但し、被害を被るのは、一方的に普通の女子高生、三葉の方です・・・・・
「?!・・・」
ここは?・・・・・いつもの俺の部屋だ・・・か・・体も元に戻っている・・・
俺はベッドから跳ね起きて、鏡を覗き込む・・・・顔も、俺の顔だ・・・・たった1日で戻されたのか?
俺は、携帯をチェックする。日付を見る限り、やはり、あの田舎に送られていたのは昨日1日だけだ・・・ん?・・・・・・
携帯のメモに、記憶の無い書き込みがある・・・・・・
“――― 相良宗介!あんたいったい何者なの? ―――”
何だこれは?俺を攫った奴が、書き込んだのか?いや、俺の事を良く調べてからでなければ、あんな事はしないだろう?訳が分からん?
そうだ!まずはダナンに報告を・・・・俺は、無線機を使って、ダナンに連絡を入れる。
「こちら、ウルズ7!ウルズ6、応答せよ!」
「こちら、ウルズ6・・・宗介!定時連絡もしないで、今迄何やってた?」
「すまん!敵の罠に嵌って、軟禁されていた!」
「軟禁?・・・・」
俺は、昨日の事を、簡潔にクルツに話す。
「女の体に脳移植?・・・お前なあ、ウソをつくのなら、もうちょっとマシなウソつけ!」
「ウソでは無い!事実だ!」
「あのなあ、確かに今はブラックテクノロジー全盛で、信じられない未来科学が現実のものになってるけど、人の体に脳移植して、成功した事例は一件もねえよ!それも、たったの1日で元に戻すなんてなあ・・・・・」
「じゃあ、俺の体験は、どう説明するんだ?」
「・・・・お前・・・相当疲れてるんじゃねえか?今日のミッションは、俺とマオでやる!お前は、カナメちゃんとのんびりしてろ。」
「な・・・おい!待てクルツ・・・・」
通信が、一方的に切られた・・・・
何だと言うんだ、クルツの奴・・・・俺が、夢でも見ていたと言いたいのか?あれが、夢で無い事は、俺が一番分かっている。とにかく、一刻も早く、奴らの目的を・・・・・そうだ!千鳥は?・・・・・
俺は、アパートを飛び出し、急いで千鳥のマンションに駆けつける。ドアの前に立ち、ノブに手を掛けようとした、その時 ―――
「?!」
ドアが、勢いよく開き、俺の顔面を直撃する。
「え?・・・あ・・・あら?宗介?」
「い・・・痛いじゃないか・・・千鳥・・・・」
「ごめん!ごめん!まさか、ドアの前に突っ立ってるとか思わなかったから・・・・」
登校途中、千鳥が話し掛けて来る。
「今日は、いつも通りなのね?宗介・・・」
「ん?・・・俺は、いつもこうだが?」
「何言ってんの、昨日は、本当に心配したんだからね。」
ん?昨日?・・・今、千鳥は、昨日と言ったか?・・・・・
「千鳥!」
「な・・何?」
「俺は、昨日居たのか?」
「は?・・・何言ってんの?あんた?」
「いいから答えてくれ!昨日、俺は居たのか?」
「居たに決まってんでしょ!まさか・・・・あんた記憶が無いの?」
やはりそうか!俺を、あの田舎に追いやって、俺のニセ者を、千鳥に近づけたのか!
「ねえ宗介?あんた、本当に大丈夫?」
「そんな事より、昨日の俺は、君に何かしたのか?」
「え?・・・べ・・・別に、な・・何もして・・ない・・・けど・・・・」
そう言って、何故か千鳥は頬を赤らめる・・・・
「何か、おかしなところは無かったか?」
「え?・・・それは・・・さっきも言ったように、かなりおかしかったけど・・・・」
「どんな風に?まるで、某国のスパイのようにか?常に過敏に周りを警戒し、危険なニオイを漂わせているような・・・・」
「そういうところが何にも無かったから、おかしかったって言ってんのよっ!」
いきなり、ハリセンで頭を叩かれた・・・・・・
「い・・・痛いじゃないか・・・・・」
夜は、ミスリルのミッションがある。俺は、マオ、クルツと一緒に輸送ヘリに乗っていた。クルツは休めと言ったが、体に何の異常も無いのに、任務を放棄する訳にはいかない。
「全く・・・人が、親切で言ってやってんのによ。」
「大きなお世話だ!」
「ねえ?宗介?」
マオが、尋ねてくる。
「あんたが言ってるのが事実だとしたら、何で、あんたを女の子にする必要があったの?」「ん?そういえば・・・・何故だ?・・・・・」
「あんたのニセ者にしたって、そんな人畜無害なニセ者用意して、何のメリットがあるの?」
「だ~から、全部こいつの妄想だよ。疲れてるんだよ、大人しく休んでろ!」
「うるさい!俺は疲れてなどいない!」
「あとさあ・・・・・」
「ん?・・・」
「何て言ったっけ、あんたが送られた、その田舎町?」
「確か・・・“イトモリ”と言っていたが・・・・・」
「・・・イトモリ・・・・・」
「知ってんのか?姉さん?」
「いや・・・どっかで、聞いた覚えがあるんだけど・・・・・」
「ん・・・んんっ・・・・・」
携帯のアラームで、目が覚める・・・見慣れた天井・・・私の部屋・・・良かった、やっぱり夢だったんだ・・・・
体を起こそうとするが・・・・
「てっ!・・・・」
思わぬ激痛が、全身に走る・・・な・・・なに?・・・これ?・・・・お・・・思うように・・・・か・・体が・・・・うごか・・・ない・・・・
激痛に耐え、やっと体を起こす事はできたが・・・・
「うぐっ・・・・・」
た・・・立てない!・・・な・・・何なの?・・・この・・・痛み・・・・
「お姉ちゃん?何しとんの?」
気が付くと、右手の襖が開いていて、四葉がこちらを見ている。
「よ・・四葉・・た・・・たすけて・・・体が・・・」
「あちゃ~っ!だから、やめな言ったんよ!」
「え?・・・・」
「何に感化されたんか知らんけど、昨日帰って来るなり、腕立てやら、腹筋やら、筋トレばっか何時間もやって・・・・筋肉痛になるに、決まってるやろ!」
え~っ?何?それ?・・・・私、知らないよ~っ!
「無理せんで、ゆっくりきいや!今日はあたし、先いくで!」
そう言って、四葉は、さっさと下に降りて行ってしまった。は・・・薄情者~っ!
やっとの思いで着替え、家を出る・・・朝食は、食べる時間が無かった・・・・いっそ学校は休みたかったが、お婆ちゃんが、許してくれなかった。
支え無しだと倒れそうなので、お婆ちゃんの杖を借りて来た。この年で、杖のお世話になろうとは・・・とほほ・・・・
「三葉~っ!」
後ろから、サヤちんの声がするけど・・・悪いけど、振り返れない・・・
「ど・・どないしたん?三葉?」
私の、悲惨な現状に、サヤちん達が、何があったのかを聞いてくる。でも、聞かれても分からない・・・・こっちが、聞きたいくらいだよ・・・・・
「なんや、今日も髪結ってないんやね?」
今日も?・・・今日はこんな状態で、とても結う事ができなかったんだけど、“今日も”って何よ?
「と・・とにかく・・・全身筋肉痛で・・・つらいんよ・・・・」
「え~っ?」
「まさか?昨日の駆けっこでか?」
駆けっこ?何?それ?
「昨日の夜・・・何時間も、筋トレしたんやて・・・・」
「ええっ?何で?」
私が、聞きたい・・・・・・・
昼になって、少しだけ体が楽になって来た。私は、テッシー、サヤちんと一緒に、いつものように校庭の隅で昼食をとった。朝抜きだったから、もうおなかがペコペコだ。
「でも三葉、今日は、普通に喋るんやね。」
「え?どういうこと?」
「昨日は何聞いても、カタコトの返事で、全然会話にならんかったでな。」
「え~っ?何それ~?」
「昨日の事、全然覚えとらんの?」
「ん~っ・・・・変な夢見たのは、覚えとんのやけど・・・・」
「あれは、絶対狐憑きや!」
「まだ言ってる・・・・そうや、きっとストレス!三葉、最近そういうのいっぱいあるにん。」
「ん~~・・・そうかなあ・・・・・」
「そうや!三葉、町長選やら、お祭りやらで気苦労多いで・・・・三葉がいつも言うように、卒業したら、一緒に東京出ようか?」
「お・・・お前らなあ・・・・・」
「ん~~・・・・東京ねえ?」
「あれ?どうしたん、三葉?いつもは、あんたの方が誘ってくるのに・・・・」
「なんか・・・・あんな夢見ちゃうと・・・・東京もどうしたもんか・・・・・」
放課後、テッシーやサヤちんと分かれて、ひとりで家路に着く。まだ、歩くのはかなり辛いが、杖をつかなくても歩けるようにはなった。
「?!」
その時、不意に、誰かに見られているような悪寒を感じた。
慌てて振り向いて、辺りを見渡すが・・・・・誰も居ない・・・・どうやら、気のせいだったようだ・・・・・・
前回に引き続き、悲惨な目に合い続ける三葉・・・・でも、見知らぬ男子と入れ替わっているなんて、思いもよりません・・・・・・
一方、入れ替わりを、誰かの策略と信じて疑わない宗介・・・・そんな朴念仁は、必然の如く、千鳥やマオ達まで事件に引き込んでいきます・・・・・・
そして、三葉の感じた視線の正体は?・・・・・・・