【完結】勇者刹那30   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。今回でBeginningは終了です。当初は4,5話でちゃっちゃと終わらせるつもりだったのに気づけば12話も使ってる件について。どうしてこうなった。



Beginning(12)

 

「せっちゃん!? せっちゃーん!」

「コ、コノハちゃ――グフッ!?」

 

 疲れきった体を引きずるようにしてやっとのことでアレイヤの村に帰ってきた刹那を待っていたのはコノハという名のミサイルだった。勢いよく抱きついてきたコノハミサイルを思いっきり鳩尾に受けた刹那はお腹を押さえてうずくまる。神鳴流剣士:桜咲刹那ノックアウトの瞬間である。

 

「大丈夫だった、せっちゃん!? 怪我とかしてない!? 痛い所はない!?」

「……う。だ、大丈夫ですよ、コノハちゃん。私はこの通り無事です。……強いて言うなら今の攻撃でダメージ喰らったぐらいです」

「よ、よかったぁ~」

 

 刹那の体をペタペタと触って怪我がないか確認するコノハ。刹那はコノハを安心させようとお腹の痛みを堪えて精一杯ニコリと笑う。痛みのせいで刹那の笑みは思いっきり引きつっていたのだが、肝心のコノハにはそれが柔和な笑みに見えたらしく安堵の声を漏らしてペタリとその場に座り込む。コノハの反応から察するに刹那の呟きはコノハの耳に届かなかったようだ。

 

「コノハちゃん。これ、ありがとうございます。凄く助かりました」

「え? この指輪が何かしてくれたの? お守り代わりにしかならないだろうなぁって思ってたんだけど」

「はい。私を守ってくれました。それがなければ私は確実に魔王に負けていたでしょう」

「えッ!? これそんなに凄い代物だったのッ!?」

 

 コノハは刹那から返してもらった光麓(こうろく)の指輪を手のひらに乗せてジィーと見やる。続いてコノハは指輪を太陽にかざしたり片手で太陽を遮って指輪を光に当てないようにして指輪を興味津々な眼差しで見つめる。コノハの挙動が何だかおかしく見えて、刹那はつい笑いを零した。

 

「……ねぇ、せっちゃん。せっちゃんはさ、これからどうするの? やっぱり旅の剣士さんだからすぐにどこかへ行っちゃうの?」

「いえ、今日はここで泊まろうと思います。さすがに疲れましたしね」

 

 と、指輪が何らかの反応を示す様を期待の眼差しで見つめていたコノハが唐突に刹那へと視線を向ける。寂しさを宿した瞳とともに問いを投げかける。刹那はコノハから視線を逸らしつつ自分がアレイヤの村に留まる旨を伝えた。

 

 原因不明のままいきなり異世界にやってきて。右も左もわからない中、女神さまの説明を受けてようやくある程度の事態が飲み込めるようになって。世界を滅ぼそうとする魔王をどうにか倒して。あまりに濃密な時間を過ごし体力的にも精神的にも疲弊した刹那はとても今すぐ人造魔王退治の旅を始める気になれなかった。

 

「なのでいいホテル……じゃなくて宿屋の場所を教えてほしいのですが」

「えっと、ごめんねせっちゃん。ここって滅多に人の来ない田舎だから宿屋とかないんだよね。アハハ」

「えッ!?」

「だからさ、今日は私の家に泊まっていってよ!」

「え、でもそれだとコノハちゃんに迷惑が――」

「大丈夫大丈夫! 私一人暮らしだし家も無駄に広いから人一人増えても全然問題ないよ! それにせっちゃんは私も世界も救ってくれた大恩人だからね! ちゃーんとおもてなしするよ?」

「……えと。それじゃあ、お言葉に甘えて」

「わーい! せっちゃんとお泊りだぁー!」

 

 コノハはキラキラとした瞳で刹那を自分の家に誘ってくる。ここまで言われたら、あんな純粋な眼差しで見られたら断ろうにも断れない。刹那はコノハの好意に甘えることにした。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 翌日。朝早くに起きた刹那はコノハと二人、西の海で遊んだ。純粋に泳いでみたり、ピクニック気分でコノハが作ってくれたお弁当を食べたり、談笑がてらただただ綺麗な海の景色を目に焼きつけるように眺めてみたりと西の海での時間を存分に堪能した。そして、その日の夕方。刹那とコノハは村の入り口で向かい合っていた。

 

「……お別れですね、コノハちゃん」

「そう、だね……」

「今日は凄く楽しかったです。ありがとうございました、コノハちゃん。……えと、それじゃあ」

「うん……」

 

 コノハはうつむいたまま何も言わなくなる。刹那はコノハを悲しませていることに罪悪感を感じつつもコノハに背中を向けて歩き出す。近衛木乃香の生き写しのような姿をしたコノハとの楽しい時間は刹那の心を随分と癒してくれた。それゆえに刹那は怖いのだ。コノハとこれ以上一緒に過ごしたら麻帆良に帰りたいと思えなくなりそうで。この世界で一生を終わらせるのも悪くないと思ってしまいそうで。だから刹那は自身が心変わりしない内にコノハと別れることを決断したのだ。

 

「あ、あのさ、せっちゃん!」

「? コノハちゃん?」

「あの、えっと……ごめん、何でもない。……また会おうね、せっちゃん! 私ここで待ってるから!」

「……そう、ですね。また機会があったら会いましょう、コノハちゃん」

「うん!」

 

 刹那を呼び止めたコノハは喉まで出かかった言葉を飲み込むと笑顔で手を振る。対する刹那は罪悪感を紛らわすようにコノハに手を振り返す。それから刹那はアレイヤの村から北の方へと歩き始めた。世界を滅ぼそうと企む人造魔王を倒してこの世界を救いながら、元の世界に帰る際に使用するタイムストリームを集めるための旅を始めた。

 

 

 

 

「言えないよね……。私の能力で見たせっちゃんの未来で、私を斬り殺すせっちゃんの姿があっただなんて――」

 

 ゆえに刹那は知らない。刹那の後ろ姿を悲しそうに見やるコノハがそんな不穏なことを呟いていたことを。コノハとの出会いが後の悲劇に繋がってしまうことを――。

 




 魔王カマセイヌは討伐されたので次からは別の魔王が登場します。
 これからもせっちゃんガンバッ。マジガンバッ。
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