魔法先生ネギま!cross vesperia   作:雪蛍

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お気に入りが200を超えました。
本当にありがたいです。
あれこれ問題のある作品ですが、これからも宜しくお願いします。


第16話

 

 

 

 

 

 

「まさか、こんな所に眠っていたとは……」

 

 デュークはとある建造物の屋根部分に着地して小さく呟いた。

 かなりの速度でかなりの距離を文字通り飛ぶように駆けてきたというのに、彼の息は微塵も上がってはおらずその身に汗1つかいていない。

 着地の時に屈めていた体をゆっくりと伸ばすように立ち上がり、自分が今立っている建物の中を覗き込んだ。

 

そこに広がっていたのは惨状だった。

 

 ここへ来る最中、幾つもの悲鳴が耳に入っていたのである程度予想はしていたが、やはり見ていて気分のいいものではない。

 

「……」

 

 室内で生き残っていた最後の1人の胸から無慈悲に触手が抜き取られた。

 一瞬、反動で上を向いたその男と目が合ったような気がしたが彼は気に留めたりはしない。

 デュークは男からすぐに目を離し、久方ぶりに相対する敵を睨みつける。

 

「……そういう、ことか。 ということは外れ、だな……」

 

 そう言うとデュークはゆっくりと腰に下げている剣を抜く。

 鞘から抜かれた刀身が、鮮やかに光を帯びていく。

 彼は目の前の光景を見て、即座に事態を理解した。

 

 今回の報告にあった不可思議な反応、それはデインノモスではなく、目の前のコレだったのだ。

 この腐都が堕ちてしまう前、コレは突然現れたのだろう。

 しかしコレを倒し得るのは現状デュークしかいない。

 決して倒すことのできない脅威、旧オスティアの民はコレが暴れるのを受け入れることしかできなかったのか?

 違う、倒せないならば他の手段を用いればいい。

 その手段というのが恐らくこの場への封印だったのだろう。

 そして封印は旧オスティアと連動していた筈だ。

 コレは単体の魔具程度で抑えきれる存在ではない。

 だから20年前、旧オスティアが堕ちさえしなければ今日ここでコレが目覚めることはなかったのかもしれない。

 しかし現実として旧オスティアは堕ちた、その魔力の全てを失って。

 恐らく直接台座へと流れ込んでいた魔力供給がなくなり、封印は徐々にその効力を失っていたのだろう。

 そして最近になってとうとう外界の者にコレが放つエアルの反応を感知されてしまうまで封印が弱まってしまったのだ、とデュークは推測する。

 

「……」

 

 こちらに気づいている筈なのに動きをみせない異形。

 今までの人間とは異なる、己を打倒し得る力に気づいているのであろうか。

 デュークは一旦異形から目を離し室内に転がっている死体を観察する。

 どれも似たような服装、携帯している装備を見るに恐らくは賊。

 こちらの世界にはないエアルの反応を宝とでも勘違いしたのか、何れにせよ……

 

「愚かなことを…… 自らの手で破滅への扉を開けたか……」

 

 微に頭を振り、静かに目を閉じる。

 愛想をつかせた人間がどのように死のうが構いはしない。

 人間というものは何時までたっても、また世界が変わったとしても真に救い難い存在なのだから。

 

 一呼吸整えて、デュークは室内へと飛び降りる。

 何かの力に守護されているのか彼の体は落ちる速度が極めて緩い。

 床に足をつく音すら出さずにゆっくりと着地するデューク。

 閉じていた目を再び開く。

 

「外れとは言え、お前を放置するわけにはいかない。 こうして相対した以上、ここで刈り取らせてもらお

う……」

 

 手にしている剣を下に向け、そして刀身を床に突き刺す。

 

 この異形はテルカ・リュミレースの存在、そしてコレをこの世界に解き放ってしまったのはどういう過程であれこちらの落ち度。

 ならば放置していい筈がない。

 世界というスケールで害になり得るこの異形は一体残らず駆逐する……デインノモスを取り戻すという命題と同じくらいに重い彼へと課せられた使命である、デュークはそう考えている。

 

「……衝破っ」

 

 剣が耐えきれるギリギリの所まで圧縮したエアルを床ごと切り裂きながら異形へと叩きつける。

 避ける予備動作すら許さない速度で走る剣圧が綺麗に異形の中心を捉えた。

 パシンッと何かが弾ける男が室内に響く。

 以前と同じ、異形を守るように覆っていたエアルの膜が破れた音。

 その巨躯をうねらせながら耳障りな咆哮を上げる異形。

 しかし崩れる態勢などお構い無しに数本の触手を賊を殺めた時の様に鋭くデュークへと伸ばす。

 

「……遅い」

 

 しかしそれは1本たりとも彼を捉えることができずに無意味に壁に突き刺さってていく。

 華麗に舞うように体を回転させ不思議な移動を繰り返し触手の隙間を縫っていくデューク。

 瞬間移動にも似た彼の広範囲への高速移動術を前にして、異形の触手は何の役にも立たないものへと化してしまう。

 

「集え 暗き炎よ……」

 

 次々と降ってくる触手の雨を危なげなく躱しながらデュークは詠唱を始める。

 彼の声に反応するように鮮やかな白光を帯びていた刀身が今度は深淵の如き漆黒に染まる。

 デュークの言の葉がエアルを闇の力へと変換していく。

 

「宴の客を 戦慄の歌で迎え もて成せ……」

 

 デュークの詠唱を妨害しようとでもしているのか更に激しくなる触手の猛攻、しかしデュークは冷静にそれら全てを回避していく。

 そこへ飛んできた一際大きな触手の攻撃、当たればデュークでも致命になり得る一撃。

 しかしそれはあくまでも当たればの話、先程までの手数の多さを考えれば圧倒的に隙が大きい。

 デュークは体を回転させ、大きく跳躍して異形の背後を取った。

 もう既に詠唱は完成している、彼はすかさず闇の力を纏った剣を床に突き刺し、そして力ある言葉を高らかに唱えた。

 

「ブラッディハウリング!」

 

 突如異形の真下にその巨躯を覆うほどの大きさの魔法陣が、血が滲み出すような不気味さをともなって現出した。

 陣が完成した瞬間、その円周上に幾つもの蒼炎が灯る。

 そして間髪を入れず陣の中から仄暗く、それでいて鮮血の如き閃光が凄まじい勢いで幾重にも飛び出し異形へと喰らいつくように襲いかかる。

 

「ーーーーーーーっ!!」

 

 下方から突き上げる無数の闇の奔流に成す術がない異形。

 甲高く耳障りな叫びを撒き散らす。

 防御の要であるエアルの膜を早々に破られたことで術への抗体が発動できず直撃を受けた異形はふらふらと力なく床へと堕ちた。

 

 正にあっけない幕切れ、傷1つつくことなく異形を圧倒したデューク。

 堕ちた異形を暫く睨む。

 

「……やはり、上級魔術は剣への負担が大きいか。 これもかなりの業物の筈なのだが……」

 

 やがて脅威はもうないと確信したのか床から剣を抜き取り、目の前で刀身の具合を確かめるデューク。

 どんな素材で造られたらこうなるのか、エアルの輝きを止めたその刀身はガラスのように透明であった。

 しかし磨き抜かれたその綺麗な刀身に、幾つかの皹が入ってしまっている。

 

「あと一度、いや二度くらいならば持つか。 それに……」

 

 と、もう一度刀身にエアルを込める。

 初めと同じく鮮やかな白に輝く刀身。

 デュークはゆっくりと異形のもとへと歩み寄る。

 

「上級魔術さえ使わなければ当分は使える。 今はそれで充分だ……」

 

 視線を剣から異形へと移す。

 まだ辛うじて生きているようで、不気味にその巨躯を痙攣させている。

 しかしもう虫の息、彼がエアルを纏わせた剣であと1突きすれば簡単にその命は刈り取れるだろう。

 

 そんな小さな余裕が、ほんの一瞬の油断となってしまう。

 

「っ!」

 

 バックステップを踏み、その場を後ずさるデューク、あまりの眩しさに両目を腕で隠してしまう。

 異形は体の全体を発光させたらしく、室内は眩い光に埋めつくされてしまった。

 まだそれだけの力を残していたのか、それともこれが最後の力だったのか、とにかく一気に警戒レベルを高めたデュークは光の渦の中で不意を突かれぬよう全方位へと意識を向ける。

 

「……?」

 

 しかし何時までたっても異形が何かしかけてくる気配はない。

 そうこうしているうちに室内を過剰に照らしていた光も徐々に弱まってきた。

 

「消えた……気配も、ない……」

 

 視界を取り戻したデュークが辺りを見回すが異形の姿は影も形もない。

 目を閉じ気配を探ってみるが、異形の気配は全く感じられない。

 逃げられてしまったのか、それとも今ので力を使い果たし消え去ったのか。

 

「……仕方あるまい」

 

 デュークは力なく首を振り、鞘へと刀身をおさめ出口に向かう。

 勝手に消滅したのならば何も問題はない。

 しかし、この場をまんまと逃げおおせているのならば手間はかかるが目視で探し出し確実にとどめを刺す必要がある。

 この腐都内に潜伏し続けるのならともかく、力を回復させ外へと出ようものならその被害は甚大なものとなる。

 それは許容できることではない。

 

 扉が壊れてしまった出口をくぐる瞬間、一度だけ部屋へ振り返り物言わなくなった者達へとし視線を向けるデューク。

 暫くみつめていたが彼だったが、すぐにその無感情な瞳を閉じて振り返り無言でその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シニタクナイ……

 キエタクナイ……

 

 

 

 

 

 デュークが去って行った建物から少しだけ離れた場所、朽ちてはいるがその名残から辛うじて広場だと断定できる一角。

 そこにその魔獣はいた。

 

 縄張り争いでもしたのか豹を思わせる漆黒の巨躯にはいくつもの裂傷がはしっている。

 地球の豹には絶対にあり得ない 、背中から生える巨大な双翼は片方が無残に千切り取られ残った方も切り裂かれ風を受けることすらもうできはしないだろう。

 そしてその頭から伸びる2本の角。

 1本は翼と同じ様に折られてしまっているが、残っている1本は弱々しくではあるが雷を纏っている。

 この魔獣は本来その角に非常に強力な雷を帯電させ敵を攻撃する熾烈な気性を持つ種族だった。

 

 

 

 

 

 

 シニタクナイ……

 キエタクナイ……

 

 

 

 

 

 

 しかし蹲り荒い呼吸を繰り返すだけのその姿からはその熾烈さは最早感じられない。

 次の瞬間にでも命の灯火が消えてしまいそうな魔獣に、不気味に、そして静かに近づくモノがあった。

 

 それは黒い水溜まり、と表現するのが1番適切なのだろうか。

 ねばつくような質感を感じさせるソレはスライムのようにじわじわと魔獣の方へと這い寄ってくる。

 見るものに嫌悪感を抱かせる斑、形は違えどもそれはあの異形だった。

 やはり先程の戦いで消え去ってなどいなかった。

 どのような手段を講じたのかは不明だが、気配を完全に殺してデュークの目を掻い潜り命からがらここまで逃げてきていたのだった。

 

「っ! ーーーーーーーー!!」

 

 その異常な気配をここまで近寄られてようやく察知し、残り少ない力で辛うじて立ち上がり威嚇の咆哮をあげる魔獣。

 しかしその程度でこの異形が止まる筈がない。

 じわじわと距離を詰めてくる異形、本能的にこれは触れてはならないと悟った魔獣が残った角から雷撃を放つ。

 衰弱しきった魔獣から放たれた雷撃は水溜まりのように地面に広がった異形に命中するが、しかし威力が弱すぎて何の意味も成さない。

 

 

 

 

 

 シニタクナイ……

 キエタクナイ……

 

 

 

 

 

 

 「ーーーッ ………」

 

 とうとう立っていることもままならずに、魔獣は地面へとその身を伏せさせてしまう。

 しかしその瞳だけは最期まで異形から逸らすことはせずに睨みつける。

 

 そして異形の先端が魔獣の前足に触れた。

 

「ッ! ーー!! ーーーー!…………」

 

 その瞬間だった。

 風船のように勢い良く膨らみ上がった異形が恐怖に喚く魔獣を一瞬で飲み込んでしまった。

 丸い球体に閉じ込められた魔獣が内側から抵抗しているのか足の形が何度も浮かび上がる。

 しかしやがてそれも止まり物音1つなくなる。

 

 

 

 

 

 

 シニタクナイ……

 キエタクナイ……

 

 

 

 

 

 

 球体が空気の抜けた風船のように徐々にしぼんでいく。

 しかし消えて無くなりはしなかった。 

 黒いドロドロの球体はやがて獣のような形を形成していく。

 その姿は取り込まれたあの魔獣とよく似ている。

 違うのはその姿がほぼ完全であったこと。

 失った翼や角は元に戻り、付けられた傷は黒いドロドロが上から無理矢理塞ぐように覆いかぶさっている。

 溶けかけたアイスのような漆黒の体、開かれた真紅の瞳がゆっくりと辺りを見渡す。

 そしてとある場所で黒い獣の鼻がピクピクと動いた。

 

 チノニオイ……

 

 獣が嗅ぎつけたのは人間の血の匂い。

 それはかなりの人数がいるようだ。

 

「ーーーーーーーーーー!!」

 

 黒い獣は一度大きな咆哮をあげると、あっという間にその体を融解させて先程の異形のように黒い泥溜まりへとその身を変える。

 同化した魔獣と異形は最早手負いなどではない、一体の新たな存在へと生まれ変わった。

 凄まじい速度で血の匂いが香る方へと進み始める泥溜まり。

 生まれ変わったソレが狙うのは他の獣と変わることはない、新鮮な肉だった。

 

 

 

 

 

 






今回の一体も含め、残っているアウトブレーカーについては色々オリジナルな能力とオリジナルな設定が着きます。

世界が変わっても特に特典のないユーリ君とデュークさんに比べたら天と地ほどの差がつきます。
所謂チートです。
あれ?なんか違うと感じることもあるかもしれませんがご容赦を。

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