私は、マオさんと一緒に、千鳥かなめさんのマンションに来ていた。
「ええっ?宗介の言ってた事って、本当だったの?」
千鳥さんは、一度入れ替わりのことを相良くん本人から聞いたらしいが、また戯言を言っていると決め付けて、一切取り合わなかったらしい・・・・
「まあ、あの朴念仁・・・どうせ、まともな説明しなかったと思うけど・・・・」
マオさんは、苦笑した。
「じゃあ、あなたは宗介じゃなくて・・・・えっと・・・」
「み・・宮水・・・三葉です・・・カナちゃん・・・・」
すると、カナちゃんは、すご~く嫌そうな顔をした。
「あの・・・ごめん、三葉さん、お願いだから、その顔と声で“カナちゃん”はやめて!」
「え?・・・は・・はい・・・じゃあ・・・カナメ・・・さん・・」
「“かなめ”でいいわよ!」
「は・・はい!じゃあ、私も“三葉”で!」
かなめは、ようやく笑ってくれた。
「じゃあ、かなめ、後はお願いできるかしら?」
そう言って、マオさんは出て行こうとする。
「あ、三葉、あんたは、言葉使いだけ気をつけていれば、特に問題は無いから。ちょっと変な事をしても、絶対あのバカ以上に、問題になる事はあり得ないから・・・・」
な・・・なんか、すごい言われようね・・・・相良くんって・・・・
「まあ、今あんたになってるあのバカの方は、本当に何やらかすか分かんないけど・・・」
「ええ~~~っ?」
ちょ・・・ちょっと、これ以上、私がおかしく思われるの困るんですけど・・・・
「そんな顔しないで。そう思って、さっきあんたから聞いた住所に、クルツ派遣しといたから!」
そう言って、マオさんは出て行った・・・・・その後私は、少し遅れたけど、かなめと一緒に学校に向かった。
千鳥かなめのマンションを出て直ぐに、マオの携帯にクルツからの着信が入る。
「クルツ?どう、宗介・・・いや、三葉の様子は?」
『それどころじゃねえよ!姉さん、あんたの言った住所に、町なんかねえ!』
「え?・・・三葉の言った住所、間違ってたの?」
『そうじゃ無い!町が無くなってるんだよ!』
「え?・・・ど・・どういう事?」
『詳しくは、戻ってから話す!』
俺はまた、三葉の体で目覚め、普通に朝食を済ませ、通学の途に就いていた。
クルツの奴、この携帯の番号は教えたのに、連絡して来ないな?まだ、こちらに着いていないのか?
「三葉―っ!」
後ろから、勅使河原と名取が声を掛けて来る。俺は、いつも通りに挨拶を返す。
「おはよう!勅使河原、名取。」
「あちゃ~っ!」
「ま・・また狐憑きや・・・・」
昼になっても、クルツから連絡は来ない・・・・何をやっているのだ?それとも、この携帯は使えないのか?試しに、勅使河原にかけてみる・・・・
「ん?着信・・・・なんや、三葉。目の前にいんのに、何で電話けかてくるんや?」
「気にするな、テストだ!」
「て・・・てすと~~・・・・」
ちゃんとかかるじゃないか・・・・では、何故かけてこない?迷っているのか?頼りにならん奴だ・・・・・
夕方になっても、クルツから連絡は無かった・・・・明日は、自分の体に戻るだろう。その時にとっちめてやるか・・・・・そういえば、今日は、監視者の視線を感じなかった。この間の事で、警戒しているのか?
「お姉ちゃん、今日、夕飯の当番やで!」
家に帰ると、四葉がそう言ってくる。
「ねえ、たまには、変わった物食べたいんやけど。」
「変わった物?・・・・了解した!」
四葉のリクエストに沿って、夕食を用意したのだが・・・・・
「・・・・お・・お姉ちゃん・・・何?これ?・・・・」
「ん?・・・蛇と蛙の串焼きだ。裏の山に、いっぱい居たのでな。」
「な・・・何で?こ・・・こんなもん?・・・・」
「???変わった物が、食べたいのではなかったのか?」
「で・・でも・・・これ、ひ・・人の食べ物やない・・・」
「馬鹿な事を言うな!戦場では、こんな物でもごちそうだぞ!」
「せ・・戦場って・・・こ・・ここ、日本やよ・・・」
何故か、四葉は涙目になっている。何も、泣く事は無いだろう・・・・・
せっかく作ってやったのに、四葉と祖母は、全く食べなかった・・・・・・
翌朝、自分の体に戻って、私はあまりの事に驚いた。
懐に拳銃があるのと、全身が筋肉痛なのはいつもの事だが、今回はそれだけでは無かった。いきなり四葉が、泣きながら抱きついて来たのだ。
「お姉ちゃん!お願いやから、元のお姉ちゃんに戻って!もう、黙ってお姉ちゃんのアイス、食べたりせえへんからあ~!」
訳が分から無いので事情を聞くと、昨夜の夕飯が、とんでもないサバイバル料理だったらしい・・・・・あ・・・あの、軍事オタクがあああああああっ!
これ以上、相良くんに、私のイメージをめちゃめちゃにされたくなかったので、私は相良くん宛てに禁止7箇条を設けた。
< 相良くんへ 以下の7箇条は絶対守って! >
(1) 学校に、拳銃を持って行かないで!
(2) 同級生を、武器で脅すのはやめて!
(3) 自分の事を“俺”と言わないで!“私”と言って!
(4) 筋トレ禁止!
(5) “問題無い”とか、“肯定だ”という口調はやめて!
(6) 名取さんは“サヤちん”、勅使河原君は“テッシー”と呼んで!
(7) 蛇や蛙を、夕飯の献立にしないで!
次に入れ替わりが起こった翌日、相楽くんからの返事が机の上にあった。
(1) それはできない!武器も無しに戦場に向かうのは、自殺行為だ!
(2) 敵が、同級生を装って近づいてきたらどうする?約束は出来ない!
(3) 丁寧語を使えと言うのなら、“自分”の方が良いと思うが?
(4) 何故だ?今の君の体力では、戦場では生き残れない!筋トレは必須だ!
(5) では、何と言えば良いのだ?
(6) 了解した!しかし、それは何の称号だ?
(7) では、蜘蛛や鼠なら良いのか?
「あ・・・あの男は~~~っ!」
かなめが、ハリセンで、彼の頭を叩きまくる気持ちが、よ~~~く分かった・・・・・
ん・・・ここは・・・俺の部屋では無い・・・まさか、2日続けて三葉・・・の家でも無い・・・・体は、俺の体だ・・・ん?良く見るとここは・・・・千鳥の・・・・・・
一気に目が覚めた!な・・・何で、俺はここに居る?三葉が、忍び込んだのか?ま・・まずいぞ・・・よりによって、千鳥の部屋に忍び込んで寝てたなどと、彼女に知られたら・・・・急いで戻らなくては ―――― と、思ったがもう遅かった!目の前の扉が開き、千鳥が中に入って来た!
「ち・・・千鳥・・・ま・・まて、違うんだ!こ・・・これは・・・」
「ん?何、取り乱してんのよ。あたしがあんた・・・じゃやなかった、三葉を招待したのよ。」
「な・・・でも、俺が説明した時は、全然信じていなかったじゃないか・・・・」
「それは~~~」
千鳥は、ハリセンを取り出し、俺の頭を思い切り叩く。
「あんたの説明が、全然なってないからよっ!」
「い・・・痛いじゃないか・・・・・」
千鳥は、俺と入れ替わった三葉と意気投合し、昨夜は遅くまで、部屋で語り合っていたらしい。殺風景な俺の部屋に、ひとりで帰すのは気が引けて、泊まっていくように言ったそうだ。そんな話を聞いている最中に、俺の携帯が鳴った。クルツからだった。
『宗介!自分の部屋に帰らないで、何処ほっつき歩いてんだ?』
「お前こそ、何故、昨日連絡を寄こさなかった?何故、糸守に来なかった?」
『馬鹿野郎!それどころじゃねえんだよ!今、何処に居る?』
「千鳥のマンションだ。」
『ん?そうだったのか・・・・じゃあ、今から行くから、そこで待ってろ!』
数分後、クルツだけで無く、マオまで一緒に来た。
「何?糸守がもう無い?」
「ティアマト彗星って、覚えてるか?」
「ああ、何年か前に、地球に最接近した彗星だな。」
「あたしも、最初にあんたから“イトモリ”って聞いた時に、何か引っ掛かってたのよ・・・でも、思い出せなった・・・・3年前、1200年周期で地球に最接近したティアマト彗星、当初の予測では、地球には何の被害も無い筈だったんだけど・・・・彗星の一部が割れて、その破片が地球に墜ちたの・・・・その墜ちた場所が、糸守なのよ。」
「ええ~っ?」
「住民の1/3が、巻き込まれ亡くなった。町は壊滅状態で、3年経った今も廃墟のまま、実質、糸守町はもう無いわ。」
「馬鹿な!俺は確かに、入れ替わって糸守に居たんだ!三葉だって、確かに居た!お前らだって会っているだろう!」
「だからよ~」
「あんたは、何年か前の三葉と、入れ替わっていたのよ!」
な・・・なんだと?俺は、昔の糸守に行っていただと?・・・ん?・・・
「ねえ、ちょっと待ってよ!それじゃあ、ただ入れ替わっているだけじゃなくて、時代も飛び越えて、入れ替わってたって事なの?」
「そういう事になるわね。信じられないけど・・・・・」
「そういえば・・・・確か、三葉の携帯の日付は、3年前の日付だったな・・・・」
『はああああああっ?』
俺の言葉に、3人同時に声をあげた。
「何でそういう大事なことを、真っ先に言わないのよっ!あんたはっ!」
千鳥のハリセンが、今迄に無い強さで、俺の頭を叩く。
「い・・・痛いじゃないか・・・・・・」
三葉が何を言っても、天然の宗介には伝わりません。千鳥のいない糸守で、彼の暴走を止められる者は居るのか?・・・・・
7箇条のところは、ちょっと時系列が逆転していますが、ここは続きで書かないと面白くないので見逃してください。
そして、よくやくマオ達は、3年の時間のズレに気付きました・・・・・・