幽雅に舞え!   作:じゅぺっと

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届かぬフワンテの思い。

「これがキンセツジムバッジだ。受けとるがいい」

 

 稲妻の形をしたジムバッジを渡される。普通の状況なら大喜びするところだが、今重要なのはそこではなかった。

 

「次は、ルビーの番だな」

「如何にも。貴様の魂はしかと見極めたが、肝要なのはそこの女狐だ」

 

 元よりあちらの疑いはルビーに向けられたものだ。彼女が勝負でネブラを納得させない限り、問題は根本的には解決しないだろう。

 

「・・・わかった、やるよ」

「いいだろう、では来るがいいーー」

 

 その時だった。ジムの放送する機械から、聞き覚えのあるけたたましい笑い声が聞こえた。そして、後で分かったことだが声はキンセツシティのあらゆるテレビ、ラジオ、放送機器をジャックしていた。

 

 

「ハーハッハッハ!!聞きなさい、キンセツシティの民達よ!そしてーージムリーダー!」

 

 

「この声は・・・ティヴィル!」

「こいつが岩使いの言っていた悪の総統か・・・」

 

 ネブラもカナズミのジムリーダーから話は聞いているようだ。取り乱すこともなく、放送を聞く。

 

 

「私たちティヴィル団はあなた方にひとぉーつ要求をさせていただきます」

 

 

 彼らの求めるものといえば、メガストーンに違いない。この町のメガストーンを全て渡せ、とくるのかとサファイアは予想したが。

 

 

「ずばりーー我々がメガストーンを手に入れるために、キンセツシティには犠牲になっていただきます。さあ、やりなさい!」

 

 

「えっ・・・!?」

「・・・」

 

 驚きを隠せないサファイア。キンセツシティを犠牲にするとはどういう意味なのか。その答えは、凄まじい爆発音によって明かされた。その爆発音は、サファイア達の聞いたことがある音だった。モンスターボールの中のフワンテが、思わず飛び出てくる。

 

「これは・・・フワライドの」

「そうだね、あの時と同じだ」

「よもや、これは・・・」

 

 ネブラが初めて表情を歪めた。なにか心当たりがあるらしい。

 

 

「今キンセツシティに大量発生しているフワライド達・・・その全てを爆破し、キンセツシティを破壊させて頂きます。ーー我々がメガストーンを渡さないとどぉーうなるかを知っていただくためにね。そぉーれでは皆さんごぉーきげんよう」

 

 

 トウカの森で見たフワライドの大爆発は凄まじい威力だった。あの時見たフワライド達が全てキンセツシティに集まり、爆発したとしたら記録的な被害を負うことになるだろう。

 

「く・・・!最近のフワライドの大量発生はそういうことだったか・・・!」

 

 苦々しげにネブラが呟いたとき、慌ててジムのトレーナーが入ってくる。

 

「大変です、ネブラ様!昨日まで上空に集まっていたフワライド達が、無理やりシティの中に侵入してきました。住民達も放送を聞いてパニックに・・・!」

「そんな・・・!」

 

 今までとは違う、町全体を覆う恐怖に混乱しそうになるサファイア。

 

「狼狽えるな!こんな時こそ我等が動くとき。お前達は半々に別れ、片方は町の人々を地下ーーシーキンセツへと避難させよ!そして残りでフワライド達を食い止めるのだ!」

 

 だがネブラは冷静さを失ってはいなかった。ジムのトレーナーを一喝し、指示を出す。トレーナーは頷いて他のメンバーにもその指示を伝えにいった。

 

「あんたは、どうするんだ?」

「あれだけのフワライドを操るのだ。それには相応の電子機器、並びに電力が必要となるはず。この町の電力を不正かつ大量に使用している場所を探しだす。さあ、お前達にも避難してもらうぞ」

 

 彼にしてみればそれが当然の判断だろう。不審人物かもしれない民間人を隔離しておけるのだから。

 だが、サファイアはそれに頷くことはできなかった。

 

「いいや、俺にもーー俺たちにも手伝わせてくれ!」

「なんだと?貴様らに何が出来る。子供の遊びではないのだぞ。それに、女狐を自由にさせろというのか?」

 

 確かに、まだルビーへの疑いは晴れていない、だが。

 

「町の人を避難させるのは俺たちには出来ない。だけどフワライドを食い止めることなら出来る。そこにはジムのトレーナーだって向かってるんだろ。だったらルビーを監視することだって出来るはずだ。人手は多い方がいいんじゃないか!?」

「・・・」

 

 サファイアの必死の訴えに、彼に目をあわせ睨むネブラ。そして折れたように頷いた。

 

「良かろう、その提案飲んでやる。即刻町の入口へと向かえ」

「ありがとう!いいよな、ルビー?」

「面倒だけどしょうがない、君のワガママに振り回されてあげるよ」

 

 彼女の表情は、面倒といいつつも微笑んでいた。そのことに感謝しつつ、サファイアはルビーの手を取ってフワライド達の集まる町の入口に走り出す。この町を守るために。

 

 

 

「コイル、電撃波!」

「ラクライ、スパーク!」

「いくぞ、シャドークローだ!」

「キュウコン、火炎放射」

 

 ジムのトレーナー達の攻撃に、漆黒の一撃と九つの紅蓮が、フワライドの一体に直撃する。あの時二人がかりでやっと倒せたフワライドを、町に侵入される前に即座に倒していく。自分達はあの時よりもずっと強くなった。だがーー

 

「いったい何体いるんだ・・・キリがない」

「森で見ただけでも相当な数だったからね。ジムリーダーが装置の場所を特定してくれない限り、ずっとかな・・・サマヨール、守る」

 

 フワライド達のシャドーボールがサファイア達、そしてジムのトレーナーを狙うのをルビーのサマヨールが防ぐ。他人を守ることも出来るようになったルビーもまた、人として変わりつつあるのだろう。

 

「これで一気に決めてやる!ルビー、援護してくれ!」

「わかった、キュウコン!」

「コン!」

 

キュウコンが天井に火炎放射を放つ。天井を焼き、一つの大きな灯りと化したそれはより影を濃く写す。

 

「ジュペッタ、ナイトヘッドからのシャドークローだ!」

「ーーーー」

 

ジュペッタの体が、爪が巨大化し。さらにキュウコンの炎を爪に灯して揺らめく火影となる。それを勢いよくフワライド達に振りかざした。気球のような体が燃え、倒れていく。

 

「よし!散魂焔爪、決まったぜ!」

「まったく、君はそういうのが好きだね」

 

 技同士を複合させた独自の技に名前をつけるのはサファイアにとっての趣味のようなものだ。それに呆れつつも笑うルビー。一先ずでも言葉を交わす余裕ができたのは幸いだろう。ジムのトレーナー達も一息つく。

 

 だが、次にやってきたのはフワライド達だけではなかった。両端の方のトレーナーの悲鳴が聞こえてくる。

 

 

「ったく、いつまでたっても来ねえから向かえに来るはめになったじゃねえか」

「バウワウ!」

 

 

「もう!人々を避難させるのはいいですが、フワライド達にまで人員を割くだなんて・・・面倒なことをしてくれますね!」

 

 

「あいつら!」

「四天王のネビリム・・・それに、ルファと言ったかな」

 

 右側からはルファとグラエナが、左側からはネビリムとミミロップが現れ、ジムのトレーナー達のポケモンを倒していく。しかも更に、新たなフワライド達もキンセツシティの中に入り込もうとやってきた。再び迎え撃つサファイアとルビーだがーー

 

「くそっ、止めきれない!」

「流石に人が足りないね・・・」

 

 トレーナーのポケモンが倒された分、迎え撃つだけの戦力が減り、フワライド達を倒しきれなくなる。フワライドの一部が町の中に入り、爆発する音が聞こえた。

 

「どうする・・・!こんなときシリアなら・・・」

「・・・」

 

 しかも悪いことに、ジムのトレーナーよりもネビリムやルファの方がずっと強い。このままでは迎え撃つことが出来るのは二人だけーーいや、いなくなってしまうかもしれない。それくらい、向こうの二人は強いのは知っている。焦るサファイアに、考えるルビー。まさに窮地に立たされた時だった。

 

「ぷわ、ぷわ、ぷわわー!」 

「ぷわ・・・?」

 

 フワンテが鳴く。もとは今のフワライド達と一緒にいたフワンテが。仲間の声にはっと我に返ったように、フワライド達が一斉にフワンテの方を向いた。

 

「ぷわぷわ、ぷわ!ぷわ、ぷわわー!」

 

 何を言っているのかは、サファイアにはわからない。だがフワンテが必死に仲間達に訴えているのはわかった。だからサファイアも一緒に、戦うのではなく言葉をかけた。

 

「お前達は悪いやつらに操られているんだ!だから正気に戻って、町を破壊するのはやめてくれ!そんなことをしても、お前達が傷つくだけなんだ!」

「ぷわわー!ぷわー!」

 

 その訴えは、確かに届いたのだろう。フワライド達はゆっくりと後ろを向き、町の外へと出ていこうとする。だが。

 

「ーーそうは問屋が下ろしませんよ!こんなときこそパ・・・博士にもらったスイッチオン!です!」

 

 ネビリムがポケットから取り出したスイッチを押す。すると再びフワライド達が、何かに操られるように、町の中へと入ろうとした。

 

「ぷわ・・・ぷわー!ぷわー!」

「だめだ、聞こえてない!やるしかないのか・・・!」

「ぷわ・・・」

 

 フワンテが悲しそうに鳴く。また仲間達が倒されるのが痛ましいのだろう。サファイアだってこんなことはしたくなかった。

 

「ふふん、我等ティヴィル団の科学力の前にはそんな説得など意味なしですよ!とはいえ、また邪魔されても厄介ですから・・・ミミロップ、あのフワンテを狙いなさい!ルファ君もですよ!」

「へいへい、んじゃ・・・悪く思うなよ」

「ガウウ・・・」

 

 ミミロップとグラエナが、フワンテに飛びかかる。それをサファイアのオーロットとヤミラミが体を張って防いだ。更にサファイアが指示をだす。

 

「オーロット、ウッドホーン。ヤミラミ、メタルバースト!」

 

 オーロットが大枝を降り下ろし、ヤミラミがミミロップの蹴りの衝撃を光に変えてダメージを跳ね返す。だが相手の二匹も素早く、グラエナは獣の身のこなしで、ミミロップは美女の舞いのように攻撃をかわした。

 

「速い・・・!」

「その程度の攻撃がこの私に当たると思いましたか?有象無象は倒しました。後はあなた方だけですよ」

「!!」

 

 見れば、ジムのトレーナー達は全てポケモンを倒されて愕然としていた。今の攻防の間にも、ルファのフライゴンやネビリムのサーナイトが攻撃を仕掛けていたのだ。この間にも、フワライド達は侵入していく。

 

 残ったサファイア達を倒そうと、近づいてくるルファとネビリム。その時、ルビーがサファイアに小さく耳打ちした。

 

「・・・出来るのか、ルビー」

「やってみせるさ。君こそ準備はいいかい?」

「大丈夫だ!」

「こそこそと、なんの相談ですか?」

 

 その言葉に。ルビーは答えなかった。サファイアが急に走り出す。そして。

 

「キュウコン、全力で炎の渦!!」 

「なっ・・・!」

「うおっ、あぶねえ・・・」

 

 キュウコンの逆巻く業火がルファ、ネビリムを、そしてルビーだけを包みーーサファイアだけをその外に逃がした。そして同時にキンセツシティの入口を炎の壁で覆うことでフワライド達の侵入も封じる

 

「小癪な真似を・・・あの子を逃がしましたか」

「・・・」

 

 ルビーは答えない。いつもサファイアといるときとはまったく違う、不機嫌そうな表情を浮かべている。

 

「ですが、こんな壁私のサーナイトにかかれば!サイコキネシスで炎を吹き飛ばしなさい!」

「キュウコン!」

 

 サーナイトが強い念力で炎を散らそうとする。だが次の瞬間にはキュウコンが炎を張り直した。炎に閉じ込められ、むっとするネビリム。

 

「ああもう暑苦しいですね・・・だいたい、あなた一人で私たち二人を止められると思ってるんですか?」

「・・・」

「ちょっと、無視しないでください!」

「でておいで、ハンプジン、クチート」

 

 なおも相手にせず、自分の手持ち全てを出すルビー。

 

「・・・どうやら、やるしかねえみてえだな。

 怪我しても泣くんじゃねえぞ」

 

 ルファの目が据わる。ネビリムも頬を膨らませてミミロップに命じた。あのいけすかない女をこてんぱんにしなさいと。

 

(やれやれ、らしくないことを引き受けちゃったかな)

 

 ルビーも二人の強さは把握している。恐らくは本気でやっても、勝てない相手だと言うこともわかっている。それでも自分とサファイア、二人とも彼らに拘束されるよりいいと時間稼ぎをすることにしたのだ。

 

(・・・いつのまにか彼がそばにいてくれることが当たり前になってた。だけど)

 

 サファイアと一緒に旅を始めてから、バトルは手を抜いていても彼がなんとかしてくれた。きっと自分はそれに甘えていた部分もあるんだと思う。

 

 

(今だけは、全力でやらないとね・・・!)

 

 

 キッと相手二人を睨む。自分の負けが半ばわかっていても、少女は自分を大切にしてくれる人のために本気で挑むーー

 

 

 

 一方サファイアは、ルファとネビリムの二人から離れ、ジムリーダーに連絡を取っていた。理由はもちろん、フワライドを食い止める応援を呼ぶ為だ。今はルビーがなんとかしてくれているが、あんな大規模な炎の渦はいつまでももつものではないだろう。

 

「・・・わかった、避難もほぼ完了した。直ぐに避難に割り当てたメンバーをそちらに向かわせよう」

「フワライドを操る装置の場所はまだわからないのか?」

「検討はついた。だが、お前では厳しいだろう。俺様に任せーー」

「頼む、教えてくれ。ルビーに頼まれたんだ。自分が時間を稼ぐ間にフワライド達を止めてくれって」

「・・・あの女狐がか」

「ルビーはそんな子じゃない」

 

 電話の向こうの声が少し止まった。考えているのだろう。数秒後、帰ってきた返事は。

 

「いいだろう、時間が惜しい。装置の場所ーーそれは、キンセツシティを走る地下鉄の環状線、そこを走る電車の中だ。いけるか?」

「・・・やってみる!」

「俺様も直ぐに向かう。いいか、無茶はするなよ」

 

 返事はなかった。もう地下鉄へと駆け出したのだろう。ジムリーダーもそちらに向かおうとした。その時だった。

 

「キンセツのおじさん・・・ちょっと待ってくれない?」

「!?」

 

 振り向く。そこにはいつの間にかオッドアイの幼い少年がいた。いくら集中していたとはいえ、自分の背後をあっさりととるとはただ者ではない。確信的にそう思った。

 

「貴様・・・ティヴィル団の者か?」

 

 少年はその台詞に、まるで仙人のようににかっと笑って答える。

 

「そうだよ、おじさん、あの子に装置の場所を教えてくれてありがとう。だけどこれ以上の手助けは無用なんだ。この事件が終わるまでーー僕とバトルしようよ」

「フン・・・ここから出たくば倒してゆけということか」

「そういうこと、出てきてアブソル!」

「いでよ、ライボルト!ーー雷帯びし秘石の力で更なる進化を遂げよ!」

 

 ライボルトの体が光輝く。メガシンカしたその姿は、まるで体毛が雷そのものとなっていた。それに目を輝かせる少年。

 

「わあ、出た出たメガシンカ!それじゃあ準備も出来たところで・・・勝負といこっか!アブソル、鎌鼬!」

「ライボルト、スパーク!」

 

 それぞれの場所で、お互いの力をぶつけ合う。そしてサファイアは、装置の場所へと向かうのだったーー

 

 

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