しかし、その作戦とは・・・・・
一方、その事を知らずに、宗介により自分の生活が目茶目茶にされていく、三葉の運命は・・・・
「3年前って事は、丁度彗星が落下する年よね?」
「そういう事になるわね。」
「年代はずれていても、日付は同じだった。」
「てことは、あと半月もすれば、彗星が落ちて来るって事じゃねえか!」
俺達4人は、引き続き千鳥の部屋で、議論を続けていた。
「とにかく、早く三葉に伝えて、糸守の人を避難させなくっちゃっ!」
「待って、そううまくいくかしら?三葉はもちろん信じてくれるでしょうけど、町の人達にはどう伝えるの?・・・・・“未来に行って来た”なんて言っても、誰も信じないわ。」
「この彗星の分裂も、専門家も誰も予測できなかった・・・・三葉がいくら諭しても、“夢でも見たんだろう”で片付けられかねないな。」
「俺に任せろ!銃器で脅して、みんなを安全なところに・・・・・」
「あんたは、黙ってなさいっ!」
千鳥に、ハリセンで叩かれた・・・・・痛いじゃないか・・・・・
「ねえ、ミスリルって、3年前もあるんでしょ。そっちに頼めないの?」
「それは無理だ!一般人の三葉が何言ったって、取り合ってもらえないよ!第一、3年前じゃダナンもできてねえし・・・」
「でも・・・クルツくんや、マオさんに連絡を取れば・・・・」
「それが、俺も宗介も、3年前じゃまだミスリルに雇われる前だ!」
「あたしも、ミスリルには居たけど、宗介やクルツを知る前・・・・三葉にその話を聞いて、信じる事ができるとは思えない・・・・・」
「そ・・・そんな・・・・・・」
「よし!では、俺が今度三葉と入れ替わった時に、住民を少しづつ拉致して安全な区域に監禁・・・・・」
「だから、あんたは黙ってなさいって言ってるでしょっ!」
また、千鳥に、ハリセンで叩かれた・・・・・痛いじゃないか・・・・・
「・・・・宗介!」
「ん?・・・何だ?マオ!」
「悪いけどあんた・・・・ちょっと、買出しに行って来てくれない?」
突然、思い立ったようにマオに買出しを頼まれた。仕方無く、俺は近くのコンビニに向かった・・・・・・
宗介が去った後、かなめの部屋では、対策会議が続けられた。
『ええ~っ?』
マオの提案に、クルツとかなめは揃って声をあげる。
「そ・・それって、かなりやばいんじゃねえ?」
「三葉も・・・相当、怒ると思うけど・・・・」
「でも、これならば、住民は信じて避難すると思うわ!」
「それは、そうだろうけどよ・・・・」
「あ・・・後が・・・怖いわよね?」
「でも、何で宗介には伝えねえんだ?」
「変に意識すると、必要以上に余計な事をやりかねない・・・普段のあいつのままが、一番なのよ!」
「確かに・・・・」
十数分後、買出しから俺が戻ると、もう対策は決まったようだった。
「宗介!とりあえず、あんたは今迄通りに、普通に三葉として振舞って!」
「了解した!だが、住民の避難はどうする?」
「それは、ミスリルで何とかする・・・但し、秘密裏に動いてもらうから、三葉にもこの事は言わないで!彗星の事もよ!」
「了解した!」
それから何日か、三葉と宗介の入れ替わりは続いたが、三葉になった宗介の異常行動は、日に日にエスカレートしていった。
「ちょっとかなめ!相楽くん、何とかしてよっ!工作の時間に爆弾作って、教室半壊させたんよ!」
「わ・・・分かった、明日ビシッと、締めておくから・・・・・」
「かなめっ!今度は相楽くん、神社に悪戯してた不良を、足腰立たない程にボコボコにしちゃったんよ!やり過ぎやよ!何より、私のイメージが・・・・・・」
「ご・・・ごめん!代わりにあたしが、あいつをボコボコにしておくから・・・・・」
「マオさん!ちゃんと監視してるって、言ってたじゃないですか?何やってたんですか?
相良くん、よりにもよって、町のチンピラ相手に拳銃発砲したんですよ!誤魔化すのに、どれだけ苦労したか・・・・」
「ご・・ごめん!昨日は緊急ミッションが入っちゃって、監視に行けなかったのよ・・・・」
宗介の暴走は留まるところを知らず、糸守内での三葉のイメージも、それに重なりつつあった・・・・・・
「ねえ!もう限界じゃない?」
「確かに・・・これ以上は、誤魔化しきれねえよ・・・・」
「あたしも・・・ここまで酷いとは・・・・思ってたんだけど・・・・」
「何を、そんなに悩んでいるんだ?」
「全部、あんたのせいでしょうがっ!」
また、千鳥のハリセンが飛ぶ・・・・・・
マオ達は、糸守の避難計画の概要を、初めて俺に語った。
「何だと?そんな事を考えていたのか?何故、俺に秘密にしていた?」
「悪かったわよ・・・・でも、下手に意識すると、かえって悪影響が出ると思って・・・・」
「そんな事は無い!知っていれば、町役場爆破とか、もっと過激なデモンストレーションだってできたのに・・・・・」
「そういう事をやらせないために、言わなかったんでしょうがっ!」
またまた、千鳥のハリセンが飛ぶ・・・・・
「もう、彗星落下までそう日も無い!三葉にも話して、当日の細かい計画を立てよう!」
「そうね!」
「でも・・・三葉、怒るだろうなあ・・・・・」
「こんな嘘をつくからだ!」
「あんたが、ハチャメチャにやりすぎるからでしょうがっ!」
更にまた、千鳥のハリセンが飛ぶ・・・・・・
次に入れ替わりが起こった時、私は衝撃の事実を、かなめ達から聞く。
「ええっ?ここって、3年後の未来やったの?・・・それに、彗星が分裂して、その破片が糸守に墜落するやて?」
「ええ。」
「そ・・・そんな・・・ほんまやの?」
「これを見て!」
私は、マオさんから渡された、当時の新聞記事を見る。そこには、ティアマト彗星の破片の一部が糸守に墜落して、町が崩壊した事が書かれていた。更に、住民の1/3が、被害に巻き込まれて亡くなっていた。
「わ・・・私も・・・死ぬの?」
かなめ、マオさん、クルツさんが、静かに頷く。
「そんな・・・そ・・ん・・・・・」
涙が流れ、声が出なくなる・・・・あと数日で、私は死んでしまうのか?・・・・・項垂れる私に、かなめが声をかける。
「待って!三葉!私達の時代ではそうなってるけど、あなたの時代では、これから起こる事なのよ!」
かなめの言葉に、私は顔をあげる。
「絶対、あなたを死なせない!あたし達の、計画を聞いて?」
私は、無言で頷く・・・・その後、かなめから、計画の概要を聞かされたのだけど・・・
「ええ~っ!な・・何やの?それ?」
かなめ達は、非常に気まずそうな顔で、私を見つめている。計画の概要はこうだ・・・・
普通に彗星落下を住民に訴えても、専門家ですら予測できない突発災害を、誰も信じない。それならば、誰でも信じられる災害をでっちあげて、それでみんなを避難させればいい。それを起こす者・・・・それが、相良宗介だ!日頃、彼の破天荒な行動を目の当りにした人々は、“彼ならばやりかねない”という恐怖が、頭の中に刷り込まれる。そこで彗星落下の日に、糸守神社周辺に、“彼が不発弾を持ち込んだ”というデマを流す。そして安全地帯が糸守高校だと告げれば、皆信じてそこへ避難するだろう、という考えだ。但し、ここでひとつ大きな問題がある。その破天荒な行動を起こすのは、間違い無く相良宗介ではあるのだが、3年前の糸守では、“相良宗介=宮水三葉”だという事実だ!つまり、三葉が、そういう危険人物という目で、皆に認識されてしまう、ということである。
「か・・・か~な~め~!」
「ご・・ごめん!三葉!・・・で・・でも、ほ・・他に、いい方法が思いつかなくて・・・・」
「そ・・・それで相良くんは、わざと、あんな人騒がせな事件ばっかり・・・・」
「い・・いや・・・あれは、地です。根っから、あんな男だから・・・・」
「わ・・・分かった・・・もう、後戻りできへんし・・・皆を助けるためや・・・我慢する・・・・でも・・・でも・・・私の、このやり場の無い怒りは、どうしたらええの?」
私は、殆ど吼えていた。
「わ・・分かったわ!明日、宗介の頭を、あなたの分まで、思いっきりぶっ叩いておくから!」
「自分で叩かんと、気が治まらんわっ!」
私は、更に吼える。
「はあ~っ・・・仕方無いわね・・・じゃあ、クルツ!あんた、宗介の代わりに叩かれなさい!」
「ええっ?何で俺が?」
「はい、三葉!」
かなめから、ハリセンを受け取る。私は上段にそれを構え、クルツさんの前に立つ。
「ちょ・・・ちょっと待って・・・み・・・三葉・・・さん・・・」
「あの、ど天然暴走男がああああああああっ!」
「ほんげええええええええっ!」
ハリセンが、凄まじい勢いで振り下ろされ、クルツさんの頭を直撃する・・・・・
クルツさんの頭を思い切り叩いて、少し気持ちの落ち着いた私は、避難計画について、引き続きかなめ達と話し合った。
「でも、いくらでっちあげ災害を信じさせられるとしても、三葉ひとりじゃ実行は難しいわね。」
「少なくとも、2~3人は協力者が欲しいところだな・・・・」
「そ・・・それなら、私、サヤちんとテッシーに頼んでみる!」
「ああ、勅使河原君と名取さんね?」
「でも、信じてもらえるの?」
「大丈夫、親友やもの・・・きっと信じてくれる!」
彗星落下まであとわずか・・・でも、絶対みんなを助ける!・・・・だけど・・・あ・・あたしのイメージが・・・・・・・
ようやく、全てを知る三葉・・・・糸守を、皆を助けるためと、マオ達の計画に同意します・・・・・自分の信用を犠牲にして・・・・・
そんな三葉の苦悩も知らず、宗介は、今日も糸守で暴走中です・・・・・