どうも、ふぁもにかです。今回は勇者刹那30史上初の他者目線の描写が入ってます。それもまさかの新キャラ目線だったりします。いつもとはちょっぴり違った勇者刹那30をどうぞお楽しみくださいませ。……所詮2000文字ですけど。
再び眠気覚ましの目薬を使ってある程度眠気をなくした刹那は時間に追われているという焦りから躊躇なく北東にある洞窟へと入っていく。すると待ってましたと言わんばかりに大量のコウモリ型モンスターが漆黒の羽を広げて刹那へと襲いかかってきた。
「なッ!?」
軽く20匹以上のコウモリが一斉に迫ってくることに一瞬目を見開き驚愕を顕わにした刹那だったがすぐに平静を取り戻す。そして既にボロボロのデッキブラシに氣をこめてそれぞれ全長1メートルはありそうなコウモリ群の迎撃体制に移行する。こういう気持ちの切り替えの早さはさすがといったところか。
「斬空閃ッ!」
一匹一匹律儀に相手していたらキリがない。30秒なんてあっという間に経ってしまう。そう判断した刹那はデッキブラシを一閃。螺旋状に氣を放ちコウモリの大群を蹴散らす。それから神鳴流の技を喰らって散り散りに吹っ飛んでいくコウモリたちをしり目に一気に洞窟を駆け抜けようとした刹那は足に力をこめる。
(う、しまっ、眠気が……こんな時に!)
が、刹那を襲う睡魔の影響で刹那は一度足の力を抜いてしまう。そのまま睡魔の誘惑に負けてガクンと膝をつきそうになる。だがそこで睡魔の手に堕ちる刹那ではない。刹那は頭をブンブンと勢いよく振って眠気を振り払うと再度足にグッと力を入れて洞窟を駆けようとする。自身の背後から奇襲を仕掛けようとする一匹のコウモリに気づかずに。
「刹那ちゃん、後ろ!」
「え? ――ぐッ!?」
刹那は一匹のコウモリ型モンスターに首筋を噛まれジュウウウウと血を吸われ始める。コウモリの吸血行為であっという間に貧血になってしまった刹那はフラフラとバランスを失い倒れそうになるが気力でどうにか持ちこたえる。そして氣をこめた左手で未だに首にくっついているコウモリを殴り飛ばすと洞窟の出口までなりふり構わず一目散に走っていった。
「う、ぅ……」
「あともう少しよ刹那ちゃん、頑張って! ほら見て! レイフィール博士の家はすぐそこよ!」
その後。洞窟を抜け出た刹那は照りつける太陽の光に思わずクラッとなりつい意識を闇に沈めそうになるも女神の声援でギリギリ意識を保つ。そこから刹那は文字通り最後の力を振り絞ってレイフィール博士の家まで疾走する。そして超速レベルアップの影響で超絶強化された体でレイフィール博士の家の扉を突き破るとともに刹那は床に突っ伏して眠りに落ちた。脳内タイムウォッチが示す残り時間は『12’89』だった。
◇◇◇
僕はレイフィール。来月で晴れて11歳になる研究者だ。これでも研究者歴は5年。個人的にはそれなりにベテランだと思ってる。成果もちゃんと上げてるしな。ま、自分語りはここまでにしておこう。大して面白くもないし。さて。ここ80日間ずっと研究漬けで家に籠っていたこの僕がたまには外出してみようと玄関に向かったらなぜか一人の小娘が玄関先で寝転がっていた。
「む?」
いかにも自分は旅人ですと主張するかのような衣服を身に纏い黒髪をサイドテールにした小娘。頭にネコミミがついているがこれはモンスターなのか? いや、モンスターならこんな所で呑気に眠るなんて愚劣極まりない真似なんてしないはずだ。それに僕の家の周囲にはモンスターが嫌う周波数の超音波を常時流してるからモンスターなんてまず寄り付かないはずだ。モンスターなんてただ己の本能に従って行動してるだけの低能だからな。嫌なものにわざわざ近づくわけがない。つまり僕の目の前にいるのはただの珍妙な人間だ。ふむ、興味深い。解剖したいな。
「おい。そこで何をしている、小娘? とっとと起きろ。そんな所で寝そべってるとうっかり頭を踏みかねないぞ?」
『いやもう刹那ちゃんの頭踏んじゃってるけどね、君……』
いくら他人の家に勝手に上がり込んで眠っているとはいえ普通なら僕は男としてこの小娘を丁重に扱わないといけないのだろう。だが僕は自分の行動を阻害したこの小娘にイライラしたので頭を踏んづけて無理やり起こすことにした。が、僕の体重が軽いせいかあまり効果は見られない。これでも全体重を足にこめてるつもりなんだけどな。僕が貧弱なのか、この小娘が頑丈なのか。
※時の女神さまの言葉は女神が見える者にしか聞こえないので少年レイフィールの耳には届いていません。ゆえに女神の発言は見事にスルーされています。
「しかし邪魔だな。凄く邪魔だ。このままここに放置したままだと靴を履くついでにうっかり蹴り飛ばしかねないぞ? うぅむ……どうしたものか、な!」
『いや今思いっきり刹那ちゃん蹴り飛ばしたよね!? 靴を履く前に明らかに攻撃の意思を持って刹那ちゃんに蹴り入れたよね!? サッカーボールを蹴飛ばすがごとく! 何なのこの子!? おこなの!? 今ちょうど虫の居所でも悪いの!?』
「む? さっきから誰かに見られてる気がするな。……まぁいいか。大して気にならないということはどうせ金にすらならないどうでもいいことだろうし」
『ム、ムキャー! 時の女神さまたる私をコケにするなんて……あんた何様!? 何様のつもりぃ!?』
僕に頭を踏まれてるにも関わらずむにゃむにゃと幸せそうに眠っている小娘が凄く癪に障ったので今度は軽く蹴飛ばしてみた。すると小娘は「ガフッ!?」と声を吐き出して宙を舞い壁に背中からめり込んだ。そして数秒のタイムラグとともに壁から剥がれ落ち玄関先に落下した。うむ。やはり薬でドーピングした体ならこれぐらいのことは楽にできるようだ。しかしここまで華麗に吹っ飛ぶとはな。どうやら小娘の方も体重が軽い部類のようだ。
「ぅ……う?」
さーて。痛みを契機に小娘が目覚めた所でここから楽しい楽しいお話の時間だな。ただの珍妙な旅人風情が僕に何の用だ? 僕の80日ぶりに外出するという予定を狂わせたんだ。大したことない用事だったら容赦しないぞ?
新キャラのレイフィール博士がいい性格してる件について。
せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。