【完結】勇者刹那30   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。Beginningの方は長引いちゃったけど、今回のSleepyはそんなに話数かからない予定。……あくまで予定ですけどね。



第2話 惰眠魔王スリィピ
Sleepy(1)


 

 女神歴1400年。何者かが造った魔王を退治して元の世界に帰るためのタイムストリームを集める旅に出ることとなった刹那はとりあえず北を目指した。魔王を倒すといっても肝心の魔王がどこにいるのかわからない以上、北に進んでいるのは単に当てずっぽうだ。深い意味はない。

 

 刹那はアレイヤの村の北に位置する森(女神曰く、オークの森)で野宿生活を営むこととなった。オークの森の豊富な果物や野菜を調達し必要最小限の小動物を狩って食料としつつただひたすら北へと歩き進める日々である。人と全く出会わない日々だったが刹那には何かとお喋りな時の女神さまがいたので退屈さは微塵も感じなかった。

 

 もちろん旅の道中でも己の研磨は忘れない。一日でも早く強くなりたい刹那は己の体のことを顧みることなくオークの森に生息するモンスターを退治し自主練に励んだ。どんなに無茶な特訓をして怪我を負ったとしても美味しい食べ物を食べるだけで即座に怪我を回復できるこの世界のシステムは刹那にとって非常にありがたかった。

 

 ちなみに刹那が道中モンスターを倒して手に入れたお金は上手いこと刹那を言いくるめた女神によって根こそぎ回収されているため、今の刹那の全財産はたったの20Gだ。時の女神さまに憑かれた者がたどる道を順調に突き進んでいる哀れな刹那である。

 

 そんなこととはいざ知らず、5日かけてようやくオークの森を抜けた刹那は高台に立っていた。刹那が見下ろした先にはこじんまりとした村が二つポツリと存在している。といっても、どちらともアレイヤの村よりは明らかに規模が大きいのだが。

 

(こうして見るとアレイヤの村って本当に田舎だったんだなぁ……)

「やっと村についたわね、刹那ちゃん」

「はい。これでようやく武器を買い替えられますよ。その前にモンスターを倒してある程度お金を稼ぐ必要はありますが」

「ま、それが妥当だわ。20Gで買える武器なんて絶対ロクなものじゃないからね。ボロいだけならまだいいけど何か呪いがかかってたら洒落にならないもの」

 

 刹那は右手に持つデッキブラシを見やる。残虐魔王カマセイヌやオークの森のモンスターを倒すために散々酷使してきたデッキブラシはもうボロボロだ。そもそもデッキブラシは清掃用具で決して撲殺用具じゃない。本来の用途とは全く違う使われ方をしたデッキブラシにガタが来ないわけがないのだ。むしろ今までよく持ったと言える。

 

 刀が売ってたらいいな。夕凪みたいな野太刀があったら最高だ。これから訪れる武具屋の品揃えに期待を寄せつつ刹那がテクテクと歩を進めていると、ゴゴゴゴゴゴッと唐突に地面が上下に揺れ動き始めた。刹那はこの感覚を知っている。地面から例の悪趣味極まりないデザインの魔王城が出現する時の感覚だ。ということは――

 

「魔王かッ!?」

『ん。人間の皆さんこんにちわなの。僕はダラダラゴロゴログダグダがモットーの惰眠魔王スリィピなの。まずはこの睡魔の呪文で皆さんに眠ってもらうの。えい、なの』

 

 刹那がズズズと徐々に姿を見せ始めた魔王城をキッと睨みつけると同時に魔王城にいるであろう惰眠魔王スリィピとやらのゆったりとした声が響く。残虐魔王カマセイヌとは違った何とも聞き心地のいい声が刹那の脳裏に直接響く。そして魔王の言葉とともに辺り一帯が一瞬だけ薄い桃色に染まり、すぐに何事もなかったかのように元の色彩を取り戻した。

 

(? 今のが睡魔の呪文? でも全然眠くな――ぅ?)

『ん。これでいいの。上手くいったの。皆さん眠ったの。これでゆっくりハメツの呪文を唱えられるの。誰にも邪魔されないの。僕の計画、完璧なの。あと30秒で世界は滅亡するの。痛くないの。だから悪く思わないでほしいの。人間の皆さん、バイバイなの』

 

 魔王スリィピがそう言葉を残した直後、刹那の脳裏に前回と同様に『30’00』と脳内タイムウォッチが表示される。カウントダウンが始まるのは時間の問題だろう。

 

「ふふふ、出たわね魔王もどき。早速超速レベルアップができるようにしておいたからテキトーにモンスター倒してレベル上げてあんなのちゃっちゃと倒し――刹那ちゃん?」

「め、女神さま……」

「え、刹那ちゃん!? どうしたの!? フラフラしてるけど!?」

「……何か、凄く眠いです」

「ちょっ、まさかこれがさっき魔王が言ってた睡魔の呪文の効果なの!? 刹那ちゃん平気そうにしてたから効いてないと思ってたのに!? 刹那ちゃん大丈夫!?」

「な、何とか……」

 

 刹那は重いまぶたを何とかこじ開けつつ女神の問いに返答する。しかしこれはきつい。気を抜けばあっという間に睡魔に負けて眠ってしまいそうだ。これでは魔王スリィピを倒すどころかモンスターを倒して超速レベルアップを果たすことすら厳しい。

 

「わわ、これは本気でヤバそうね。それじゃあまずは頑張って村まで行くわよ! 村の中にいる間は外の時間を止めておくからもしも刹那ちゃんがつい眠っちゃっても大丈夫だしね! それに何か眠気覚ましになるものを村人が持っているかもしれないわ!」

「わ、かりました……」

 

 刹那は今この場で眠ってしまいたい衝動をどうにか堪えて前方に見える村へと走り始める。かくして刹那は脳内タイムウォッチがカウントダウンを始める中、前途多難で先が思いやられそうな惰眠魔王スリィピ討伐のための行動を開始したのだった。

 




 睡魔の呪文の影響をしっかり受けちゃったせっちゃん。
 せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。
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