宮藤芳佳の孤闘~第二次ネウロイ大戦異話~   作:芳佳ファン5号

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番外編みたいなものです。


一話、きっかけ

 第一次ネウロイ大戦。

 それは人類とネウロイの過去最大の争いであり、また人類兵器の大きな変革期でもあった。それまで主流だった空飛ぶ箒がネウロイに対する兵器として時代遅れになり、ウィッチでなくても空を飛べる「飛行機」と箒よりも何倍も何十倍も速く飛べる「ストライカーユニット」が取って変わったのもこの戦争である。

 

 少年工員として竹田商会で働いていた私は、戦後の初期ストライカーの開発から携わっており、しばらく経つとストライカーの専門家として「博士」と皆から呼ばれるようになった。(いつのまにか社名も私に由来する「宮菱重工業」に変わっていた。)気恥ずかしいのであまりそう呼ぶなと言っているのだが…

 そんな折に、そろそろ所帯を持てとでも思っていたんだろう、かつて世話になったウィッチの娘さんとして軍から来た上司に紹介されたのが、愛する妻、清佳(さやか)だった。

 

 そして、私達の間に娘が誕生する。

 名は「芳佳」と言う。少し言葉を覚えるのが早かったり、教えてもいない言葉をときどき話すこと以外は至って普通の愛しい娘だ。

 研究で忙しい私はあまり構ってやれなかったが、治癒魔法を使うウィッチの家系に生まれたからか、はたまた体が丈夫なのか病気ひとつせず、毎日山を駆け回る元気な子に成長してくれた。

 普段は妻やお義母さんが面倒を見てくれているが、特に寂しがる様子は無い、とのことで父親としては少しさみしいものがある。

 とにかく普段は元気で喧嘩の話も聞かないような子の芳佳だが、あの時は全くと言って良いほど「違っていた」。

 

 

 私は何か胸騒ぎを感じていた。

「ネウロイを倒すために新しい理論の発見のためには欧州の最新技術が必要だから」という理由で欧州に行く。ただ研究をするだけだ。

 もう一次大戦から10年以上がたち、ネウロイの大規模な活動も認められていない。

 極めて安全なハズなのに、何故かこの欧州行きがとても重要なように思えたのだ。

 それに、研究を始めたらどうせ何年も帰れない。私が帰ってくる頃には芳佳ももう大きくなっているだろう。

 だったら、親として長く会えないなりに、何か人生の指針を示してやりたい。

 そう思って、「あの言葉」を芳佳に伝えたのだ。

 しかし、その判断が正しかったのか、私にはわからない。

 

 その言葉を伝えた瞬間、娘が、芳佳が豹変した。具体的にどこが、とは言えないが、纏っていた雰囲気が激変したのだ。そして、次の瞬間突然泣き崩れた。困惑する妻を家にいれて、芳佳を見ると何かを呟いているのが聞こえた。

 

「……んなさ……ごめ…」

 

 私は聞き取ろうとして耳を澄ました。すると、

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」

 

 謝罪、だった。誰に向かって謝っているのか。

 そもそもまだ6つの娘にこれほど罪の意識を負わせたのは何なのか。思考は尽きなかったが、とにかく芳佳の謝罪は本気だった。だから、私は、芳佳を抱きしめて、償いが大切だと説いた。すると、芳佳は言った。

 

「私が死ねばいいんだね」

 

 まだ6歳の愛する娘がそう言ったのである。

 私は愕然とした。聞き間違いかと思った。しかし、たしかに目の前に虚ろな目で立つ娘がそう言ったのを私の耳は確かに聞いていた。

 そして次の瞬間、怒りが爆発した。

 これほどまでに怒りを感じた事は人生で一度も無かった。

 娘にそこまで言わしめた何かへの怒り。

 軽々しく「自分が死ねばいい」などとほざく娘への怒り。

 

 気付いたときには、芳佳の頬を叩いていた。

 そして叱った私に対して娘は償いの方法を詰問してきた。

 私は、本来芳佳が自分自身で見つけるはずの「芳佳の生き方」を、強制付けた。「その力で皆を守れ」と。「守る以外に使うな」と。これは正しいことだ。でも、それは自分で気付くことが大事なのであり、他人に決められたのでは意味が無い。しかし、私にはそうする他なかった。芳佳はおそらくこの「償い」をずっと続けるだろう。自分のために使うことを禁じられ、公に尽くすことを償いとして。

 それを与えた本人が、何故芳佳が償わなければいけないのか、何の罪があるのかすらわからずに与えた「罰」を。

 

 去り際に娘が言った。

 

「罰をくれてありがとう」

 

 私は泣きそうになりながら半ば呆然としていた。

 何がいけなかった

 何で娘はこうなった

 私は何て事をしてしまったんだ

 

 しかし、こうなった以上はどうしようもない。娘の見送る声を聞きながら、無理に笑顔を浮かべて、私は欧州に旅立った。

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