彗星落下、当日の朝が明ける・・・・
俺は、自分の部屋で、自分の体で目が覚めた・・・・結局、あのダナンでの事件以降は、三葉との入れ替わりは起こらなかった。
千鳥と共に、通学の途に就く。
「大丈夫かな?三葉・・・」
「準備は、整っていると思う、問題無い!」
「成功を祈って、待ってるしか・・・ないのかな?」
「そうだな・・・・」
「・・・そういえば、テッサの意識は戻ったの?」
「ああ・・・ただ、大佐殿にも、良く分からないらしい。」
その後、俺に対しても、何の追及も来ていない・・・マオは、何か知らないが呼び出されていたが・・・・・・
私は、糸守の、自分の体で目覚めた。
「い・・・いよいよ・・・今日!」
「・・・お姉ちゃん・・・・」
右を見ると、襖を開け、四葉が立っている。
「四葉、私は、やる事があるから一緒に居られへんけど、お婆ちゃんをお願い!」
「うん!分かってる!」
昨夜、妹の四葉には、本当の事を話した・・・・今日、彗星の破片が糸守に落下する事・・・・私が、3年後の世界の相良くんと、何度も入れ替わっていた事・・・・・驚くほど、四葉は、その事を素直に信じた・・・・きっと、四葉が一番、変貌する私を真近で見ていたからだろう・・・・・
学校に行き、テッシー達と、最終打ち合わせを行う。
「決行は7時半頃、今夜はお祭りやから、大概の人は神社に集まってる!」
「爆発は、神社の裏手、できるだけ人のおらんところで・・・これは、俺に任せとけ!」
「だめ!テッシーには、みんなを高校まで誘導してもらわんと・・・それは、私に任せて!」
「ほんまに大丈夫か?・・・相良やないのに・・・・」
「それくらいは、やらなくっちゃっ!なんせ、私が主犯なんやから!」
「分かった!セットだけは、俺がやっとくで!」
「サヤちんは放送をお願い!学校の放送室から、防災無線をジャックできるから!」
「うん!」
「三葉!お前は、午後から学校ふけて姿隠しとけ!その方が、信憑性が高くなる!」
「分かった!」
そして、陽が暮れる・・・運命の時間がやって来た・・・・空には、もうはっきりと彗星の姿が確認できる。
私は神社の裏手、疑似爆発を起こす場所に向かう・・・・既に、テッシーが来て準備をしていた。
「て・・テッシー!」
「三葉・・・準備はできてる・・・あとは、この導火線に火を付けるだけでええ!」
「うん!ありがとう!」
「威嚇だけやから、煙は出るけど、火事にまではならへん!ただ、近くにいると危ないから、火を付けたらできるだけ離れるんや!」
「うん!」
「あと、この辺に、人が近づかんようにしとくんや!」
「分かった!」
そう言って、テッシーは、避難誘導のために神社の表の方に走って行った。
私はその場に留まり、じっと時間を待つ・・・・・
7時30分、時間だ!私は、テッシーが用意してくれた、簡易爆弾の導火線に火を付ける・・・・・・
凄まじい轟音と共に、爆煙が吹き上がる!お祭りで、神社に集まっていた人達から、悲鳴が上がる・・・・そして、それを合図に、防災無線の放送が流れる。
『こちらは、糸守町役場です!たった今、宮水神社に、不発弾が複数持ち込まれたとの、
情報が入りました。万一、その全てが暴発すると、宮水神社を中心に、直径1kmの範囲に被害が及ぶと思われます・・・・・皆様、大変危険ですので、大至急、被害範囲外の、糸守高校まで避難して下さい。繰り返します・・・・・』
放送を聞いた人達から、ざわめきが起こる。
「い・・・今の爆発が、そうやの?」
「宮水神社にって・・・まさか、また、三葉ちゃんが?」
「あ・・・あの破天荒娘!また、やらかしたんか?」
そこへ、避難誘導係のテッシーが割り込む。
「みんな!何してるんや!はよう避難するんや!」
「そ・・・そうや!」
「い・・・急げ!いつまた、暴発するかわからへん!」
それが引き金になり、皆、一斉に逃げ出した。
神社の裏手から、私はその様子を伺っていた・・・・良かった、みんな、避難していく・・・・だけど・・・・わ・・・私の信用は・・・・・
しばらくの間、そこに蹲ってひとり嘆いていた・・・・・・・
一方、町役場では・・・・
「何だ?この放送は?何処から流れている?」
「分かりません、でも、爆発は、間違いなく神社です!娘さん、またやらかしたんじゃ・・・・」
「あのばか娘が!私の苦労も知らんで・・・・と・・・とにかく、今は避難するぞ!説教は、後でたっぷりしてやる!」
住民達は、一心不乱に糸守高校へと走って行く。先導していた勅使河原は、ふと、宗介に聞いた言葉を思い出す・・・・・“三葉の時は・・・・お前が守れ!”・・・・
「そ・・・そやった・・・み・・・三葉は、今、ひとり・・・・」
周りを見渡すと、皆、全く疑う事無く、糸守高校に向かって走って行く。誘導は、もう必要無い。勅使河原は、宮水神社の方に向き直り、人の流れに逆らい、宮水神社に向かって走って行く。
もう、神社には誰も居なくなった・・・・空を見上げると、彗星が長い尾を引いて、綺麗な模様を描いている。
さあ、そろそろ、私も避難しなくっちゃ!
神社の表側に回り、石段の所に差しかかろうとした時、突然、目の前に人影が現れる。
「?!」
全身黒尽くめで、黒いゴーグルで目も隠している・・・・どこから見ても、怪しい!
私は、身の危険を感じて、引き返そうと後ろを向く。しかし、そこにも同じ格好の男が居た!
「きゃあっ!」
私は、その黒尽くめの男に両手を掴まれる・・・・直後に、その両手を背中に捩じ上げられてしまう・・・・
「い・・・痛いっ!」
黒尽くめの男は、背中に捩じ上げた私の両手を、縄で一纏めに縛り始める。
「や・・・やめて!は・・・離してっ!」
必死に逆らうが、男の力に適う筈も無く、瞬く間に、私は後ろ手に縛られてしまう。
「だ・・誰か!助け・・・・んっ!」
大声で、助けを呼ぼうとしたところ、口の中に、手拭いを結んだ瘤を捩じ込まれる。そして、その手拭いを頭の後ろできつく縛られる。猿轡まで、されてしまった。
「むふううううんっ!」
だ・・だめ!これじゃ、声も出せない・・・た・・助けて!誰か!テッシー!・・サヤちん!・・・・
「おい!何か様子がおかしいぞ!」
もうひとりの男が、空を見て声をあげる。
そう言われて、私を捕まえている男も、空を見上げる。
「?・・・彗星が・・・割れてる?・・・・」
私も、空を見る。彗星が2つに割れて2本の光の尾を引いている・・・いけない!もう直ぐ、こちらに落ちて来る・・・・
「い・・・行くぞ!こいっ!」
男は、急いで私を連れ去ろうとする。
「むふうん!んんっ!」
必死に抵抗を試みるが、縛られている上に、非力な女の力では、大の男の腕力に抗う術が無い・・・こ・・こんな事なら、毎日、筋トレしておくんだった・・・・た・・助けてっ!誰かっ!・・・・さ・・相良くん!
――― 助けて!相良くん! ―――
「ん?」
「どうかした?宗介?」
「・・・今、誰かに、呼ばれたような気がしたんだが・・・・」
学校の帰り道、俺は、千鳥と河原の土手を歩いていた。
「・・・誰も、居ないわよ・・・」
「そのようだな・・・気のせいか?」
「きゃああああっ!」
その時、急に突風が吹き、砂埃が舞い上がる。千鳥は、スカートを必死に抑えている。同時に、辺りに轟音が響き渡る・・・・これは、ヘリの音だ!
俺は、上空を見上げる・・・・何も無いところに、突然、大きなヘリが姿を現す。ECSを解いたのだ!
「な・・何?」
「ミスリルの輸送ヘリだ!」
ヘリの中から、クルツが顔を出す!
「宗介!緊急事態だ!乗れっ!」
「いったい、何だ?」
「大変な事が解ったんだよ!」
「三葉!」
急に、名を呼ばれ、声のする方に顔を向ける・・・・テッシーが、そこに居た・・・
「お前ら!三葉を離せ!」
テッシーは、私に向かって一目散に駆け寄って来る。そして、黒ずくめの連中に飛びかかろうとするが・・・・
「ぐはっ!」
軽く交わされ、腹に一撃を喰らってしまう。
「どはっ!」
更に、顎を蹴り上げられ、テッシーは仰向けに倒れてしまう。
「むふううううっ!」
私は、声にならない叫びをあげるだけだった。
「こ・・・この・・・」
それでも、テッシーは、まだ向かって来ようとする。すると、黒ずくめのひとりが拳銃を抜き、それをテッシーに向ける。
「むふうううん!んっ!んんっ!」
いや!撃たないでっ!だ・・・誰かっ!テッシーを助けてっ!・・・さ・・相良くんっ!
もうだめ!と思った次の瞬間、撃たれて倒れたのは、黒ずくめの男の方だった。
「なっ?」
慌てて、私を捕まえている男も銃を抜くが、その銃も誰かに撃ち落とされる。
「?!」
男が怯んだところに、林の中から、物凄い速さで人影が駆け寄り、私を捕まえている男を跳ね飛ばす。
「ぐわあっ!」
男は倒れ、私はその人影に抱き留められる。
「大丈夫か?三葉?」
さ・・・相良くん?ど・・・どうして?3年後に居るはずの・・・あなたがここに・・・・
うまく行きかけた避難計画の最中の、まさかの誘拐劇・・・・・
絶体絶命の三葉の前に、時を越えてリアル宗介登場!
でも、何で?・・・・・
その訳は・・・・・次回で・・・・次回は最終回です!