【完結】勇者刹那30   作:ふぁもにか

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 どうも、ふぁもにかです。前回が前回だっただけにアンチ・レイフィールさんの人が大量発生してないか心配だったりします。大丈夫かな……?



Sleepy(5)

 

「……実験台、ってどういうつもりですか?」

「どういうつもりも何もさっき言ったじゃないか。僕特製のコーヒーは材料が容易に手に入らないんだ。いくら世界の危機とはいえそんな貴重なものをそう易々と提供できるわけないだろう? 常識的に考えて。ましてや今しがた知り合ったばかりの赤の他人ならなおさらだ。だから等価交換だ。僕はセツナをとある実験の被験者にする。セツナはその報酬として眠気覚ましのコーヒーを手に入れる。対等な取引だと思うが……さて、どうする?」

 

 私の体を使って何をするつもりなのか。実験台という言葉から物騒な気配を感じ取った刹那がキッとレイフィールを睨みつけるも当の本人はどこ吹く風で取引を持ちかけてくる。いや、これは取引じゃない。刹那にレイフィール特製のコーヒーを手に入れないという選択肢が存在しない以上、これは脅迫に近い。

 

「……」

「ねぇ刹那ちゃん。ここは引き返さない? こんなのの思い通りにならなくたって他にも方法はあるはずよ。……きっと」

「……」

 

 刹那は心配そうに声をかけてくる時の女神をスルーして考える。ここでレイフィールが提示した取引を受け入れることで生じるメリット・デメリットについて考えを巡らせる。

 

 メリットは当然眠気覚まし効果が期待できるコーヒーを入手できることだ。一方のデメリットはレイフィールさんの実験台を引き受けたが最後、何をされるか皆目見当もつかないこと、または実験台としてレイフィールさんの実験に付き合った後に難癖つけられて結局コーヒーをもらえない可能性があることだ。

 

 だけどレイフィールさんはバカじゃない。少なくとも世界を滅ぼす気満々の魔王スリィピを倒そうとしている私が死に至るような危ない実験をすることはないはずだ。でも――

 

「あぁそうだ。理由ぐらいは言っておくか」

「理由、ですか……?」

「あぁ。僕が実験台としてセツナに目をつけた理由だ。……セツナ。貴様は人間じゃない、違うか?」

「ッ!? な、なぜ――」

「やはりそうか。貴様からは普通の人間とは一線を画した特殊な気配を感じる。随分と巧妙に隠しているようだが僕の目はごまかせないぞ。さしずめ鳥系のモンスターと人との間に生まれた混血児といった所か」

「……」

 

 レイフィールにいとも簡単に自分がハーフだと見抜かれた刹那は何も言えなくなる。この世界で烏族とのハーフはどのような目で見られるのだろうか。どのような扱いを受けるのだろうか。この世界でもやっぱり忌み嫌われるのだろうか。わからない。怖い。レイフィールからの冷徹な眼差しに恐れをなした刹那は怯えきった視線をレイフィールへと向ける。

 

「ゆえに興味がある」

「えッ?」

「混血の人間を使った実験などあまりしたことないからな。ハーフに関する理論は既にまとめてあるが所詮は机上の空論だ。実際に見て触れて試してみないとわからないこともある。だからセツナ、貴様を通して色々と試したい」

 

 しかしレイフィールが刹那を見る目に蔑みや敵意はなく刹那の出自など歯牙にも掛けない半眼がそこにあった。このちゃんのように私の全てをありのまま受け入れてくれる目ではない。ネギ先生や明日菜さんのように私の出自をこれっぽっちも気にしない目でもない。どこまでも冷淡でどこまでも淡白な緑色の瞳。だけど悪感情がこもっていないせいか不思議と不快ではなかった。

 

「なに、この実験は貴様にとっても悪い話じゃない」

「えッ?」

「これから行う実験は脳に備わったリミッターの一部の解除・制限を可能にするものだ。あたかもスイッチのオンオフを切り替えるかのようにな。もしもこの実験を普通の人間に施せばリミッターを解除して少し動いただけで体に無視できない影響が発生する。そもそもそれを防ぐためのリミッターなのだからな。しかし人間より多少は頑丈なくせに人間並みにリミッターがかかっているハーフなら少しぐらいリミッターを解除しても何ら問題ない。むしろ動きが格段に良くなる分、魔王を倒す切り札の一つとして重宝できるのではないか? リミッターの解除・制限がいつでもできるようになる以上、魔王に近づくだけ近づいてからリミッターを外して一気にとどめを刺す、なんてこともできるのだからな」

「た、確かに……!」

 

 レイフィールから実験の話を聞かされた刹那は乗り気になる。もしもリミッターの解除・制限が簡単に切り替えられるようになればレイフィールの示した非常に効果的な作戦が使えるようになるからだ。

 

 自身と同等レベルの敵と対峙する際、実力者はまず相手の一挙手一投足から敵の力量を判断する。足の踏み込み方から呼吸の仕方まであらゆる点を入念に観察して情報を集めて敵の強さを決める。だけど。もしもその念入りに観察して手に入れた情報が全くの偽物だったらどうなるか。簡単だ。相手の力量を見誤った人はそのほとんどが負ける。戦いとは得てして一瞬にも満たない隙によって勝者が決まるものなのだから。

 

 そしてリミッターのオンオフが自在にできるようになるということは容易に己の実力を偽って敵を欺けるということだ。真の実力を封印して本気で戦うことで意図的に相手の隙を創出できるということだ。これは大きい。

 

「で、どうする? 実験台やるか? それともやらないか?」

「……その実験に死のリスクや何らかの後遺症が残るリスクはありますか?」

「ないな。断言できる。何せこの僕レイフィールが直々に行う実験だからな。豪華客船にでも乗った気分でいろ」

「……わかりました。実験台、やらせてください」

「取引成立だな。じゃあ早速始めるぞ。ついてこい」

 

 レイフィールとの会話でデメリットよりもメリットの方が遥かに大きいと判断した刹那はレイフィール提案の取引を受け入れることにした。望み通りの答えを聞けたレイフィールはニィと笑みを浮かべると刹那を地下の実験施設へと案内したのだった。

 




 せっちゃん強化フラグが発生した件について。
 せっちゃんガンバッ。マジガンバッ。
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