どうも、ふぁもにかです。今回は思いっきり説明回。飛ばし読みで結構ですよ?
刹那の放った神鳴流決戦奥義『真・雷光剣』により崩壊する魔王城から急いで脱出した刹那と時の女神。二人は派手に崩れ落ちる魔王城を終始無言で見つめる。徐々にガラクタの山と化していく様を半眼でただただ眺める。
「す、凄かったわね~。最後の技。えーと、真・雷光剣だったわよね?」
女神は引いていた。いくら超速レベルアップの恩恵を与えたとはいえ刹那が魔王城ごと魔王を倒すほどの威力を持った技を使えるとは欠片も思っていなかったのだ。今まで女神が手を貸したどの勇者や魔王や王女よりも強力な技を持つ刹那に女神は密かに戦慄を覚える。この瞬間、女神は今後刹那を本気で怒らせるような言動は避けようと心に誓った。
「はい。私自身、ビックリしています」
一方。当の刹那も引いていた。いくら神鳴流決戦奥義が強力な技だといえど、自身の放った技がここまでオーバーキルになるとはよもや思っていなかったのだ。いくら超速レベルアップの補正の影響が大きいとはいえ魔王を消し炭にして魔王城を破壊しつくすほどの実力を持つ桜咲刹那という存在。これじゃあ、まるで――。
「まぁ、とにかく魔王カマセイヌも倒しましたしコノハちゃんの元に戻りま――」
刹那は脳裏に浮かんだ『化け物』という言葉を振り払うようにして首をブンブンと振るとくるりと魔王城に背を向けてアレイヤの村へと戻ろうとして、なぜかペタンとその場に座り込んだ。
「へ……?」
緊張が解けて足がもつれてしまったのか。刹那は自分の情けなさに思わず苦笑しつつ立ち上がろうとして、できなかった。どうにか手足に力を入れて立とうとするも力が全然入らない。刹那が感じるのは体中の力が抜けていくような虚脱感だけだ。
「……あ、れ?」
「あらら。刹那ちゃん大丈夫? 超速レベルアップの副作用の影響モロに受けてるみたいだけど」
今まで微塵も感じなかった疲労がドッと押し寄せてきたせいで立てなくなった刹那を周囲をふわふわと漂っていた女神は微笑ましいものを見るような目で見つめる。
「副作用、ですか?」
「そそ。超速レベルアップは人を簡単に強くすることができるけど、所詮は一定時間だけの付け焼刃だからね。解除すれば超速レベルアップの恩恵を受けていた間に上げたレベルはなかったことになる。やろうと思えば24時間365日ずっと超速レベルアップの効果を与え続けて付け焼刃を本物にすることもできるけど、それは刹那ちゃんの体に予期せぬ悪影響を与えかねないし何よりお金の面で割に合わない。だから魔王との戦いが終わった際に刹那ちゃんの超速レベルアップをこっそり解除させてもらったんだけど、そうすると自然と刹那ちゃんは元のレベルに戻っちゃう。言ってしまえば、今の刹那ちゃんはレベル30からレベル1に戻ったようなものなの。だから基礎体力の大幅な違いに体が適応しそこねてそうなっても不思議じゃないんだよね。ま、少し休憩したら動けるようになるだろうから安心して」
「えーと……要するに、超速レベルアップはいざって時に物凄く便利だけど将来的に強くなるための都合のいい近道ではないということですか?」
「うん。そーゆーこと。あくまで刹那ちゃんのタイムストリームを弄って一時的に強くなりやすくしているだけだからね。純粋に強くなりたいなら地道に経験積むのが一番よ」
刹那は女神の説明になるほどとうなずく。同時に刹那は安心した。超速レベルアップ時の基礎体力はいつもの自分を軽く凌駕していた。ほんの短時間のモンスター退治で今までの自分の努力をあざ笑うほどの力を刹那に与えていた。あれだけの力を容易に手に入れておきながら副作用も反動もなくさらに超速レベルアップの恩恵が一生ついて回るなんてことになれば自分はいずれ確実に力に呑まれていただろうから。
強くはなりたいが分不相応な力に振り回されるつもりのない刹那にとって超速レベルアップの副作用はむしろありがたかった。
「それはそうと刹那ちゃんってさ、元の世界に戻りたいって思ってたりするのかしら?」
「……それはもちろんですよ、女神さま。戻れるものなら戻りたいです、今すぐにでも」
と、何を思ったのか。女神は唐突に話題を変えてくる。女神の問いで元の世界のことを思い出した刹那は膝を抱えて弱々しい声で呟く。郷愁の思いと多大な悲しみを胸に。
自分のいた世界では鴉族とのハーフという出自のせいで、禁忌とされる白い翼のせいで散々な目に遭ってきた。何度石を投げられたかわからないし何度自分を否定されたかわからない。
もしかしたらこっちの世界ではそういうことはないかもしれない。鴉族そのものが存在しないかもしれないし、例え存在していたとしても白い翼が禁忌じゃないかもしれない。それならわざわざ翼を隠して生きる必要はないかもしれない。それは何て魅力的な生活だろうか。
でも、麻帆良には大切な人がいる。守りたい人がいる。もっと知りたい人がいる。もっと話したい人がいる。恩を返したい人がいる。皆が、きっと待ってくれている。だから帰りたい。麻帆良に帰りたい。元の世界に戻りたい。
だけど。未だに自分が異世界に来た原因がわからない以上、こればかりはどうしようもない。世界を越えて元の居場所に帰るなんて突拍子もないこと実現できるはずがない。もう皆と会えない。刹那が絶望感に打ちひしがれていると女神の口から思いもよらない言葉が飛び出した。
「そっか。なら刹那ちゃんが元の世界に帰る方法について一つ案を思いついたんだけど、聞くだけ聞いてみる?」
「……え? 帰れるんですかッ!?」
「まだ確証は持てないけどね。でもさっき刹那ちゃんが魔王カマセイヌを倒した時、魔王の体から膨大なタイムストリームがあふれ出したの。もったいないからちゃっかり回収しておいたけど、あれはかなりのタイムストリーム量だったわ。だから魔王の持つ莫大なタイムストリームを集めてエネルギーとして使って刹那ちゃんの体の情報を媒介にすれば、麻帆良へ帰れるかもしれない」
「それじゃあこれから私が人造魔王を倒すだけ倒してタイムストリームを女神さまに蓄えてもらえば、いつかは帰れる……!」
「あくまで絶対じゃないけどね。でも試す価値はあると思わない?」
女神の笑みを含んだ問いかけに刹那はうんうんと首を何度も上下に振る。ようやく希望が見えた。これから自分がやるべきことが見えてきた。確実ではないとはいえそれでも元の世界に帰る方法についての目処が立ったことに安堵の息を吐く刹那だった。
わずかながら光明が見えてきたせっちゃん。
やったねせっちゃん。よかったね。