指導を頼む。

 

「ふふ、手とり足とり教えてあげるよ」

 

 二人の水中特訓が始まった。

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

三十分後…

 

「基本的な動きと武器の使い方はマスターしたみたいだね」

 

「ふう、思っていたより苦じゃないね。水中ってのは」

 

「ボウガンの弾速も陸上と変わらないな」

 

 二人は水中特訓をマスターした。

 

「これなら大丈夫だね。それじゃあエピオスを狩ろうか」

 

 三人はそれぞれ三匹のエピオスに向かって泳いだ。

 

「(もらった!)」

 

最初にエピオスにたどり着いたのはリュウジ。ユクモノ太刀を抜き、エピオスの身体を斬る。

 

「ゴォ!?」

 

エピオスは悲鳴を上げる。その悲鳴で他の二匹のエピオスは危険が迫っている事に気付くが時すでに遅し、ど

ちらともセレンとトウガンに襲われているからだ。

リュウジは斬撃を浴びせ、トウガンはLV1通常弾を撃ち、セレンはパワフルな攻撃を与えた。そして三匹のエピオスが同時に倒れた。もう動くことは無いだろう。

そして三人はかかさず剥ぎ取りナイフでモンスターのキモを採取した。

そして、リュウジとセレンは水面に上がり、

 

「ぷはっ、確かこのクエストって三つ採ればOKだったっけ?」

 

リュウジはセレンに聞く。

 

「うん、そうだよ。…って言うかトウガンはどこ?」

 

セレンは頷きながら言う。そして辺りを見回したが、どこにもいない。

 

「あれ、本当だ。お~い、姉ちゃん!どこだよぉ!」

 

リュウジは叫ぶが、返事が返ってこない。

 

「どうしたのかな?」

 

「ちょっと潜って探して来るよ」

 

 リュウジはそう言って潜る。すると目の前に謎の物体が迫ってきて、リュウジの顔に直撃した。

 

「ぶへっ!」

 

 リュウジは勢いよく吹っ飛ぶ。そして水面から出てきたのは…

 

「あはは、ドッキリ大成功!」

 

 頭に大量の海藻を被ったトウガンだった。その手には何かが握られていた。

 

「トウガン、どうしたの?心配したんだよ?」

 

「ああ、ごめんねセレン。実はこんなのを見つけたんだ」

 

トウガンは握っていた物を見せる。それは、ベニサンゴ石だった。

 

「これは…ベニサンゴ石?確かにトウガンから見れば珍しい物だね」

 

「え?それって珍しくないの?」

 

「ううん、これは特別。だって見て、汚れや欠けてる所が一切無く、普通のより紅い。私もこんなの見た事な

い。綺麗だね」

 

「じゃあさ、高く売れるかな?」

 

「残念だけど、ベニサンゴだから精算しても普通の値段と変わらないよ」

 

 ベニサンゴ等のアイテムは精算アイテムだ。精算アイテムとは、ギルドの決まりでフィールドから持って帰

る事ができないアイテムだ。

そういった物は、キャンプにある支給品ボックスと似た赤色の納品ボックスに入れ、換金される。モンスターのキモも精算アイテムだ。

 

「…俺には一言も無いのかよ…」

 

 二人が会話していると、リュウジが復活した。

 

「ん?ああ、許せ」

 

「なんだよそれ!せめてごめんとか…」

 

「ねえセレン、今度はあっちいかない?」

 

 トウガンはリュウジの言葉をスルーし、セレンに話しかける。

 

「え?キモなら三つ全部集めたんじゃ…」

 

「別に構わんでしょ。私だってここの事を知りたいからね」

 

「まあ、それなら別にいいけど…」

 

「よし決まり。じゃあ行こうか」

 

 二人は遠くへ行くことにした。

 

「だから、ちょっと聞いて…あれ?セレンもいない?どこに…あ!あんな所に!ちょっと待ってよ~!」

 

 一人で話し続けたリュウジは二人を追うように遠くに行った。

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

 エリア11

 

 そこは、広い水中の洞窟だった。エピオスはもちろん、漁で獲られる魚などもいた。しかし、そのエリアは

温厚な者だけがいるわけではない。獰猛で凶悪な存在もいる。しかし三人はその事を知らない…

 

「(エピオスが四匹…エリア10より多いな)」

 

リュウジはそう心に思う。水中では会話ができない。そのため、セレンが手でサインを出しながら泳ぎ、二人

を先導した。徐々に一匹のエピオスに近ずく三人。全員が武器を取り出し近づいたその時。

 

「ギュオッ!?」

 

 突然、三人が狙っていたエピオスが悲鳴を上げ、横に物凄いスピードで移動した。

 

「(なんて速さ!?いや、これはきっと…)」

 セレンは移動したエピオスを見る。そこには…

 

 青き甲殻と鱗を身につけ、角を生やしたモンスターがいた。その背には無数のでっぱりがある。その体長は人間など比べ物にならないほど巨大だ。そのモンスターの口には先ほどのエピオスが咥えられている。

そのエピオスはもう動いていない。その異変に気付いた他のエピオス達や魚達は逃げ出した。

 

「(何だよアレ…)」

 

リュウジは唖然とする。彼はこんなモンスターを見た事無いからだ。その時、セレンは二人に激しく手を振ってサインを出す。その意味は逃げろ。

三人はモンスターから遠ざかるが、モンスターはこちらに気付いた。

 

「グオオオオオォォォッ!!」

 

 モンスターは咥えていた獲物を離すと、咆哮を上げる。三人はその咆哮で耳を塞いで動けなくなる。特定の大型モンスターは、自分の咆哮で獲物の動きを封じる事ができる。

その咆哮を聞いた者は精神から恐怖が込み上がり、耳を塞ぐのと同時に恐怖で動けなくなる。その咆哮の名はバインドバイス。しかしボイスの音量しだいでは拘束が解かれる時間が違う。

三人はそれで動けなくなったが、しばらくして拘束が解けた。

 

「オオオオオォォォ!!」

 

そしてモンスターは大きな口を開け、リュウジ目がけて襲ってきた。

 

「(く、喰われるっ!?)」

 

 リュウジの顔は青ざめる。死を感じているからだ。しかしその時、リュウジの目の前に小さな玉が飛んでき

た。彼にはその玉に見覚えがあった。

リュウジは咄嗟に目を塞ぐ。そして玉が破裂し、中から直視すれば確実に視界を失うくらいの光が飛び出した。

 

「グゥッ!?」

 

 モンスターはその光に目を潰されて辺りが見えなくなり、自分の周りをもがいた。

 

「(今だ!)」

 

目を開けたリュウジ達はその隙にエリア11から抜け出した。そしてそこには視界を失ってもがき続ける青き

モンスターしかいなくなった。

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

エリア10

 

 三人は陸に上がり、長い間水中にいたせいか、激しく呼吸をしていた。

 

「はぁ…はぁ…何なんだよアレ…」

 

「ラギアクルス…きっとアレが村を困らせているモンスターだよ。実際に見たのは初めてだけど…」

 

 リュウジが先に言葉を口にする。そしてセレンはリュウジの問いに答えた。

 

「あんなのがいるなんて、水中って怖いな…まあ念のために持ってきた閃光玉が役にたったわ」

 

 トウガンはやってやったぜ的な笑みを浮かべる。あの時の玉は閃光玉と言う道具だ。投げると玉の中に入っ

ている光蟲という発光する虫が先程のように閃光を放ち、モンスターの目を潰す代物だ。

ハンターにとって人気のアイテムの一つだ。しかしずっと効果が続くわけではない。持続効果は短く、使う度にモンスターは目が慣れていき、持続効果がより短くなるのだ。

 

「ああ、そういえば姉ちゃん。ユクモから出る前に閃光玉をいくつか作ってたね」

 

「へへ、でもこのクエストじゃこんな事無いだろうなと思って一個しか持ってきてなかったから当たるかどう

かハラハラしたよ。もし外したらあんた、アイツのデザートになってたよ」

 

「やめてよそういうの。あの時マジで死ぬかと思ったんだよ。」

 

 トウガンの発言にまた青ざめるリュウジ。

 

「でも皆が無事でよかった。一人でもいなくなったら私、どうしようかと思ったよ」

 

セレンがホッと胸を撫で下ろす。彼女はすでに二人の事を信頼しているようだ。

 

「心配してくれてありがとう。さて、キモも揃ったし、陸に上がればアイツの事は大丈夫だから、帰ろうか」

 

 リュウジはそういうと立ち上がる。その足は少し震えている。

 

「リュウジ…」

 

セレンは心配そうな目で呟く。彼にとってラギアクルスはトラウマになったようだ。

 

「足ブルブルしてるヤツに仕切られてもねぇ。あ、リュウジ、後ろにガイコツが!」

 

「ひっ!?…っていないじゃん。本当にやめてよ…」

 

 リュウジは後ろを向き、後ずさる。しかしそこにはなにもいない。

 

「ははは、でもガイコツなんてラギアクルスに比べたら可愛いもんでしょ?」

 

「確かにそうだけど、どちらも精神的によくないよ…」

 

 軽く笑うトウガンに対し、ジョークに呆れるリュウジ。すると、セレンが、

 

「トウガンって優しいね。ジョークもリュウジの気を遣ってラギアクルスをネタにしなかったんだね。もしそ

んな事したら私、怒ってた所だよ」

 

「へへん、私も空気を読むのだよ。そんでもってリュウジ、後方は私に任せてあんたは中央ね。セレンは悪い

けど先頭お願い」

 

「うんわかった。リュウジ、私達が守るから安心して」

 

「え?そんな事しなくても…」

 

 リュウジが次の言葉を言おうとした時、トウガンがリュウジの背を思いっきり叩く。

 

パシーン!

 

 実にいい音がエリア中に鳴り響く

 

「痛って!なにすんだよ!」

 

「んな足で先頭仕切られちゃ迷惑なんだよ。黙って言う事聞け」

 

 トウガンが冷たく言う。今のリュウジでは反論ができない。

 

「…わかったよ、中央でいいんだろ?」

 

「ならよろしい、わかったなら行った行った。」

 

 トウガンは先程の冷たい態度から軽い笑顔になり、リュウジの背中をグイグイ押す。

 

「痛てて…」

 

 リュウジは背中を叩かれて痛いらしい。

 

「先頭もらいっと。リュウジ、帰りは来た道通れないけど我慢してね」

 

「そうか…しばらく水中は勘弁だからいいけど…」

 

 そして三人は先頭がセレン、中央がリュウジ、後方がトウガンといった組み合わせでキャンプに帰ることに

した。

 

 道中、モンスターに襲われたなどの事は無く、無事にキャンプに戻り、キモとオマケのベニサンゴ石を納品し、クエストを達成した。その時には夕方だった。

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

 モガ村

 

「それは災難だったな。でもまあ、皆が無事でよかった」

 

三人はこの事を村長に話した。村の人達も心配している様子だ。

 

「はい、リュウジが特に参っているのでなるべく早く家に戻らせたいのですが…」

 

 トウガンは困った表情で村長に話す。

 

「うむわかった。報告ご苦労、戻っていいぞ」

 

「はい、それじゃあ行きましょう二人共」

 

「うん。行こ、リュウジ」

 

「…うん」

 

三人は家に戻る事にした。

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

セレンの家

 

「ふう、今日は疲れた。私はこれから食堂に行くけど、二人はどうするの?」

 

トウガンは二人をテーブルに座らせ、食事について聞く。

 

「ゴメン…今日はいいや」

 

「私もリュウジのそばにいたいからいい」

 

 二人共食事は断った。

 

「そう、夜中にお腹空いても知らないよ」

 

 トウガンはそう言い残し、家から出て行った。

 

「リュウジ…」

 

 セレンは悲しそうな目でリュウジを見て、右手で彼の手を包む。

 

「ねえセレン…」

 

「何?」

 

「姉ちゃんはすごいよ。だってあんなのに対して行動ができるから…それに比べて俺は…死を覚悟する事しか

できなかったんだよ?まったく情けないよ…悔しいなぁ…」

 

 セレンが包んでいるリュウジの手は拳を作り、何も無いのに強く握り締めた。そして彼の顔から涙が溢れ、

テーブルを濡らす。

 

「リュウジ…」

 

 セレンはまた彼の名を呟き、手を重ねるように左手で拳を包んだ。

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

 食堂

 

「いいんですかニャ?リュウジさんの面倒を見なくて」

 

「そうですよ。「呑気にメシなんか食ってる場合か!」ですよ」

 

 食事をしていたトウガンに、コックアイルーと隣にいたアイシャがトウガンに話す。

 

「大丈夫です。明日になれば元に戻ります。それに、ああいうのは一人にするか、だれか一人だけ隣にいれば

いいんです」

 

「そんなもんなんですかねぇ?私だったら「諦めんなよ!」とか、「もっと、熱くなれよ!」っていいます

よ?」

 

 アイシャが言うと、トウガンは、

 

「それでは逆効果です、余計落ち込みます。本人は諦めていないし、全てを尽くしています。今回は相手が悪

すぎるんです。」

 

「う…言われてみると確かにそうだけど、トウガンさんってなんかドライすぎません?」

 

「これくらい普通です。」

 

トウガンはそういうと、白いご飯とサシミウオの塩焼きを口にする。

 

「(…コックには失礼だけど、なんか不味い…いや、私が不味くしてるのか…)」

 

 トウガンは黙々と食事をとる。その時の彼女の足は、わずかに震えていた。

 

「………」

 

その光景を村長は遠目で見ていた。彼は今のトウガンをどう思っているのか、本人しかわからない。




シリアスシーンってのは難しい…

今回登場した大型モンスターは、海竜ラギアクルスです。
陸上はともかく水中では手こずりました(笑)
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