宮藤芳佳の孤闘~第二次ネウロイ大戦異話~ 作:芳佳ファン5号
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2016年12月17日追記
芳佳の階級を修正しました
プロローグ─1951年─
風を切って飛ぶ。
エーテルを掻いて矢のように。
紺碧のただ中を、白雲が後方へ流れていく。
私がかつて感動し、ずっと見ていたかった景色。
今となっては、最もどうでもいい物の一つ。
だって、これを見ているということは、今日も私は人を殺すんだろうから。
「オラーシャ機、11時方向より12機接近。少佐、戦闘を開始してください」
……ほら来た。
──1951年、ウラジヴォストーク
「少佐?どうかなされましたか?」
数秒経っても応答が聞こえない事に気付いた通信兵が声をかけてくる。
「……なんでもありません。戦闘に移ります」
前方に陸地、さらにその手前に10ほどの黒点が見える。そのひとつひとつに、国を護るための、人を守るためのパイロットが乗っているのだろう。
(それを、私は──)
しかし、これを放棄すれば、大切な人が不慮の事故に遭う事になっている。
ため息をつき、特注の武器を構える。
(こんなことをするために、ウィッチになったんだっけ?)
私の魔法力を直接照射する武器。本来はネウロイを相手にするために開発されたもの。彼らの装甲を撃ち抜くそれは、飛行機など一瞬で蒸発させることが出来る。
(……嫌だよ)
でも、ごめんなさい、と呟き。
「攻撃、開始」
空が光り、点は消えた。
空を飛ぶことの楽しさを知ったのはいつだったろうか。
赤城を守った時?
仲間と飛んだ時?
ネウロイを倒した時?
今となっては思い出せない。
あの戦いが終わった後は、平和になると思っていた。みんながそれぞれの道を歩き始め、世界も復興に向けて歩きだした。
「もう戦わなくていい」
誰もがそう思っていた。
どうして私は飛んでいるのだろう。
もう倒すべき敵もいないのに。
守るべき者は守ったのに。
どうして私は飛べてしまうのだろう。
「唯一のウィッチ」などと呼ばれて。
いらない称号も付けられて。
今日も12人殺した。今まで殺した数なんてわからない。
もうあの美しく感じられた空は、今や飛ぶだけで私に罪を背負わせる地獄だった。
だからだろう。本当にふと、言ってしまったのだ。
「もう、飛びたくなんて、ないな」
言ってしまった。その瞬間だった。
ガクン。
魔法力が切れ、ユニットの制御が利かなくなった。
「え」
落ちていく体。
ユニットはウンともスンとも言わず、それどころか砕け散った。
死ぬのか、と思ったが、不思議と怖くは無かった。何十人、下手すると何百人も殺した。やっとそんな行為から解放されるのだ。もう人を殺して誉められるような地獄から離れられる。自分を悲しむ人などいないだろうし、監視も無くなるだろう。
そう思うと、私は自然と笑顔になった。
ふと考える。
私は死んだらどうなるのだろう。
お父さんと会える?
そんな筈はない。
私が殺したあの人たちの所に行くんだろうか。
だとしたら嬉しい。
やっと謝れる。償える。
幾らでも罵られるし、幾らでも殴られよう。もしかしたら死ぬほど痛い目に遭うかも。
それで良い。
「そうだったら良いなあ」
そして、私は、春先の花が咲き始めたばかりの、シベリアの大地に叩きつけられた。
1951年、5月23日。
第二次ネウロイ大戦終結から2年後。
「オラーシャ領」「ウラジオストク」付近の上空にて作戦行動中の扶桑皇国海軍所属のウィッチ、宮藤芳佳少佐の機体に不具合が生じた。少佐は回復を試みるも叶わず墜落したと見られた。
敵地のため捜索は出来なかったが、オラーシャ陸軍により乗機と少佐の遺体が発見された。その後のオラーシャ側の調査でシールドを発動せずに地面に激突、そのまま死亡した事が判明、その遺体はウラジヴォストーク郊外に遺棄されたという。
これにより、扶桑皇国だけでなく全世界の軍事組織に所属するウィッチはいなくなり、戦闘機時代が到来することとなる。
空から、魔女は消えたのだ。