宮藤芳佳の孤闘~第二次ネウロイ大戦異話~   作:芳佳ファン5号

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まだ1936年から離れられないですorz


第九話

「教官!」

 

 エンジンがオーバーヒート寸前になるまでありったけの魔法力を注ぎ込む。

 

『芳佳、あの飛行機が逃げる「静かにしてっ!!」

 

 兼定が何か言っているが今教官を助けなければ教官は死ぬんだ。

 構ってる暇は無い。

 

「間に合えぇ……っ!!」

 

 ストライカーがミシミシと音を立て始める。

 

「耐えてっ、お願い!」

 

 ストライカーに祈る。

 

 地上まで二百米。

 教官の顔が見えた。

 

 地上まで百五十米。

 教官が何か口を動かしているのが見えた。

 

 地上まで百米。

 あと少しで手が届く…!

 

 地上まで五十米。

 あと少し!

「く……な、み………………く……」

 

 地上まで廿米。

 届く!

 

 

「宮藤、来るなあああああああああああ!」

「──へ!?」

 

 地上まで五米。

 あと少しで墜落と言う所で教官を掴まえた私は、シールドを展開。

 荒漠地帯の荒れ地に不時着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──はぁ。それで、整備兵のいない間を見てここまで来た、と」

「はい。でも教官がご無事で良かったです」

 

 教官は、私をひとしきり問い詰めた後、また大きなため息を吐いた。

 

「……ダメ元で聞くが、ストライカーは?」

「……見ての通りです。ごめんなさい」

 

 そう言って私は横にずれた。

 そこにはボロボロになった九五式艦上戦闘脚があった。

 

「これじゃあ帰れない、か」

「……ごめんなさい」

 

 私が謝ると、教官は手をヒラヒラさせて少し笑った。

 

「いや、七歳の行動力を甘く見てた私が悪かったんだ。お前のせいじゃない」

「……」

 

 そう言った後、教官は顔を曇らせた。

 

「なあ、宮藤。ここ、何処だかわかるか?」

「確か、第三航路の途中です」

「……そうじゃない事を祈ってたけど、やっぱりなぁ。ヤツらが出たってトコ、ここしか無いからなぁ」

 

 そう教官が言って、立ち上がった瞬間だった。

 

 「──!」

 

 辺りが赤く光った。

 

呼吸が詰まるような衝撃と共に、背後の岩が砕け散る。

 

(──ネウロイッ!?)

 

「チッ。もう少し待ってくれると思ったんだけど」

 

 そう言うと教官は私の前に立った。

 

「教官、あれはネウロイの光線じゃ……」

「宮藤。私の後ろに隠れろ」

 

 教官は、私の問い掛けには答えずにそれだけ言って魔法力を発現させる。

 

「ちょっと待ってください。一体何がどうなってるんですか!どうしてネウロイがいるんですか!」

「ああ、お前は奴に遭った事があるんだったか。……隠してても無駄か」

 

 地震のような足音が荒野を揺らす。

 

「ここは、あのネウロイとかいう怪異共の、拠点でな。そして今、あいつらが目覚めた」

「ネウロイの……拠点?」

 

 え、つまりここは、巣?

 

「そうだ。見つかったのは数ヵ月前でな。ヒスパニアで戦役が起きて、それで荒漠地帯も含め徹底調査したら見つかったんだ。でも、事前に発見できたのは良かったが攻勢に踏み込むには軍備が足りなくてな。幸い奴らも休眠しているみたいだからって様子見していたんだが……」

 

 教官は空を睨む。

 

「偶然……にしては出来すぎなタイミングだな」

 

 そう言っている間にも、足音は近付いてくる。

 教官の魔法力の気配が増大する。

 

「……宮藤、私のそばを動くなよ」

「……はい」

 

 まずい。

 今は夜だから周りが見えないが、それでもあいつらが大量にいるのが気配でわかる。

 

「何だ、奴らが怖いのか?心配するな、必ず帰れる。何てったってエースの私がいるのだからな!」

 

 そう教官は笑っているが、それは強がりだということは私でも理解できた。

 そもそも、今の教官の言動は矛盾している。

 死地から脱したいのなら逃げれば良いし、普段の教官なら私に「動くな」など言わない。

 こんな場合はすぐに逃げろと言うはずだ。

 ──じゃあ、何で逃げろと言わないのか。

 答えは簡単だった。

 

『逃げない』のではない。

『逃げられない』。

 

「……」

 

 周囲を探るとすぐにそれがわかった。

 ここは、小規模なネウロイの巣のその中心で。

 中心と言うことは巣の外縁から最も離れていて。

 当然その中にはネウロイが大量に蠢いていて。

 

 

 

 

 

 ──その全てが、こちらを見ていた。

 

 

「──っ!教官、ごめんなさい!」

「何だ宮ふっ!?」

 

 教官をウィッチの力で転ばせ、自分も地面に伏せてありったけの厚いシールドを展開する。

 次の瞬間、今まで教官の頭があった所を幾百もの光線が通り過ぎ、いくつかが反応して爆発を起こした。

 凄まじいエネルギーに少し驚くが、落ち着いて対処する。

 こんなもの、ベルリン解放時に比べればどうってことないのだ。

 そうしてシールドを張って一分ほど。

 ようやく辺りが静かになったので、シールドを閉じて私たちは岩影に逃げ込んだ。

 そこで改めて分厚いシールドを張る。

 これでネウロイが来ても大丈夫だろう。

 

「教官、お怪我はありませんか」

「……ありがとう、宮藤」

 

 その言葉を言う教官の顔は、油断に対する悔いと恥ずかしさで酷く歪んでいたが、それでも無理に笑みを浮かべていた。

 だから私は、こう言うのだ。

 

「教官はもうシールドも怪しいんですから、無理しないでください。もし教官が死にでもしたら、私や裕子ちゃんが悲しみます。大人しく私のシールドに守られてください。大丈夫、私のシールドは破れませんから」

 

 ……うん、ちょっと言い過ぎたかな?

 少し不安になったので教官を見る。

 すると、それを聞いた教官は、ぽかん、とした後大笑いを始めた。

 

「あーはっはっはっ!宮藤も言うようになったなぁ!そうかそうか、『大人しく私に守られてください』か!七歳が良く言うなぁ!あっはっはっ!」

 

 と、教官はそこで笑いを止め、真面目な顔になる。

 

「……私の厄介事に巻き込んで、本当にすまない。それと、シールドはよろしく頼む」

 

 教官が悪い訳では無いのに、彼女は謝る。

 あの教官の事だ、本当に悪いと思っているのだろう。

 

「いえ、私が好きで付いてきたんです。教官のせいじゃありません。……それに、今はここを脱出する方が先です」

「ふふ、それもそうか。……しかし、どうする?ここは囲まれているぞ」

 

 教官の言う通り、ここはネウロイに完全に包囲されている。

 いくら魔法力で周りを見てもネウロイの間に隙間は無い。

 

「……ちなみに教官、武器は何かありますか?」

「すまない。突然連れられたと思ったら落とされたからな、今は何も無い」

 

 武器も無し、と。

 ──アレをやるしか無いか。

 

「教官、私に一つ案があります」

 

 私は教官に策を説明した。

 

「……武器も無しに奴らの中に突入だと?そんな案、私が承認するとでも思ったのか?」

 

 やっぱり反対されるか。

 でも私はそれで欧州戦線の激戦から生還してきたし、それ以外に手が無いのだ。

「前」の事を言う訳にはいかないが、説得するしかないだろう。

 

「──やむを得まい。わかった、その案で行こう。……死ぬなよ?これは命令だからな」

「了解です、教官。私は死にませんよ」

 

 数分後、ようやく教官は案を了承してくれた。

 大丈夫、私はあの戦いを生き延びたのだ。

 今回もやれる。

 

『──で、何をするんだ?俺は何をすれば良い』

「兼定、貴方にも魔法力を注ぎます。そして、私と一時的に同化してください」

 

 かつて欧州で巡りあった若本さんに教えてもらったがある。

 彼女曰く、彼女の固有魔法である『覚醒』は、実のところ固有魔法では無い。

 繊細な魔法力のコントロールと、巨大な魔法力の受け皿となる使い魔さえ居れば誰にでも使える、らしい。

 そして私には「前」での戦いで培った魔法力の操作技術と、兼定という何百年とネウロイを封じて来た霊刀の化身の使い魔の存在がある。

 

『待て芳佳。それでお前は大丈夫なのか!?俺が暴走して人格が──』

「大丈夫、兼定。私を信じてください」

『しかし、今のお前は危う──』

「私の事はどうでも良いんです。私は教官を守らないといけないので」

『だから、っ、おい、人の話を──』

 

 うるさいので勝手に魔法力を流し込む。

 すると、尻尾と耳が白く光り始めた。

 体も軽くなり、周りも見渡せるようになる。

 そらにしても、兼定はどうして私にあそこまで構うのだろうか。

 私なんてどうなっても良いのに。

 

「では、宮藤芳佳。出撃します」

 

 敬礼をする。

 教官は、無言で答礼をした。

 岩場から首を出して、周囲を魔法で確認する。

 相変わらずネウロイに隙間は無いが、先ほどの爆発で私たちを倒したつもりでいるのかこちらに注意は払っていない。

 

「教官、私が合図します。そしたら飛び出て走ってください」

「わかった」

 

 教官と打ち合わせをし、岩場から出る。

 

(まずは……あいつからにしよう)

 

 兼定の本体である小刀を抜きつつ、無音でネウロイの背後に立つ。

 

(まずバランスを崩して──)

 

 右脚部の付け根を叩き斬る。

 奴らが転べばこっちのものだ。

 

(次にとどめ)

 

 魔法力を集中させたその拳をネウロイに叩き込む。黒い巨体が、閃光に包まれ消える。この間二十秒。

 そして、敵が気付かない間にその隣のネウロイも倒す。

 

(やっぱり、「前」と比べると、弱い)

 

 それでも数は多いのだ。効率的に奴等を倒さないといけない。

 ──私はこの瞬間、ネウロイをただ倒すための機械になっていた。

 

(次。)

 

 撃破。

 背後から光線を受けるが、シールドで弾く。

 

(次。)

 

 撃破。

 光線も全て弾く。

 

(次。)

 

 撃破。

 シールドを常時展開し始めた。

 

(次。)

 

 撃破。

 感覚が戻ってくる。撃破の時間が十秒ほどになる。

 

(次。)

 

 撃破。

 こんなやつらに負けるはずがない。

 

(次──!)

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……!」

 

 気付けば私は、百体以上のネウロイを倒していた。

 念のため周囲を見たが、最早私たちを止めれる数のネウロイはいなかった。

 もちろん全て倒した訳では無いが、私が丸腰の教官を護りながら脱出は出来そうだ。

 岩場に駆け寄る。

 

「教官、行きましょう!」

「わかった、宮藤。……私の事を二度も救ってくれて、ありがとう。本当に感謝する」

「……ありがとうございます」

 

 感謝されると、困る。

 私に感謝される資格なんて無いのに。

 教官の手を引いて走り出す。

 そして、時おり来るネウロイを倒しつつ一粁ほど進んだ時だった。

 

「ところで宮藤。一つ疑問なのだが」

 

 走りながら教官が尋ねてきた。

 ネウロイの様子を見つつ、教官の方を振り返る。

 

「何でしょう、教官」

「──お前の足元の、その魔方陣は何だ?」

「……?」

 

 足元を見る。

 

「ん?」

 

 確かに私の下に魔方陣が出来ている。

 すると、次の瞬間。

 

 ──キンッ

 

「!?」

 

 頭に猛烈な痛みを感じ、倒れこむ。

 

「宮藤!どうした!み……ふ……」

 

 音も聞こえなくなってきた。

 

「み………………ふ…………お……………」

 

 なんで?

 まだ す からでれてない。

 まだねうろいがいるのに。

 わたしがいないときょうかんは。

 

「きょ……か……に……げ……」

 

 そうして、一瞬見覚えのある天井を見た気がした直後、私の意識は途切れた。

 

 

 

 

 時は少し遡る。

 

 

 

「……んゅぅ……スピー……よしかちゃ……」

 

 扶桑皇国海軍堀笛基地。

 その宿舎の一室にて一人の少女(幼女)が唯一の同期とは対照的な平和な寝息をたてていた。

 

「……まってぇ……あそぼぉよぉ……」

 

 宮崎裕子という名のこの少女は、前連合艦隊司令長官の孫娘にして、今海軍内で大注目の天才コンビの片割れである。

 

 片や近代的ストライカーの祖である宮藤一朗博士の愛娘であり、七歳にしてネウロイ撃破に成功し、魔法力も観測史上最大、その歳で抜群の飛行センスを持つ天才、宮藤芳佳。

 片や海軍の大物を祖父に持ち、珍しい固有魔法を発現させ、学門の成績も優秀、宮藤芳佳に匹敵する飛行センスで彼女に追随する天才、宮崎裕子。

 宮藤の後ろに常にくっついて共に行動する姿は、年齢から来る愛嬌も相まって古巣の舞鶴やここ堀笛基地においても名物となっている。

 しかし今やその二人は離ればなれになり、片割れは生命の危機を迎えている。

 

「ムニャ……まってよぉ……いかないれ……行かないで……はっ!芳佳ちゃん!?」

 

 悪い夢でも見たのだろうか。

 掛け布団をはね除け、彼女はベッドから飛び降りる。

 しかしいくら探しても同室に唯一の同期であり唯一の親友はいない。

 

「芳佳ちゃん……どこ……?どこにいるの……?芳佳ちゃん……芳佳ちゃん……?」

 

 その円らな瞳に涙を貯めながら部屋中を探すも、見つからない。

 

「芳佳ちゃん、芳佳ちゃん、芳佳ちゃん、芳佳ちゃん……」

 

 姿の見えない親友の名前をぶつぶつと言いながら彼女は部屋を出る。

 すると、ドタドタと廊下を走る音と、その主である基地の男性兵士たちの声が聞こえてきた。

 

「おい、宮藤さんがいないぞ!」

「『先生』もどっか行っちまったって本当か!?」

 

 それを聞いた彼女は、愕然とする。

 

「──芳佳ちゃんがどこかに……?」

 

 また親しい人が自分から離れていってしまう。

 彼女は恐怖した。

 

 リリリリン!ジリリリリン!ジリリリリン!

 

「ひっ!?」

 

 その電話は、彼女の心が一番不安定な時を狙ったようにかかってきた。

 

 ジリリリリン!ジリリリリン!ジリリリリン!

 

 なんとか恐怖心を押し留めて、電話機に近付く。

 

「もしもし……?」

 

 しかし、おそるおそる受話器を取った彼女の顔が、それ以上歪むことは無かった。

 

「お祖父様!」

『久しぶりだな。元気にしてるか?』

 

 そう。

 電話の相手は、彼女が最も信頼出来る人物である祖父、雄三だった。

 彼女の心に限りない安堵が広がる。

 誕生以来初めてかつ唯一の親友である芳佳がいなくなり、半ば恐慌状態の裕子にとって、このタイミングでの雄三からの電話は正に天からもたらされた一本の蜘蛛の糸だったのだ。

 だから、彼女は即座に彼女の親友を救うべく、祖父に縋った。

 

「あのっ、お祖父様!一つお願いがあるのっ!」

『ほう、そっちからお願いとは何と珍しい。いいぞ、何でも言いなさい。欲しいものかね?扶桑に帰りたいのかね?……それとも、芳佳君のことかい?』

「……!!芳佳ちゃんのことっ!」

 

 彼女は思った。

 やっぱりお祖父様は凄い。

 私のことは何でもわかるのだ。

 何故芳佳の事だとわかったのか。

 普通の人なら持つそのような疑問を、裕子は抱かなかった。

 何故なら、雄三の庇護の下で育ってきた裕子は基本的に彼を疑うという事をしない。いや、出来ないように育てられた。

 そして、彼女はこうも思っていた。

 きっとお祖父様ならなんとかしてくれる、と。

 しかし、彼女に返ってきた答えは以外な物だった。

 

『裕子や、よく聞きなさい。今、芳佳君はとっても危ない所にいる。ネウロイに襲われているんだ。私も、助けるのは難しいだろう』

「!?」

 

 裕子の顔面が蒼白になる。

 私の大事な大事な親友はあのお祖父様ですら危ない所に行ってしまったのか。

 雄三は言葉を続ける。

 

『でもな、裕子。芳佳君を助ける方法が一つある』

「本当っ!?」

 

 雄三の言葉に顔を上げる裕子。

 しかし、どうやって?という疑問は裕子の中には浮かばなかった。

 雄三が出来ると言えば出来るのである。

 

『それはな、裕子』

「……(ごくり)」

 

 受話器と裕子の間に緊迫した空気が流れる。

 

『お前の固有魔法を使うのだ』

「私の、固有魔法……?」

『そうだ、裕子。お前の固有魔法を思い出すんだ。お前の固有魔法は……』

「そっか!芳佳ちゃんを『てんい』させれば良いんだ!」

 

 裕子は顔を輝かせる。

 が、すぐに俯いた。

 

「でも、私、『てんい』のせーぎょを間違えてばっかりだよ……?」

 

 ここに来る前の固有魔法テストでも彼女は制御を間違えて、間違えた場所に目標を動かしてしまった。

 

『大丈夫、裕子なら出来るさ。だって、裕子は芳佳君が大好きなんだろう?あの娘の姿を強く思うんだ。そして願うんだ。会いたい、会いたいってね』

 

 彼女は思い出す。

 初めて家の外を出て入学した学校。

 最初は自分しかいなくて怖かったのに、芳佳ちゃんというかけがえのない親友が出来てからはとても楽しくなった。

 本で読んだ「友達」というのはこんなものだったのか、と感心もした。

 初めて空を飛んだ日。

 怖かったけど、芳佳ちゃんがいたから頑張れた。

 今は空は大好きだけど、その中でも芳佳ちゃんと飛ぶ空が一番好きだ。

 私の家の外の思い出は、ほとんど芳佳ちゃんで埋まっていた。

 また会いたい。

 

「……ありがとう、お祖父様!裕子、やってみる!芳佳ちゃんを助けてあげる!」

『頑張れ、裕子』

「うんっ!またね!」

 

 そう言って受話器を置いた彼女は、芳佳の事を再び考え、魔法力を発現させる。

 

「芳佳ちゃん。今、助けるからね!」

 

 そして、固有魔法を発動。

 青い魔方陣が部屋に浮かび上がる。

 

(芳佳ちゃん、芳佳ちゃん、芳佳ちゃん、芳佳ちゃん──)

 

 そして、彼女の思考が芳佳一色になった時だった。

 

 パァァァァッ!

 

 青い魔方陣が一際強く輝き、その中に人影が現れた。

 それは、彼女がよく見知った人影だった。

 ふらっ、と中の人影が倒れる。

 

「芳佳ちゃんっ!」

 

 魔法を止めて芳佳に駆け寄る裕子。

 そして彼女は、倒れ伏した芳佳を優しく抱いた。

 

「──おかえりっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頑張れ、裕子」

『うんっ!またね!』

 

 その孫娘の声を最後に電話は切れた。

 そして受話器を置いた宮崎雄三海軍中将は、一人暗い笑みを浮かべた。

 

「ようやくあの邪魔者が消えたか」

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