姉弟ハンター奮闘記 作:やーみん
モンスターのキモ納品クエストから数日後の昼、
「ねえねえ!リュウジ兄ちゃん!サシミウオが釣れたよ!」
橋の近くで村の子供が釣ったサシミウオを隣にいたリュウジに見せる。
「お、美味そうだね。けど俺が釣ったハリマグロも負けてないぞ?」
一方、リュウジはサシミウオより大きな魚、ハリマグロを子供に見せる。
「うわっ!デカッ!負けた…」
「ははは、大きければいいってもんじゃないよ。よかったらコレあげようか?」
落ち込む子供にハリマグロを差し出すリュウジ。子供は喜んで受け取った。
「ありがとう!今晩の飯にすっからな!」
そして子供はリュウジに「じゃあな」と言い、去って行った。
「お、リュウジ、元気になったみたいだな。いいことだ」
「あはは、ありがとうございます」
すると、次は村長のせがれが近づいてきた。
「昨日は色んな素材を集めてくれてありがとな。村の資源に使わせてもらうよ」
「はい、ぜひ使って下さい。それで村の皆が笑顔になるなら」
「嬉しい事言ってくれるねぇ。ガハハハ!」
と言い残し、せがれは去って行った。
「リュウジ、立ち直れてよかったね」
次に、セレンが近づいてきた。
「ああセレン、あの時は心配かけてごめんね。でももう大丈夫。もう心配かけさせないよ。」
リュウジは自信満々に話す。セレンはそれに対し、ニコッと笑う。そんな二人を遠くから見ている人物が二
人いる。
「トウガンさんの言う通り、すぐ治りましたね」
「でしょう?リュウジは強い子なんです」
アイシャとトウガンだ。二人はその光景を見て笑みを浮かべている。
「ところでアイシャさん、今日のクエストを受注したいのですが」
「はい、クエストですね?トウガンさんは仕事熱心ですね~。でも無理すんなよ!」
「はは、私も休む時は休みますよ」
「それでは、アオアシラの狩猟クエストはいかがですか?」
「アオアシラですか、いいですね。では二人を呼んできます」
トウガンはそう言うと、二人の所に向かった。
「リュウジ、セレン、仕事だよ。相手はアオアシラ、リュウジと私は奴の狩猟経験はあるけど、セレンはど
う?」
トウガンは二人に近づくと、クエストの話しを持ちかけ、アオアシラの狩猟経験についてセレンに聞く。
「二人が来る前の頃に一頭倒した事があるよ」
「そう、それなら安心した。奴は大型モンスターの中では弱い部類だけど、油断するとやられるからね」
セレンの言葉にトウガンは安心する。
「じゃあセレン、早速仕度しようか」
「うん、万全の準備をしなくちゃね」
二人は家へ戻った。納品クエスト以降か、二人の中は少し縮んだような気がする。
「セレンって、いつか私の義妹になるかもしれないね…」
トウガンは微笑みながらそう呟き、家に戻った。
★★★
ベースキャンプ
三人は狩りの仕度を済まし、孤島に来ていた。
「はい弾薬や応急薬、携帯食料だよ。あと支給専用音爆弾も」
「サンキュ、さあ早く弾を寄こした寄こした」
トウガンは強引にリュウジから弾を取る。そして弾薬をベルトに入れる。
「ありがとう。音爆弾は貰うね」
「じゃあ薬と食料は皆均等にするよ」
リュウジはセレンに音爆弾を渡し、他の物を分けた。ちなみに音爆弾とは、耳が敏感なモンスターに対し、
有効な道具だ。
投げるとキン、という人間が聞けばただの高い音を出すが、耳の敏感なモンスターには轟音よりひどい音らしい。それで一瞬だが、動きを止める事ができる。
「さてセレン、アオアシラはどこにいると思う?」
トウガンは孤島の地図を開き、セレンに見せながら聞く。このフィールドの事なら彼女が一番知っているか
らだ。
「ちょっと待って。今からアオアシラの気配を感じ取るから」
「え?そんなことができるの?」
セレンの感じると言う言葉にリュウジは不思議に思う。
「私の装備、ハンターシリーズは少し位だけど目標の位置を探知することができるスキルがあるの。リュウジ
のユクモノシリーズも何かのスキルがあるはずだよ」
装備にはスキルという物がある。効果が発揮すれば狩りを有利に進める事ができる。
「そう言えばハンターシリーズってそんなスキルがあったね。俺のユクモノシリーズにもあるよ」
リュウジは思い出すように言う。
「それじゃあ探知するね。二人はちょっとの間静かにしてて。気が散ると見つけられないから」
セレンはそう言うと、真剣な表情で目を閉じた。この間、二人は静かにセレンを見ることしかできなかっ
た。
そして、少しして、
「見つけた。エリア3にいる」
セレンが目を開け、エリアの番号を口にする。トウガンは早速地図を確認し、エリア3の場所を把握した。
「わかった。じゃあまずはそこを目指そう」
トウガンはそう言うと、配られた携帯食料を口にしながら、応急薬をポーチに入れて立ち上がる。二人もトウ
ガンと同じ事をし、立ち上がった。クエスト開始だ。
★★★
エリア3
道中、2匹のジャギィが襲ってきたが、三人は難なく返り討ちにした。このエリアは、一言で言えば森の通
路だ。通路と言っていいほど狭い道があり、浅い川が流れている。
「あ、ハチミツ!」
トウガンは近くのハチの巣を見つけ、尋常じゃないスピードで巣に向かい、ポーチに入れていた空のビンで
ハチミツの採取を始めた。
「姉ちゃんって採取となると目がないんだから…」
「だからレザーシリーズなんだね」
レザーシリーズは装備した者により効率良い収集能力を与える他、虫あみやピッケルを上手に扱え、長持ち
させる力もある。採取好きなトウガンの愛用する装備だ。
トウガンは呑気にハチミツを採っていると、何かの足音がこちらへ近づく。それも速度が速く、重い足音だ。
「姉ちゃん、来るぞ!」
リュウジはトウガンに言うと、背からユクモノ太刀を抜き、構えた。セレンも続くようにボーンアックスを
構える。
「言われなくても!」
トウガンはハチの巣から離れ、クロスボウガンを手に取り、LV2通常弾を装填し、足音のする方向に銃口
を向けた。
三人が警戒し、通路の向こう側から現れたのは、体毛が青い熊だ、その腕は硬く発達しており、爪の生えた
鎧の腕甲に見えなくもない。そう、この熊がアオアシラ。
三人が狙っているモンスターだ。アオアシラは三人を見ると急ブレーキし、二足で立ち上がる。
「グオオオォォッ!!」
そして三人を敵とみなしたのか、咆哮を上げる。アオアシラの咆哮はバインドボイスではないので三人は普
通に動ける。そしてアオアシラはトウガンの方に飛びついた。
「そんな攻撃っ!」
アオアシラの事を把握しているトウガンは横転して避け、アオアシラは何も無い所へ着地した。その隙にリュ
ウジとセレンはアオアシラへ向かって走る。トウガンは距離を取るため、アオアシラから遠ざかる。
「そらっ!」
「はあっ!」
リュウジとセレンがアオアシラを斬る。セレンの攻撃は臀部に命中したが、リュウジの攻撃は硬い腕に弾か
れた。そしてトウガンは十分に距離を取り、スコープを覗き込んでアオアシラの後脚にLV2通常弾を二発撃
つ。
弾が当たった所アオアシラは立ち上がり、前衛の二人に対して右腕を大きく振る。二人はその攻撃を予想し
ていたため、避ける事ができた。
「くそ、相変わらず腕が硬い…」
リュウジは先の攻撃が弾かれた事に舌打ちする。
「じゃあ腕は私に任せて。壊してみせるから」
その愚痴を聞いたのかセレンは、腕は任せろと言う。
「壊すって…余程威力のある攻撃かボウガンの弾じゃないと難しいよ?」
「大丈夫、この武器には大技があるの。それで腕を壊したことがある」
「そうなんだ、だったら腕は任せるよ。」
「ありがとう」
二人は会話を終え、アオアシラに突っ込む。セレンは正面から、リュウジは回り込んで後ろから攻撃を仕掛けた。リュウジは背を斬り、セレンは腹を斬ろうとするが、腕により弾かれる。
トウガンはLV2通常弾をまた二発撃ち、リロードした。クロスボウガンはLV2通常弾が一回の装填で四発入る。アオアシラは後ろに倒れこみ、リュウジを潰そうとしたが、リュウジはまた横転し、回避した。
次にアオアシラは、トウガンに狙いを定め、二人を無視してトウガンに迫る。
トウガンは一発撃つが、アオアシラは止まらない。トウガンはこれ以上の発砲は無駄で危険と判断し、突進を避ける。避けた後、またアオアシラから距離を取るために離れた。
そしてリュウジとセレンが走り、アオアシラに迫る。リュウジは回り込んで斬るが、セレンは立ち止まった。
「セレン?」
リュウジはセレンの行動が理解できなく、彼女を見る。
するとセレンのボーンアックスが斧の形から大剣のような形に変形した。これはスラッシュアックスの特性である。
スラッシュアックスには斧モードと剣モードの二つがある。斧から剣へ、剣から斧へとどちらでも変形が可能だ。前者はスラッシュアックスの基本形態で、後者は変形した物で、動きが斧モードより遅くなるが、大剣のようなパワーを得る。しかしそれだけでは無い。
スラッシュアックスによっては違うが、使っても減らないビンが内蔵されており、剣モードではそのビンの効果が出る。ボーンアックスは強撃ビンが内蔵されているので、パワーがより増す。
しかし、使いすぎるとビンの効果がなくなる。その時はレバーを引けば対処できるが、斧モードに戻ってしまう。
「はあぁっ!」
セレンはボーンアックスを剣モードに切り替え、アオアシラの腕に斬りかかる。今度も弾かれるが、連続でボーンアックスを叩きこむ。この攻撃を続ければいずれは壊れるだろう。
「こっちも負けてられない!」
リュウジも負けずにアオアシラを二度斬り、突く。そうしていると、
「ガアアアァァッ!!」
アオアシラが二足で威嚇行動をとり、吐息が白くなった。怒り状態だ。大型モンスターの特徴の一つで、ある
程度のダメージを与えられるとその状態になる。
この時は戦闘能力が大幅に増し、動きも速くなる。そのため、一旦逃げて怒り状態が収まるのを待つと言う戦法も上げられる。
「こりゃヤバいかな?」
トウガンがそう呟き、クロスボウガンに装填されている残りのLV2通常弾を全て撃つ。そしてリロードし
た。弾は全弾アオアシラの頭部に命中する。
「ゴオオォォォッ!!」
アオアシラはトウガンが目障りに感じたのか、再びトウガンに迫る。
「ふん、そんな攻撃…きゃっ!」
トウガンは避ける態勢に入ろうとするが、転んでしまった。ハンターにとっては死に直結する事だ。
トウガンは立ち上がろうとするが、時すでに遅しアオアシラが止まり、トウガンの目の前に立ち止まった。
「しまっ…」
トウガンが言葉を言う前にアオアシラの行動が早かった。アオアシラはトウガンを掴み、持ちあげる。拘束攻撃と言われる技だ。
それは、大型モンスターが対象を拘束し、捕食するという恐ろしい物だ。
トウガンは今、その拘束攻撃に遭っている。つまり捕食されそうになっている。
「姉ちゃん!」
リュウジは叫ぶ、しかし叫んだ所で何も変わらない。アオアシラは口を開けてトウガンの身体を噛み砕いた。
と言うグロい事はせず、アオアシラは捕食をせずにトウガンを縦に振り回す。
「わわっ!な、何!?」
トウガンは焦る。どうやらアオアシラは捕食が目当てではないようだ。トウガンは振り回されている内に、
ポーチから何かを落としてしまう。先程採ったハチミツのビンだ。
アオアシラはそれを見つけると、トウガンを投げ飛ばし、落ちたビンを砕いて中のハチミツを腕に絡めて美味しそうに食事を行った。
「え…?」
「確かにアオアシラはハチミツが大好物だけど…」
リュウジとセレンが自分の敵よりハチミツを優先したアオアシラを呆れながら見た。
「ハチミツ…私のハチミツ…ワタシノ…」
すると、顔面から着地したのか顔が土だらけのトウガンは立ち上がり、まだ食事をしているアオアシラと食べられている自分が採ったハチミツを見た。そして…
「なぁに勝手に人様のモン喰ってんだこのボケがあああアアァァァ!!!」
トウガンは鬼のような形相でクロスボウガンを尋常ではないスピードで構え、そして同じくらいのスピードでLV1散弾を装填し、スコープを覗かずに装填されている五発の弾を全て乱射した。
標的はもちろん呑気にハチミツを食べているアオアシラだ。弾はアオアシラの背中に当たる。
撃ったら散らばる弾なので複数当たり、アオアシラの周りの草を吹き飛ばし、ついでに通りすがりの昆虫モンスター、オルトロスを数匹粉砕した。
「グオッ!?」
アオアシラも流石にこれは効いた。しかし、トウガンの怒りは終わらない。LV1散弾を再装填し、全弾撃ち
尽くす。そしてまた装填して撃つ。これを何度も繰り返した。
「オオオゥ…」
アオアシラはこの場にいる事を危険と判断し、走って洞窟の方へ逃げた。
エリア3には二つ、洞窟への道がある。一つは通路の真ん中にあるが、入口が狭いため、大型モンスターは入れない。中には採掘ポイントが沢山ある。
もう一つは大きな入口で、中は肉食竜のテリトリーである。アオアシラは後者の入口へ逃げた。
「おいゴルァ!!待たんか…」
トウガンはもちろん追うが、リュウジとセレンに腕を抑えられて動けなかった。
「姉ちゃん落ち着いて!ハチミツなら今度採ればいいだろ!?」
「えっと、ハチミツなら帰ったら私のあげようか?」
二人はトウガンを落ち着かせる。すると、
「…それもそうだわ。ちょっと大人気なかったな?私」
すぐに落ち着いた。アレのどこがちょっとなのかは本人しかわからない。
「はあ、セレン、なだめ協力ありがとう」
「どういたしまして。でもさっきのトウガン、怖かった…」
二人が会話すると、トウガンは、
「でもアイツは許さん…よくもハチミツを…」
余程憎いのか歯ぎしりをし、拳を強く握る。
「追うんなら薬を飲んだ方がいいよ。投げられたんだろ?」
「そうだった。じゃあ応急薬を飲んで…」
トウガンは応急薬を一気に飲んだ。回復薬や応急薬は、飲んだ者の痛みを癒してくれる代物だが、傷は癒え
ない。幸い、トウガンは軽い擦り傷なので、傷は残らない。
「ふう、そんじゃ行きますか」
トウガンはクロスボウガンにLV2通常弾を装填する。リュウジとセレンもポーチから砥石を取り出し、武器を研ぐ。剣士ハンターには砥石は必需品であり、これが無いと武器が研げず、刃こぼれして攻撃が通りにくくなる。
三人は準備をし、アオアシラの逃げた洞窟へ向かった。
★★★
エリア7
三人の向かった洞窟は通称、エリア7。そこにアオアシラが立っていた。リュウジが真っ先に突っ込み、セレンはボーンアックスを剣モードに切り替え、ゆっくり進む。
そしてトウガンはスコープを覗き、発砲する。
「でりゃあっ!」
リュウジがユクオノ太刀を振り下ろすと同時に、弾が着弾する。そしてセレンがアオアシラに近づき、正面
から突きを放つ。
アオアシラはそれを受け止めるが、セレンは笑みを浮かべた。
「はあああぁぁっ!」
すると、ボーンアックスが振動する。そして、爆発を起こし、斧モードへ戻った。属性解放突きだ。
この技はスラッシュアックスのビンの力を最大限に引き上げる技で、最後の爆発は属性解放フィニッシュと言う。しかしそれを使うと斧モードへ戻ってしまう。
アオアシラはその爆発で後ずさり、両方の腕甲が砕けた。
「続いて私が!」
トウガンは弾倉に残る弾全てをアオアシラの片足狙って撃った。アオアシラはこれにより倒れこんだ。
「ウォウ…」
「最後に俺だ!」
リュウジは渾身の一振りでアオアシラを斬り、再び同じ一撃を放つ。そして、
「でりゃあああぁぁぁ!!」
高速で二度斬り、最後の一振りを与えた。気刃斬りと言われる技だ。威力の高い連続攻撃で一気に決める技で、この後にその攻撃を遥かに超える一撃ができるのだが、強力さ故、今のリュウジではその技は使えない。
しかし気刃斬りでも効果は抜群だ。アオアシラは技を浴びせられ、動かなくなった。クエストクリアだ。
「よっし!倒したぞ!」
「今のリュウジ、かっこよかったよ」
ガッツポーズをとるリュウジにセレン近づいて称賛する。
「え、そう?ははは」
褒められたのが嬉しいのか、別の意味で嬉しいのかわからないが、リュウジは顔が赤くなった。
「思い上がんなって、あん時私が転ばさなきゃ気刃斬りが決まらなかったかもしれんよ?」
トウガンは頭を掻きながら二人に近づく。
「う…考えたら確かに…でも、サポートありがとう」
「うんうん、わかればよろしい。さて、剥ぎ取ろ剥ぎ取ろ」
トウガンはそう言うと、腰に付けている剥ぎ取り用のナイフでアオアシラの身体を突きたてる。
「俺たちも剥ごうか」
「うん」
二人も剥ぎ取りに参加した。その後、アオアシラからそれぞれが欲しい素材を得て、嬉しそうな顔で村に帰って行った。
本格的な戦闘の初相手は、タイトル通りアオアシラです!
アイツの習性を利用したギャグシーンを入れてみました。
でもリュウジの立ち直りは早すぎるかな…?